上 下
34 / 52
第4章 不穏な気配の訪れ

第4話 囚われの身の少女達ー2ー

しおりを挟む
 再び山を登り始めると後ろから気配を感じる。
シューン
光が向かって来た。
精霊達が助けに来てくれたようだ。

『お待たせ、みんなを連れて来たよ』

リーリラは周りに精霊達の気配を感じる。

 リーリラはサーラに合図を送る。サーラも精霊達の気配に気付いるようだ。二人は手を繋ぎ逃げるタイミングを計る。

『リーリラ、待たせたな。カイルもいるぞ』
遠くからエクストリアの念話も届きほっとするリーリラ。

光の精霊のカヤックがリーリラの肩にのる。

「カヤック、逃げる為に男達の目を眩ませて」

『うん、わかった』

『えい!!』
空に閃光の光が飛び散る。

「うわぁッ!!」
あまりの眩しい光に俺達が目を押さ覆う。

「今よ!」
リーリラとサーラは咄嗟に動く。

「待て!!お前ら」
 男の一人が懐からナイフを出しサーラめがけ投げようとした。リーリラは気配に気付き、土の精霊に壁を作るように命じる。
「土よ盛り上がれ」
土が盛り上がり二人を守る。

カキーン
ナイフも騎士が矢で落としてくれた。

「土壁ありがと」

「いいから、サーラ!走って!」
サーラの背中を押して二人は走ろうとする。

 しかし、リーリラの腕をぐいっとあの悪態のついた裏切り者の騎士が掴み引き寄せた。
「こうなったらおまえだけは連れて行く!」

「ラリー!!」

「サーラ、私は大丈夫だから助けを呼んで。走って!」

「わかったわ、待ってて」
サーラは騎士達に手を振りながら
「私達はここよー!助けてー!」
と騎士達の方へ走っていく。

「さぁ、行くぞ!!」

「離せ!!」
引き摺られるように裏切り者の騎士に手を取らる。周りを見ると助けに来た王都の騎士達も追いつき、敵と戦闘になっていた。

「死ねー!!」
敵が騎士に向かって剣を向けている。
カキン
カキン

「敵を打て!」
矢が男の胸に当たる。
ヒュン
グサッ
「うっ…」
口から血を吐き出し、倒れていく。

「ギャァー!!」
「アーッッ!!」
人々の叫びが聞こえている。

リーリラは真横で繰り広げられている戦いが目に入り恐怖で混乱していく。

「さっさと歩け!殺すぞ!」
騎士がリーリラを掴む手が更にキツくなる。
「痛い!」

シュッパッ!
と勢いがある風が裏切り者の騎士の頬を掠め、頬を切っていく。
精霊がリーリラを助けようと裏切り者の騎士を攻撃している。
シュッパッ!
シュッパッ!
「クソッ、なんだこの風!」

裏切り者の騎士の目の前でカヤックが光の閃光を出す
「うわぁ!」
騎士は目を覆い、リーリラの腕を掴んでいた手が離れる。

ーー逃げなくちゃ
と震え足を叱咤し走ろうとするが足が絡れ倒れこむ。
「このガキ!精霊を使ったなぁー!!」
激昂した裏切り者の騎士は剣を抜きリーリラを斬りつけようとする。あまりの恐怖に目をつむるリーリラ。

カキン!!
斬りつけられた感触がなく目を開けるとカイルが騎士の剣を受け止めていた。

「兄さん…」
「遅くなった…、少し離れていなさい」

リーリラはうんと頷くと震えながら動き出す。
ふと見るとカイルの手にはエクストリアがあった。

『カイルのお手並みを拝見だな…』
エクストリアもこの状況を楽しんでいるようだ。

激昂した裏切り者の騎士が叫ぶ。
「また、おまえかぁ!!」
剣を振り上げカイルに向かって来た。
カキン!!
「敵側につくとは愚かな!!」
「うるさい!!!おまえばかり!おまえばかり!!!」
カン!
カン!
グサッ

