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第10話 逃亡、再び。
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アル様との2人の時間が私にとって大切になっている。一緒にお昼を食べようとか一緒に休憩しようとか誘ってくれるたび、ドキドキしながら彼との時間を過ごす。
アル様との時間は楽しく、苦にならない。好き、嫌いと聞かれると確実に好きだと言える。私は彼に恋をしているわ。
彼が私を見る眼差しはいつも熱く好意を抱いてもらているとわかる。
「ふぅー。」
と溜息をつく。
彼から贈ってもらったピンク色のガラスの万年筆を見つめながらボーっとしていると養父であるケーブル侯爵から声がかかる。
「ジュリー、いいか?」
「はい。只今参ります。」
「何か御用ですか?」
「まぁ、座ってゆっくり話そう。」
「はい、失礼します。」
「実はだな、よく財務室に来る彼からジュリーに婚約の打診があった。」
「あぁ。。」
「ジュリーにそれらしき話はしているんだな。彼の身分については聞いたか?」
「いえ、何も。宰相室のアル様しか聞いてません。」
「なに?!
あれだけちゃんと話してくれと頼んだのに~。」
と頭を抱える養父。
「どうかされたんですか?お父様?」
「この婚約の打診は王命だ。拒否することは出来ない。」
「はぁ?王命?意味がわかりませんわ。」
「彼はこの国の皇太子であるアルバート様だ。財務室には官司の振りをしてジュリーに会いに来ていたんだ。
アルバート様から身分について話すと聞いていたから我々もお前に言うのを黙っていたんだ。」
それから養父が何を話をしていたのが全く頭に入らなくかった。
アルバート様が王族…やばい。
私の身分がバレる。
彼の弟はあいつだ。
私のことも知っている。
逃げなくては。
自国に居場所が知られてしまう。
机に戻るとすぐにカルヴァス国のアイデンにSOSの手紙を送る。
『やばい、身分がバレた。
逃亡する。
助けて。
ジュリアンヌ』
養父には気分が悪いので家に帰ると伝え家に戻った。
私は逃亡の準備の為に稼いだお金を引き出し、身作りを始める。
思わず、ガラスの万年筆は持ってきてしまった。割れないように鞄の奥に仕舞う。
よりによってどうして皇太子なのよ…
身分を隠しての入国は反逆罪となる。
あっちだって身分隠してたんだからおあいこじゃないと思うが自国の宰相との結婚嫌で逃亡している王女とバレたら皇太子は自国へ送還するかもしれない。
我が国がそう要求するかもしれない…
ブルブルと身震いしながら朝が明けるのを待つ。
ひとまず、隣国に逃亡して先を考えよう。
夜が明けるのを待ち、こっそりと窓から抜けだす。街まではかなり歩く必要が有る。
馬鹿でかい屋敷を恨む。
なんとか屋敷を抜けて街に向かうと幾つか灯りがこちらに向かっていると気づく。まさかねぇと思いながら念の為木陰に隠れる。
かなりの馬に乗った騎士達が走り去った。
朝から事件かなぁ、お仕事大変ですね。
頑張ってくださいと心で思いながらてくてくと街まで歩く。
ふぅ~とようやく一息つくと、隣国行きの馬車乗り場を見つける。
切符を購入し、列に並ぼうとするとドンと壁に押され大きな影が私を覆う。
「見つけた。」
はぁ、はぁと息づかい荒く男性か言う。
「アルバート様…」
「逃げるつもりだった?」
「えっ…」
獲物を狙う眼差しで私を見つめるアルバート様。
「逃がさないから。」
と私をきつく抱き締めていきなり深い口付けをしてきた。
息ができない…
背中をバンバンと叩く。
「兄上、ジュリー姉さんが酸欠になるよ。」
と私達を引き離してくれた。
「はぁ、はぁ、はぁ。」
「すまない、ジュリー嬢。」
アルバート様は背中をさすってくれた。
「ジュリー姉さん、流石に逃げ足早いね。
兄上がジュリー姉さんに密偵と護衛つけていなかったら今頃逃げられたんじゃない。」
「密偵と護衛?」
「気にするな。」
「気になるわよ!えっ!!」
とひょいとギルバートに抱き抱えられたジュリンヌは耳元で囁かれる。
「私から逃げようなんてお仕置きだな。」
うるっと涙ぐみながらジュリアンヌはアルバートに
「私をグリード王国に送還するのですか?」
と聞く。
アルバートは首を振り、
「大丈夫だよ。私のお姫様。
あの国には絶対に渡さないからね。」
安堵したジュリアンヌはポロポロと涙を流す。
「必死に逃げてきたんだね。」
と優しい背中を撫でる。
「ジュリアンヌ王女は保護出来た。城に戻るぞ!」
アルバートが騎士達に声をかけ、そして用意された馬車にジュリアンヌを乗せた。
アル様との時間は楽しく、苦にならない。好き、嫌いと聞かれると確実に好きだと言える。私は彼に恋をしているわ。
彼が私を見る眼差しはいつも熱く好意を抱いてもらているとわかる。
「ふぅー。」
と溜息をつく。
彼から贈ってもらったピンク色のガラスの万年筆を見つめながらボーっとしていると養父であるケーブル侯爵から声がかかる。
「ジュリー、いいか?」
「はい。只今参ります。」
「何か御用ですか?」
「まぁ、座ってゆっくり話そう。」
「はい、失礼します。」
「実はだな、よく財務室に来る彼からジュリーに婚約の打診があった。」
「あぁ。。」
「ジュリーにそれらしき話はしているんだな。彼の身分については聞いたか?」
「いえ、何も。宰相室のアル様しか聞いてません。」
「なに?!
