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第1章 幼き精霊に愛されし王女
第10話 精霊達の過剰な歓迎
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リーリラが待ちに待った滝への見物の日になった。当初二人だけで馬車に乗り行こうと考えていたが、ジャックとサーラの父の配慮から二人の付き添いが来ることとなった。
一人は神殿勤めをしている神官のマルクスともう一人は若手騎士のリチャードだった。
「リチャード、子守をさせてすまないね」
ジャックは迎えに来てくれたリチャードに頭を下げる。
「団長、頭をあげて下さい。こんな可愛いお子さん達のお世話を出来て嬉しいですよ。」
とリチャードはにこりと笑顔を見せる。
リチャードは騎士の中でも抜群の剣の腕を持つ期待の若手だ。容姿も見た目も良く若い女性から人気の騎士だ。
「なんであんたがいるのよ!」
サーラはマルクスを睨みつける。
「お嬢様、神殿長がお嬢様の子守をするように仰ったんですよ。諦めてください」
と気にせず話すマルクスをどうやらサーラはお気に召さないらしい。マルクスは細身の青年で少し長めの茶色の髪を一つに纏めている。彼は精霊の力に頼りすぎるのは良くないと薬の開発や人間が持つ治癒力を最大限に活かせる治療法を唱え、神殿長からも一目置かれたこちらも期待の新人なのだ。
「神殿長からラリー坊ちゃまを観察…しまった?!お守りするように言われてきたんですから」
「あんた、今、観察とか言ったでしょ!友達を馬鹿にしたら許さないわよ!」
とパカパカとマルクスを腕を叩く。
「喧嘩しないで早く行こうよ、サーラ」
「そうですね、私達は先に行きましょう。」
とリチャードはリーリラを抱えると馬に乗せてくれ、颯爽と馬を走らせた。
「待ちなさいよ!」
「お嬢様、暴れないでくださいね」
「うるさい!」
と仕方なしにマルクスはサーラを馬に乗せて出発した。
二階の窓からカイルはリーリラを見送る。
「リチャードさんが護衛に来たのか…」
カイルは軽々とリーリラを馬に乗せ走らせて行く姿に自分が連れて行きたかったと嫉妬する。
嫉妬など見苦しい姿を見せてはいけない、姫様に相応しい強い騎士になればいいだけだと自分自身に言い聞かせ、剣大会で最善を尽くそうと奮い立たせた。
あっという間に西の滝に着いた一行は滝の側に近づく。冬の時季は水量も少なく夏の時季はとは違い淋しい滝の様子だ。
「滝だ!すごい!」
絶壁の上から少しずつ流れる滝を見てリーリラは大喜びするが、サーラは凍った滝を見たかったのにとがっかりの様子だ。
しかし、滝の周りに精霊達が少しずつ現れ始める。すると滝の水量が増え始めた。
「うわぁー!滝の水がいっぱい!!」
リーリラは興奮気味に喜ぶ。
「なんだこれは??」
マルクスもリチャードも驚く。冬なのに滝の水量が夏と変わらず豊富になったのだ。
「おかしい…。嫌な予感しかしないんだけど…」
マルクスは若干引き気味になる、その予感は的中する。
「おい、尋常じゃない水の量だぞ。下の村に警告を出した方がいいじゃないか?」
マルクスが頷くとリチャードは村に警戒しに行くと走りだす。
滝の方から幾つか光がリーリラの近くに集まって来た。
『愛し子が喜んでる』
『水を増やそう!』
『精霊王様と同じ力だよ』
『ラクラインじゃないね?』
『新たな精霊王様が来たの?わーい!』
水の精霊達が滝から次々にやって来てリーリラを囲む。
「お嬢様、全く精霊の声が聞こえないんですが…」
「私も全く聞こえないわ…」
二人が呆然としている間に水の精霊達が一緒に遊ぼうとリーリラを水に誘った。リーリラは何が起こっているのか分からず戸惑っていると滝壺の水に巻き込まれる。
パシャン。
「ラリー!」
「坊ちゃん!」
サーラが滝壺に近づこうとするとマルクスに止められる。
「ダメです。危険だ!私達では精霊のコントロールが出来ない!」
「だって……、ラリー!!」
サーラの悲痛な叫びが響く。
ブク、ブク、ブク、
誰か、助けて……。
ピカりと腰にあった剣が輝く。
『いい加減にしろーー!!』
エクストリアは力を使い滝壺の底にある土を持ち上げリーリラを浮上させ、滝壺から外に出した。
「ぷはっ、ゲホホ、ゲホホ」
リーリラは水を吐き出すと気絶する。
『エクストリア様が怒ったー!』
『古様を怒らせちゃたよ~』
水の精霊達はエクストリアに怯える。
『悪戯をするな!水を元に戻せ!自分達の住処に帰れ!』
とエクストリアに叱られた水の精霊達は次々に消えて行く。
「ラリー!!大丈夫!!」
サーラはすぐさま、癒しの力を使いリーリラを回復させる。
「この子、とんでもない力を持っているんじゃないか?コントロール出来ないと大変なことになるんじゃないか…」
「あんた、ごちゃごちゃ言ってないでリーリラをなんとかしなさいよ!」
「あっ、すみません。息はしていますから気を失ったのでしょう。ひとまず神殿に運びます。」
と抱き上げようとするがマルクス力がなく倒れ込む。
「何やってるのよ!!」
とサーラが激昂する中、リチャードの声が聞こえて来た。
「水量が収まったから戻ってきたんだが、ひとまず団長の御子息を運ぼう」
と軽々とリーリラを抱きかかえる。
