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第9話 ジュリアンヌの恋への足音
しおりを挟む一緒に街に出かけてからアルバート様はまめに財務室にやってくるようになる。
求婚までされている私は彼を自然と意識してしまう。彼のことを考えていると、不思議と私の前に彼は現れる。
「ジュリー嬢、昼食べたか?」
「はっ!びっくりした、アル様じゃないですか?いついらっしゃたの?」
「ついさっきだよ。お昼を一緒にどうかと思ってね。」
「まだです。一緒に食べに行きます?」
「あぁ、是非。」
2人で食堂へ向かうと何人かの官司がギョッと私を見た。
久しぶりに食堂に来たがそんなに私はみんなを怖がらせているのかしら?と首を傾げると、横に立っていたアル様がにこりと笑いかけてきた。
私もつい彼の微笑みににこりと笑い返す。
「ねぇ、どうしてトレイ取らないんですの?」
「トレイ?
実は忙しくて食堂に来たのは初めてなんだ。」
私はびっくりしてポカンとする。
「わ、わかりますわ、私も食堂じゃなくてお弁当を作ってもらうことが多いですから。」
「今日はお弁当と言うものを持って来てたのか?」
「えぇ。
でも、大丈夫よ。
忙しい同僚に渡したの。
我が家のサンドイッチは美味しくて同僚も喜んでいたわ。
魚と肉を選ぶんだけどどっちがお好み?」
「じゃあ、肉だ。」
「肉と魚を下さい。」
「メインのプレートを受け取ったらサラダやスープ、パンを乗せていくのよ。」
「パンは何個いります?」
「3個欲しい。」
「ふふふ、よく食べるのね。」
位がきっと上の彼に色々教えてあげれてちょっぴり嬉しい気分になる。
まわりを見渡し窓側の席を選ぶとなぜがさーっと周りが引いていく。
「もう、食堂に来るのは止めようかしら。」
「どうして?」
「どうしても。」
きっと私がみんなを怖がらせているからだわ。
「その魚も美味しそうだな。」
私は食べやすいサイズに切りフォークに刺しアル様の前に差し出す。
「味見していいわよ、アーン。」
彼は一緒驚いた顔をし顔を赤らめた。
ふふふ、可愛い方ね。
すぐにパクりと食べと肉を切り私に差し出す。
「お返し。」
アル様は、顔を赤らめたままフォークを刺し出した。
パクりと私も肉を食べる。
「ふふふ。美味しいわね。色々な味を楽しめるわね。」
「よく、こういうことするのか…。」
「えっ??学生の頃しなかったの?」
「しないよ。」
「女子はよくするわ。ケーキを食べに行くと色々な味を食べたいからみんなで分け合うのよ。」
「女子ね…。」
アル様は安堵の表情を浮かべているようだわ。
「明日は朝から忙しくて、夕方一緒に休憩も兼ねてお茶しないか?」
「いいわよ。
どこに行けばいい?」
「あーっ…。迎えに行くよ。」
「わかったわ。」
彼からのお茶のお誘いに嬉しいって心が踊ってしまうわ。
この気持ちってアル様の事を…。
翌日の夕刻、アル様は自らの職場に案内してくれた。
「どうぞ。」
なんだか財務室と違う豪華な部屋だった。
「あなたの仕事は何ですの?
この部屋すごく豪華ね。」
「あぁーー、王族関連の仕事で機密内容も多くて詳しく話せないんだ。」
確かに部屋には官司の姿はなく彼、一人のようだ。
「さぁ、ジュリー嬢、召し上がれ。」
テーブルの上には3段のお皿にケーキ、スコーン、サンドイッチとお皿とお揃いの可愛らしい花柄のティーセットが置かれていた。
「きゃー、これぞ女子の憧れアフタヌーンティーよ!!」
私は、まさか今世でアフタヌーンティーを出来るとは思わず両手を握りしめ歓喜した。
「アフタヌーンティー??」
「いえ、いえ、気になさらないで。
でも、よく私が説明した内容覚えていたわね。3段のプレートに上からケーキ、サンドイッチ、スコーンが乗っているって話したこと。」
「いや、特注で作らせたから。」
「えっ?何?」
「なんでもないよ。」
「この世界にも3段プレートがあるのね。」
「えっ?この世界?」
「この世界は最高って言ったのよ、
おほほほ。」
「さぁ、座って。」
「ありがとう。」
「じゃあ、紅茶を淹れるわね。
あら、すごくいい温度ね…。
誰が準備したの…。」
「君を呼びに言ってる時に侍女にお願いしたんだ。
あははは。」
「そう…。さぁ、紅茶をどうぞ。
私も早速、スコーンから頂くわ。
パク。
うーん!懐かしい味だわ。
パク。
サンドイッチも美味しいわ。
パク。
ケーキも甘さ控えめで私好みだわ。」
「厨房に甘さ控えめで作るよう指示したんだ。」
「指示?
かなりあなた上の位の官僚なのね。」
「そうだね、上と言えば上だね。
あははは。」
「あなた、上の方なら今の官司で扱っている書類を統一した定型にすることはできないかしら?
書式が決まっていたら作成も楽だと思うのよ。
無駄を省きたいのよ。
どうかしら?」
「よい考えだな。」
「書物も印刷を使っているじゃない?
書類も書式化した物を印刷できる?」
「できるさ、上に君の考えを話しておこう。」
「ありがとう。」
「やはり、君と話すのは楽しいよ。」
「私も仕事の話ができて、私の意見を聞いてくれるからすごく楽しいわ。」
と私の胸はなんだか温かな思いに満たされてる。
2人で過ごす休憩時間もあっという間に過ぎてしまう。寂しいけれど自分の仕事に戻らなくてはいけない。
「じゃあ、そろそろ、財務室に戻るわね。」
「財務室まで送るよ。」
「ありがとう、大丈夫よ。図書館にも寄りたいから右の角の階段を降りて1番下まで行けばいいわよね。」
「あぁ。」
「じゃあね。」
「また会いに行くよ。」
アル様の熱い眼差しが私を見つめてくる。照れを隠しながら部屋から出る。
階段を降りようとすると、
懐かしい奴の声が聞こえてた。
「あれっ?もしかして…ジュリー姉さん?」
「違います!人違いです!」
私は奴の顔も見ず慌てて階段を降りた。
そうだ、あの馬鹿なアーサー王子のホームだよ。ここは。
あいつにだけは会わないように気をつけないと思っていたが、まさか、まさか、アーサーが私のことをアーサーの兄に話すとは思いもしなかったのである。
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