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第ニ章
第1話 初めてのお客はん
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昨夜からの曇り空から一転、空から太陽の光が見えてきた。沙都は新しく家族となった自称九尾の妖怪、紅太郎と祖母ふくの資金で宿の開業準備を進め、この梅雨の合間にその名も「きつねのお宿」をオープンすることが出来たのだ。
慌しく準備を進める沙都は時計を見ると予約を入れていた客の迎えの時間が近づいていることに気づく。
「コンちゃん、稲荷駅にお客様をお迎えに行ってくれる?」
「いいぞー!」
◇◇◇
紅太郎は紺色の半被を羽織り、「コン、コン」と歌いながら朱色に塗られたJR稲荷駅へと客を迎えに行く。画用紙に「神野様」と書かれた紙を両手で改札に向けていると一組の老夫婦が声を掛けてきた。
「もしかして、きつねの宿の人かね?」
「そうだよ!宿まで歩いて5分だけど
歩けますか?」
いつもぶっきらぼうな話し方の紅太郎だがお客様には丁寧な対応をと沙都から教えられ、可愛い応答する。
「まぁ、なんて可愛い宿の子かしら、歩けるわよ」
と老紳士に支えながら杖をついていた老女は頬を綻ばす。
紅太郎はゆっくりと師団街道を進みながらぼそっと呟いた。
『変な奴がついているじゃないか』
◇◇◇
「おこしやす、きつねのお宿へ」
沙都は祖母から譲り受けた夏の花をあしらった小紋の着物を羽織り、記念すべき1組目の宿泊客に頭を下げた。
「予約をした神野です」
高齢の紳士は被っていた帽子を取ると見事な頭上のハゲがピカリと光る。
「では、こちらに靴をお入れ下さいませ」
入口に並ぶ紅色の下駄箱に靴を納めてもらうと沙都は老夫婦の荷物を預かる。
受付前に用意された椅子に腰掛けるよう薦めると冷やしていた冷茶を準備した。
「こちらは番茶です」
「いやぁ、暑かったから助かるよ」
「やっぱり京都の夏は暑いわね」
と老夫婦は笑いながらお茶を飲み干した。
「この渋い煎り番茶の味、京都だね、美味しいよ」
「おおきに」
沙都は二杯目の冷茶を提供しながら宿の説明を始めた。
「神野様のお部屋は一階の和室、深草の間を用意しております。一階には男女別の檜造りの浴場がございまして、夜は23:00まで、朝は6:00からご入浴できます。明日の朝食は和食の希望を伺っていますが、間違いございませんか?」
「はい、間違いないですよ、7:30頃、お願いできますか?」
「かしこまりました、受付横のお食事処で準備しております。では、お部屋にご案内致します」
畳が引かれている廊下から深草の間へと案内する。
「外観に比べ中は綺麗だね」
「本当だわ」
老夫婦は感心しながら、キョロキョロと建物を観察している。
「あはははッ…実はこの宿、最近オープンしたてなんです!だから綺麗なんですよ、結構古い建物やったけどしっかり改装しましてねぇ……あははは…」
あはははっと苦笑いする沙都。この宿をここまで新しく変化させたのは紅太郎なのだ。祖母から受け取った一尾の妖力を復活させた紅太郎は一気に妖力を上げ、楽々、宿の改造まで成し上げたのだ。
「ふふふ、聞いていますよ、あなたのお婆様から」
「祖母のお知り合いなのですか?」
「あぁ、取引関係だったんだよ、孫の宿が閑古鳥が鳴いているとか聞いてね、是非泊まってやってくれとね」
その一言にギクリと肩を落とす沙都。
老紳士の言う通り宿の開業してから予約が一件も入っていなかったのだ。
「客は評価や価格を吟味して予約するからね、しかし、この立派な宿なら私達も常宿にさせてもらうさ」
と老紳士が言うと婦人も同意するように頷いた。
「おおきに」
「知り合いにも宣伝しとくよ、今夜はふくさんと木屋町の料亭で食事を取る予定だからタクシーを手配お願いできるかな?」