「我が姫様に危害を与えようとした罰だ」

「うっ……」
カイルは裏切り者の騎士を刺し殺す。

「ひぃっ!」

 カイルが裏切り者の騎士を刺す瞬間、叫びそうになった口をリーリラは両手で押さえた。周りに目をやると王都の騎士達が敵からの攻撃で怪我をしていたり、敵が無残に斬り殺され血の海になっている光景にリーリラは呆然とする。

「あっ、あっ……」

ーーこんなに人はいとも簡単に死ぬの…

「リーリラ」
名を呼ばれ我に返ったリーリラをカイルが駆け寄り抱き締める。

「兄さん……。こ、怖かった…」
と声を噛み殺してうっ、うっと泣き出す。

「あ、あいつは…」

「大丈夫、俺が倒したから。安心して」

「う、ん……」

「ラリーはいたか!」
ジャックも二人に駆け寄り、リーリラの安全を確認した後騎士達に命ずる。

「息のある敵も亡骸も全て城に運ベ!」

「はっ!!」


 息を切らしながら山をあがってきたマルクスはサーラを見つけると
「サーラ!!!」
と叫び抱き締めた。
「マルクス、怖かった~。助けにきてくれるって信じてた~」
 
「君はどれほど私を心配させるんだ…」

「ごめんなさい、ごめんなさい」

「良かった、無事で、本当に無事で良かった」
マルクスは泣きじゃくるサーラをぎゅっと抱き締めた。


「さぁ、家に帰ろう」

「うん」

カイルは震えるリーリラを抱きかかえると山を下り始めた。


しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結】【R18】男色疑惑のある公爵様の契約妻となりましたが、気がついたら愛されているんですけれど!?

夏琳トウ(明石唯加)
恋愛
「俺と結婚してくれたら、衣食住完全補償。なんだったら、キミの実家に支援させてもらうよ」 「え、じゃあ結婚します!」 メラーズ王国に住まう子爵令嬢マーガレットは悩んでいた。 というのも、元々借金まみれだった家の財政状況がさらに悪化し、ついには没落か夜逃げかという二択を迫られていたのだ。 そんな中、父に「頼むからいい男を捕まえてこい!」と送り出された舞踏会にて、マーガレットは王国の二大公爵家の一つオルブルヒ家の当主クローヴィスと出逢う。 彼はマーガレットの話を聞くと、何を思ったのか「俺と契約結婚しない?」と言ってくる。 しかし、マーガレットはためらう。何故ならば……彼には男色家だといううわさがあったのだ。つまり、形だけの結婚になるのは目に見えている。 そう思ったものの、彼が提示してきた条件にマーガレットは飛びついた。 そして、マーガレットはクローヴィスの(契約)妻となった。 男色家疑惑のある自由気ままな公爵様×貧乏性で現金な子爵令嬢。 二人がなんやかんやありながらも両想いになる勘違い話。 ◆hotランキング 10位ありがとうございます……! ―― ◆掲載先→アルファポリス、ムーンライトノベルズ、エブリスタ

《R18短編》優しい婚約者の素顔

あみにあ
恋愛
私の婚約者は、ずっと昔からお兄様と慕っていた彼。 優しくて、面白くて、頼りになって、甘えさせてくれるお兄様が好き。 それに文武両道、品行方正、眉目秀麗、令嬢たちのあこがれの存在。 そんなお兄様と婚約出来て、不平不満なんてあるはずない。 そうわかっているはずなのに、結婚が近づくにつれて何だか胸がモヤモヤするの。 そんな暗い気持ちの正体を教えてくれたのは―――――。 ※6000字程度で、サクサクと読める短編小説です。 ※無理矢理な描写がございます、苦手な方はご注意下さい。

