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第1章 幼き精霊に愛されし王女
第2話 姉との別れ
しおりを挟む朝から精霊達が騒がしく飛び回る。リーリラ達の親であるリヴァリオン国王夫妻は精霊達の異変に気づく。
「やけに精霊達が騒がしいですわね」
「怪しい奴がいるか…城下町の警戒強化させよう。空もなんだかすっきりしない天気だな。何もなければいいんだが…」
この国王夫妻の杞憂が現実になるとは思いもしなかったのだ。
『リーリラ、起きて!』
『リーリラ、何が変な奴がいる!』
リーリラの周りにも精霊達がやって来ているがリーリラは身体に熱がこもりベッドの住人になっていた。
「うーん、うーん、身体が熱いよぉ」
『リーリラ~』
『起きて~』
『だめだ。仕方ない、熱を冷まそう』
水の精霊はリーリラおでこにあったタオルを冷やしてくれた。
『リンダ、精霊達が騒がしい。怪しい奴がいる』
リンダに側仕えしている花の精霊フローラルが飛び回り注意を促す。
「そうなの? 気をつけなくちゃいけないわね」
コツン
居室の窓に何か当たる音がした。
「あらっ?ダリルかしら?」
リンダは嬉しげに足早に窓を開け見下ろすとダリルが手を振っていた。
「リンダ、遅くなってすまない。星空を見に行こう。今日の満月が特に美しい。」
「ごめんなさい、今日は止めましょう。
フローラルが怪しい人がいるって」
「私がいるから大丈夫さ。すぐに戻ればいい。さぁ、行こう!」
「うーん、わかったわ」
フローラルは止めた方がいいと飛び回るが、リンダは身支度を整え、ダリルの元へ向かう。
『もう二人とも~~!!』
フローラルは仕方なく二人の後を追う。城から離れた湖の東屋が二人の逢瀬場所だった。ダリルはリンダを馬に乗せ東屋まで走らせる。
東屋に近づくにつれ何が甘い匂いがする。ダリルは近くに花畑があったかなと思いながら、馬を木に結び、二人は手を繋ぎ東屋まで歩き出すが着くまで眠気が遅ってきた。
そして、ダリルは膝をつくとパタリとそのまま倒れてしまう。
「ダリル?どうしたの?!起き…て…」
リンダもダリルに覆い被さるように倒れこむ。
『リンダ!ダリル!寝ちゃダメ!!』
フローラルは二人の周りを必死に飛び回るが二人は起きない。二人が倒れこむのを確認したかの様に木陰から大男達が出て来た。
「綺麗なお嬢さんじゃないか~」
「これがもしかしてリンダ様か?」
「なかなかの上玉じゃないか?」
「じゃあ、行くぞ!」
リンダは大男の一人に担がれる、フローラル達精霊は男達の周りを飛び回る。
「なんだ、この光、邪魔だ!」
一人の男は剣を振り回した。
『リンダを離せー!』
『おまえ達誰だ!』
「この虫邪魔だー!!!」
一人の大男の灰色の目がキラリと光る。
『助けてー!!』
『怖いー!』
『みんな、逃げちゃダメー!!』
他の精霊達は一人の男から放たれた圧から逃げ出すがフローラルだけ必死に後を追いかけた。
◇◇◇
「リンダ様が拐われた!」
「ダリル団長は?」
「それが眠らされたようだ!」
リンダが何ものかに誘拐されたと精霊からの知らせを受け、城内が騒がしくなる。
「はぁ、はぁ、はぁ、いま、たすけてっておねえさまのこえがしたような……」
ようやく、熱が下がったリーリラは精霊達が大変だと騒いでいる様子に気づき、傍に看病してくれた侍女に
「何が起こったの?」
と尋ねる。
少し辛そうな顔をした侍女は
「なんでもありません大丈夫ですよ」
と答えてくれた。
大丈夫だと聞いたリーリラは安心して再び眠りにつく。
しかし、翌朝にリンダが亡くなったと国中に訃報が流れる。精霊達が騒いだあの日、リンダとダリルが逢瀬で使っていた湖の東屋に何人かの盗賊に襲撃に遭いリンダは誘拐された。その後、リンダは救出されたが侍女が目を離した隙に自らの命を絶ったのだ。
国中は未来の女王の死を悲しみ、喪に服す為に貴族達が城へ葬儀の為に参列する。
城に父親ジャック・エステールと共に登城したカイル・エステールもその一人だった。
カイルはどこかで女の子の泣き声が聞こえるような気がして父に伝える。
「父さん、女の子の鳴き声がしませんか?」
「いや、聞こえないが??カイル、すまない、私は騎士団に用事があるから庭で待ってくれないか?」
「わかりました」
カイルはどうしても気になり泣き声がする方へ行くと城の庭に一人の少女が蹲っていた。近づくと銀髪の小さな少女だった。
「もしかすると、リーリラ姫様ですか?」
顔を上げたリーリラはカイルを見上げる。
カイルははっとなり、その水晶の様な瞳から涙を流す美しい少女に思わず心惹かれる。
リーリラとカイルはこうして運命の出会いをするのだ。
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