「もちろんです!では、ごゆっくり」
沙都は深々と頭を下げると神野様を封切りに沢山の客の予約が入ることを願いながら部屋を後にした。
慌しく準備を進める沙都は時計を見ると予約を入れていた客の迎えの時間が近づいていることに気づく。
「コンちゃん、稲荷駅にお客様をお迎えに行ってくれる?」
「いいぞー!」
◇◇◇
紅太郎は紺色の半被を羽織り、「コン、コン」と歌いながら朱色に塗られたJR稲荷駅へと客を迎えに行く。画用紙に「神野様」と書かれた紙を両手で改札に向けていると一組の老夫婦が声を掛けてきた。
「もしかして、きつねの宿の人かね?」
「そうだよ!宿まで歩いて5分だけど
歩けますか?」
いつもぶっきらぼうな話し方の紅太郎だがお客様には丁寧な対応をと沙都から教えられ、可愛い応答する。
「まぁ、なんて可愛い宿の子かしら、歩けるわよ」
と老紳士に支えながら杖をついていた老女は頬を綻ばす。
紅太郎はゆっくりと師団街道を進みながらぼそっと呟いた。
『変な奴がついているじゃないか』
◇◇◇
「おこしやす、きつねのお宿へ」
沙都は祖母から譲り受けた夏の花をあしらった小紋の着物を羽織り、記念すべき1組目の宿泊客に頭を下げた。
「予約をした神野です」
高齢の紳士は被っていた帽子を取ると見事な頭上のハゲがピカリと光る。
「では、こちらに靴をお入れ下さいませ」
入口に並ぶ紅色の下駄箱に靴を納めてもらうと沙都は老夫婦の荷物を預かる。
受付前に用意された椅子に腰掛けるよう薦めると冷やしていた冷茶を準備した。
「こちらは番茶です」
「いやぁ、暑かったから助かるよ」
「やっぱり京都の夏は暑いわね」
と老夫婦は笑いながらお茶を飲み干した。
「この渋い煎り番茶の味、京都だね、美味しいよ」
「おおきに」
沙都は二杯目の冷茶を提供しながら宿の説明を始めた。
「神野様のお部屋は一階の和室、深草の間を用意しております。一階には男女別の檜造りの浴場がございまして、夜は23:00まで、朝は6:00からご入浴できます。明日の朝食は和食の希望を伺っていますが、間違いございませんか?」
「はい、間違いないですよ、7:30頃、お願いできますか?」
「かしこまりました、受付横のお食事処で準備しております。では、お部屋にご案内致します」
畳が引かれている廊下から深草の間へと案内する。
「外観に比べ中は綺麗だね」
「本当だわ」
老夫婦は感心しながら、キョロキョロと建物を観察している。
「あはははッ…実はこの宿、最近オープンしたてなんです!だから綺麗なんですよ、結構古い建物やったけどしっかり改装しましてねぇ……あははは…」
あはははっと苦笑いする沙都。この宿をここまで新しく変化させたのは紅太郎なのだ。祖母から受け取った一尾の妖力を復活させた紅太郎は一気に妖力を上げ、楽々、宿の改造まで成し上げたのだ。
「ふふふ、聞いていますよ、あなたのお婆様から」
「祖母のお知り合いなのですか?」
「あぁ、取引関係だったんだよ、孫の宿が閑古鳥が鳴いているとか聞いてね、是非泊まってやってくれとね」
その一言にギクリと肩を落とす沙都。
老紳士の言う通り宿の開業してから予約が一件も入っていなかったのだ。
「客は評価や価格を吟味して予約するからね、しかし、この立派な宿なら私達も常宿にさせてもらうさ」
と老紳士が言うと婦人も同意するように頷いた。
「おおきに」
「知り合いにも宣伝しとくよ、今夜はふくさんと木屋町の料亭で食事を取る予定だからタクシーを手配お願いできるかな?」
「もちろんです!では、ごゆっくり」
沙都は深々と頭を下げると神野様を封切りに沢山の客の予約が入ることを願いながら部屋を後にした。
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