上 下
118 / 130

119th さらわれた!?

しおりを挟む
 子供がフェイクと気付いた紫電。
 それはマテリアラーズに入隊する前に受けた厳しい父からの訓練によるものだった。

「どうしてあの男が盗聴器で嘘ついてるって気づいたの?」
「犯罪者ってのはどれも狡猾で自分の利益を優先する奴ばかりなんだ。
あいつらが取り分を話していた時に、取り分の半分を要求しただろ? 
その時点で裏切るつもりがあったんだと判断した。
あの男はそもそも最初から一人でやるつもりだった。にもかかわらず仲間を受け入れた。
そこから矛盾は発生してたんだ」
「つまり最初から疑っていたのね」
「ああ。恐らくはだが、あの裏切られた男と女も仲間ってわけじゃない。
男の方は女に取り分を多く譲り納得させていたが……上手くいっていたら
どちらも裏切っていた可能性はある」
「その割に随分とあっさりあの男の罠にはまってたね」
「それなんだけど……これは多分だが、あの二人の狙いは他にあるんじゃないかな」
「え?」
「あの子供に偽装されたものがあった部屋って、他にも色々置いてあっただろ。
つまり危ない仕事の方じゃなくて、売れそうな物を拾い集めて売りさばいたり、取引の証拠を
つかんで通報し、金を頂くっていう方の仕事を受けてるんじゃないかな。
男の方は口数が少ないからわからなかったけど、あの女はどちらかというとペテン師や
詐欺師の類に思えた。つまり……」
「仕事が上手くいけばそれはそれでよくて、途中で失敗しても美味しいところをとる。
そんなところ?」
「推測だけどね……よし、ここまでくれば安全かな」

 俺たちはマンホールを抜け、足取りがつかないよう付近の公園の茂みから隠れつつ移動した。
 
「紫電、ストーーップ!」
「わわっ。どうしたニッキィ」
「あれ……見て」
「うん? あの黒ずくめのやつがどうかしたのか?」
「あれ、やばい商会のやつだよ。悪徳カンパニーで有名なの。何て言ったっけ……ボコボコ? 
デコボコ? カンパニーだったかなぁ」
「そんなあからさまに失敗しそうな社名、あるか?」
「うーん。何だっけ……」
「ボコボコにしていいの」
「ダメダメレットちゃん。落ち着いて。にしてもこんな公園近くで何してるんだ?」
「それ、受け取る用じゃない?」
「ああ……ここで引き渡しだったのか、これ。こんな危ない物を公園で……?」
「どうなんだろう? 危ないからこそ危なく無さそうな場所で取引するとか?」


 確かにニッキィの言う事も一理あるけど、本当にそうだろうか? 
 もしこれが、偽物の核だったとしたら……。
 いや、どのみち情報通りではあるはずだ。
 考えてもわからないし、一度ジェフさんにもっていってみなければ。

「あ……れ。あれって、ジェフさん? まさか」
「捕まっちゃったの??」

 後ろを縛られて車に乗せられるジェフさん。
 なぜだ……いや待てよ。あの男に貼った盗聴器なんかはジェフさんに提供してもらったやつだ。
 そこから足がついた可能性はある。
 これはまずいことになったな……。

 ここで車を追うのは危険すぎる。
 俺たちが取りましたと言っているのと同じだ。

「二人とも。ジェフさんの酒場に行ってみよう。
中に入る役目は俺が。ニッキィは核をしかるべき安全な場所へ配置してくれ」
「でも、もしかしたら取引にそれをよこせって言うかもしれないよね? 
安全なとこにやっちゃったらもう取り戻せないんじゃない?」
「大丈夫だ。俺はマテリアラーズだぞ? それにアルバメデスには誰がいると思ってるんだ」
「あーー! ミシー……」
「しっ。それ以上は禁句だぞ」
「もご……ペロペロ」
「おい! ペロペロするんじゃない!」
「えっへへー。わかってるよ! ニッキィだってばかじゃないもん!」
「作戦は決まったのね。まずはどうしたらいいの」
「まずは……」

 俺たちはさらわれたジェフさんを取り戻すべく行動を開始する。
 思ったより困難な任務になってしまったな……。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

オー、ブラザーズ!

