上 下
35 / 240
第3章 ノーザンランド一族の呪い

第6話 クリストファーの束の間団欒

しおりを挟む

 騎士会議を終え、クリストファーとビルは執務室へ戻り仕事を片付け始めた。

「あのダリルという男、クリスを見た瞬間表情変わったね」
 ビルとクリストファーは幼き頃から共に過ごし、2人でいる時は砕けていつも話すのだ。
 クリストファーは書類から目を離しビルの方を見た。

「あの時、殺気を感じたんだがビルどう思う?」

「クリスはいつだって殺気だってるから向こうもそれに反応したかもね。
君はいつも機嫌悪い顔だしなぁ。みんな目線合わさないようにしているだよ、気づいてる?」
ビルは意地悪な笑いを浮かべる。

 クリストファーはため息ついたあと立ち上がり窓の外を眺める。
「そう言えばお前が預かったリヴァリオン国の使用人達はあの男のことなんと言っている」

「リヴァリオン国での騎士経験はあるらしい。一年ほど在籍したあと行方がわからなくなったらしく内密に諜報活動をしたんじゃないのかな?
 あと、ダリルとリーラの親子関係も間違ってないかと。以前から噂があったらしいよ」

「何か引っかかるな。どの報告も想定だろう。ビル、引き続きダリルという男に接触しろ。周辺国の有益な情報を流してるのも裏があるんじゃないか。それにあの銀髪ガキも何か引っかかる」

「私の直感的には裏は無いように感じけどさ」

「直感ね…
 あと、接触する時にお前の嫁が持ってきたリヴァリオン国のお宝を鑑定してもらえ」

「了解?歴史的に価値があると思うだけどなぁ。クリス、勝手にダリル殿に接触しないでよ。ちゃんと護衛つけてくれよ」

「あぁ。わかってる。じゃあ、早く仕事済ませて帰れよ。私はベスとエリオットもとへ行く」

「はい、はい」


 ビルはゾーンに送った諜報部隊に帰国信号を送ったが誰一人も返答を返すことはなかった。
  



◇◇◇
 


「あら、お兄様、今日はお早いのね」

 さらりと流れる艶のある空色の髪をサイドを可愛らしく結い上げ、可愛らしいくりっとした錫色の瞳でクリストファーを見上げた。髪の色にあった水色のドレスが大変似合っており、自然とクリストファーの頬が緩んだ。
彼女は13歳のエリザベス・ルシュルツノーザンランド。

「本当だ!お兄様!
聞いて!聞いて!今日剣の先生に褒められたんだよ。来年の騎士候補生の試験も大丈夫だよ!」
えっへんと両手を腰にやる黒髪に母譲りの色素の薄い薄水色の髪がメッシュ状に入り右側に錫色の瞳をキラキラ輝かせ話す少年は、11歳のエリオット・ルシュルツ・ノーザンランド。

「早いものね。来年は寮に入ってしまうのね。寂しいわ」
白髪が少しまじった空色の髪を一つに巻き上げ、あまり華美ではない金色のドレスを来た女性、シャーロット・ルシュルツ・ノーザンンド皇太后。

「母上、起き上がれるなんて珍しいですね」
クリストファーは母に近づき優しく手を握る。
「そうなのよ、今日は少し皆の顔を見たくてね。調子もいいのよ」
シャーロットは夫、息子の度重なる訃報で心を患いなかなか公の場に出れない状態が続いている。

