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126th 仮想ボクシング対決って?

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 無事勝利を収めた尻尾ワンことレットちゃん。
 しかし目立った方は仮想ボクシングで決めるという。

「仮想ボクシングって何」
「古来伝わるスポーツを、仮想データを作りこんで戦うんだよ。武器は使わず
グローブをはめて拳だけで殴りあうんだ。蹴りも使っちゃだめだ」
「どこを殴ってもいいの」
「急所でも認められてる危険なスポーツだけど、グローブがあるからね……
いや待てよ。レットちゃんが本気で殴ったらあの人、死んじゃうよな……殺さないよう
手加減して!」
「わかった。やってみる」

 仮想データを取り込んでいき、グローブをはめたレットちゃんが完成する。
 スイングを見ると、怖い音がヒュンヒュンとなっている。
 これで能力値オールゼロっていうのがよくわからない……。
 仮想データの数値は基本的に元の個体に依存するはずだ。

「さぁ始まります。仮想ボクシング対決! ルールは簡単。
 降参を認めるか、ダウン三回。休憩は無し。審判が止めても負けです。
仮想データで負った怪我は本体に影響ありませんのでご安心ください。
それでは美しい女性たちの闘いをご覧ください!」

 それを言いたかっただけじゃないかという競技設定だ。
 しかし、相手の釘紅スリーだったか。あの人もそっち側の住人ぽい。
 だがどちらかとういとあれは……「試合開始です! 先行したのは
釘紅スリー選手! 華麗な足技で……って足は使っちゃいけません!」
「別に攻撃しなければいいのよね。うふふ……」

 やっぱ足技を得意とする武術を習ってる人だな。
 にしても……パンチラが過ぎるぞ、この人。

「そうなの。なら私も」
「こ、これは両者大胆な足技移動を繰り返しております。ボクシングとは
何だったのか!?」

 二人ともどう見ても回し蹴りや踵落としを放っているが、あたってはいない。
 そしてここで、当然のようにレフェリーから注意が入る。

「両者ともに、脚を上げて攻撃するのは控えるように!」
「あらん。ダメなのぉ?」
「知らなかった」
「……今度からは禁止。一定以上行ったら反則負けとする」
「わかったわよ、つまらないわねぇ……上げなければいいのよね」
「蹴りでの攻撃は禁止! では開始!」

 とても残念そうに仕切り直しに入る両者。
 先ほどの女性の真似をしていたレットちゃんは真似するのを
やめて、相手選手へ拳を繰り出した。
 自分のグローブでガードすると……ロープのある場所まで吹き飛ばされ、ロープに
体を預けた。

「ぎゃあっ……なんて威力なの。嘘でしょ、信じられない……」
「この場合どうしたらいいの」
「ダウンしてない。続けて!」

 レフェリーに指示を仰ぐレットちゃん。
 ルールを把握していなかった……。

「尻尾ワン選手。どうやらルールを理解していない。
釘紅スリー、救われたー! しかし何という威力のストレートでしょう! 
相手を中央位置からロープ際まで吹き飛ばした。これはハードパンチャーの
登場かー!?」

 追い打ちをかけるレットちゃん。それに対して逃げるように回り込む
釘紅スリー。
 やはり足に自信があるようで、するすると身を翻し、レットちゃんの方が
ロープへ追い込まれた形となる。

「あらぁ。見逃してくれてありがと。今度は私の番ね。
あなたのパンチ、怖いけど当たらなければ平気だしねぇ……」
「この人、足が変」

 レットちゃんは追い込まれながらもパンチを繰り出すが、釘紅スリーのステップが
うまく、パンチがあたらない。
 レットちゃんも蹴りは凄まじいのだが、足を上げるなと言われてからの動きが
とても悪い。
 恐らく素直に意味を受け取り、足をまったく上げずに移動しているのだろう。
 そういう意味じゃないけどレットちゃんは何においても素直だ。

 防戦一方になってしまったレットちゃんが徐々に追い込まれていく。

「そっちはまずい! 抜け出せなくなる!」

 思わず叫んでしまったが、レットちゃんはコーナーに追い込まれていた。

「うふふふ……実際のボクシングなら三分で休憩だったのに、残念ねー……」
「いくわよ。私の勝ちーー!」

 勢いよく振りかぶった右ストレートがレットちゃんに決まる。
 そして、ドサリと倒れる釘紅スリー。
 
 いや、追い込まれたらさすがに叫びたくなるけど。
 相手はレットちゃんだった。
 
「これは! 仮想データが完全に破損! 勝者は尻尾ワン選手です! 
見事なカウンターが決まりました!」

 コーナーで位置が悪く見えてなかったのだろう。
 審判も特に何も言ってはいない。
 客も見えてなかったのかもしれない。
 あれほどの速さだ。見えてなくても当然だろう。
 だが……「あの子、腕ちぎってなげてたよねぇ……あれ、いいのぉ?」
「本来なら反則だろ……」
 
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