17 / 52
第2章 離れ離れの2人の心
第2話 リンダの命日
しおりを挟む
リンダが亡くなりあっという間に11年という歳月が経った。
あの悲しき事件も11年経つと人々の記憶から薄れて行く。
リーリラはひっそり誰いない静かな早朝、走るついでに家に植えてあった花を切りリンダのお墓までやって来た。王室の墓は城から離れた湖に面した場所にある。
「姉様、私、16歳になったよ。時が過ぎるのはあっという間だね。ダリルはまだ他国に行って戻ってないよ」
話しかけながらリンダの名前の書いた墓石に花を供える。
「リンダ姉様、私ね、男になれって言われて、今度は結婚しろって…。本当呆れるよね。私はこれからどうなるのかな?私は次はどこに行くの?もう、わからなくなってきたよ。」
精霊達がリーリラの感情を察して集まって来た。
「私に近づかないで。あなた達の場所に戻りなさい!!」
と強い口調で精霊達に怒ると精霊達はしょんぼりと去って行く。
あの滝の事件以来、いつ精霊の暴走が起こるかわからないので極力精霊達を近づけないようにさせている。
しかし、リーリラの感情を察し精霊達が集まると追い返すのだ。
「励まそうとしてくれたんでしょ。わかってるよ、ありがとう。精霊達」
と呟くとリーリラは家までトボトボ戻って行く。
カン、
カン、
カン。
ジャックとリーリラは向き合い剣を打ち合う。
「いいぞ!そのまま右に力を込め打て!」
「エクストリア、右を打つよ!」
『よし、力を流せ!』
剣に聖なる力を流し込み白銀色に包まれた剣を振り上げる。
「はぁー!!」
カキン。
「うっ!!よし、受け止めたぞ。相変わらすごい力だ。鍛錬はこれぐらいにして朝ご飯にしようか」
「父さん、いつも朝鍛ありがとう。エクストリアもありがとう」
『あぁ』
「今日もよく頑張った。この聖なる力を受け止めるのは私にとっても良い鍛錬になるからなぁ。こちらこそありがとう」
いつ来るかわからない敵襲に備えて私は身を隠すことなり騎士で一番信頼のおける騎士の家に預けられた。このエステール家に預けられ10年を迎える。
カイルはリーリラ達が鍛錬中に朝食を取り、仕事に向かったようだ。顔を今日も合わさなくて良かったとほっとする。
食卓に並べられた温かな食事を取り、時間を見るともう家を出る時間になる。
「もう時間だ!お母さん、ご馳走様」
「もう出発する時間?お弁当はこれね。帰りに街に寄って薬味を買ってきて欲しいのよ。」
「いいよ。行ってきます!」
腰に帯剣ベルトを付けてエクストリアと一緒に仕事場に向かう。精霊の暴走事件からもずっと傍で助けてくれている剣だ。
私は街の学校を卒業した後、自分の力を有意義に使う為に神殿で働いている。
城内近くに位置する神殿は清潔感漂う白亜の建物だ。神殿の役割は主に祈祷、病など身体の不調を訴える人の治療だ。治療を行えるのは主に王族の血が濃い力のある人達が集まっている。私にとっては言わば親戚の集まりが職場のようなものだ。
私の仕事は神殿横の施設で治療や薬草を調合だ。
「おはようございます」
「おはよう~」
サーラの声が奥の方から聞こえる。部屋の中に入ると薬特有の匂いが充満している。
栗色の髪を一つに三つ編みに結び栗色の大きな瞳に丸い眼鏡をかけた女性が手招きする。サーラは18歳となり犬猿の仲だった神官のマルクスと婚儀を控え、今後神殿を支えていく未来の神殿長夫人なのだ。
「ちょうどいい時に来たわ!ここに器に入った粉を入れてくれる?」
「はい、はい」
ふん、ふんと歌いながら薬を調合する彼女は
薬草に長けていて大変勉強家だ。
私も彼女から色々薬草を学んでいて、所謂、助手のような立場だ。
エクストリアを置き、白い神官服に着替えを済ませると仕事の薬の調合を始める。
ちょうど窓から城から出て行く馬に乗った騎士達が見える。
窓からカイルに付けている光の精霊カヤックがふらりと入って来た。どうやら近くに来たので挨拶に来たようだ。
「いつも、兄さんも守ってくれてありがとうね」
と精霊に言うと嬉しそうに頬に身体を擦りつけて来た。
窓まで行くとカイルの姿を探す。先頭を走っているのはカイルのようだ。
上衣が紺色で下衣が白色の騎士服が良く似合っている。金色の髪を風になびかせ、日頃の鍛錬を思わせる逞しい身体、すらりとした高い身長。20歳になったカイルは顔も整っているので街の女性から人気があり、街へ行くと女性達の会話に常にカイルの話題が上がっている。
