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第1章 幼き精霊に愛されし王女
第12話 すれ違う二人
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エステール家の人々は滝の騒動を聞かされ神殿に向かうがリーリラに会えない状態だった。
「マルクス殿、ラリーに会うことはできないのか?」
心配で駆けつけたジャックとカイルはマルクスに駆け寄る。
「申し訳ありません。神殿長から誰も通すなと言われております。御子息は意識も戻られたので心配ありません。ラリーさんについては調べたいこともあるのでしばらく屋敷に滞在していただこうと思っています」
「調べる??ラリーは普通の人間だ!何をする調べるんだ!」
カイルはマルクスに詰め寄る。
「いやぁ、どれぐらい精霊を使役できる力があるかとか、どれほどの力があるのか確認しないといけなくて……」
「実験するみたいに言うな!!」
カイルはマルクスの襟を掴むと殴りかかろうとするとその手をリチャードに掴まれる。
「やめろ!!落ち着け!!」
「クッツ!!」
「冷静な騎士団長の御子息とは思えないな。そんなに熱くなるな。神殿の行われることだ。きっと悪いようにはされない。反対に良い方向に力を導いてくれるかもしれないだろう」
とリチャードはカイルを落ち着かせるように説得した。
「リチャード、ありがとう。大切な家族なんでな、カイルも心配なのだ。ひとまず、家に帰り神殿からの連絡を待とう」
とカイルに帰ることを促し二人へ屋敷をでる。屋敷の二階に灯りがついているのをみるとカイルはあの部屋にリーリラがいるかもしれないとじっと見つめる。
ふぅーー、と溜息をつく。
"あの時、神官を殴っていたら目標である騎士になれなかったかもしれない"
カイルは大人のリチャードとの差を改めて見せつけられたようで唇を噛む。
"このままでは私は駄目だ。落ち着き、冷静な判断をしなければ、いつまで経ってもリチャードさんに追いつけやしない…"
屋敷に戻ったカイルは決意し、父に願う。
「父さん、私は自分を見つめ直すために学校の寄宿舎に入ろうと思います。私は姫様のことを考えると周りが見えなくなってしまう。父さんも姫様と距離を置いた方がいいと言いましたよね、私もその方がいいかと判断しました」
「そうか…。自分を見つめ直す時間と言うのは時には必要だろう。いいだろう、寄宿舎に手続きは取っておこう」
「父さん、ありがとう」
そして、カイルはリーリラがエステール家に戻る前に学校の寄宿舎に入る。
これが二人のすれ違いの始まりになるのだった。
◇◇◇
リーリラがエステール家に戻った後、国王の執務室に神殿長が報告に訪れた。
「精霊達が過剰に反応するのか…」
「確かに姫様の力をうまく利用すれば、我が国は大丈夫かと思われますが…」
「やはり難しいか…」
「姫様の意思が伝わり精霊達が反応している様子です。もし反応して精霊達が暴走すれば止める事は難しいでしょう。我々は初代様が持っていた力もどのような物が理解もしていない。やはり今は無理に使わない方が良いでしょう」
「そうだな。無理強いは止そう。あの子には我慢ばかりさせてしまうな」
父であるアーサー王は悲壮な表情を浮かべる。
「しかし、あの力も敵が来た時には有効です。今からあの力を慣らしていくのはどうですか?」
「いや、止めておこう。優しいあの子に戦いができないだろう。戦いとなると人の命も流れる。それにあの子が残酷な行為に耐えれるかどうか…」
「わかりました。では姫様はあのままエステールに任せますか?」
「そうだな。敵も来ず、何不自由ない幸せな生活を送らせてやりたかったのに。すまない…。リーリラ……。」
父であるアーサーの悲しげな声だけが部屋に響いた。
「マルクス殿、ラリーに会うことはできないのか?」
心配で駆けつけたジャックとカイルはマルクスに駆け寄る。
「申し訳ありません。神殿長から誰も通すなと言われております。御子息は意識も戻られたので心配ありません。ラリーさんについては調べたいこともあるのでしばらく屋敷に滞在していただこうと思っています」
「調べる??ラリーは普通の人間だ!何をする調べるんだ!」
カイルはマルクスに詰め寄る。
「いやぁ、どれぐらい精霊を使役できる力があるかとか、どれほどの力があるのか確認しないといけなくて……」
「実験するみたいに言うな!!」
カイルはマルクスの襟を掴むと殴りかかろうとするとその手をリチャードに掴まれる。
「やめろ!!落ち着け!!」
「クッツ!!」
「冷静な騎士団長の御子息とは思えないな。そんなに熱くなるな。神殿の行われることだ。きっと悪いようにはされない。反対に良い方向に力を導いてくれるかもしれないだろう」
とリチャードはカイルを落ち着かせるように説得した。
「リチャード、ありがとう。大切な家族なんでな、カイルも心配なのだ。ひとまず、家に帰り神殿からの連絡を待とう」
とカイルに帰ることを促し二人へ屋敷をでる。屋敷の二階に灯りがついているのをみるとカイルはあの部屋にリーリラがいるかもしれないとじっと見つめる。
ふぅーー、と溜息をつく。
"あの時、神官を殴っていたら目標である騎士になれなかったかもしれない"
カイルは大人のリチャードとの差を改めて見せつけられたようで唇を噛む。
"このままでは私は駄目だ。落ち着き、冷静な判断をしなければ、いつまで経ってもリチャードさんに追いつけやしない…"
屋敷に戻ったカイルは決意し、父に願う。
「父さん、私は自分を見つめ直すために学校の寄宿舎に入ろうと思います。私は姫様のことを考えると周りが見えなくなってしまう。父さんも姫様と距離を置いた方がいいと言いましたよね、私もその方がいいかと判断しました」
「そうか…。自分を見つめ直す時間と言うのは時には必要だろう。いいだろう、寄宿舎に手続きは取っておこう」
「父さん、ありがとう」
そして、カイルはリーリラがエステール家に戻る前に学校の寄宿舎に入る。
これが二人のすれ違いの始まりになるのだった。
◇◇◇
リーリラがエステール家に戻った後、国王の執務室に神殿長が報告に訪れた。
「精霊達が過剰に反応するのか…」
「確かに姫様の力をうまく利用すれば、我が国は大丈夫かと思われますが…」
「やはり難しいか…」
「姫様の意思が伝わり精霊達が反応している様子です。もし反応して精霊達が暴走すれば止める事は難しいでしょう。我々は初代様が持っていた力もどのような物が理解もしていない。やはり今は無理に使わない方が良いでしょう」
「そうだな。無理強いは止そう。あの子には我慢ばかりさせてしまうな」
父であるアーサー王は悲壮な表情を浮かべる。
「しかし、あの力も敵が来た時には有効です。今からあの力を慣らしていくのはどうですか?」
「いや、止めておこう。優しいあの子に戦いができないだろう。戦いとなると人の命も流れる。それにあの子が残酷な行為に耐えれるかどうか…」
「わかりました。では姫様はあのままエステールに任せますか?」
「そうだな。敵も来ず、何不自由ない幸せな生活を送らせてやりたかったのに。すまない…。リーリラ……。」
父であるアーサーの悲しげな声だけが部屋に響いた。
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