「クリストファー、その瞳…体は大丈夫?」
シャーロットは心配そうに見つめ右手をクリストファーの左頬に優しく添える。
添えられた手にそっと自身の右手を置いた。

「えぇ。私は大丈夫です。母上の方こそ
身体をご自愛して頂かないと」

「えぇ、そうね」
シャーロットの瞳が涙で滲む。

「ねぇ、食事にしましょう。母上も少しお召し上がりになって」
エリザベスは懇願するように母を見つめる。

「そうね。何か喉越しの優しいものを頂くわ」
シャーロットは優しく微笑んだ。

「じゃあ、私の話聞いて!!」
エリオットは皆に語りかけた。

皇宮に久しぶりの家族の笑い声が響いたのだ。


しおりを挟む
感想 5

あなたにおすすめの小説

勘当されたい悪役は自由に生きる

雨野
恋愛
 難病に罹り、15歳で人生を終えた私。  だが気がつくと、生前読んだ漫画の貴族で悪役に転生していた!?タイトルは忘れてしまったし、ラストまで読むことは出来なかったけど…確かこのキャラは、家を勘当され追放されたんじゃなかったっけ?  でも…手足は自由に動くし、ご飯は美味しく食べられる。すうっと深呼吸することだって出来る!!追放ったって殺される訳でもなし、貴族じゃなくなっても問題ないよね?むしろ私、庶民の生活のほうが大歓迎!!  ただ…私が転生したこのキャラ、セレスタン・ラサーニュ。悪役令息、男だったよね?どこからどう見ても女の身体なんですが。上に無いはずのモノがあり、下にあるはずのアレが無いんですが!?どうなってんのよ!!?  1話目はシリアスな感じですが、最終的にはほのぼの目指します。  ずっと病弱だったが故に、目に映る全てのものが輝いて見えるセレスタン。自分が変われば世界も変わる、私は…自由だ!!!  主人公は最初のうちは卑屈だったりしますが、次第に前向きに成長します。それまで見守っていただければと!  愛され主人公のつもりですが、逆ハーレムはありません。逆ハー風味はある。男装主人公なので、側から見るとBLカップルです。  予告なく痛々しい、残酷な描写あり。  サブタイトルに◼️が付いている話はシリアスになりがち。  小説家になろうさんでも掲載しております。そっちのほうが先行公開中。後書きなんかで、ちょいちょいネタ挟んでます。よろしければご覧ください。  こちらでは僅かに加筆&話が増えてたりします。  本編完結。番外編を順次公開していきます。  最後までお付き合いいただき、ありがとうございました!

聖女を騙った少女は、二度目の生を自由に生きる

夕立悠理
恋愛
 ある日、聖女として異世界に召喚された美香。その国は、魔物と戦っているらしく、兵士たちを励まして欲しいと頼まれた。しかし、徐々に戦況もよくなってきたところで、魔法の力をもった本物の『聖女』様が現れてしまい、美香は、聖女を騙った罪で、処刑される。  しかし、ギロチンの刃が落とされた瞬間、時間が巻き戻り、美香が召喚された時に戻り、美香は二度目の生を得る。美香は今度は魔物の元へ行き、自由に生きることにすると、かつては敵だったはずの魔王に溺愛される。  しかし、なぜか、美香を見捨てたはずの護衛も執着してきて――。 ※小説家になろう様にも投稿しています ※感想をいただけると、とても嬉しいです ※著作権は放棄してません

王妃の仕事なんて知りません、今から逃げます!

gacchi
恋愛
側妃を迎えるって、え?聞いてないよ? 王妃の仕事が大変でも頑張ってたのは、レオルドが好きだから。 国への責任感?そんなの無いよ。もういい。私、逃げるから! 12/16加筆修正したものをカクヨムに投稿しました。

まだ20歳の未亡人なので、この後は好きに生きてもいいですか?

せいめ
恋愛
 政略結婚で愛することもなかった旦那様が魔物討伐中の事故で亡くなったのが1年前。  喪が明け、子供がいない私はこの家を出て行くことに決めました。  そんな時でした。高額報酬の良い仕事があると声を掛けて頂いたのです。  その仕事内容とは高貴な身分の方の閨指導のようでした。非常に悩みましたが、家を出るのにお金が必要な私は、その仕事を受けることに決めたのです。  閨指導って、そんなに何度も会う必要ないですよね?しかも、指導が必要には見えませんでしたが…。  でも、高額な報酬なので文句は言いませんわ。  家を出る資金を得た私は、今度こそ自由に好きなことをして生きていきたいと考えて旅立つことに決めました。  その後、新しい生活を楽しんでいる私の所に現れたのは……。    まずは亡くなったはずの旦那様との話から。      ご都合主義です。  設定は緩いです。  誤字脱字申し訳ありません。  主人公の名前を途中から間違えていました。  アメリアです。すみません。    

旦那様、前世の記憶を取り戻したので離縁させて頂きます

結城芙由奈 
恋愛
【前世の記憶が戻ったので、貴方はもう用済みです】 ある日突然私は前世の記憶を取り戻し、今自分が置かれている結婚生活がとても理不尽な事に気が付いた。こんな夫ならもういらない。前世の知識を活用すれば、この世界でもきっと女1人で生きていけるはず。そして私はクズ夫に離婚届を突きつけた―。

好きでした、さようなら

豆狸
恋愛
「……すまない」 初夜の床で、彼は言いました。 「君ではない。私が欲しかった辺境伯令嬢のアンリエット殿は君ではなかったんだ」 悲しげに俯く姿を見て、私の心は二度目の死を迎えたのです。 なろう様でも公開中です。

お飾り公爵夫人の憂鬱

初瀬 叶
恋愛
空は澄み渡った雲1つない快晴。まるで今の私の心のようだわ。空を見上げた私はそう思った。 私の名前はステラ。ステラ・オーネット。夫の名前はディーン・オーネット……いえ、夫だった?と言った方が良いのかしら?だって、その夫だった人はたった今、私の足元に埋葬されようとしているのだから。 やっと!やっと私は自由よ!叫び出したい気分をグッと堪え、私は沈痛な面持ちで、黒い棺を見つめた。 そう自由……自由になるはずだったのに…… ※ 中世ヨーロッパ風ですが、私の頭の中の架空の異世界のお話です ※相変わらずのゆるふわ設定です。細かい事は気にしないよ!という読者の方向けかもしれません ※直接的な描写はありませんが、性的な表現が出てくる可能性があります

5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?

gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。 そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて 「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」 もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね? 3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。 4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。 1章が書籍になりました。

処理中です...