久しぶりにカイルの姿をじっと見つめていると背後に気配を感じ、振り返るとサーラが立っていた。
「なんですか?ビックリしたァー」
「いや、愛だなって思って。カイル兄さん、カッコいいとか…ブフッ」
「思ってないから…」
「素直じゃないなぁ~。心配で光の精霊をカイルにつけているくせに~」
えっ、バレてたのと驚きの表情をすると、
「あのね、一応光の加護持ちですからね、私。まぁ一番悪いのはカイルよ。あいつが素直じゃないからこうなるのよ。まったく……」
とぶつぶつ言いながら持ち場に戻ったサーラ。
「カヤックも私の元に戻さないとね。カイル兄さんには私の助けなんて嫌なだけよね」
とリーリラは一人呟いた。
あの悲しき事件も11年経つと人々の記憶から薄れて行く。
リーリラはひっそり誰いない静かな早朝、走るついでに家に植えてあった花を切りリンダのお墓までやって来た。王室の墓は城から離れた湖に面した場所にある。
「姉様、私、16歳になったよ。時が過ぎるのはあっという間だね。ダリルはまだ他国に行って戻ってないよ」
話しかけながらリンダの名前の書いた墓石に花を供える。
「リンダ姉様、私ね、男になれって言われて、今度は結婚しろって…。本当呆れるよね。私はこれからどうなるのかな?私は次はどこに行くの?もう、わからなくなってきたよ。」
精霊達がリーリラの感情を察して集まって来た。
「私に近づかないで。あなた達の場所に戻りなさい!!」
と強い口調で精霊達に怒ると精霊達はしょんぼりと去って行く。
あの滝の事件以来、いつ精霊の暴走が起こるかわからないので極力精霊達を近づけないようにさせている。
しかし、リーリラの感情を察し精霊達が集まると追い返すのだ。
「励まそうとしてくれたんでしょ。わかってるよ、ありがとう。精霊達」
と呟くとリーリラは家までトボトボ戻って行く。
カン、
カン、
カン。
ジャックとリーリラは向き合い剣を打ち合う。
「いいぞ!そのまま右に力を込め打て!」
「エクストリア、右を打つよ!」
『よし、力を流せ!』
剣に聖なる力を流し込み白銀色に包まれた剣を振り上げる。
「はぁー!!」
カキン。
「うっ!!よし、受け止めたぞ。相変わらすごい力だ。鍛錬はこれぐらいにして朝ご飯にしようか」
「父さん、いつも朝鍛ありがとう。エクストリアもありがとう」
『あぁ』
「今日もよく頑張った。この聖なる力を受け止めるのは私にとっても良い鍛錬になるからなぁ。こちらこそありがとう」
いつ来るかわからない敵襲に備えて私は身を隠すことなり騎士で一番信頼のおける騎士の家に預けられた。このエステール家に預けられ10年を迎える。
カイルはリーリラ達が鍛錬中に朝食を取り、仕事に向かったようだ。顔を今日も合わさなくて良かったとほっとする。
食卓に並べられた温かな食事を取り、時間を見るともう家を出る時間になる。
「もう時間だ!お母さん、ご馳走様」
「もう出発する時間?お弁当はこれね。帰りに街に寄って薬味を買ってきて欲しいのよ。」
「いいよ。行ってきます!」
腰に帯剣ベルトを付けてエクストリアと一緒に仕事場に向かう。精霊の暴走事件からもずっと傍で助けてくれている剣だ。
私は街の学校を卒業した後、自分の力を有意義に使う為に神殿で働いている。
城内近くに位置する神殿は清潔感漂う白亜の建物だ。神殿の役割は主に祈祷、病など身体の不調を訴える人の治療だ。治療を行えるのは主に王族の血が濃い力のある人達が集まっている。私にとっては言わば親戚の集まりが職場のようなものだ。
私の仕事は神殿横の施設で治療や薬草を調合だ。
「おはようございます」
「おはよう~」
サーラの声が奥の方から聞こえる。部屋の中に入ると薬特有の匂いが充満している。
栗色の髪を一つに三つ編みに結び栗色の大きな瞳に丸い眼鏡をかけた女性が手招きする。サーラは18歳となり犬猿の仲だった神官のマルクスと婚儀を控え、今後神殿を支えていく未来の神殿長夫人なのだ。
「ちょうどいい時に来たわ!ここに器に入った粉を入れてくれる?」
「はい、はい」
ふん、ふんと歌いながら薬を調合する彼女は
薬草に長けていて大変勉強家だ。
私も彼女から色々薬草を学んでいて、所謂、助手のような立場だ。
