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第3章 ノーザンランド一族の呪い
第6話 クリストファーの束の間団欒
しおりを挟む騎士会議を終え、クリストファーとビルは執務室へ戻り仕事を片付け始めた。
「あのダリルという男、クリスを見た瞬間表情変わったね」
ビルとクリストファーは幼き頃から共に過ごし、2人でいる時は砕けていつも話すのだ。
クリストファーは書類から目を離しビルの方を見た。
「あの時、殺気を感じたんだがビルどう思う?」
「クリスはいつだって殺気だってるから向こうもそれに反応したかもね。
君はいつも機嫌悪い顔だしなぁ。みんな目線合わさないようにしているだよ、気づいてる?」
ビルは意地悪な笑いを浮かべる。
クリストファーはため息ついたあと立ち上がり窓の外を眺める。
「そう言えばお前が預かったリヴァリオン国の使用人達はあの男のことなんと言っている」
「リヴァリオン国での騎士経験はあるらしい。一年ほど在籍したあと行方がわからなくなったらしく内密に諜報活動をしたんじゃないのかな?
あと、ダリルとリーラの親子関係も間違ってないかと。以前から噂があったらしいよ」
「何か引っかかるな。どの報告も想定だろう。ビル、引き続きダリルという男に接触しろ。周辺国の有益な情報を流してるのも裏があるんじゃないか。それにあの銀髪ガキも何か引っかかる」
「私の直感的には裏は無いように感じけどさ」
「直感ね…
あと、接触する時にお前の嫁が持ってきたリヴァリオン国のお宝を鑑定してもらえ」
「了解?歴史的に価値があると思うだけどなぁ。クリス、勝手にダリル殿に接触しないでよ。ちゃんと護衛つけてくれよ」
「あぁ。わかってる。じゃあ、早く仕事済ませて帰れよ。私はベスとエリオットもとへ行く」
「はい、はい」
ビルはゾーンに送った諜報部隊に帰国信号を送ったが誰一人も返答を返すことはなかった。
◇◇◇
「あら、お兄様、今日はお早いのね」
さらりと流れる艶のある空色の髪をサイドを可愛らしく結い上げ、可愛らしいくりっとした錫色の瞳でクリストファーを見上げた。髪の色にあった水色のドレスが大変似合っており、自然とクリストファーの頬が緩んだ。
彼女は13歳のエリザベス・ルシュルツノーザンランド。
「本当だ!お兄様!
聞いて!聞いて!今日剣の先生に褒められたんだよ。来年の騎士候補生の試験も大丈夫だよ!」
えっへんと両手を腰にやる黒髪に母譲りの色素の薄い薄水色の髪がメッシュ状に入り右側に錫色の瞳をキラキラ輝かせ話す少年は、11歳のエリオット・ルシュルツ・ノーザンランド。
「早いものね。来年は寮に入ってしまうのね。寂しいわ」
白髪が少しまじった空色の髪を一つに巻き上げ、あまり華美ではない金色のドレスを来た女性、シャーロット・ルシュルツ・ノーザンンド皇太后。
「母上、起き上がれるなんて珍しいですね」
クリストファーは母に近づき優しく手を握る。
「そうなのよ、今日は少し皆の顔を見たくてね。調子もいいのよ」
シャーロットは夫、息子の度重なる訃報で心を患いなかなか公の場に出れない状態が続いている。
「クリストファー、その瞳…体は大丈夫?」
シャーロットは心配そうに見つめ右手をクリストファーの左頬に優しく添える。
添えられた手にそっと自身の右手を置いた。
「えぇ。私は大丈夫です。母上の方こそ
身体をご自愛して頂かないと」
「えぇ、そうね」
シャーロットの瞳が涙で滲む。
「ねぇ、食事にしましょう。母上も少しお召し上がりになって」
エリザベスは懇願するように母を見つめる。
「そうね。何か喉越しの優しいものを頂くわ」
シャーロットは優しく微笑んだ。
「じゃあ、私の話聞いて!!」
エリオットは皆に語りかけた。
皇宮に久しぶりの家族の笑い声が響いたのだ。
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