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第ニ章

第7話 契約解除

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沙都は腕まくりして
「もういっかい潰したろか」
と手を挙げる。

恐れ慄いた金霊は沙都の前に手を添え深々と頭を下げだ。

「お許しくださいませ、お助けくださいませー、人間様」
と叫び始めた。

「沙都ちゃん、いや女将さん。突然だがこの金霊をこちらの宿で面倒見て頂けないだろうか?」
匡は改まって沙都に願い出た。

「この俵人形をですか?!」
沙都は顔を引き攣らせてしまう。

「さっき、風呂場でじいさんに教えてやったんだ、金霊の契約を俺なら切ってやれるって」 

 匡がこれ以上家族に迷惑をかけられない、金霊の契約を切りたいと紅太郎に相談したのだ。力の強い妖は弱い妖を制する事ができる、つまり、契約を切り配下に置く事が出来るのだ。

「えっ…うち、二人も面倒みれへんよ、お金ないし、、それに命取られたらどうするん??」

『それはないですわ~強いですやん』
金霊はない、ないと手を振る。

「俺や沙都の方が遥かに力が強いから大丈夫だ。さっきだってコイツを半殺しにしてたよな!」

「半殺しって…」

「問題起こしたら喰えばいいし、大丈夫だって~」

『あんたら、半殺しとか喰うとか、おっかないッ、この妖と人間、頭おかしいんちゃうか』
金霊は震えながらブツブツ文句を言っている。

「おまえ聞こえてるぞ!逆らったらわかってるな~おまえがいたら金は入ってくるし、人型に変化へんげさせてやるから働けるぞ~、充実した毎日を送れるな!」

『そんな殺生な~』

……神野様お任せください~」
沙都はゴクリと唾を飲み込むとOKだと合図した。

「女将さん、よろしくお願いします」

『たーはん、わてを捨てるん??』

「私もそう長くはないからね、安心したよ、頼もしい女将さんに託すことが出来た、金霊、今までありがとう」

『………厄介払いなんちゃうん??』

匡が沙都と紅太郎に本当にありがとうと深々、頭を下げた。

「あらっ、妖さんはこのお宿にお世話になるのね、長年、主人が大変お世話になりました。この人が生き抜いてこれたのはあなたのおかげね、ありがとうございます、沙都ちゃん、コンちゃんもよろしくお願いします」
みよこもどこにいるかわからない金霊、そして、沙都、紅太郎に頭を下げたのだ。


 こうして長年連れ添った金霊を宿に託すと翌日、神野夫妻は実家がある神奈川へと帰って行ったのだ。




◇◇◇

数時間前

檜風呂に浸かりながら、匡は腹を括る。

「紅太郎くん、私は沢山の人を犠牲にして財を得たようだ。実は財産分与について意見してきたんだ。その後、体調を崩してね……金霊さん、貴方の仕業かね?」

『なんのことかね~~』

紅太郎は思い切り金霊を蹴り上げると金霊は『フンギャッ!』と天井にぶっ飛んだ。

「じいさん、間違いなくコイツだ、息子、死ぬぞ」

「そうか…その金霊との契約は切れるかい?」

「切れるが、代償はあるぞ」

「どんな代償なんだい?」

「じいさんの命は金霊の力で保たれている、契約を切ったらすぐ死ぬぞ」

「………充分生きたさ…だから私は長生きだったのか…」







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