おいでやす、きつね(九尾の狐?!)のお宿へ

京極冨蘭

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第一章

第11話 祖母ふく

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「久しぶりー、元気やった?」

声を掛けながら入ると祖母のリビングルームには別のお客さん達が来ているようだ。

「孫が来たわ、あんたら帰りぃ」

「失礼致しました。お孫さんとの貴重なお時間をお邪魔するところでした、では、失礼致します」
と銀行員らしき方達は深々と頭を下げて部屋を出ていく。

 ベージュ色を基調とした広々したリビングルームのソファに祖母ふくは座っていた。彼女は若き頃に起業し、京都を拠点とした天野商事を立ち上げ、大きな会社にしたのだ。現在は引退して資産を使い株などを楽しみ、のんびりと老後を過ごしているのだ。

「久しぶりやね、沙都はん。銀行の奴らこの死にゆく老ぼれに資金運用とかまだ言い寄るわ…
 その子はなんや?
 まさか…あの男の子か…」
と祖母はゆっくりとした口調で私を睨みつけた。

「違う!!哲也とは別れたから」
私は祖母の耳元で大きな声を出し、必死に手をふる。

「そうか~」
その言葉を聞くと祖母は満足気に笑う。以前、祖母に哲也を会わせた時、絶対に別れるから結婚はしたらダメやと散々言われていたのだ。結局は祖母の見定め通りになったのだ。

「天野家の女は男運がないんや」

と祖母はしみじみと話す。天野家の女性は本当に男運がないのだ。ちなみに祖母の父、兄、夫も戦死している。
 しかし、その死を伴うと歴代の天野家の女達は異様な力を発揮しるのだ。つまり、女達の懐に金が舞い込むのだ。ちなみに現在、会社を継いだ叔母の麗子の夫もなくなっており、叔母は未亡人になってからメキメキと力量を発揮して、さらに天野商事を大きくしているのだ。

 男が死ななければどうなるのか…

 実際のところどうなのかわからないがとにかく女は苦労する。
 我が母の場合だが父と結婚し、その後、父に女が出来、浮気の末に蒸発。生きているか、死んでいるかもわからない。
 母は私を育てるために奮闘するが、病が発覚し、闘病の末、2年前に亡くなったのだ。


「で、その子はなんや、なんや気持ち悪いわ」
と祖母ふく子がコンちゃんを睨みつけたのだ。
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