上 下
18 / 240
第2章 憧れの騎士学校生活

第2話 シャワー室の訪問者

しおりを挟む

「今日は大変な一日だったなぁ」

リーラは日課のシャワー室をブラシでゴシゴシする。 
「やっぱり冬は、足が冷たいよ~」

 リーラがなぜシャワー室を掃除しているがだが、ご存知の通り男のロンと偽ったまま騎士学校に入学したため、女であることがばれないように掃除中に鍵を閉めこっそりと入浴しているのだ。
 そもそも掃除をしたい候補生などいないので都合の良いのだ。

「女ってばれたらやっぱり退団だよね。はぁーー」
とシャワー室にため息が響く。

「女性騎士がいるっておじい様、言ってたじゃないか…今回の入学者に女性はいないし、確かに何人か女性騎士はいるらしいけど、女であることをキャサリン隊長に相談しようかなぁ」
と再びため息をつく。

トン、トン。扉が叩く音がした。

「ヒイッ」

ドキッ!

もしかして赤髪の報復か!

リーラはブラシを構え戦闘態勢に入る。
ガラガラと扉を開けると、リーラより髪の色が暗めの灰色髪の少年が立っていた。

「あっ…今清掃中です。使用出来ません」
「わかってる、手伝いにきた」
少年は靴を脱ぎ、ブラシを奪い床を磨き始めた。

彼の名は……。
リーラは記憶を手繰りよせる。

ルマンド・フォールド、13歳。
 帝都の北、ノース山脈を越えるとフォールド公爵領がある。そのフォールド公爵の長男だ。
 北に住む人達はリーラと同じ色素が薄く髪色が似ている。
 リーラは彼のことをいつも瞳が寂しそうで笑うことがない無表情少年でよく見ると黒い靄が出ていたので気味が悪く近づかないようにしていたのだ。

「ありがとう~。
 でも、僕好きでやってるからいいよ。   
 貴族様にやらす訳には……」

ルマンドは真面目な顔をしてリーラを見た。
「それ、貴族だからって…いけないと思う。平民だろうと貴族だろうと同じ騎士だろう?」

「うーん?」
リーラは何が言いたいのかわからないので首をかしげた。

「さっき、君すごいね。私はラファエルとラディリアスを止めれなかった。誰か大人に任せればいいと思って先生を呼びにいかせたんだ。
 実はあの時迷惑をかける平民の候補生が悪いんじゃないかと思ったんた。
 しかし、ラファエルの行いは気持ち良いものではなかったから止める人を探しに行ったんた」

「あの時、誰かを呼びに行ってくれたのは君だったのか。本当ありがとう、助かったよ。実は結構怖かったから」

ルマンドは首を振り、
「今まで貴族と平民の壁がある事に気づいていたが壊すなんて必要ないと思っていた。君、言ったよね。実戦なら死んでるって。私は自分さえよければいいと思っていたんだ。自分さえ強かったら問題ないって。しかし仲違いした同士で敵に向かっても勝てないね。こんな簡単な事、私も貴族の候補生達も気づかなかった。
 いつも父にお前には足りないものが有ると言われ…、ずっと何かわからなかった。今日、君の話を聞いてわかったんだ。自分が恥ずかしくなったよ。今日は勇気を出してくれてありがとう」
リーラはお礼を言われ恥ずかしくなった。

ルマンドはリーラをじっと見つめ、
「君は北の出身か?」

「あー、そんな所だよ」

「どこなんだ?」

"ちっ、めんどくさくて適当に言うんじゃなかった。"

「うそ、うそ、リヴァリオンって国」

「あの侵略された…すまない」

「大丈夫~、気にしないで。足冷たいだろう。さっさと終わらせよう」

「あぁ」
リーラ達は黙々と掃除を終わらせた。


「いつも、掃除してくれたんだよね。ありがとう」

「大丈夫~。風呂掃除好きなんだ。
 リヴァリオン国って温泉あるからなっ」

「もう少し話さないか?」

「えっ?いいよ」

「私はルマンド・フォールド」

「僕はロン・グリット」
よろしくとお互い冷たい手で握手した。

 食堂のおばさんが掃除のご褒美にホットミルクをくれた。
 リーラ達は食堂に座りながら互いの住んでいた場所の話をした。すると、今まで話さなかった貴族の子達も1人、2人とやってきて話に参加してきたのだ。

 たくさんの友人が出来たリーラは今日、勇気を出してしたことはいいことだったと思えたのだ。
 

しおりを挟む
感想 5

あなたにおすすめの小説

勘当されたい悪役は自由に生きる

雨野
恋愛
 難病に罹り、15歳で人生を終えた私。  だが気がつくと、生前読んだ漫画の貴族で悪役に転生していた!?タイトルは忘れてしまったし、ラストまで読むことは出来なかったけど…確かこのキャラは、家を勘当され追放されたんじゃなかったっけ?  でも…手足は自由に動くし、ご飯は美味しく食べられる。すうっと深呼吸することだって出来る!!追放ったって殺される訳でもなし、貴族じゃなくなっても問題ないよね?むしろ私、庶民の生活のほうが大歓迎!!  ただ…私が転生したこのキャラ、セレスタン・ラサーニュ。悪役令息、男だったよね?どこからどう見ても女の身体なんですが。上に無いはずのモノがあり、下にあるはずのアレが無いんですが!?どうなってんのよ!!?  1話目はシリアスな感じですが、最終的にはほのぼの目指します。  ずっと病弱だったが故に、目に映る全てのものが輝いて見えるセレスタン。自分が変われば世界も変わる、私は…自由だ!!!  主人公は最初のうちは卑屈だったりしますが、次第に前向きに成長します。それまで見守っていただければと!  愛され主人公のつもりですが、逆ハーレムはありません。逆ハー風味はある。男装主人公なので、側から見るとBLカップルです。  予告なく痛々しい、残酷な描写あり。  サブタイトルに◼️が付いている話はシリアスになりがち。  小説家になろうさんでも掲載しております。そっちのほうが先行公開中。後書きなんかで、ちょいちょいネタ挟んでます。よろしければご覧ください。  こちらでは僅かに加筆&話が増えてたりします。  本編完結。番外編を順次公開していきます。  最後までお付き合いいただき、ありがとうございました!

聖女を騙った少女は、二度目の生を自由に生きる

夕立悠理
恋愛
 ある日、聖女として異世界に召喚された美香。その国は、魔物と戦っているらしく、兵士たちを励まして欲しいと頼まれた。しかし、徐々に戦況もよくなってきたところで、魔法の力をもった本物の『聖女』様が現れてしまい、美香は、聖女を騙った罪で、処刑される。  しかし、ギロチンの刃が落とされた瞬間、時間が巻き戻り、美香が召喚された時に戻り、美香は二度目の生を得る。美香は今度は魔物の元へ行き、自由に生きることにすると、かつては敵だったはずの魔王に溺愛される。  しかし、なぜか、美香を見捨てたはずの護衛も執着してきて――。 ※小説家になろう様にも投稿しています ※感想をいただけると、とても嬉しいです ※著作権は放棄してません

王妃の仕事なんて知りません、今から逃げます!

gacchi
恋愛
側妃を迎えるって、え?聞いてないよ? 王妃の仕事が大変でも頑張ってたのは、レオルドが好きだから。 国への責任感?そんなの無いよ。もういい。私、逃げるから! 12/16加筆修正したものをカクヨムに投稿しました。

病弱な幼馴染と婚約者の目の前で私は攫われました。

恋愛
フィオナ・ローレラは、ローレラ伯爵家の長女。 キリアン・ライアット侯爵令息と婚約中。 けれど、夜会ではいつもキリアンは美しく儚げな女性をエスコートし、仲睦まじくダンスを踊っている。キリアンがエスコートしている女性の名はセレニティー・トマンティノ伯爵令嬢。 セレニティーとキリアンとフィオナは幼馴染。 キリアンはセレニティーが好きだったが、セレニティーは病弱で婚約出来ず、キリアンの両親は健康なフィオナを婚約者に選んだ。 『ごめん。セレニティーの身体が心配だから……。』 キリアンはそう言って、夜会ではいつもセレニティーをエスコートしていた。   そんなある日、フィオナはキリアンとセレニティーが濃厚な口づけを交わしているのを目撃してしまう。 ※ゆるふわ設定 ※ご都合主義 ※一話の長さがバラバラになりがち。 ※お人好しヒロインと俺様ヒーローです。 ※感想欄ネタバレ配慮ないのでお気をつけくださいませ。

好きでした、さようなら

豆狸
恋愛
「……すまない」 初夜の床で、彼は言いました。 「君ではない。私が欲しかった辺境伯令嬢のアンリエット殿は君ではなかったんだ」 悲しげに俯く姿を見て、私の心は二度目の死を迎えたのです。 なろう様でも公開中です。

旦那様、前世の記憶を取り戻したので離縁させて頂きます

結城芙由奈 
恋愛
【前世の記憶が戻ったので、貴方はもう用済みです】 ある日突然私は前世の記憶を取り戻し、今自分が置かれている結婚生活がとても理不尽な事に気が付いた。こんな夫ならもういらない。前世の知識を活用すれば、この世界でもきっと女1人で生きていけるはず。そして私はクズ夫に離婚届を突きつけた―。

元侯爵令嬢は冷遇を満喫する

cyaru
恋愛
第三王子の不貞による婚約解消で王様に拝み倒され、渋々嫁いだ侯爵令嬢のエレイン。 しかし教会で結婚式を挙げた後、夫の口から開口一番に出た言葉は 「王命だから君を娶っただけだ。愛してもらえるとは思わないでくれ」 夫となったパトリックの側には長年の恋人であるリリシア。 自分もだけど、向こうだってわたくしの事は見たくも無いはず!っと早々の別居宣言。 お互いで交わす契約書にほっとするパトリックとエレイン。ほくそ笑む愛人リリシア。 本宅からは屋根すら見えない別邸に引きこもりお1人様生活を満喫する予定が・・。 ※専門用語は出来るだけ注釈をつけますが、作者が専門用語だと思ってない専門用語がある場合があります ※作者都合のご都合主義です。 ※リアルで似たようなものが出てくると思いますが気のせいです。 ※架空のお話です。現実世界の話ではありません。 ※爵位や言葉使いなど現実世界、他の作者さんの作品とは異なります(似てるモノ、同じものもあります) ※誤字脱字結構多い作者です(ごめんなさい)コメント欄より教えて頂けると非常に助かります。

5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?

gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。 そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて 「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」 もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね? 3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。 4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。 1章が書籍になりました。

処理中です...