あれだけちゃんと話してくれと頼んだのに~。」
と頭を抱える養父。
「どうかされたんですか?お父様?」
「この婚約の打診は王命だ。拒否することは出来ない。」
「はぁ?王命?意味がわかりませんわ。」
「彼はこの国の皇太子であるアルバート様だ。財務室には官司の振りをしてジュリーに会いに来ていたんだ。
アルバート様から身分について話すと聞いていたから我々もお前に言うのを黙っていたんだ。」
それから養父が何を話をしていたのが全く頭に入らなくかった。
アルバート様が王族…やばい。
私の身分がバレる。
彼の弟はあいつだ。
私のことも知っている。
逃げなくては。
自国に居場所が知られてしまう。
机に戻るとすぐにカルヴァス国のアイデンにSOSの手紙を送る。
『やばい、身分がバレた。
逃亡する。
助けて。
ジュリアンヌ』
養父には気分が悪いので家に帰ると伝え家に戻った。
私は逃亡の準備の為に稼いだお金を引き出し、身作りを始める。
思わず、ガラスの万年筆は持ってきてしまった。割れないように鞄の奥に仕舞う。
よりによってどうして皇太子なのよ…
身分を隠しての入国は反逆罪となる。
あっちだって身分隠してたんだからおあいこじゃないと思うが自国の宰相との結婚嫌で逃亡している王女とバレたら皇太子は自国へ送還するかもしれない。
我が国がそう要求するかもしれない…
ブルブルと身震いしながら朝が明けるのを待つ。
ひとまず、隣国に逃亡して先を考えよう。
夜が明けるのを待ち、こっそりと窓から抜けだす。街まではかなり歩く必要が有る。
馬鹿でかい屋敷を恨む。
なんとか屋敷を抜けて街に向かうと幾つか灯りがこちらに向かっていると気づく。まさかねぇと思いながら念の為木陰に隠れる。
かなりの馬に乗った騎士達が走り去った。
朝から事件かなぁ、お仕事大変ですね。
頑張ってくださいと心で思いながらてくてくと街まで歩く。
ふぅ~とようやく一息つくと、隣国行きの馬車乗り場を見つける。
切符を購入し、列に並ぼうとするとドンと壁に押され大きな影が私を覆う。
「見つけた。」
はぁ、はぁと息づかい荒く男性か言う。
「アルバート様…」
「逃げるつもりだった?」
「えっ…」
獲物を狙う眼差しで私を見つめるアルバート様。
「逃がさないから。」
と私をきつく抱き締めていきなり深い口付けをしてきた。
息ができない…
背中をバンバンと叩く。
「兄上、ジュリー姉さんが酸欠になるよ。」
と私達を引き離してくれた。
「はぁ、はぁ、はぁ。」
「すまない、ジュリー嬢。」
アルバート様は背中をさすってくれた。
「ジュリー姉さん、流石に逃げ足早いね。
兄上がジュリー姉さんに密偵と護衛つけていなかったら今頃逃げられたんじゃない。」
「密偵と護衛?」
「気にするな。」
「気になるわよ!えっ!!」
とひょいとギルバートに抱き抱えられたジュリンヌは耳元で囁かれる。
「私から逃げようなんてお仕置きだな。」
うるっと涙ぐみながらジュリアンヌはアルバートに
「私をグリード王国に送還するのですか?」
と聞く。
アルバートは首を振り、
「大丈夫だよ。私のお姫様。
あの国には絶対に渡さないからね。」
安堵したジュリアンヌはポロポロと涙を流す。
「必死に逃げてきたんだね。」
と優しい背中を撫でる。
「ジュリアンヌ王女は保護出来た。城に戻るぞ!」
アルバートが騎士達に声をかけ、そして用意された馬車にジュリアンヌを乗せた。
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