上 下
81 / 240
第5章 リーラとアンデルクの王子

第16話 リーラとおばあ様のお出かけ

しおりを挟む
騎士住宅街にあるリーラの家にローリーがやって来た。ローリーは日頃のリーラの住まいの確認のついでとばかりアンデルクから持参したドレスをせっせとクローゼットに仕舞う。

リーラはクローゼット内を見てポツリ。
「また、ドレスが増えたよ…」

「何言ってるの⁈あなたの要望通りにシンプルなデザインに作り変えたのよ。さぁ、早速着替えて頂戴」

 淡い水色のワンピースに着替えたリーラの髪を編み込みサイドに流す。ワンピースに合わせたリボンを着ける。

「さすが私。似合ってるわ」

褒められむずかゆくなるリーラ。
「リーラ、キレイピヨ、かわいいピヨ。馬子にも衣装ピヨ!我ながらうまいこと言うピヨね~」

「上手にお話できる鳥さんねぇ」

「普通に会話できる居候精霊さんだから」

「まぁ、そんな高貴な鳥さんとは失礼しました」

「気にするなピヨ」

外に出ると護衛のレンとアンディがリーラの姿を見て驚く。
「えっ?リーラ様?」
「やはり元がいいから可愛いなぁ…」

偶然にネイル副隊長一家に会う。
「ネイル副隊長~祖母です。奥さんのアニーさんだよ。いつもお世話になってるんだ」

「孫がお世話になっています」

「いえ、いつもリーラちゃんには娘のお世話をしてもらって助かっています。今日のリーラちゃん可愛いい~いつもお洒落したらいいのに‼︎」 

「そうなんです。もっとお洒落を楽しんほしいですが…また孫のことよろしくお願いします」

「リーラ!女だったのか⁈」 

「ネイル副隊長殴っていいですか?」

「ブハッ」
リーラが殴る前にアニーに殴られるネイルだった。

 ルディの母親に是非ローリーを紹介してほしいと言われていたのでロッテンハイム商会へ向かう。

 またまた、偶然にアデルとエミリーに会う。二人はデート中のようだ。

「アデル~、エミリーさーん」

「リーラ様!うそっ⁈激カワ‼︎」 

「げっ、リーラ⁇」 

「おばあ様、私の親友のアデル。騎士仲間なんだ。エミリーさんはアデルの彼女」

「いつも孫がお世話になっています」

「いえ、いえ、リーラ様がアデルを世話してくれてるんです。おばあ様ってカリスマデザイナーのローリー・レキシントン様ですか!!二人並んで神々しいですね。まぶしいです~」

「いや、いや、エミリーさん。普通のおばあちゃんですから…」 

「何を言ってるの!まだまだ現役よ!」

「すぐ腰痛いとか言う癖に…」 

「ふふふ。仲がよろしいですね」

「じゃあね」
リーラが手を振り去る。

「リーラじゃないみたいだ…化けるもんだなぁ」

「惚れちゃダメよ」
アデルはもちろんだよとエミリーの手を握る。

 ようやくロッテンハイム商会に到着する二人。玄関口にルディとアンナさん始め店員さんが迎えてくれた。

「マダムローリー、ようこそロッテンハイム商会へ。お待ちしておりました。こちらへどうぞ」
アンナは二人を部屋に案内する。

「おばあ様、私の親友のルディ。買い物はいつもこの商会で注文しているんだ」

「いつも孫がお世話になっています」

「こちらこそ。いつも彼女にはお世話になっています。ルディ・ロッテンハイムです。4番隊に所属しております。お帰りのアンデルク道中はご一緒させて頂きます。よろしくお願いします」

「まぁ、こんな素敵な騎士様とご一緒出来るなんて光栄だわ」

「本当わね、居酒屋でかきをフガフガフガフガ」
ルディに口を押さえられるリーラ。

「リーラ、余計なお喋りはやめようの。せっかく淑女の装いなのにね‼︎」

ローリーは笑いだす。
「仲がいいのね」

「あなた達、横のテーブルでお菓子でも食べていなさい」

「「はーい。」」
うるさい2人は商談には邪魔だと判断したアンナがお菓子を用意をさせると2人はお菓子タイムを始める。まだまだ子供ねとローリーとアンナは顔を見合わせる。

「もし、ノーザンランドに出店されるなら我が商会をお選びくださいませ」

「もちろんお願いしますわ、マダム。
リーラの友人の商家ですもの。信頼していますわ。しかし、今予約を一年抱えています。こちらに店を出すなら1年半、2年頂きたいですわ」

「もちろんですわ。店舗や店員はこちらにお任せ頂き、卸して頂ける商品の上乗せ価格がこちらの受取金となりますがよろしいですか?」

「えぇ、問題ありません。価格設定はお任せしますが一応把握はしたいのでお教えください。あと、国の気候と求めているデザイン情報を頂けますか?」

「もちろんです」
二人の女性が熱く握手を交わす。2年後に2人の熱意の結晶、ローリーブティックハウスの支店がグランディナに開店し、ノーザンランドの服飾業界に新しい風を吹きこむのであった。
 
