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第ニ章

第5話 神野匡-2-

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 何とか生きながらえた匡を幸運にも大阪の母方の一族が匡を探し出す。母方の直系の一族も戦争により後継がいなくなり、匡の行方を探していたのだ。貧しさから一転、戦後とはいえ匡は豊かな生活を送ることとなる。

 戦時中の貧しさを知る匡は一族の豊かさを知り、力さえあれば食べることに困らない、豊かさとは力を得ることなのだと悟る。

 母方の一族は高利貸しを営んでおり、匡は金霊の力を活かし、一族を発展させた。戦時中から高利貸しは弱者から金貸しを行い、手荒に搾取する行為を継続させ、多くの犠牲を得て金融機関へと発展させたのだ。更に高度経済成長期の煽りも受け、事業は国内からその舞台を海外へと移し、発展へと導いた。

 金が舞い込む、匡を探し救ってくれた祖母が亡くなる、金が舞い込む、匡の座を狙う母の妹よし子が不穏な死を遂げ、亡くなる。気付けば匡を邪魔する者は居なくなる。邪魔者は不思議と突然死を迎え、この世から去って行くのだ。周囲は匡に逆らっては行けないと、匡の道を塞ぐものはいなくなる。

 仕事人間だった匡だったが、旧華族の令嬢みよこと政略結婚をする。若くして嫁いだみよこは別嬪とはいえない容姿だったが朗らかで明るく匡にとって唯一、安らぎを与えてくれる存在の女性だった。しかし、仕事人間だった匡はみよこ、子供のことを顧みず、ひたすら仕事に明け暮れたのだ。
 実はこの家族を置き去りにした行為は功を奏していた。つまり、金霊から家族を救っていたとも知らずに…

 年老いた匡は事業に一線から退き、家族の元に戻るが、すでに家族との溝が深くなっていた。そんな折、みよこの病が発覚し、匡はようやく今まで家族、自分を支えてくれたみよこの存在に感謝し、みよこの闘病に力を注いだのだ。
 こうして、二人は再び向き合い、残りの余生を楽しめる間柄へとなったのだ。

 この状況を楽しんでいない者がいた。
 妖、金霊だった。

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