「さすが、騎士様」
とジロリとマルクスを睨みつけるサーラだった。その後、神殿まで急ぎ運ぶとリーリラはそのまま神殿の治療所に入り意識が戻るまで休ませることとなった。
一人は神殿勤めをしている神官のマルクスともう一人は若手騎士のリチャードだった。
「リチャード、子守をさせてすまないね」
ジャックは迎えに来てくれたリチャードに頭を下げる。
「団長、頭をあげて下さい。こんな可愛いお子さん達のお世話を出来て嬉しいですよ。」
とリチャードはにこりと笑顔を見せる。
リチャードは騎士の中でも抜群の剣の腕を持つ期待の若手だ。容姿も見た目も良く若い女性から人気の騎士だ。
「なんであんたがいるのよ!」
サーラはマルクスを睨みつける。
「お嬢様、神殿長がお嬢様の子守をするように仰ったんですよ。諦めてください」
と気にせず話すマルクスをどうやらサーラはお気に召さないらしい。マルクスは細身の青年で少し長めの茶色の髪を一つに纏めている。彼は精霊の力に頼りすぎるのは良くないと薬の開発や人間が持つ治癒力を最大限に活かせる治療法を唱え、神殿長からも一目置かれたこちらも期待の新人なのだ。
「神殿長からラリー坊ちゃまを観察…しまった?!お守りするように言われてきたんですから」
「あんた、今、観察とか言ったでしょ!友達を馬鹿にしたら許さないわよ!」
とパカパカとマルクスを腕を叩く。
「喧嘩しないで早く行こうよ、サーラ」
「そうですね、私達は先に行きましょう。」
とリチャードはリーリラを抱えると馬に乗せてくれ、颯爽と馬を走らせた。
「待ちなさいよ!」
「お嬢様、暴れないでくださいね」
「うるさい!」
と仕方なしにマルクスはサーラを馬に乗せて出発した。
二階の窓からカイルはリーリラを見送る。
「リチャードさんが護衛に来たのか…」
カイルは軽々とリーリラを馬に乗せ走らせて行く姿に自分が連れて行きたかったと嫉妬する。
嫉妬など見苦しい姿を見せてはいけない、姫様に相応しい強い騎士になればいいだけだと自分自身に言い聞かせ、剣大会で最善を尽くそうと奮い立たせた。
あっという間に西の滝に着いた一行は滝の側に近づく。冬の時季は水量も少なく夏の時季はとは違い淋しい滝の様子だ。
「滝だ!すごい!」
絶壁の上から少しずつ流れる滝を見てリーリラは大喜びするが、サーラは凍った滝を見たかったのにとがっかりの様子だ。
しかし、滝の周りに精霊達が少しずつ現れ始める。すると滝の水量が増え始めた。
「うわぁー!滝の水がいっぱい!!」
リーリラは興奮気味に喜ぶ。
「なんだこれは??」
マルクスもリチャードも驚く。冬なのに滝の水量が夏と変わらず豊富になったのだ。
「おかしい…。嫌な予感しかしないんだけど…」
マルクスは若干引き気味になる、その予感は的中する。
「おい、尋常じゃない水の量だぞ。下の村に警告を出した方がいいじゃないか?」
マルクスが頷くとリチャードは村に警戒しに行くと走りだす。
滝の方から幾つか光がリーリラの近くに集まって来た。
『愛し子が喜んでる』
『水を増やそう!』
『精霊王様と同じ力だよ』
『ラクラインじゃないね?』
『新たな精霊王様が来たの?わーい!』
水の精霊達が滝から次々にやって来てリーリラを囲む。
「お嬢様、全く精霊の声が聞こえないんですが…」
「私も全く聞こえないわ…」
二人が呆然としている間に水の精霊達が一緒に遊ぼうとリーリラを水に誘った。リーリラは何が起こっているのか分からず戸惑っていると滝壺の水に巻き込まれる。
パシャン。
「ラリー!」
「坊ちゃん!」
サーラが滝壺に近づこうとするとマルクスに止められる。
「ダメです。危険だ!私達では精霊のコントロールが出来ない!」
「だって……、ラリー!!」
サーラの悲痛な叫びが響く。
ブク、ブク、ブク、
誰か、助けて……。
ピカりと腰にあった剣が輝く。
『いい加減にしろーー!!』
エクストリアは力を使い滝壺の底にある土を持ち上げリーリラを浮上させ、滝壺から外に出した。
「ぷはっ、ゲホホ、ゲホホ」
リーリラは水を吐き出すと気絶する。
『エクストリア様が怒ったー!』
『古様を怒らせちゃたよ~』
水の精霊達はエクストリアに怯える。
『悪戯をするな!水を元に戻せ!自分達の住処に帰れ!』
とエクストリアに叱られた水の精霊達は次々に消えて行く。
「ラリー!!大丈夫!!」
サーラはすぐさま、癒しの力を使いリーリラを回復させる。
「この子、とんでもない力を持っているんじゃないか?コントロール出来ないと大変なことになるんじゃないか…」
「あんた、ごちゃごちゃ言ってないでリーリラをなんとかしなさいよ!」
「あっ、すみません。息はしていますから気を失ったのでしょう。ひとまず神殿に運びます。」
と抱き上げようとするがマルクス力がなく倒れ込む。
「何やってるのよ!!」
とサーラが激昂する中、リチャードの声が聞こえて来た。
「水量が収まったから戻ってきたんだが、ひとまず団長の御子息を運ぼう」
と軽々とリーリラを抱きかかえる。
「さすが、騎士様」
とジロリとマルクスを睨みつけるサーラだった。その後、神殿まで急ぎ運ぶとリーリラはそのまま神殿の治療所に入り意識が戻るまで休ませることとなった。
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