「奥様、騎士伝令が届いております」
商会の小間使いが部屋に入り声をかけてきた。

「伝令??」
とリーラとルディは顔を見合わせる。ローリーは気を使いリーラに帰りを促す。

「リーラ、そろそろおいとましましょう

「はーい。じゃあ、またね」

「またね~」

「奥様こちらでございます。坊ちゃんにもございます」
ルディは自分の伝令を読む。


第4番隊の任を解く。
自宅にて待機。
 
顔面蒼白になるルディ。 

やっぱり腹痛で任務を休むのか駄目だったか…  

頭を抱えながらアンナをチラリと見ると
伝令を読む手は震え涙を堪えるように読んでいた。

「母さん、どうしたの?」 

「とうとう届いちゃたわね。覚悟はしていたんだけど」

「どうしたの?」
アンナの雰囲気からルディは途轍ない不安を感じる。 

「オリバーの戦死通知が来たわ」

「兄さん?」
2人は何も話さず部屋にはただ静けさだけが残ったのだ。

 




 一方、二人はリーラの家に戻り水入らずの時間を過ごす。

「おばあ様のご飯久しぶりだよ。美味しい~」

「リーラ、しばらく会わないうちに大きくなったわね、おじい様にそっくりよ」

「おばあ様…大丈夫?」 

「そうね、仕事があったからなんとか大丈夫だったわ。リーラ、あなたに伝えてないといけないことがあるわ」

「何?」

「晩餐会の時に連れて来た女性のこと覚えてる?」

「覚えているよ」

「あの方はあなたの姉のローズ様よ」

「えっ⁇」

「多分知らないと思ったわ。あなたにとって唯一の家族よ。心通わすのは難しいかも知れない。でも、どうか、二人が手を取り合える関係になって欲しいと望んでるわ」

「………」
ローリーは優しくリーラの頭を撫でる。

「じゃあ、この国に来て毎日どのように過ごしているか教えてちょうだい」

「うん…。いつも朝はね、6時に起きて…」
 
 そして、二人はわずかに残された時間を惜しむように離れていた間の話を交わした。


 その夜、リーラはローズの事を考えた。知らずに姉と何度も会っていたのだ。

「あの人は、お茶会で何か話そうとしていた…。姉…か…」


          
     
しおりを挟む
感想 5

あなたにおすすめの小説

勘当されたい悪役は自由に生きる

雨野
恋愛
 難病に罹り、15歳で人生を終えた私。  だが気がつくと、生前読んだ漫画の貴族で悪役に転生していた!?タイトルは忘れてしまったし、ラストまで読むことは出来なかったけど…確かこのキャラは、家を勘当され追放されたんじゃなかったっけ?  でも…手足は自由に動くし、ご飯は美味しく食べられる。すうっと深呼吸することだって出来る!!追放ったって殺される訳でもなし、貴族じゃなくなっても問題ないよね?むしろ私、庶民の生活のほうが大歓迎!!  ただ…私が転生したこのキャラ、セレスタン・ラサーニュ。悪役令息、男だったよね?どこからどう見ても女の身体なんですが。上に無いはずのモノがあり、下にあるはずのアレが無いんですが!?どうなってんのよ!!?  1話目はシリアスな感じですが、最終的にはほのぼの目指します。  ずっと病弱だったが故に、目に映る全てのものが輝いて見えるセレスタン。自分が変われば世界も変わる、私は…自由だ!!!  主人公は最初のうちは卑屈だったりしますが、次第に前向きに成長します。それまで見守っていただければと!  愛され主人公のつもりですが、逆ハーレムはありません。逆ハー風味はある。男装主人公なので、側から見るとBLカップルです。  予告なく痛々しい、残酷な描写あり。  サブタイトルに◼️が付いている話はシリアスになりがち。  小説家になろうさんでも掲載しております。そっちのほうが先行公開中。後書きなんかで、ちょいちょいネタ挟んでます。よろしければご覧ください。  こちらでは僅かに加筆&話が増えてたりします。  本編完結。番外編を順次公開していきます。  最後までお付き合いいただき、ありがとうございました!

