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第5章 リーラとアンデルクの王子

第11話 波乱の晩餐会 ー1ー

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 アンデルクの王子と王女の歓迎晩餐会が催された。皇宮の鳳凰の間には多くの貴族、上級官史や騎士隊長クラスも招待を受けていた。
 リーラ達若い騎士達も警備のために配置される。
 広間には優雅な音楽が流れ、給仕達が招待客に飲み物を配りながらせわしく動いている様子を見ながらリーラは初めての晩餐会警備に興奮気味だ。

「うわぁ~。華やかですねぇ」

「リーラ様は晩餐会は初めてですか?」
一緒に警備についているのはお馴染みのレンだ。

「祖国の晩餐会は遠目で見たことはあります。こんな近くで見るのは初めてです」

「帝国の晩餐会は回数が他国に比べて少ないので出席しようと全土から多くの人が訪れます。規模を大きいので警備は油断できません。頑張りましょう」

「はい!わかりました!」


 2人の騎士の前にオレンジ色の髪を結い上げ、クリーム色のドレスを着た貴婦人と黒い正装の騎士服を来た男性が立っていた。

「あらっ?リーラじゃない?ここが警備?」

「はい?キャサリン隊長?!」

よく見るとドレスアップしたキャサリンが立っていた。

「ゲッ?!オースティン隊長お疲れ様です…」
 黒い正装の騎士服に身を包んだのはオースティンだった。

「おまえ,ゲッとか言っただろ。そして、顔をしかめただろう…」

「してない、してないです…」
首を必死にリーラは振る。

「ちょっと!リーラを怖がらせないでよ!」

「チェッ!」

「じゃあ、私達も広間の警備に行くわね」
とキャサリンはオースティンの腕に手を添えて会場に入って行った。

「キャサリン隊長は美人だから、オースティン隊長なんだか嬉しいそう~」

「よくわかりませんがそうですかね…」
リーラとレンは2人を見送った。

 
 優雅な音楽ともにアンデルク王女と王子の来場が告げられた。

「まぁ、アンジェラ王女をご覧なさい。今、話題のアンデルクの新進デザイナーのローリーのドレスではなくて?!」

つややから桃色の髪を結い上げ、髪にはパールがキラキラと飾りつけられている。開いた胸元には豊満な胸は見せつけ、それを少し隠すように薄ピンクレース。腰にはアンデルク色の紅色のリボンがアクセントつけピンク色のシルク生地とレース生地を中央ウエストに切り返しをつけあえて足元のハイヒールを見せつけている。従来女性は足元を見せず隠すドレスが主流だが、レースと真珠がデコレーションされたセンスのいいハイヒールをわざと見せつけている。
 アンジェラ王女より少し高めの身長のライアン王子は王族特有の紅色の正装用の騎士服が王女との色彩バランスが取れていた。

「まぁ、さすがお二人が並ぶと美しいわね」

「アンジェラ王女様のドレスも素敵。私もセンスのいいハイヒールが欲しいわ」
夫人達はアンジェラ王女の姿を褒め称えた。

「皇帝陛下、皇太后陛下の御成。」
大きな扉が開く。クリストファーはシャーロットの手を取りゆっくりとしたら足取りで二人が玉座へ向かう。

「では姉上参りましょうか?」

「えぇ」

アンジェラとライアンは玉座を進む。
「この度は我らをお招き頂き有難うございます」
二人は礼をする。

「顔を上げてくれ。王子と王女を歓迎する。滞在期間中寛いでくれ」

「ありがとうございます」

「お久しぶりですわ。クリストファー陛下。どうかお久しぶりに私の手をお取り頂けませんでしょうか?」

「姉上…」
ライアンの不安を余所よそに積極的なアンジェラだ。

「あぁ。もちろん」

 クリストファーはアンジェラの手を取り広間の中央に進む。クリストファーが手上げ音楽が再び始まる。

      ♪~♪~
 2人が踊り始めると周りの者も踊り始めた。

「陛下、お久しぶりですわ」

「あぁ」

わたくしとの婚姻のお返事、なかなか承諾頂けないようですが…」

「………」

「私達の婚姻が決まれば両国の絆をより強固にできますわ。国の繋がりは大切だと思いますの。そうだわ。聞いてくださいませ。私、色々事業にもたずさわってますの。きっと帝国にお役に立ちますわ」

「例えば?」

「このドレスも私の私財を投入し我が国では流行させましたのよ。ドレスだけではなく靴まで手を広げましたの。おかげで服飾業界が盛り立てられ経済は活性化ですわ。それだけではありませんわ。我が国は芸術の国とも呼ばれているでしょう。服も私は芸術だと思っていますのよ。着ることで人に感動を与えられると思いますの」

ターンをしたアンジェラのドレスがひらりと広がり周りにいた女性達の羨望せんぼうの吐息が上がる。

ほらっどうかしら?とアンジェラはクリストファーを見つめる。

「王女の国と違い我が国の夏は短くこのような華やかなもよおしは少ない。着飾る機会は少なく必要性は感じないのだが」

「女心がわかっていらっしゃいませんわ。短い夏だからとびきりお洒落しゃれしたくなるのではなくて?」

「そうだろうか。理解できないな。私が求める伴侶は貴女ではなさそうだ。我が国の国庫を着飾るために使用するなど愚劣ぐれつな行為だと感じるのだが?」
冷たい眼差しでアンジェラを見る。

「なんですって!」

♪~♪
音楽が終わる。

 クリストファーはアンジェラをライアンの元へ連れ行く。 

「よい夜を過ごしてくれ」

「ありがとうございます」
ライアンは会釈する。

「そんなことで引き下がらなくてよ」
付き人から渡された扇子をぎゅっと握るアンジェラを不安気にライアンは見つめる。

 クリストファーの周りには令嬢が集まり、翠玉色の髪の令嬢の手を取り踊り始めた。

「姉上、皇帝に入らぬことを話してませんよね」

「ふん」
 給仕からグラスに入ったアルコールを受け取りごくりと飲み干す。
 踊る貴族達の中に見知った顔をアンジェラは見つけた。

「ライアン、ローズ王女に挨拶に行きたいわ」

「はい、はい」
ライアンがローズの手を取り歩き出す。

 先程まで一緒に踊っていた夫であるビルが場から離れ1人壁の花となっていたローズの傍へ行く。

「ローズ王女、お久しぶりね」

「アンジェラ王女様、お久しぶりでございます」
スカートを摘み礼をする。金色の髪を結い上げ、夫の髪の色である紺色のドレスを着たローズは以前よりも大人びた雰囲気に変わっていた。

「やめてちょうだい。かしこまらないで。顔をあげて頂ける?」

「私は王女ではございませんから。礼を尽くすのは当たり前ですわ」

「あなた、雰囲気変わった?」 

「そうでしょうか?子がいるからでしょうか?」

「子供がいるの!あなたもしかして…いえなんでもないわ」

「あら。王女様、後ろにお近づきになられたい方がお待ちのようですわ。お待たせしてはいけませんわ。では、私は夫を待っておりますので。また、皇太后様のお茶の席にてお会いできる日を楽しみにしております」

ローズが頭を下げて一歩下がると、ノーザンランド帝国の者達がライアンとアンジェラ達に話かけようと近づいて来た。


 場を離れていくローズを目で追いながらアンジェラははっとする。

 2年前を思い出したわ。
 あの噴水で男性と話をしていたのがきっと彼女の今の夫なのね。
 あなた…
 恋愛結婚なのね。
 羨ましいわ……。


 
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