エクストリアを置き、白い神官服に着替えを済ませると仕事の薬の調合を始める。
ちょうど窓から城から出て行く馬に乗った騎士達が見える。
窓からカイルに付けている光の精霊カヤックがふらりと入って来た。どうやら近くに来たので挨拶に来たようだ。
「いつも、兄さんも守ってくれてありがとうね」
と精霊に言うと嬉しそうに頬に身体を擦りつけて来た。
窓まで行くとカイルの姿を探す。先頭を走っているのはカイルのようだ。
上衣が紺色で下衣が白色の騎士服が良く似合っている。金色の髪を風になびかせ、日頃の鍛錬を思わせる逞しい身体、すらりとした高い身長。20歳になったカイルは顔も整っているので街の女性から人気があり、街へ行くと女性達の会話に常にカイルの話題が上がっている。
久しぶりにカイルの姿をじっと見つめていると背後に気配を感じ、振り返るとサーラが立っていた。
「なんですか?ビックリしたァー」
「いや、愛だなって思って。カイル兄さん、カッコいいとか…ブフッ」
「思ってないから…」
「素直じゃないなぁ~。心配で光の精霊をカイルにつけているくせに~」
えっ、バレてたのと驚きの表情をすると、
「あのね、一応光の加護持ちですからね、私。まぁ一番悪いのはカイルよ。あいつが素直じゃないからこうなるのよ。まったく……」
とぶつぶつ言いながら持ち場に戻ったサーラ。
「カヤックも私の元に戻さないとね。カイル兄さんには私の助けなんて嫌なだけよね」
とリーリラは一人呟いた。
0
お気に入りに追加
87
あなたにおすすめの小説
【完結】【R18】男色疑惑のある公爵様の契約妻となりましたが、気がついたら愛されているんですけれど!?
夏琳トウ(明石唯加)
恋愛
「俺と結婚してくれたら、衣食住完全補償。なんだったら、キミの実家に支援させてもらうよ」
「え、じゃあ結婚します!」
メラーズ王国に住まう子爵令嬢マーガレットは悩んでいた。
というのも、元々借金まみれだった家の財政状況がさらに悪化し、ついには没落か夜逃げかという二択を迫られていたのだ。
そんな中、父に「頼むからいい男を捕まえてこい!」と送り出された舞踏会にて、マーガレットは王国の二大公爵家の一つオルブルヒ家の当主クローヴィスと出逢う。
彼はマーガレットの話を聞くと、何を思ったのか「俺と契約結婚しない?」と言ってくる。
しかし、マーガレットはためらう。何故ならば……彼には男色家だといううわさがあったのだ。つまり、形だけの結婚になるのは目に見えている。
そう思ったものの、彼が提示してきた条件にマーガレットは飛びついた。
そして、マーガレットはクローヴィスの(契約)妻となった。
男色家疑惑のある自由気ままな公爵様×貧乏性で現金な子爵令嬢。
二人がなんやかんやありながらも両想いになる勘違い話。
◆hotランキング 10位ありがとうございます……!
――
◆掲載先→アルファポリス、ムーンライトノベルズ、エブリスタ
《R18短編》優しい婚約者の素顔
あみにあ
恋愛
私の婚約者は、ずっと昔からお兄様と慕っていた彼。
優しくて、面白くて、頼りになって、甘えさせてくれるお兄様が好き。
それに文武両道、品行方正、眉目秀麗、令嬢たちのあこがれの存在。
そんなお兄様と婚約出来て、不平不満なんてあるはずない。
そうわかっているはずなのに、結婚が近づくにつれて何だか胸がモヤモヤするの。
そんな暗い気持ちの正体を教えてくれたのは―――――。
※6000字程度で、サクサクと読める短編小説です。
※無理矢理な描写がございます、苦手な方はご注意下さい。
公爵様、契約通り、跡継ぎを身籠りました!-もう契約は満了ですわよ・・・ね?ちょっと待って、どうして契約が終わらないんでしょうかぁぁ?!-
猫まんじゅう
恋愛
そう、没落寸前の実家を助けて頂く代わりに、跡継ぎを産む事を条件にした契約結婚だったのです。
無事跡継ぎを妊娠したフィリス。夫であるバルモント公爵との契約達成は出産までの約9か月となった。
筈だったのです······が?
◆◇◆
「この結婚は契約結婚だ。貴女の実家の財の工面はする。代わりに、貴女には私の跡継ぎを産んでもらおう」
拝啓、公爵様。財政に悩んでいた私の家を助ける代わりに、跡継ぎを産むという一時的な契約結婚でございましたよね・・・?ええ、跡継ぎは産みました。なぜ、まだ契約が完了しないんでしょうか?
