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第5章 リーラとアンデルクの王子
第19話 勲章受理式と新たる部隊誕生
しおりを挟む皇宮 謁見の間
獅子が装飾された金色の重たい扉が開かれる。
中央には金色に輝く玉座にはクリストファー・ルシュルツ・ノーザンランド皇帝が腰掛けており、玉座から扉にかけて真っ赤な絨毯が敷かれ、脇には宰相始め各大臣、各騎士隊長、貴族院の議員達が並んでいる。
受章を受ける者達が一人一人と入場する。
「あれが噂のおてんば娘だな」
ギルバート・フォールド財務大臣は一人の少女を見つめほくそ笑む。
少女は、軽やかな歩き方でにこにこ顔だ。勲章を得ることを心から喜んでいるようだ。
「只今より勲章式を執り行う。受章者前へ」
宰相が高らかに声を上げる。
官史、騎士が皇帝から勲章を受け取り、望みを聞かれるが、本来、辞退するのが勲章受理式慣わしだ。
しかし、その慣例を覆す者が現れた。
「リーラ・ハントン、この度のアンデルク王子救出の功績を称える。アンデルク国からも感謝の意を受け取っている。何か望みはあるか」
「望み…」
リーラの一言に各騎士隊長に緊張の糸が張る。
「しまった…。リーラに勲章式の流れを説明するの忘れた…」
ビルの一言に各隊長は頭を抱える。
「あんた、またやらかしたの?」
キャサリンがビルの腹に一撃を与える。
「うっ!!」
公の場なので必死に耐えるビル。
「望みあります!」
謁見の間にいた者が一斉にリーラを見る。
「望みというか提案なんですか…。どうして騎士隊に救護をする人がいないのでしょうか?医療院までに運ぶには時間がかかります。戦場でも医療を携わっている者が治療ができれば救える命もあった…騎士生命を絶たれることがなくなるのではないでしょうか?戦闘もでき医療もできる専門の部隊があってもいいんじゃないかな?って思ったんです!」
しーんと静まり返る。
「クックック。やはりさすが金獅子の賢者の娘だな」
ハルクはにやりと笑う。
「僕の義妹は天才だなっ!」
ビルはリーラをべた褒め。
「リーラ、本当ね。そんな部隊がいたら救われた命が沢山あったわ」
キャサリンは目頭が熱くなるのを感じた。そんなキャサリンの姿をオースティンは切なそうに見る。
「本当だな!どうして思いつかなかまたんだろう!」
とラモント。
フォールド財務大臣がパチパチと手をたたき始めた。それに同調するように拍手は増えていく。
「ふっ。決まりだな。ではみなのものに告げる。第6番隊救護隊の発足を命ずる。隊長には、ダリル・ハントン、副隊長はそうだ、おまえだ。リーラ・ハントンだ!」
「えっ!!私ですか!」
「言い出したのはおまえだろ?やるのか、やらないのか?」
「やります、やらせてください!!」
「ハルク、直ちに救護隊発足の準備にかかれ。春までに発足させろ」
「御意」
「ウィンターニア医療大臣、人材育成できるよう医療院に連携を取れ」
「御意」
光沢のあるベルベットの紺色にドレスに身を包んだ銀髪の女性、ウィンターニア侯爵の妻であり、初の女性大臣であるマリン・ウィンターニアが礼を取る。
ふとリーラとマリンの目が合う。
見定めるかの茶色の瞳の眼差しにリーラを負けじと見つめる。ふと笑われたような気がした。
「ではこれをもち、勲章式を終わりとする!」
そして、半年後に新たに第6番隊、救護部隊が発足される。そして、リーラは歴代最年少で副隊長に任命されるのだ。
第6番隊は別名「ノーザンランドの白き獅子」と呼ばれる。どうしてノーザンランドの白き獅子と呼ばれるようになったかは………。
それはまた、別のお話で…。
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