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第4章 不穏な気配の訪れ
第5話 リーリラの迷い
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カイルは憔悴しているリーリラを家に連れて帰り、部屋のベッドに優しく降ろす。
「もう家に着いたから大丈夫。私は城に戻るね。今、母さんに温かい飲み物でも持ってきてもらうね」
カイルは頭を優しく撫でると小刻みに震えるリーリラは首を振り、カイルの服を掴み、
「兄さん、行かないで」
としがみつく。
「怖かったな。大丈夫、これからは必ず私が守るから」
カイルはぎゅっとリーリラを抱き締める。
そして、身体を離すとリーリラの唇にカイルの唇をあてた。ほんのり温かいカイルの唇のぬくもりにほっとするリーリラ。
二人は見つめ合い、もう一度、唇を合わせようとするとコン、コンと扉が鳴りドキリとする二人。
「カイル、部下の方が待っているわよ」
とドア越しにルマンダの声がする。
「邪魔が入ったか…。城に帰らないといけない。すぐ戻ってくるからいい子で待ってて」
顔を近づけて宥めるように言うとリーリラは仕方なしに頷く。
「早く帰って来てね…」
「あぁ。精霊の剣様、リーリラをよろしくお願いします」
と剣をベッドに置くと、もう一度リーリラの唇を啄むと名残り惜しむように部屋を後にする。
再びドアがノックされ、入るわよとルマンダが入って来た。
そして、リーリラを抱き締めると、
「心配したんだから…。あなたが馬を使うて聞いて従者がお父さんに報告してくれたのよ。急いで探さないといけないと騎士団の対応が早かったのよ」
「そうだったの?」
「そうよ、あなたは精霊だけじゃなくみんなにも見守ってもらってるんだから。もう、泥だらけじゃない。血までつけて…。怖かったわね」
「うん、お母さん、怖かった」
「さぁ、綺麗にしましょう」
と二人は清めるために浴室へと向かった。
その後、疲れた表情のルマンダに心配かけてはいけないと思い一人で休めると声をかけ、リーリラはベッドに入りながらカイルの帰りを待っていた。
男達に攫われた恐怖がリーリラを襲い、再び涙が溢れだす。
強がっていたが見知らぬ男は怖かった。鋭い目、浅黒の肌。この国のものとは違う別の生き物に思えた。
そして、国を簡単に裏切った者達。
ーーこれからこの国は敵に
襲われていくのだろうか…
あの騎士達のように仲間を
裏切る者が現れるんだろうが…
私には殺せないわ…
敵も味方も…。
私には……。
無理だわ。
精霊にだって人を
殺させたくない。
人々が血を流す光景が目に浮かび身震いするリーリラ。
ーーもし、私を守るためにカイルが
敵に巻き込まれてしまったら……
彼はきっと自分自身を盾にして
守るに違いない。
精霊達もきっと戦うだろう…。
しかし、精霊達にそんなことを
させたくはない。
やはり結界を破壊して精霊達を
自由にした方が
いいのではないだろうか…
私はどうすれば良いのだろうか?
私が出来ることはなんだろう…。
リーリラが必死に考えているとエクストリアが語りかける。
『昔、我も助けたい同胞がいた。何か出来ることはないだろうかとどうすれば良いか必死に考えた。しかし、助けることは出来なかった。運命だと諦めた。ラクラインも同じように思ったが、何を思ったのか、突然、自分の命を使い、力を後世に残し、この世を去った。我は一人になってしまった。ずっと長い間一人で過ごし、やはり同胞はどこかで生きているような気がしてきた。もし、お前が結界を破壊するなら我の力もすべておまえに与え手伝おう。終わったら精霊の泉に我を投げいれてくれないか?いつか同胞が泉で還ってくるかもしれないから待ちたいんだ』
「私が出来ることは……、結界を………」
「もう家に着いたから大丈夫。私は城に戻るね。今、母さんに温かい飲み物でも持ってきてもらうね」
カイルは頭を優しく撫でると小刻みに震えるリーリラは首を振り、カイルの服を掴み、
「兄さん、行かないで」
としがみつく。
「怖かったな。大丈夫、これからは必ず私が守るから」
カイルはぎゅっとリーリラを抱き締める。
そして、身体を離すとリーリラの唇にカイルの唇をあてた。ほんのり温かいカイルの唇のぬくもりにほっとするリーリラ。
二人は見つめ合い、もう一度、唇を合わせようとするとコン、コンと扉が鳴りドキリとする二人。
「カイル、部下の方が待っているわよ」
とドア越しにルマンダの声がする。
「邪魔が入ったか…。城に帰らないといけない。すぐ戻ってくるからいい子で待ってて」
顔を近づけて宥めるように言うとリーリラは仕方なしに頷く。
「早く帰って来てね…」
「あぁ。精霊の剣様、リーリラをよろしくお願いします」
と剣をベッドに置くと、もう一度リーリラの唇を啄むと名残り惜しむように部屋を後にする。
再びドアがノックされ、入るわよとルマンダが入って来た。
そして、リーリラを抱き締めると、
「心配したんだから…。あなたが馬を使うて聞いて従者がお父さんに報告してくれたのよ。急いで探さないといけないと騎士団の対応が早かったのよ」
「そうだったの?」
「そうよ、あなたは精霊だけじゃなくみんなにも見守ってもらってるんだから。もう、泥だらけじゃない。血までつけて…。怖かったわね」
「うん、お母さん、怖かった」
「さぁ、綺麗にしましょう」
と二人は清めるために浴室へと向かった。
その後、疲れた表情のルマンダに心配かけてはいけないと思い一人で休めると声をかけ、リーリラはベッドに入りながらカイルの帰りを待っていた。
男達に攫われた恐怖がリーリラを襲い、再び涙が溢れだす。
強がっていたが見知らぬ男は怖かった。鋭い目、浅黒の肌。この国のものとは違う別の生き物に思えた。
そして、国を簡単に裏切った者達。
ーーこれからこの国は敵に
襲われていくのだろうか…
あの騎士達のように仲間を
裏切る者が現れるんだろうが…
私には殺せないわ…
敵も味方も…。
私には……。
無理だわ。
精霊にだって人を
殺させたくない。
人々が血を流す光景が目に浮かび身震いするリーリラ。
ーーもし、私を守るためにカイルが
敵に巻き込まれてしまったら……
彼はきっと自分自身を盾にして
守るに違いない。
精霊達もきっと戦うだろう…。
しかし、精霊達にそんなことを
させたくはない。
やはり結界を破壊して精霊達を
自由にした方が
いいのではないだろうか…
私はどうすれば良いのだろうか?
私が出来ることはなんだろう…。
リーリラが必死に考えているとエクストリアが語りかける。
『昔、我も助けたい同胞がいた。何か出来ることはないだろうかとどうすれば良いか必死に考えた。しかし、助けることは出来なかった。運命だと諦めた。ラクラインも同じように思ったが、何を思ったのか、突然、自分の命を使い、力を後世に残し、この世を去った。我は一人になってしまった。ずっと長い間一人で過ごし、やはり同胞はどこかで生きているような気がしてきた。もし、お前が結界を破壊するなら我の力もすべておまえに与え手伝おう。終わったら精霊の泉に我を投げいれてくれないか?いつか同胞が泉で還ってくるかもしれないから待ちたいんだ』
「私が出来ることは……、結界を………」
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