公爵様、契約通り、跡継ぎを身籠りました!-もう契約は満了ですわよ・・・ね?ちょっと待って、どうして契約が終わらないんでしょうかぁぁ?!-

猫まんじゅう
恋愛
 そう、没落寸前の実家を助けて頂く代わりに、跡継ぎを産む事を条件にした契約結婚だったのです。  無事跡継ぎを妊娠したフィリス。夫であるバルモント公爵との契約達成は出産までの約9か月となった。  筈だったのです······が? ◆◇◆  「この結婚は契約結婚だ。貴女の実家の財の工面はする。代わりに、貴女には私の跡継ぎを産んでもらおう」  拝啓、公爵様。財政に悩んでいた私の家を助ける代わりに、跡継ぎを産むという一時的な契約結婚でございましたよね・・・?ええ、跡継ぎは産みました。なぜ、まだ契約が完了しないんでしょうか?  「ちょ、ちょ、ちょっと待ってくださいませええ!この契約!あと・・・、一体あと、何人子供を産めば契約が満了になるのですッ!!?」  溺愛と、悪阻(ツワリ)ルートは二人がお互いに想いを通じ合わせても終わらない? ◆◇◆ 安心保障のR15設定。 描写の直接的な表現はありませんが、”匂わせ”も気になる吐き悪阻体質の方はご注意ください。 ゆるゆる設定のコメディ要素あり。 つわりに付随する嘔吐表現などが多く含まれます。 ※妊娠に関する内容を含みます。 【2023/07/15/9:00〜07/17/15:00, HOTランキング1位ありがとうございます!】 こちらは小説家になろうでも完結掲載しております(詳細はあとがきにて、)

婚約者が私のことをゴリラと言っていたので、距離を置くことにしました

相馬香子
恋愛
ある日、クローネは婚約者であるレアルと彼の友人たちの会話を盗み聞きしてしまう。 ――男らしい? ゴリラ? クローネに対するレアルの言葉にショックを受けた彼女は、レアルに絶交を突きつけるのだった。 デリカシーゼロ男と男装女子の織り成す、勘違い系ラブコメディです。

王女、騎士と結婚させられイかされまくる

ぺこ
恋愛
髪の色と出自から差別されてきた騎士さまにベタ惚れされて愛されまくる王女のお話。 性描写激しめですが、甘々の溺愛です。 ※原文(♡乱舞淫語まみれバージョン)はpixivの方で見られます。

【R18】助けてもらった虎獣人にマーキングされちゃう話

象の居る
恋愛
異世界転移したとたん、魔獣に狙われたユキを助けてくれたムキムキ虎獣人のアラン。襲われた恐怖でアランに縋り、家においてもらったあともズルズル関係している。このまま一緒にいたいけどアランはどう思ってる? セフレなのか悩みつつも関係が壊れるのが怖くて聞けない。飽きられたときのために一人暮らしの住宅事情を調べてたらアランの様子がおかしくなって……。 ベッドの上ではちょっと意地悪なのに肝心なとこはヘタレな虎獣人と、普段はハッキリ言うのに怖がりな人間がお互いの気持ちを確かめ合って結ばれる話です。 ムーンライトノベルズさんにも掲載しています。

あなたの秘密を知ってしまったから私は消えます

おぜいくと
恋愛
「あなたの秘密を知ってしまったから私は消えます。さようなら」 そう書き残してエアリーはいなくなった…… 緑豊かな高原地帯にあるデニスミール王国の王子ロイスは、来月にエアリーと結婚式を挙げる予定だった。エアリーは隣国アーランドの王女で、元々は政略結婚が目的で引き合わされたのだが、誰にでも平等に接するエアリーの姿勢や穢れを知らない澄んだ目に俺は惹かれた。俺はエアリーに素直な気持ちを伝え、王家に代々伝わる指輪を渡した。エアリーはとても喜んでくれた。俺は早めにエアリーを呼び寄せた。デニスミールでの暮らしに慣れてほしかったからだ。初めは人見知りを発揮していたエアリーだったが、次第に打ち解けていった。 そう思っていたのに。 エアリーは突然姿を消した。俺が渡した指輪を置いて…… ※ストーリーは、ロイスとエアリーそれぞれの視点で交互に進みます。

記憶を失くした悪役令嬢~私に婚約者なんておりましたでしょうか~

Blue
恋愛
マッツォレーラ侯爵の娘、エレオノーラ・マッツォレーラは、第一王子の婚約者。しかし、その婚約者を奪った男爵令嬢を助けようとして今正に、階段から二人まとめて落ちようとしていた。 走馬灯のように、第一王子との思い出を思い出す彼女は、強い衝撃と共に意識を失ったのだった。

処理中です...