「ちょ、ちょ、ちょっと待ってくださいませええ!この契約!あと・・・、一体あと、何人子供を産めば契約が満了になるのですッ!!?」
溺愛と、悪阻(ツワリ)ルートは二人がお互いに想いを通じ合わせても終わらない?
◆◇◆
安心保障のR15設定。
描写の直接的な表現はありませんが、”匂わせ”も気になる吐き悪阻体質の方はご注意ください。
ゆるゆる設定のコメディ要素あり。
つわりに付随する嘔吐表現などが多く含まれます。
※妊娠に関する内容を含みます。
【2023/07/15/9:00〜07/17/15:00, HOTランキング1位ありがとうございます!】
こちらは小説家になろうでも完結掲載しております(詳細はあとがきにて、)
婚約者が私のことをゴリラと言っていたので、距離を置くことにしました
相馬香子
恋愛
ある日、クローネは婚約者であるレアルと彼の友人たちの会話を盗み聞きしてしまう。
――男らしい? ゴリラ?
クローネに対するレアルの言葉にショックを受けた彼女は、レアルに絶交を突きつけるのだった。
デリカシーゼロ男と男装女子の織り成す、勘違い系ラブコメディです。
王女、騎士と結婚させられイかされまくる
ぺこ
恋愛
髪の色と出自から差別されてきた騎士さまにベタ惚れされて愛されまくる王女のお話。
性描写激しめですが、甘々の溺愛です。
※原文(♡乱舞淫語まみれバージョン)はpixivの方で見られます。
【R18】助けてもらった虎獣人にマーキングされちゃう話
象の居る
恋愛
異世界転移したとたん、魔獣に狙われたユキを助けてくれたムキムキ虎獣人のアラン。襲われた恐怖でアランに縋り、家においてもらったあともズルズル関係している。このまま一緒にいたいけどアランはどう思ってる? セフレなのか悩みつつも関係が壊れるのが怖くて聞けない。飽きられたときのために一人暮らしの住宅事情を調べてたらアランの様子がおかしくなって……。
ベッドの上ではちょっと意地悪なのに肝心なとこはヘタレな虎獣人と、普段はハッキリ言うのに怖がりな人間がお互いの気持ちを確かめ合って結ばれる話です。
ムーンライトノベルズさんにも掲載しています。
あなたの秘密を知ってしまったから私は消えます
おぜいくと
恋愛
「あなたの秘密を知ってしまったから私は消えます。さようなら」
そう書き残してエアリーはいなくなった……
緑豊かな高原地帯にあるデニスミール王国の王子ロイスは、来月にエアリーと結婚式を挙げる予定だった。エアリーは隣国アーランドの王女で、元々は政略結婚が目的で引き合わされたのだが、誰にでも平等に接するエアリーの姿勢や穢れを知らない澄んだ目に俺は惹かれた。俺はエアリーに素直な気持ちを伝え、王家に代々伝わる指輪を渡した。エアリーはとても喜んでくれた。俺は早めにエアリーを呼び寄せた。デニスミールでの暮らしに慣れてほしかったからだ。初めは人見知りを発揮していたエアリーだったが、次第に打ち解けていった。
そう思っていたのに。
エアリーは突然姿を消した。俺が渡した指輪を置いて……
※ストーリーは、ロイスとエアリーそれぞれの視点で交互に進みます。
完結 異世界で聖女はセックスすることが義務と決まっている。
シェルビビ
恋愛
今まで彼氏がいたことがない主人公は、最近とても運が良かった。両親は交通事故でなくなってしまい、仕事に忙殺される日々。友人と連絡を取ることもなく、一生独身だから家でも買おうかなと思っていた。
ある日、行き倒れの老人を居酒屋でたらふく飲ませて食べさせて助けたところ異世界に招待された。
老人は実は異世界の神様で信仰されている。
転生先は美少女ミルティナ。大聖女に溺愛されている子供で聖女の作法を学ぶため学校に通っていたがいじめにあって死んでしまったらしい。
神様は健康体の美少女にしてくれたおかげで男たちが集まってくる。元拗らせオタクの喪女だから、性欲だけは無駄に強い。
牛人族のヴィオとシウルはミルティナの事が大好きで、母性溢れるイケメン。
バブミでおぎゃれる最高の環境。
300年ぶりに現れた性欲のある聖女として歓迎され、結界を維持するためにセックスをする日々を送ることに。
この物語は主人公が特殊性癖を受け入れる寛大な心を持っています。
異種族が出てきて男性の母乳も飲みます。
転生令嬢も出てきますが、同じような変態です。
ちんちんを受け入れる寛大な心を持ってください。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる