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第1章 幼き精霊に愛されし王女
第5話 騎士の家の子になる王女
しおりを挟む城の閣議室に王家の直系親族が集結し、今後の方針の話し合いが始まる。
「捕まえた賊を吐かせたところ、我が国の者からリンダ様と国について聞き、山を越えた南の村からリンダ様を攫う為に来たそうです」
「半年前に街の商会の息子が国を出て、山を越えたと報告が入りました。恐らくこの者から我が国とリンダ様の情報が流れたかと考えられます」
大臣が説明すると王はやはり外部に我が国の漏れたのかと苦悶の表情になる。
「今回、賊を一人逃しています。仲間を呼び寄せる可能性や、国を出た男がさらに我が国の事件を他国に漏らしている可能性があります。至急対策を取る必要があります」
別の大臣も王の決断を急かす。
「ダリルからの報告からどうやら山の向こうには精霊などいないようだ。恐らく、この国は狙われてしまうだろう。リンダのような被害を出してはいけない。国の防衛を強化しよう。全ての12才以上の男子に兵役義務を出し戦えるようにしよう。すぐに準備をしろ」
「はい、わかりました」
と大臣は直ぐ退出する。
部屋には王と王弟の神殿長が残る。
「先日、城壁の破壊させたのはリーリラのようだ。初代王が使っていた剣が目を覚まし、リーリラを呼び寄せ、力を覚醒させたようだ」
王が悲壮な表情で話し始める。
「やはり、リーリラ様の先祖返りの力は国の危機を察し、現れたかもしれませんな」
「国の危機か…。しかし、まだ5歳の子だ。まだ戦わせるには早い」
「しかし、備えは必要でしょうな」
王が目を瞑り黙るとさらに神殿長は話を続ける。
「そのことを公にすると民がリーリラ様に期待をして姫様の負担になるかもしれません。あと、リンダ様のように狙われる可能性もあります。私は、リーリラ様の存在を隠すのが一番だと考えます。民には身体が弱くあまり人前に出てはいらっしゃいません。亡くなったことにし、もし敵襲が来た時に守れる、信頼のできる家に預けるのが一番かと思われます。」
「そうだな……。あと、剣の主事できる家に預け剣も使いこなせるようにせねばならないな…」
「ということになると、エステール家に預けるのが最善ですな」
「エステールを呼んできてくれ」
◇◇◇
そして、副団長から騎士団長に昇格したジャック・エステールが呼ばれる。
「お待たせいたしました。エステール、参上致しました」
「エステールよ、姫を外部から守る為にリーリラは亡くなったこととし、お前の家に預ける。リーリラは精霊の剣を授かった、国の為に剣を使いこなせる様に鍛えてほしい。さぁ、リーリラ、来なさい」
連れてこられたリーリラは
「何?」
と王の前に立つ。
「おまえは王女でなくなる。他国の者からおまえを守るためだ」
「おとうさまやおかあさまやリズおねえさまといっしょにいれないの」
「そうだ。リーリラの力を奪われてはいけないんだ。ここにいるエステールが新しい家族になる。大丈夫、たまには会えるようにする。いい子で強い子になったリーリラを見せておくれ」
「うん……」
リーリラはがっしりとした身体付きの騎士を見上げる。
「姫様、我が家に参りましょう。息子もおります。きっと話し相手になってくれるでしょう」
不安げに頷くリーリラ。
「エステールよ、もし、リーリラが成人した後、おまえの息子が望むならリーリラの降嫁先とも考えている。よろしく頼む」
「はっ。受け賜りました。さぁ、姫様参りましょう」
「うん…」
リーリラはジャックに抱き上げられる。王は涙ぐむ娘をただ見送ることしかできなかった。
そして、第3王女は病気のために亡くなった公表されて、リーリラは信頼の出来るエステール家に預けられ養子となるのだった。
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