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第2章 離れ離れの2人の心

第2話 リンダの命日

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 リンダが亡くなりあっという間に11年という歳月が経った。
 あの悲しき事件も11年経つと人々の記憶から薄れて行く。

 リーリラはひっそり誰いない静かな早朝、走るついでに家に植えてあった花を切りリンダのお墓までやって来た。王室の墓は城から離れた湖に面した場所にある。

「姉様、私、16歳になったよ。時が過ぎるのはあっという間だね。ダリルはまだ他国に行って戻ってないよ」

 話しかけながらリンダの名前の書いた墓石に花を供える。

「リンダ姉様、私ね、男になれって言われて、今度は結婚しろって…。本当呆れるよね。私はこれからどうなるのかな?私は次はどこに行くの?もう、わからなくなってきたよ。」

 精霊達がリーリラの感情を察して集まって来た。
「私に近づかないで。あなた達の場所に戻りなさい!!」
と強い口調で精霊達に怒ると精霊達はしょんぼりと去って行く。

 あの滝の事件以来、いつ精霊の暴走が起こるかわからないので極力精霊達を近づけないようにさせている。
 しかし、リーリラの感情を察し精霊達が集まると追い返すのだ。

「励まそうとしてくれたんでしょ。わかってるよ、ありがとう。精霊達」
と呟くとリーリラは家までトボトボ戻って行く。

 

カン、
カン、
カン。
ジャックとリーリラは向き合い剣を打ち合う。
「いいぞ!そのまま右に力を込め打て!」

「エクストリア、右を打つよ!」

『よし、力を流せ!』
剣に聖なる力を流し込み白銀色に包まれた剣を振り上げる。

「はぁー!!」 

カキン。
「うっ!!よし、受け止めたぞ。相変わらすごい力だ。鍛錬はこれぐらいにして朝ご飯にしようか」

「父さん、いつも朝鍛ありがとう。エクストリアもありがとう」

『あぁ』

「今日もよく頑張った。この聖なる力を受け止めるのは私にとっても良い鍛錬になるからなぁ。こちらこそありがとう」

 いつ来るかわからない敵襲に備えて私は身を隠すことなり騎士で一番信頼のおける騎士の家に預けられた。このエステール家に預けられ10年を迎える。
 
 カイルはリーリラ達が鍛錬中に朝食を取り、仕事に向かったようだ。顔を今日も合わさなくて良かったとほっとする。
 食卓に並べられた温かな食事を取り、時間を見るともう家を出る時間になる。

「もう時間だ!お母さん、ご馳走様」

「もう出発する時間?お弁当はこれね。帰りに街に寄って薬味を買ってきて欲しいのよ。」

「いいよ。行ってきます!」
腰に帯剣ベルトを付けてエクストリアと一緒に仕事場に向かう。精霊の暴走事件からもずっと傍で助けてくれている剣だ。

 私は街の学校を卒業した後、自分の力を有意義に使う為に神殿で働いている。
 
 城内近くに位置する神殿は清潔感漂う白亜の建物だ。神殿の役割は主に祈祷、病など身体の不調を訴える人の治療だ。治療を行えるのは主に王族の血が濃い力のある人達が集まっている。私にとっては言わば親戚の集まりが職場のようなものだ。
 私の仕事は神殿横の施設で治療や薬草を調合だ。


「おはようございます」

「おはよう~」

 サーラの声が奥の方から聞こえる。部屋の中に入ると薬特有の匂いが充満している。
 栗色の髪を一つに三つ編みに結び栗色の大きな瞳に丸い眼鏡をかけた女性が手招きする。サーラは18歳となり犬猿の仲だった神官のマルクスと婚儀を控え、今後神殿を支えていく未来の神殿長夫人なのだ。

「ちょうどいい時に来たわ!ここに器に入った粉を入れてくれる?」
「はい、はい」 

ふん、ふんと歌いながら薬を調合する彼女は
薬草に長けていて大変勉強家だ。
 私も彼女から色々薬草を学んでいて、所謂いわゆる、助手のような立場だ。

 エクストリアを置き、白い神官服に着替えを済ませると仕事の薬の調合を始める。
 ちょうど窓から城から出て行く馬に乗った騎士達が見える。
 窓からカイルに付けている光の精霊カヤックがふらりと入って来た。どうやら近くに来たので挨拶に来たようだ。 

「いつも、兄さんも守ってくれてありがとうね」
と精霊に言うと嬉しそうに頬に身体を擦りつけて来た。

 窓まで行くとカイルの姿を探す。先頭を走っているのはカイルのようだ。
 上衣が紺色で下衣が白色の騎士服が良く似合っている。金色の髪を風になびかせ、日頃の鍛錬を思わせる逞しい身体、すらりとした高い身長。20歳になったカイルは顔も整っているので街の女性から人気があり、街へ行くと女性達の会話に常にカイルの話題が上がっている。

 久しぶりにカイルの姿をじっと見つめていると背後に気配を感じ、振り返るとサーラが立っていた。

「なんですか?ビックリしたァー」

「いや、愛だなって思って。兄さん、カッコいいとか…ブフッ」

「思ってないから…」

「素直じゃないなぁ~。心配で光の精霊をカイルにつけているくせに~」

えっ、バレてたのと驚きの表情をすると、
「あのね、一応光の加護持ちですからね、私。まぁ一番悪いのはカイルよ。あいつが素直じゃないからこうなるのよ。まったく……」
とぶつぶつ言いながら持ち場に戻ったサーラ。

「カヤックも私の元に戻さないとね。カイル兄さんには私の助けなんて嫌なだけよね」
とリーリラは一人呟いた。



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