8 / 11
第8話 恋は突然に ーアルバート目線ー
しおりを挟む
私の名はアルバート・ラッセルブルク。この国の皇太子であり、次期王位継承者だ。日々自分の業務で手がいっぱいなのだが、最近見つけた息抜きの為に執務室を抜けた出し、本来は私の仕事ではない書類を待って財務室へ向かう。
息抜きである財務室にいる彼女に会うことが最近の私の楽しみだ。
財務室へ入ると官司達がまた来たのかと言う目で私を見てくる。失礼な奴等だ。
「アルバート殿下。
ジュリー嬢は今、休憩中でいらっしゃいません。」
官司の1人が話しかけてきた。
ケーブル侯爵も奥の部屋から出てきた。
ケーブル侯爵までもまた小言を言うつもりだな。
「アルバート殿下、またいらっしゃたんですか?
よく官司の振りをして来れますね。
いつか、我が娘にばれますよ。
騙していると分かって嫌われても知りませんからね。さっさと素性を話をして下さい。私達も騙しているようでつらいのです。」
と侯爵が話すと官司達は一斉に頷いた。
「わかった。彼女は?」
侯爵は窓の外を指指すと、
「ジュリーは木陰で本を読みながら遅い昼食を取っています。」
と教えてくれた。
外を見ると木陰に座っている人影が見える。
「この後、彼女を街に連れ出したいがいいだろうか?」
侯爵は一瞬驚いた表情をしたが承諾してくれた。
木陰に行くと彼女はすやすやと眠っていた。こんな場所で寝て無防備な姿を見せつけたら危ないじゃないかと苛立ちを覚える。
彼女の肩を揺らし、
「ジュリー嬢、こんな所で寝たら風邪を引くよ。」
「うん、えっ?寝てた?
起こして頂きありがとうございます。
あなたは…宰相室のアルさんでしたっけ。」
「名前覚えてくれたんだな。」
「そりゃ、覚えますよ。あなたと宰相室のアシュレイ様が毎日頻繁に来るですから。」
「アシュレイもくるのか?」
「この前のお詫びにお菓子を持って来てくださったり、書類についての質疑応答をしたりでしょうかね。」
アシュレイ…
まさかおまえもかと焦りを覚える。
気持ちを切り替え彼女を誘う。
「今から街に行って息抜きに行かないか?
侯爵の許可を取っている。」
彼女が財務室の方を見ると侯爵が手を振っているのが見えた。
ケーブル、役に立つじゃないかと心の中で笑う。
「街ですか…。
実はまだ街に行ってなくて案内してもらえますか?
文具店に行きたいなぁと思っていたのです。」
恥ずかしそうにもじもじと話す彼女が愛らしく見える。
間違いない。
私は彼女に惹かれている。
仕事で見せる厳しい表情の彼女も素敵だが、初めて見る街の様子に興奮気味な彼女も可愛らしい。
私はかなり末期症状かもしれないな…
アシュレイに先を越されては行けないな。
文具店に案内すると店員から万年筆の場所を聞き探し出す。
「どれにしようかなぁ。」
「誰かに送るのか?」
少し心配になり聞いてみる。
「いえ、支給されている万年筆でいいんですが、お気に入りの万年筆があれば仕事が頑張れるじゃないですか。」
「確かに使いやすい物なら仕事は捗るな。」
「でしょう。」
とくす、くすと笑う彼女。
やはり、仕事の顔よりリラックスをしている笑った顔がかわいい。
ジュリー嬢は気に入った物を見つけた。
「これをください。」
「店主よ、金は私が払う。」
「いや、悪いですよ。」
「気にするな。忙しい君を街に誘ったんだお礼として受け取ってくれ。」
「ありがとうございます。」
ジュリー嬢は嬉しいそうに微笑んでくれた。
その後、街並みを案内してジュリー嬢を人気のカフェに案内する。
「うわぁ、カフェに行きたかったんです。」
「好きな物を頼んでくれ。」
「では、お言葉に甘えてまして、ケーキ3つは食べれるわね…」
とぶつぶつ1人で話しながら、ケーキを3個を頼み、ペロリと平らげた。
「アル様、この店のケーキ美味しいですね!また、個室に案内して頂けるとはアル様は貴族の方でしょうか?」
「貴族…そういうものかな…。」
「私、ミッテン領で執事見習いをしていたんですがその時に泊まられた方ですよね。」
「そうだ。覚えてくれたのか?」
「もちろんですよ!
アル様はなかなかの男前ですからね…
あっ、失礼しました。
綺麗な顔立ちの貴族様でいらっしゃると思っていましまからね。」
男前か…脈はあるか。
「ジュリー嬢にそう言ってもらえると嬉しいよ。」
甘い物が好きらしく、どのケーキが美味しいなど熱く語ってくれる彼女を見ているだけで幸せに気分になる。
他国には皿が3段になってケーキやオードブルが乗っているものがあるらしく博識家の彼女の話を聞くのは面白い。
仕事の話をするとあの付箋を考案したのも彼女だった。
なかなか感性の鋭い賢い娘だと思った。
欲しい。
私を側で支える我が妻には彼女がいい。
じっと彼女を見つける。
「なんだか背筋が寒いわ。春先だから寒いんでしょうかね。」
とふふふと笑った。
「ジュリー嬢はケーブル侯爵の娘なのだから結婚相手は考えているのか?」
「結婚?
あぁ~。」
「まさか、アシュレイが求婚して来たのか?」
「アシュレイ様?
ない、ない、ないですよ。
それにあの方、頭硬いでしょう。
ここだけの話、一緒にいたら息が詰まりますわ。
結婚は…。
一応ケーブル侯爵の養女になりましたからいつかとは思っていますが、結婚するなら安定職業の官司の方かお強い騎士もいいですわ。あと、優しくて思いやりがあって女癖が悪くない方なら誰でもいいですわね!」
「全て私に当てはまってるじゃないか。」
「……。どこが??」
「職業的に安定してるだろう、仕事内容は官司のようなものだし、あと毎日鍛えているから騎士にも負けない。
優しくて思いやりがあると思うし、女癖は悪くないと断言できる!」
「そうなのですか…
アル様は、女性の扱いがお上手だから婚約者の方がいらっしゃるか、もしかして結婚されているかと思いましたわ。」
「………。
していないが…。」
「失礼致しました。
お話上手なのできっとモテるだろうと思いまして。」
ふふと笑う彼女に真面目な顔で話す。
「貴女の気を引こうと必死なのだ。
私を結婚相手に考えてくれないだろうか…」
「えっ?!結婚??
うーん、私はまだ仕事を始めたばかりで結婚は考えてないんです。
あと養父と養母にも相談しないといけませんから…」
「意中の人はいない?」
「いないですけど…
あなたを選ぶとは限りませんよ。」
「あぁ、わかってる。
頑張って振り向いてもらえるようにアプローチするよ。」
とウインクすると彼女は顔を赤くして照れを隠すように紅茶の入ったカップをゴクリと飲んだ。
私は時間があれば彼女の元へ向かい昼や休憩を共にしてアプローチを続けた。
私のあからさまなアプローチは父や母の耳にも届く。
そして、父や母にも結婚したい相手がいると伝えた。母は身分の低い貴族の出であるから周りにも強いて身分についてあまりうるさい言われなかった。
妃に考えているからと周りに知られたら彼女に危険が及ぶかもしれないと彼女には内密で護衛と影も付ける。
彼女に逃げられないようにと外堀を埋めて行かなくてはと思案していると執務室に弟がやって来た。
昔から問題を起こす頼りない弟だか学校に入ってから少しずつまともになってきていると安心していたが、また、何か問題起こすのでないかと警戒する。
「また、何か問題を起こしたのか…」
「兄上…違いますよ。実は…」
弟から衝撃的な事実を聞かされた私は
大きな決断を迫られるのだ。
息抜きである財務室にいる彼女に会うことが最近の私の楽しみだ。
財務室へ入ると官司達がまた来たのかと言う目で私を見てくる。失礼な奴等だ。
「アルバート殿下。
ジュリー嬢は今、休憩中でいらっしゃいません。」
官司の1人が話しかけてきた。
ケーブル侯爵も奥の部屋から出てきた。
ケーブル侯爵までもまた小言を言うつもりだな。
「アルバート殿下、またいらっしゃたんですか?
よく官司の振りをして来れますね。
いつか、我が娘にばれますよ。
騙していると分かって嫌われても知りませんからね。さっさと素性を話をして下さい。私達も騙しているようでつらいのです。」
と侯爵が話すと官司達は一斉に頷いた。
「わかった。彼女は?」
侯爵は窓の外を指指すと、
「ジュリーは木陰で本を読みながら遅い昼食を取っています。」
と教えてくれた。
外を見ると木陰に座っている人影が見える。
「この後、彼女を街に連れ出したいがいいだろうか?」
侯爵は一瞬驚いた表情をしたが承諾してくれた。
木陰に行くと彼女はすやすやと眠っていた。こんな場所で寝て無防備な姿を見せつけたら危ないじゃないかと苛立ちを覚える。
彼女の肩を揺らし、
「ジュリー嬢、こんな所で寝たら風邪を引くよ。」
「うん、えっ?寝てた?
起こして頂きありがとうございます。
あなたは…宰相室のアルさんでしたっけ。」
「名前覚えてくれたんだな。」
「そりゃ、覚えますよ。あなたと宰相室のアシュレイ様が毎日頻繁に来るですから。」
「アシュレイもくるのか?」
「この前のお詫びにお菓子を持って来てくださったり、書類についての質疑応答をしたりでしょうかね。」
アシュレイ…
まさかおまえもかと焦りを覚える。
気持ちを切り替え彼女を誘う。
「今から街に行って息抜きに行かないか?
侯爵の許可を取っている。」
彼女が財務室の方を見ると侯爵が手を振っているのが見えた。
ケーブル、役に立つじゃないかと心の中で笑う。
「街ですか…。
実はまだ街に行ってなくて案内してもらえますか?
文具店に行きたいなぁと思っていたのです。」
恥ずかしそうにもじもじと話す彼女が愛らしく見える。
間違いない。
私は彼女に惹かれている。
仕事で見せる厳しい表情の彼女も素敵だが、初めて見る街の様子に興奮気味な彼女も可愛らしい。
私はかなり末期症状かもしれないな…
アシュレイに先を越されては行けないな。
文具店に案内すると店員から万年筆の場所を聞き探し出す。
「どれにしようかなぁ。」
「誰かに送るのか?」
少し心配になり聞いてみる。
「いえ、支給されている万年筆でいいんですが、お気に入りの万年筆があれば仕事が頑張れるじゃないですか。」
「確かに使いやすい物なら仕事は捗るな。」
「でしょう。」
とくす、くすと笑う彼女。
やはり、仕事の顔よりリラックスをしている笑った顔がかわいい。
ジュリー嬢は気に入った物を見つけた。
「これをください。」
「店主よ、金は私が払う。」
「いや、悪いですよ。」
「気にするな。忙しい君を街に誘ったんだお礼として受け取ってくれ。」
「ありがとうございます。」
ジュリー嬢は嬉しいそうに微笑んでくれた。
その後、街並みを案内してジュリー嬢を人気のカフェに案内する。
「うわぁ、カフェに行きたかったんです。」
「好きな物を頼んでくれ。」
「では、お言葉に甘えてまして、ケーキ3つは食べれるわね…」
とぶつぶつ1人で話しながら、ケーキを3個を頼み、ペロリと平らげた。
「アル様、この店のケーキ美味しいですね!また、個室に案内して頂けるとはアル様は貴族の方でしょうか?」
「貴族…そういうものかな…。」
「私、ミッテン領で執事見習いをしていたんですがその時に泊まられた方ですよね。」
「そうだ。覚えてくれたのか?」
「もちろんですよ!
アル様はなかなかの男前ですからね…
あっ、失礼しました。
綺麗な顔立ちの貴族様でいらっしゃると思っていましまからね。」
男前か…脈はあるか。
「ジュリー嬢にそう言ってもらえると嬉しいよ。」
甘い物が好きらしく、どのケーキが美味しいなど熱く語ってくれる彼女を見ているだけで幸せに気分になる。
他国には皿が3段になってケーキやオードブルが乗っているものがあるらしく博識家の彼女の話を聞くのは面白い。
仕事の話をするとあの付箋を考案したのも彼女だった。
なかなか感性の鋭い賢い娘だと思った。
欲しい。
私を側で支える我が妻には彼女がいい。
じっと彼女を見つける。
「なんだか背筋が寒いわ。春先だから寒いんでしょうかね。」
とふふふと笑った。
「ジュリー嬢はケーブル侯爵の娘なのだから結婚相手は考えているのか?」
「結婚?
あぁ~。」
「まさか、アシュレイが求婚して来たのか?」
「アシュレイ様?
ない、ない、ないですよ。
それにあの方、頭硬いでしょう。
ここだけの話、一緒にいたら息が詰まりますわ。
結婚は…。
一応ケーブル侯爵の養女になりましたからいつかとは思っていますが、結婚するなら安定職業の官司の方かお強い騎士もいいですわ。あと、優しくて思いやりがあって女癖が悪くない方なら誰でもいいですわね!」
「全て私に当てはまってるじゃないか。」
「……。どこが??」
「職業的に安定してるだろう、仕事内容は官司のようなものだし、あと毎日鍛えているから騎士にも負けない。
優しくて思いやりがあると思うし、女癖は悪くないと断言できる!」
「そうなのですか…
アル様は、女性の扱いがお上手だから婚約者の方がいらっしゃるか、もしかして結婚されているかと思いましたわ。」
「………。
していないが…。」
「失礼致しました。
お話上手なのできっとモテるだろうと思いまして。」
ふふと笑う彼女に真面目な顔で話す。
「貴女の気を引こうと必死なのだ。
私を結婚相手に考えてくれないだろうか…」
「えっ?!結婚??
うーん、私はまだ仕事を始めたばかりで結婚は考えてないんです。
あと養父と養母にも相談しないといけませんから…」
「意中の人はいない?」
「いないですけど…
あなたを選ぶとは限りませんよ。」
「あぁ、わかってる。
頑張って振り向いてもらえるようにアプローチするよ。」
とウインクすると彼女は顔を赤くして照れを隠すように紅茶の入ったカップをゴクリと飲んだ。
私は時間があれば彼女の元へ向かい昼や休憩を共にしてアプローチを続けた。
私のあからさまなアプローチは父や母の耳にも届く。
そして、父や母にも結婚したい相手がいると伝えた。母は身分の低い貴族の出であるから周りにも強いて身分についてあまりうるさい言われなかった。
妃に考えているからと周りに知られたら彼女に危険が及ぶかもしれないと彼女には内密で護衛と影も付ける。
彼女に逃げられないようにと外堀を埋めて行かなくてはと思案していると執務室に弟がやって来た。
昔から問題を起こす頼りない弟だか学校に入ってから少しずつまともになってきていると安心していたが、また、何か問題起こすのでないかと警戒する。
「また、何か問題を起こしたのか…」
「兄上…違いますよ。実は…」
弟から衝撃的な事実を聞かされた私は
大きな決断を迫られるのだ。
0
お気に入りに追加
24
あなたにおすすめの小説

冤罪から逃れるために全てを捨てた。
四折 柊
恋愛
王太子の婚約者だったオリビアは冤罪をかけられ捕縛されそうになり全てを捨てて家族と逃げた。そして以前留学していた国の恩師を頼り、新しい名前と身分を手に入れ幸せに過ごす。1年が過ぎ今が幸せだからこそ思い出してしまう。捨ててきた国や自分を陥れた人達が今どうしているのかを。(視点が何度も変わります)
拝啓、許婚様。私は貴方のことが大嫌いでした
結城芙由奈@コミカライズ発売中
恋愛
【ある日僕の元に許婚から恋文ではなく、婚約破棄の手紙が届けられた】
僕には子供の頃から決められている許婚がいた。けれどお互い特に相手のことが好きと言うわけでもなく、月に2度の『デート』と言う名目の顔合わせをするだけの間柄だった。そんなある日僕の元に許婚から手紙が届いた。そこに記されていた内容は婚約破棄を告げる内容だった。あまりにも理不尽な内容に不服を抱いた僕は、逆に彼女を遣り込める計画を立てて許婚の元へ向かった――。
※他サイトでも投稿中

【完結】皇太子の愛人が懐妊した事を、お妃様は結婚式の一週間後に知りました。皇太子様はお妃様を愛するつもりは無いようです。
五月ふう
恋愛
リックストン国皇太子ポール・リックストンの部屋。
「マティア。僕は一生、君を愛するつもりはない。」
今日は結婚式前夜。婚約者のポールの声が部屋に響き渡る。
「そう……。」
マティアは小さく笑みを浮かべ、ゆっくりとソファーに身を預けた。
明日、ポールの花嫁になるはずの彼女の名前はマティア・ドントール。ドントール国第一王女。21歳。
リッカルド国とドントール国の和平のために、マティアはこの国に嫁いできた。ポールとの結婚は政略的なもの。彼らの意志は一切介入していない。
「どんなことがあっても、僕は君を王妃とは認めない。」
ポールはマティアを憎しみを込めた目でマティアを見つめる。美しい黒髪に青い瞳。ドントール国の宝石と評されるマティア。
「私が……ずっと貴方を好きだったと知っても、妻として認めてくれないの……?」
「ちっ……」
ポールは顔をしかめて舌打ちをした。
「……だからどうした。幼いころのくだらない感情に……今更意味はない。」
ポールは険しい顔でマティアを睨みつける。銀色の髪に赤い瞳のポール。マティアにとってポールは大切な初恋の相手。
だが、ポールにはマティアを愛することはできない理由があった。
二人の結婚式が行われた一週間後、マティアは衝撃の事実を知ることになる。
「サラが懐妊したですって‥‥‥!?」

【完結】もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?
冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。
オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。
だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。
その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・
「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」
「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」

冤罪をかけられた上に婚約破棄されたので、こんな国出て行ってやります
真理亜
恋愛
「そうですか。では出て行きます」
婚約者である王太子のイーサンから謝罪を要求され、従わないなら国外追放だと脅された公爵令嬢のアイリスは、平然とこう言い放った。
そもそもが冤罪を着せられた上、婚約破棄までされた相手に敬意を表す必要など無いし、そんな王太子が治める国に未練などなかったからだ。
脅しが空振りに終わったイーサンは狼狽えるが、最早後の祭りだった。なんと娘可愛さに公爵自身もまた爵位を返上して国を出ると言い出したのだ。
王国のTOPに位置する公爵家が無くなるなどあってはならないことだ。イーサンは慌てて引き止めるがもう遅かった。
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。

王子妃教育に疲れたので幼馴染の王子との婚約解消をしました
さこの
恋愛
新年のパーティーで婚約破棄?の話が出る。
王子妃教育にも疲れてきていたので、婚約の解消を望むミレイユ
頑張っていても落第令嬢と呼ばれるのにも疲れた。
ゆるい設定です
5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?
gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。
そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて
「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」
もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね?
3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。
4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。
1章が書籍になりました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる