6 / 28
第一章
第5話 京町家に捨てられていた犬
しおりを挟む
京阪深草駅の近くのパーキングに車を停めると井ノ上さんと私は物件まで歩く、直違橋通りに面した古い京町家が見えてきた。
家の前に立つと屋根を歪んでおり、瓦も地震があれば落ちそうで年季の入った格子も黒かっだろう色は禿げているのが目に入る。
「宿……ないわ」
「そうだね、これは早く壊さないとあぶないね」
あまりの古さに驚愕した私と井ノ上さんは物件を呆然と見上げる。あまりの古さにこの家はないなと諦める。
井ノ上さんはカバンからデジカメを取り出すと周囲の様子をパシッ、パシッ、と撮り始めた。
京阪深草駅にも近い、通りの奥には踏切が見え、JR伏見稲荷駅があるとわかる、伏見稲荷大社にも近く、立地面ではかなり良い場所だ。
コン……
ふと、昔聴いたことのある獣の鳴き声を思い出す。
——動物の鳴き声??
「沙都ちゃん、どうした?」
「あっ、いえ、いえ」
家を不思議そう見上げていた私の姿を見た井ノ上さんはもしかしてお化けが見えたのかと心配そうに近づいてきた。
「お化けじゃないですよ、この大きな石、どうして家の前にあるのかなぁって」
お化けを心配している井ノ上さんの話を逸らそうと私は家の片隅に溶岩石かと思われるようなどデカい石のことを質問した。
「なんやろうね、撤去するのに費用が嵩むな…中に入ってみようか」
「はい」
井ノ上さんは借りてきた鍵を差し込む、鍵穴は開きにくく、何度もガチャ、ガチャと鍵を回していた。私は興味本位で大きな岩に触れてみた。
バチンッ
と身体の中に電気が走った。
——何?!
「開いたよ、沙都ちゃん」
その瞬間、井ノ上さんも家の戸を開いたようだ。
ギィー、ガタ、ガタ、ガタ
いまにも戸は壊れそうで開けるのも一苦労だ。
二人で咳き込みながら誇りまみれの家の中に入ると二人で咳き込む。
「ゴホッ、ゴホッ」
「ゴホッ、これは内覧も大変だ、沙都ちゃん、本当にごめん」
「何度かリフォームされたみたいだけど、これは早く建て壊した方がいいかなぁ…いや、案外、柱はしっかりしてるな」
と住居の中にある通り庭を抜け、井ノ上さんはブツブツ言いながら壁や柱を真剣に見ている。
「井ノ上さん、奥に庭があるみたいなんでが見てきていいですか?」
「いいよ」
てく、てくと家の奥を抜け、扉を開けると庭に出た。日本庭園のようで池らしきものはあるが水は枯れており、周りの木々も荒れ放題だ。庭の奥を見ると汚れた灰色の蔵がある。
コン……
なぜか私は招かれているように歩き出し、蔵の前に立った。
コン……
——聴こえた、何がいる
蔵の扉をみると頑丈そうな鍵が掛かっている。
「流石に開かないやろ」
と鍵に手を触れる。
ガチャリ
「嘘…開いた」
扉も勝手に開き、何かが私を呼んでいる。
コン……コン…
私はこの泣き続ける獣に助けを求められているような気がして蔵の中に入り、鳴き声がする場所へと足を進める。
コン……コン…
私は奥へ行くと幾つもの桐箱が積み上げられていた。
「コン……」
声がする桐箱の中を開けると収納されている古い着物の上に痩せ細ってた小さな小さな獣が苦しそうに丸まっていたのだ。
「うそ?!犬??誰がこんな酷いことを?!」
私は急いで痩せ細った赤茶色の子犬を抱き抱える。犬は身体も冷たく、私は首に巻いていたストールで少しでも暖まるようにくるんでやる。
「ワンちゃん、大丈夫?」
私が犬に声を掛けると犬は薄らと目を開けた。その瞬間に私の力が一気に抜ける。
「ウッ……」
——立ちくらみがする…
「沙都ちゃーん?沙都ちゃーん?」
私は井ノ上さんの声を聞き、慌てて犬を抱えながら蔵を出る。
「井ノ上さん、すみません!」
「沙都ちゃん、どうしたん?それ、犬??」
「はい、誰かが閉じ込めたみたいで…」
「長い間、空き家やったからね、閉じ込めたんか、酷いことするな」
「本当に…
後で、動物病院に連れて行っていいですか?」
「そうしよう、だいたい中は見れたから行こうか?早く建て壊さないと危ないよ、この物件…」
井ノ上さんの言葉を聞いた子犬がピクリと動くとなぜか私の口が勝手に開く。
「わ、私、この空き家買います!この物件にします」
「突然、どうしたん?沙都ちゃん?」
「気に入りました!買います!」
私は突然に思っていないことを口走る。
まるで誰かに操られているように……
家の前に立つと屋根を歪んでおり、瓦も地震があれば落ちそうで年季の入った格子も黒かっだろう色は禿げているのが目に入る。
「宿……ないわ」
「そうだね、これは早く壊さないとあぶないね」
あまりの古さに驚愕した私と井ノ上さんは物件を呆然と見上げる。あまりの古さにこの家はないなと諦める。
井ノ上さんはカバンからデジカメを取り出すと周囲の様子をパシッ、パシッ、と撮り始めた。
京阪深草駅にも近い、通りの奥には踏切が見え、JR伏見稲荷駅があるとわかる、伏見稲荷大社にも近く、立地面ではかなり良い場所だ。
コン……
ふと、昔聴いたことのある獣の鳴き声を思い出す。
——動物の鳴き声??