ぞぞ
SF
海が消え、砂漠化が進んだ世界。 人々は戦いに備えて巨大な戦車で移動生活をしていた。 巨大戦車で働く戦車砲掃除兵の子どもたちは、ろくに食事も与えられずに重労働をさせられる者が大半だった。 十四歳で掃除兵として働きに出たジョンは、一年後、親友のデレクと共に革命を起こすべく仲間を集め始める。

不遇職「罠師」は器用さMAXで無双する

ゆる弥
SF
後輩に勧められて買ってみたVRMMOゲーム、UnknownWorldOnline(通称UWO(ウォー))で通常では選ぶことができないレア職を狙って職業選択でランダムを選択する。 すると、不遇職とされる「罠師」になってしまう。 しかし、探索中足を滑らせて落ちた谷底で宝を発見する。 その宝は器用さをMAXにするバングルであった。 器用さに左右される罠作成を成功させまくってあらゆる罠を作り、モンスターを狩りまくって無双する。 やがて伝説のプレイヤーになる。

のろい盾戦士とのろわれ剣士

5064atc
SF
2度目のVRMMOでレア装備を手に入れたオレは野良パーティーでゲームを遊んでいた ある日PC達と揉めている少女と出会う その少女はそのPC達に騙されて呪われた武器を装備させられたのだ オレはその少女剣士の呪いを解くのに協力することにする そしてタンクと呼ばれるオレと炎剣と呼ばれることになる彼女との冒険が始まった

零にとける

有箱
SF
居場所がない人間にだけに使うことが許されたシステム、氷棺。氷の中で眠り、指定した先の未来で目覚めることが出来るものだ。 それに選ばれた僕は、未来に居場所を求めて眠りについたのだが。

空域のかなた

春瀬由衣
SF
地上の大半が毒を持つ空気(瘴気)に覆われ、メストス(清浄空気)区には限られた特権階級しか住めない世界で、よりよい空気を求める特権階級に駒として使われる貧民がいた。 俗に、彼らは”黒肌の民”と呼ばれる。毒の空気を吸っていれば幼くて死ぬが、遺伝子強化され戦場に送られ強くなっても疎まれる存在。 メゾン区第一空軍に所属するコードネーム「タエ(四)」はかつて、黒肌の民の到達できる最高位「ツェー(一)」の位をとって世界を変える約束をした。 空戦に、貴方は何を想う? ファンタジー小説大賞に応募中です。

数億光年先の遠い星の話 

健野屋文乃
SF
数億光年離れた遠い星は、かつての栄えた人類は滅亡し、人類が作った機械たちが、繁栄を謳歌していた。そこへ、人類に似た生命体が漂着した。

悠久の旅人

久遠院 純
SF
正体不明の男4人が宇宙の片隅でうだうだしてるお話。 山なし落ちなし意味なし話。 なんちゃって宇宙ファンタジー。 他サイトにも投稿しています。

空間魔法って実は凄いんです

真理亜
ファンタジー
伯爵令嬢のカリナは10歳の誕生日に実の父親から勘当される。後継者には浮気相手の継母の娘ダリヤが指名された。そして家に置いて欲しければ使用人として働けと言われ、屋根裏部屋に押し込まれた。普通のご令嬢ならここで絶望に打ちひしがれるところだが、カリナは違った。「その言葉を待ってました!」実の母マリナから託された伯爵家の財産。その金庫の鍵はカリナの身に不幸が訪れた時。まさに今がその瞬間。虐待される前にスタコラサッサと逃げ出します。あとは野となれ山となれ。空間魔法を駆使して冒険者として生きていくので何も問題ありません。婚約者のイアンのことだけが気掛かりだけど、私の事は死んだ者と思って忘れて下さい。しばらくは恋愛してる暇なんかないと思ってたら、成り行きで隣国の王子様を助けちゃったら、なぜか懐かれました。しかも元婚約者のイアンがまだ私の事を探してるって? いやこれどーなっちゃうの!?

処理中です...