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第2章 憧れの騎士学校生活

第6話 初めての剣大会

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 アレクシス皇帝の崩御の知らせから季節も変わり夏となる。
 リーラも13歳になった。

 夏になると剣大会と登山訓練が行われ、大きなイベントが終わると長い夏休みに入る。

「剣大会は一年候補生は午前。
 午後は二年候補生となる。
 用いる武具については一年は木刀、二年は真剣だ。
一年の剣大会が終われば解散。午後は自由見学だが上級生の試合も勉強のためにしっかり見学しろよ!」
担任シャルケが教壇からクラスを見る。

「先生~!
 真剣での試合は怪我したら危ないんじゃあ?」
ピーターがビクビクしながら尋ねると、
「刃引きしてるから問題ないないが防具は、着用するぞー。
 君達もだ。怪我したら登山訓練できないからな。
 さて、登山訓練についてだ。
 南にあるサウストップ山に登るのが一年の恒例だ。
 高さ4000メートル。かなりきつい登山になるぞ。整備はされているが頂上付近は鎖を伝いながら登る箇所がある。4人1組の班で登る。登らないという選択肢ない。3日間かけて相談しながら登るんだ。
 山上は空気が薄いから高山病にもなる。高山病、天候も考え、仲間とどのように下山できるかを考えろ。
 過去の先輩候補生の報告書も参考にしろ。じゃあ。4人組の班をくじで決める。年齢が上の者はリーダーだ。
 くじ引くぞー」
 リーラはワクワクしながらくじを引く。しかし、このメンバーで登山することで大変な事件が起こるとは思わなかった。




◇◇◇

      
       剣大会当日
 
 天気、晴天なり。

 訓練場には剣大会を見ようと多くの騎士が訪れていた。
 候補生達はあまりの人の多さに少し緊張していた。
 担任のシャルケがしっかり柔軟体操をするように言う。
 試合はトーナメント方式。
 訓練場に幾つかのスペースを作り試合を行う。試合相手と木刀で打ち合い、相手が剣を落としたり、身体の一部が地面についたら勝ちだ。
 剣大会なので体術を使うのは反則となる。勝つ秘訣は打撃力そのものだろう。

「みな、試合前に柔軟体操するんだ!」
担任シャルケの声に子供達は皆はーいと手を挙げる。

「楽に行こうぜ~。午後一緒に見学するだろう?」
リーラにアデルが声をかけてきた。
「見る!見る!お互い頑張ろ~」
アデルの声掛けのおかげでリラックスできた。

「ロン、前へ」
 リーラは呼ばれて試合会場に入る。
 周りに歓声が上がる。
 対戦相手の隣のクラスの子はすごく緊張し、手が震えてる。
 これは利用しない手はない。右手を上に木刀を握っているから右利きだろう。左手が全く力入っていないように見える。

「一回戦開始!」
構えの振りをして、すぐさま男の子の左に周りこみ、思い切り下から剣を打つ。

「はぁー!!」

「うわぁ~」
カラーン。
「勝者、シャルケ組ロン!」
ヨシ!とガッツポーズをした。

「「「うわぁー!」」」
同時に他の試合会場でも歓声が湧く。

 遠くの方でルマンドが試合を始めるようだ。また再び歓声が聞こえ、勝利を決めたようだ。

「勝者組の第二戦を行う。呼ばれたら前にでろ。シャルケ組ロン、シャルケ組ラディリアス。前へ」

「「はい」」

"あのヒョロ赤髪だ、負けないぞ"

あちらもこちらを睨み挑発してきた。
「銀髪め。痛めにあわせてやる!」
「果たして出来るかな!」

"ここは勝たせてもらう、あちらは思い切り剣を振ってくるだろう"

「二回戦開始!」

「はぁー!」

赤髪は剣を振る。 
素早くよける。
赤髪はまた大きく振る。
横に素早くよける。
また大きく振る。 
素早くよける。

「逃げるな!」

大きく振りかざした瞬間、赤髪の身体がよろけた、その瞬間、よろけた右側に追い討ちをかけるように思い切り打ち込む。

「たぁー!」

「あっ」
どてっ。
赤髪のひじが地面につき、そのまま倒れこんだ。

「勝者!ロン!」
「「「うわぁ~!!」」」

「やったね!!」
再びガッツポーズを決めた。


「甥っ子ちゃん、負けましたね」
ビルはラモントに声をかける。

「ダメだ、ありゃ。全く動きを見てないわ」

「銀鼠、なかなかやるな」

「おや、陛下」
ビルはクリストファーが剣大会の見物にくるとは驚く。
「あの新人気になりますか?」

「ふっ、なかなか見てて面白いからな。さぁ、我が従兄弟の姿を見ておかなくては」


「勝者第三回戦を行う、シャルケ組ロン、同じシャルケ組ロック前に出ろ。
第三回戦開始!」

 リーラの対戦相手はロックだ。
 いつも鍛錬の相手をしてもらっているが最近身体がさらに大きく力があり、1番の強敵だ。

「第三回戦開始!」
ロックが打つ!
カン!打け止める。
すかさず隙を見て打つがロックも受け止める。
お互いニヤリと笑う。
お互いの打ち合いが続く。
隙を見せたら負けになる。

「おりゃー!」

「うっ!」

 ロックが斜め角度から思い切り打ち込んだ、リーラの受け止める力に限界が近づき剣握っている手が緩ませてしまった。その隙をロックは見逃さなかった。

「とりゃぁー!」

カラン、リーラは木刀を落とす。

「今回は、俺の勝ち」

「はぁ、次は絶対に勝つからな!!」

「勝者、シャルケ組ロック!」
リーラ達は握手すると歓声が湧き起こった。


「最終決勝線に進めるのは3名。
 勝ち数が多い者が優勝だ。
 シャルケ組ルマンド。
 キース組ベンジャミン、
 シャルケ組ロックだ」

 この最終決勝には他の隊長クラスらしき騎士も多く集まっていた。
 最終的にルマンドが全勝で優勝。
 ベンジャミンが一勝で2位、ロックは一勝も出来なかったので三位となった。

「さすが黒獅子の血を引く一族ですな、
 陛下」
ハルクが声をかけた。
「あぁ、叔父上もお喜びになるだろう」

「「「おめでとうー!!」」」

「ルマンド、強かったね!
 僕も次、頑張ろう!
 優勝者は何もらえるの?」

「ん?
 金のカフスボタンだよ」

「わぁー!獅子のマークが入ってる、
 かっこいいね!」

リーラはニヤリと笑う。

これ、売ったらお金になるな、
来年絶対獲る!

カフスをジーッと見つめ決意した。

 午後から候補生2年目の試合に入る。
 こちらの観客は午前に比べて圧倒的に多い。 

カキーン!
カキーン!


「おまえ、真剣の試合の方がいいな~とか思っていただろう」
アデルがにやりと笑いながら言う。

「自分だって思ってる癖に~
 でも、試合惜しかったね。
 もう少しで決勝戦進めたのに」

「いやぁ、ベンジャミン?強いわ」

「2人は大丈夫なの?僕は真剣怖い。
 来年すぐ負けよう」
ピーターが言うと、
「確かに楽しい夏休み過ごしたいからね、一回戦負けでいくよ」
ルディがあはは笑う。 

「えー!僕は頑張るから!」

みんなが一斉にリーラを見ると、
「あのカフスがほしいだろ~。
 売って金にしてやるって顔してだぞ」

みんな、うん、うんと頷く。

「まぁ、来年優勝できたら僕の店で買い取ってあげるから」
ルディが仕方なしそうに言うと、
「本当!買取よろしくね!!」

4人は知らないようだが皇室が贈呈したものは売ってはいけないのだ。

「「「おーっ!!!」」」

 大きな歓声が上がった。
 最終戦が終わったようだ。

 優勝者はあの水をかけられていた平民出身のデニスだ。あの赤髪兄を倒したようだ。2人は握手を交わしている。
リーラ達は2人が笑い合い握手をしている姿をみてわだかまりがなくなった事になんだか嬉しくなった。

 優勝者のデニスさんが走ってきた。
「ローン!」

「この度は優勝おめでとうございます」

「ありがとう!はい、これを君に。
君にあげようと思って頑張ったんだ」
デニスは金のカフスボタンを出した。

「俺、あの時、騎士を辞めようと思ったんだ。平民と貴族の壁がすごいだろう。1年目からずっと苦しくて、頑張っていた仲間も辞めたから俺ももう限界かと思ってたんだ。でも二つも年下の君に助けられて、あの時、君の透き通った偽りのない瞳に見つめられ、逃げてはいけないと思ったんだ。
 だから、ここまで頑張ってこれたのは君のおかげでこの優勝は君に捧げたいからカフスボタン受け取ってほしい」

「えっ?!本当にいいんですか?ありがとうございます」

「俺、4番隊の入隊が決まったんだ、ロンも4番隊希望だろ?来年待ってるからな!」

「はい!」
リーラとデニスはしっかり握手した。


3人はリーラに無言の圧力を与える。
"絶対売ったらダメだからな!"

「………」

「ローン!今日は、お疲れ様」

「ルマンドー。先輩達の試合も良かったねー」

「ロン、これ君にあげるよ。さっきこのカフスに見惚れていただろう」

金のカフスボタンが差し出された。

三人は思うルマンドおまえもかと…。

「私は今まで人と関わる事の重要性をあまり感じてなかったんだ。君と出会えて私の失っていた何かを君が気づかせてくれたんだ。だから、君に誇れる友人として今日も頑張ったんだ。感謝の気持ちとして受け取ってほしいだ」

なんだか受け取らないといけないような圧力を感じる…
「あ、ありがとう…大切にするよ」

「私の家にはカフスたくさんあるからね。気にしないで。 
 じゃあ、お疲れ様ー」
ルマンドが軽やかに去って行った。

後ろから三人からの視線を感じる。
「わかってるよ、売らないよ!!!」

そして剣大会は無事終了し、リーラ達は登山訓練を迎えたのだ。

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