「沙都ちゃん、どうした?」
「あっ、いえ、いえ」
家を不思議そう見上げていた私の姿を見た井ノ上さんはもしかしてお化けが見えたのかと心配そうに近づいてきた。
「お化けじゃないですよ、この大きな石、どうして家の前にあるのかなぁって」
お化けを心配している井ノ上さんの話を逸らそうと私は家の片隅に溶岩石かと思われるようなどデカい石のことを質問した。
「なんやろうね、撤去するのに費用が嵩むな…中に入ってみようか」
「はい」
井ノ上さんは借りてきた鍵を差し込む、鍵穴は開きにくく、何度もガチャ、ガチャと鍵を回していた。私は興味本位で大きな岩に触れてみた。
バチンッ
と身体の中に電気が走った。
——何?!
「開いたよ、沙都ちゃん」
その瞬間、井ノ上さんも家の戸を開いたようだ。
ギィー、ガタ、ガタ、ガタ
いまにも戸は壊れそうで開けるのも一苦労だ。
二人で咳き込みながら誇りまみれの家の中に入ると二人で咳き込む。
「ゴホッ、ゴホッ」
「ゴホッ、これは内覧も大変だ、沙都ちゃん、本当にごめん」
「何度かリフォームされたみたいだけど、これは早く建て壊した方がいいかなぁ…いや、案外、柱はしっかりしてるな」
と住居の中にある通り庭を抜け、井ノ上さんはブツブツ言いながら壁や柱を真剣に見ている。
「井ノ上さん、奥に庭があるみたいなんでが見てきていいですか?」
「いいよ」
てく、てくと家の奥を抜け、扉を開けると庭に出た。日本庭園のようで池らしきものはあるが水は枯れており、周りの木々も荒れ放題だ。庭の奥を見ると汚れた灰色の蔵がある。
コン……
なぜか私は招かれているように歩き出し、蔵の前に立った。
コン……
——聴こえた、何がいる
蔵の扉をみると頑丈そうな鍵が掛かっている。
「流石に開かないやろ」
と鍵に手を触れる。
ガチャリ
「嘘…開いた」
扉も勝手に開き、何かが私を呼んでいる。
コン……コン…
私はこの泣き続ける獣に助けを求められているような気がして蔵の中に入り、鳴き声がする場所へと足を進める。
コン……コン…
私は奥へ行くと幾つもの桐箱が積み上げられていた。
「コン……」
声がする桐箱の中を開けると収納されている古い着物の上に痩せ細ってた小さな小さな獣が苦しそうに丸まっていたのだ。
「うそ?!犬??誰がこんな酷いことを?!」
私は急いで痩せ細った赤茶色の子犬を抱き抱える。犬は身体も冷たく、私は首に巻いていたストールで少しでも暖まるようにくるんでやる。
「ワンちゃん、大丈夫?」
私が犬に声を掛けると犬は薄らと目を開けた。その瞬間に私の力が一気に抜ける。
「ウッ……」
——立ちくらみがする…
「沙都ちゃーん?沙都ちゃーん?」
私は井ノ上さんの声を聞き、慌てて犬を抱えながら蔵を出る。
「井ノ上さん、すみません!」
「沙都ちゃん、どうしたん?それ、犬??」
「はい、誰かが閉じ込めたみたいで…」
「長い間、空き家やったからね、閉じ込めたんか、酷いことするな」
「本当に…
後で、動物病院に連れて行っていいですか?」
「そうしよう、だいたい中は見れたから行こうか?早く建て壊さないと危ないよ、この物件…」
井ノ上さんの言葉を聞いた子犬がピクリと動くとなぜか私の口が勝手に開く。
「わ、私、この空き家買います!この物件にします」
「突然、どうしたん?沙都ちゃん?」
「気に入りました!買います!」
私は突然に思っていないことを口走る。
まるで誰かに操られているように……
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
5
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる