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第6話 ラッセルブルク国の高貴な方
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ジュリアンヌがカルヴァス国に来て執事見習いに採用されてから1年が過ぎた。
ジュリアンヌの長かった自慢の髪はばっさりと切り短めのおかっぱ髪に切り揃えられた。執事の服装である上下黒色の執事服を着ているジュリアンヌは一見すると少年のように見える。
今日も上司である執事のマイケルと屋敷の廊下で仕事の話をしながら歩いている。
「ジュリー、奥様のお客様の準備は大丈夫ですか?」
「はい、問題ありません。お部屋の準備とお食事に関しても手配済んでおります。問題は何泊されるかですね。」
「そうなのですよ。1泊とは聞いているんですがね…」
と執事のマイケルさんとうーんと考えこんでいると、
「マイケルさん、ジュリーさん!チェルシー村で崖崩れがあったみたいで応援を頼まれています。」
従者さんが駆け込んで来た。
「私が一緒に行きましょう!」
ジュリアンヌが提案すると、
「いや、ジュリーはお客様を。崖崩れだと男手がいるから私がいいでしょう。ジュリーは仕事ができる人なので
執事として立派にできるはずです。
お客様のこと頼みましたね。」
「はい。わかりました。頑張ります。執事長様もどうぞお気をつけて。」
うむと頷くと急ぎ準備を整え出発して行った。
ラッセルブルク国からカルヴァス国は最低でも馬車で2日かかるためカルヴァス国とラッセルブルクの境にある街で1泊するのが通例だ。
ラッセルブルク国の財務長官のノーブル侯爵の妻でありマリアンヌ夫人はラッセルブルク国の社交界に顔が知れ、甥の為にカルヴァス国のミッテン領に滞在している間は外遊の際の中継宿としてみなにお願いをされ高貴な方々がお泊まりになられる。滞在の際にカルヴァス国出身のマリアンヌ夫人から他国の有益な情報も得れると言う利点もあるからだ。
今回もマリアンヌ夫人の知り合いがやって来たのである。
「ようこそアルバート様。」
マリアンヌ夫人は礼をすると屋敷の者も一斉に頭を下げた。
金色の髪を後ろに留めた美形の長身の男性が屋敷に入ってきた。外套を脱ぎ従者に渡すと旅装束だか高貴な装いとわかる服を着ていた。
「久しぶりだな。甥の為に領地管理とは大変だな。」
「本当でございます。弟も甥達も学問に夢中で領地管理など目に向けてくれないのですよ。姉としては心配で心配で。甥の1人が学校を卒業すれば私もようやくラッセルブルクに帰れますわ。」
「社交界はマリアンヌ夫人に戻って来てほしい筈だ。今の社交界は華やかさが欠けているからなぁ。」
「ふふふ。早く戻るようにいたしますわ。ジュリー、アルバート様をお部屋に。」
「かしこまりました。」
ジュリアンヌは頭を下げるとアルバートを案内する。
「見ない顔だな。」
「一年前からこちらで執事として勉強させて頂いています。」
「執事になるのか?」
「いえ、今年にラッセルブルクの官僚試験を受けようと思い勉強中でございますこちらでは試験勉強しながら領地管理などの仕事を覚え経験を積んでおりまして……。こちらのお部屋でございます。
窓から湖が美しく眺めれます。
どうぞ、ごゆっくりお過ごし下さいませ。
ご出発は明日でよろしいですか?」
「あぁ。日が登り次第出発したい。」
「かしこまりました。
では、そのように準備致します。
浴室にお湯が張っておりますので旅のお疲れをお流し下さいませ。」
「あぁ。気が利くな。ありがとう。」
「失礼致します。」
パタンと扉が閉まると、
「男と思ったが声からにして女か…。」
アルバートの声が部屋に響いた。
「マリアンヌ様、お客様は明朝に出発
されるそうです。屋敷の者にはそのように対応するように伝えてます。」
「ありがとう。」
「マリアンヌ様、あの方はどのような身分の方ですか?」
「ごめんなさい。
一応、ここに来る人達は忍びでいらっしゃたりするから身分は屋敷の者には伝えないようにしてるの。
いつも通りの対応で良くってよ。」
「差し出がましい発言お許しください。
かしこまりました。」
私好みのなかなかの男前だったわ。きっとかなり上位の貴族だから私とは無縁な方でしょうねと思い、客の明日の準備を厨房に伝えに行こうと仕事に取り掛かった。
夕食前、高貴なお方が薄手の服で庭を散策している姿を見つけたジュリアンヌは、風邪を引かれてはいけないと思いガウンを片手に庭に走る。
「お客様。庭は冷えますのでよろしければガウンをお持ちしました。」
「あぁ、ありがとう。
気が利くな。
水辺だから少し肌寒いと感じていたのだ。」
ジュリアンヌは護衛にガウンを渡すと、護衛はガウンを確認した後、高貴の方に肩にかけた。
「では、失礼します。」
「待て。」
「はい?」
「ラッセルブルクで官司の試験を受けるのか?」
「はい。
女性でも差別なく働ける開けた国と聞いております。試験を受けれる年齢がきたら挑戦したいと考えています。」
「そうか…。」
高貴な方は嬉しいそうな表情を見せ、
頑張れよと言うと歩きだして行った。
この時、ジュリーは高貴な方がまさかラッセルブルク国に王子と話をしたとは思ってはいなかった。
ジュリアンヌの長かった自慢の髪はばっさりと切り短めのおかっぱ髪に切り揃えられた。執事の服装である上下黒色の執事服を着ているジュリアンヌは一見すると少年のように見える。
今日も上司である執事のマイケルと屋敷の廊下で仕事の話をしながら歩いている。
「ジュリー、奥様のお客様の準備は大丈夫ですか?」
「はい、問題ありません。お部屋の準備とお食事に関しても手配済んでおります。問題は何泊されるかですね。」
「そうなのですよ。1泊とは聞いているんですがね…」
と執事のマイケルさんとうーんと考えこんでいると、
「マイケルさん、ジュリーさん!チェルシー村で崖崩れがあったみたいで応援を頼まれています。」
従者さんが駆け込んで来た。
「私が一緒に行きましょう!」
ジュリアンヌが提案すると、
「いや、ジュリーはお客様を。崖崩れだと男手がいるから私がいいでしょう。ジュリーは仕事ができる人なので
執事として立派にできるはずです。
お客様のこと頼みましたね。」
「はい。わかりました。頑張ります。執事長様もどうぞお気をつけて。」
うむと頷くと急ぎ準備を整え出発して行った。
ラッセルブルク国からカルヴァス国は最低でも馬車で2日かかるためカルヴァス国とラッセルブルクの境にある街で1泊するのが通例だ。
ラッセルブルク国の財務長官のノーブル侯爵の妻でありマリアンヌ夫人はラッセルブルク国の社交界に顔が知れ、甥の為にカルヴァス国のミッテン領に滞在している間は外遊の際の中継宿としてみなにお願いをされ高貴な方々がお泊まりになられる。滞在の際にカルヴァス国出身のマリアンヌ夫人から他国の有益な情報も得れると言う利点もあるからだ。
今回もマリアンヌ夫人の知り合いがやって来たのである。
「ようこそアルバート様。」
マリアンヌ夫人は礼をすると屋敷の者も一斉に頭を下げた。
金色の髪を後ろに留めた美形の長身の男性が屋敷に入ってきた。外套を脱ぎ従者に渡すと旅装束だか高貴な装いとわかる服を着ていた。
「久しぶりだな。甥の為に領地管理とは大変だな。」
「本当でございます。弟も甥達も学問に夢中で領地管理など目に向けてくれないのですよ。姉としては心配で心配で。甥の1人が学校を卒業すれば私もようやくラッセルブルクに帰れますわ。」
「社交界はマリアンヌ夫人に戻って来てほしい筈だ。今の社交界は華やかさが欠けているからなぁ。」
「ふふふ。早く戻るようにいたしますわ。ジュリー、アルバート様をお部屋に。」
「かしこまりました。」
ジュリアンヌは頭を下げるとアルバートを案内する。
「見ない顔だな。」
「一年前からこちらで執事として勉強させて頂いています。」
「執事になるのか?」
「いえ、今年にラッセルブルクの官僚試験を受けようと思い勉強中でございますこちらでは試験勉強しながら領地管理などの仕事を覚え経験を積んでおりまして……。こちらのお部屋でございます。
窓から湖が美しく眺めれます。
どうぞ、ごゆっくりお過ごし下さいませ。
ご出発は明日でよろしいですか?」
「あぁ。日が登り次第出発したい。」
「かしこまりました。
では、そのように準備致します。
浴室にお湯が張っておりますので旅のお疲れをお流し下さいませ。」
「あぁ。気が利くな。ありがとう。」
「失礼致します。」
パタンと扉が閉まると、
「男と思ったが声からにして女か…。」
アルバートの声が部屋に響いた。
「マリアンヌ様、お客様は明朝に出発
されるそうです。屋敷の者にはそのように対応するように伝えてます。」
「ありがとう。」
「マリアンヌ様、あの方はどのような身分の方ですか?」
「ごめんなさい。
一応、ここに来る人達は忍びでいらっしゃたりするから身分は屋敷の者には伝えないようにしてるの。
いつも通りの対応で良くってよ。」
「差し出がましい発言お許しください。
かしこまりました。」
私好みのなかなかの男前だったわ。きっとかなり上位の貴族だから私とは無縁な方でしょうねと思い、客の明日の準備を厨房に伝えに行こうと仕事に取り掛かった。
夕食前、高貴なお方が薄手の服で庭を散策している姿を見つけたジュリアンヌは、風邪を引かれてはいけないと思いガウンを片手に庭に走る。
「お客様。庭は冷えますのでよろしければガウンをお持ちしました。」
「あぁ、ありがとう。
気が利くな。
水辺だから少し肌寒いと感じていたのだ。」
ジュリアンヌは護衛にガウンを渡すと、護衛はガウンを確認した後、高貴の方に肩にかけた。
「では、失礼します。」
「待て。」
「はい?」
「ラッセルブルクで官司の試験を受けるのか?」
「はい。
女性でも差別なく働ける開けた国と聞いております。試験を受けれる年齢がきたら挑戦したいと考えています。」
「そうか…。」
高貴な方は嬉しいそうな表情を見せ、
頑張れよと言うと歩きだして行った。
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