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終章 精霊達よさようなら
第3話 必ず君の元へ(カイル目線)
しおりを挟む『おーい、起きろよ~。リーリラが居なくなっていいのー!!』
何か生き物がツンツンと頬を突いている。
「ん、ん、もう、朝か、リーリラ、起きた?」
横にいたはずの愛しい人の姿はなく隣の温もりはすでになかった。
「えっ??」
夢の出来事だったのかとシーツを捲ると昨夜の出来事の証である彼女の破瓜の跡は残っている。
「じゃあ、浴室か?」
昨日は今まで我慢していた想いをぶち撒けてしまい、かなり身体に無理をさせているはずだ。急いで服を着替えていると小さな生き物が目の前に飛んできた。
『リーリラならいないぞ!おまえがぐーすか寝ている間に精霊の泉に行ったぞ。』
「おまえ、なんだ…、精霊か??」
始めてみる精霊に何故か親近感を感じる。
『そうだよ。ずっとおまえの傍にいて傷を治してきたのはこの俺様!ってあれ?カイルいつの間に精霊見えるようになったんだ?』
と腕を組みながら考えている精霊がリーリラが加護を与えたのか?とブツブツ話している。
「そうだ!リーリラ!」
急いで下に降りると母のルマンダが目を真っ赤に腫れさせ居間のソファーに座っていた。
嫌な予感がする。
「リーリラは!」
「姫様ならもう出られたわ。もうお戻りになられないわ」
母がラリーではなく姫様と呼び、彼女がこの家を去ったと確信した。
「リーリラはどこ!父さんは?!」
「知らないわ、父さんが姫様をどこかに送って行くみたいだったわ」
クソッ!思い切り壁を叩く。
『だから、精霊の泉だよって言ってるじゃないか!!』
私の周りを飛ぶ精霊に気づく。
精霊の泉?
姫様はどうしてそこへ行くんだ?
『早くしないとリーリラ死んじゃうぞ。止めるなら今だそ!』
「死ぬ?はっ?どう言うことなんだ…案内しろ!精霊!」
『僕の名前はカヤックだよ!』
「カヤック頼む!!」
『ようやく、俺の名前を呼んだな。俺とおまえは友達だ』
カイルの手にカヤックが乗るとカイルの身体が光り輝く。
『ついて来い!』
カヤックが飛ぶとカイルは後を追いかけた。
「カイル!どこへ行くの!!カイル……
姫様を連れ戻してくるのよ…。」
最後の母の声も聞かずに私は屋敷を飛び出して馬に乗った。
空を見ると、キラキラ輝く光達が北の方角に飛んでいる姿が見えた。
『この国に住んでいた精霊達が移動を始めたんだ。みな精霊王様のところまで行くつもりなんだろう』
「カヤックは行かなくていいのか?」
『うん、僕は精霊の泉に留まろうと思うから大丈夫だよ』
とカヤックの表情がやけに悲しそうに見えた。
馬を走らせ、追いかける最中にカヤックからリーリラが寄宿舎に入った頃からカヤックをつけていてくれたことや今から国を守る結界を破壊させ、命をかけて王族が持つ神秘な力を消滅させるために精霊の泉に行ったそうだ。
恐らく彼女は自分を犠牲にして国を守ろうとしているのだろう。
おかしいと思っていたんだ、何度も婚姻願いの為の謁見を王に申し出ても、リズ様のお産や王位継承が忙しいからと断れ続け、ようやく女王の戴冠式が済み、願いでる機会ができたと思っていたのだ。
しかし、私だけ知らされず、彼女は最後の別れのつもりで私に抱かれたのだろう。彼女の気持ちに最後まで気づいてやれず、私は自分に欲求を満たすために抱いてしまったのだ。
北側の山に近づくと、馬と人が見えた。
父とリチャード団長だった。まさか私が現れるとは思わず二人はかなり驚いた表情になった。
「父さん!どう言うことだ!!」
「カイル、どうしてここに?!」
「精霊が案内してくれたんだ。リーリラは?」
「駄目だ、カイル!姫様は国の為に決心された。邪魔立てはしてはいけない!」
「嫌だ!!父さん、リーリラを娘として可愛がってきたんだろう!情はないのか!」
ジャックを揺さぶるカイルをリチャードが止めに入る。
「行け。今なら間に合うかもしれない」
「リチャード!!」
リチャードはふっと笑うと、
「きっと精霊達も姫の存命を願っているんですよ。カイルの後ろに無数の精霊達がいます。止めたって無理でしょう」
カイルの周りにはいつの間にかたくさんの精霊達が飛んでいた。
「泉の場所を内密にするため王族だけが行くことになった。リーリラ様には国王様が付き添われている。場所はきっと精霊が案内してくれるだろう」
「行くぞ!カヤック!」
『おぉ!』
カヤックの後を追いかけ山を登る。
「ウォーーッ!!」
邪魔な生い茂る雑草を手でかけ分けながら進むと精霊達の声が聞こえる。
『仕方ない~、風よ起これ!道を作れ!』
風の精霊がピシュッと風が起こした。
『モタ、モタしてたら間に合わないよ!
固まれ!』
土の精霊が足元が緩い土壌を固めてくれた。
「待ってろー!!必ず間に合ってみせる!ウォーー!!」
私は全速力で森の中を走り泉へと向かう。
君を絶対に逝かせるものか!!!
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