聖女を騙った少女は、二度目の生を自由に生きる

夕立悠理
恋愛
 ある日、聖女として異世界に召喚された美香。その国は、魔物と戦っているらしく、兵士たちを励まして欲しいと頼まれた。しかし、徐々に戦況もよくなってきたところで、魔法の力をもった本物の『聖女』様が現れてしまい、美香は、聖女を騙った罪で、処刑される。  しかし、ギロチンの刃が落とされた瞬間、時間が巻き戻り、美香が召喚された時に戻り、美香は二度目の生を得る。美香は今度は魔物の元へ行き、自由に生きることにすると、かつては敵だったはずの魔王に溺愛される。  しかし、なぜか、美香を見捨てたはずの護衛も執着してきて――。 ※小説家になろう様にも投稿しています ※感想をいただけると、とても嬉しいです ※著作権は放棄してません

最初から最後まで

相沢蒼依
恋愛
※メリバ作品になりますので、そういうの無理な方はリターンお願いします! ☆世界観は、どこかの異世界みたいな感じで捉えてほしいです。時間軸は現代風ですが、いろんなことが曖昧ミーな状態です。生温かい目で閲覧していただけると幸いです。 登場人物 ☆砂漠と緑地の狭間でジュース売りをしている青年、ハサン。美少年の手で搾りたてのジュースが飲めることを売りにするために、幼いころから強制的に仕事を手伝わされた経緯があり、両親を激しく憎んでいる。ぱっと見、女性にも見える自分の容姿に嫌悪感を抱いている。浅黒い肌に黒髪、紫色の瞳の17歳。 ♡生まれつきアルビノで、すべての色素が薄く、白金髪で瞳がオッドアイのマリカ、21歳。それなりに裕福な家に生まれたが、見た目のせいで婚期を逃していた。ところがそれを気にいった王族の目に留まり、8番目の妾としてマリカを迎え入れることが決まる。輿入れの日までの僅かな時間を使って、自由を謳歌している最中に、ハサンと出逢う。自分にはないハサンの持つ色に、マリカは次第に惹かれていく。

王妃の仕事なんて知りません、今から逃げます!

gacchi
恋愛
側妃を迎えるって、え?聞いてないよ? 王妃の仕事が大変でも頑張ってたのは、レオルドが好きだから。 国への責任感?そんなの無いよ。もういい。私、逃げるから! 12/16加筆修正したものをカクヨムに投稿しました。

好きでした、さようなら

豆狸
恋愛
「……すまない」 初夜の床で、彼は言いました。 「君ではない。私が欲しかった辺境伯令嬢のアンリエット殿は君ではなかったんだ」 悲しげに俯く姿を見て、私の心は二度目の死を迎えたのです。 なろう様でも公開中です。

旦那様、前世の記憶を取り戻したので離縁させて頂きます

結城芙由奈 
恋愛
【前世の記憶が戻ったので、貴方はもう用済みです】 ある日突然私は前世の記憶を取り戻し、今自分が置かれている結婚生活がとても理不尽な事に気が付いた。こんな夫ならもういらない。前世の知識を活用すれば、この世界でもきっと女1人で生きていけるはず。そして私はクズ夫に離婚届を突きつけた―。

「お前を愛するつもりはない」な仮面の騎士様と結婚しました~でも白い結婚のはずなのに溺愛してきます!~

卯月ミント
恋愛
「お前を愛するつもりはない」 絵を描くのが趣味の侯爵令嬢ソールーナは、仮面の英雄騎士リュクレスと結婚した。 だが初夜で「お前を愛するつもりはない」なんて言われてしまい……。 ソールーナだって好きでもないのにした結婚である。二人はお互いカタチだけの夫婦となろう、とその夜は取り決めたのだが。 なのに「キスしないと出られない部屋」に閉じ込められて!? 「目を閉じてくれるか?」「えっ?」「仮面とるから……」 書き溜めがある内は、1日1~話更新します それ以降の更新は、ある程度書き溜めてからの投稿となります *仮面の俺様ナルシスト騎士×絵描き熱中令嬢の溺愛ラブコメです。 *ゆるふわ異世界ファンタジー設定です。 *コメディ強めです。 *hotランキング14位行きました!お読みいただき&お気に入り登録していただきまして、本当にありがとうございます!

結婚結婚煩いので、愛人持ちの幼馴染と偽装結婚してみた

夏菜しの
恋愛
 幼馴染のルーカスの態度は、年頃になっても相変わらず気安い。  彼のその変わらぬ態度のお陰で、周りから男女の仲だと勘違いされて、公爵令嬢エーデルトラウトの相手はなかなか決まらない。  そんな現状をヤキモキしているというのに、ルーカスの方は素知らぬ顔。  彼は思いのままに平民の娘と恋人関係を持っていた。  いっそそのまま結婚してくれれば、噂は間違いだったと知れるのに、あちらもやっぱり公爵家で、平民との結婚など許さんと反対されていた。  のらりくらりと躱すがもう限界。  いよいよ親が煩くなってきたころ、ルーカスがやってきて『偽装結婚しないか?』と提案された。  彼の愛人を黙認する代わりに、贅沢と自由が得られる。  これで煩く言われないとすると、悪くない提案じゃない?  エーデルトラウトは軽い気持ちでその提案に乗った。

処理中です...