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108th マトリスの酒場で

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 俺たちはマトリスの酒場まで来ている。
 マッピングを行った場所から五百メートル程離れた場所にあったその酒場は、目立たないような
場所にひっそりと建っていた。
 最新鋭の技術が多く見受けられる一角と違い、こじんまりとした外観。
 入り口も酒場っぽくはなく、酒瓶の展示も一切ない。
 ドアはclosedの看板がぶら下げられており、中の様子も伺えない。

「参ったな、開いてないぞ」
「こんにちはー! 宅配便でぇーっす!」

 何事もなかったように勢いよく扉を開けるニッキィ。
 この子のしつけはどうなってるんだろうか。

「おいおい、外の看板が見えないのかい? 今は閉まってるんだよ。
酒場がこんな時間に開いてるわけないだろう?」

 慌てて店のオーナーのような髭を蓄えたごつい牛顔が入り口まで飛んできた。
 一見すると怖いが、この星ではこれが普通だ。

「いや、出来れば人がいない方が都合がいいんだけど」
「……ほう。酒を飲みにきたんだよな?」
「アルコールを飲みに来たわけじゃない」
「……まぁ少しくらいなら飲み物を出してやってもいいぜ」
「いやったぁー! こういうのは開けたもん勝ちって聞いてたけど本当だったんだね!」
「本当じゃないから! お店の人に迷惑がかかるから出来る限りやめなさい!」
「食べ物あるの」
「ん? 何だ腹も減ってるのか。しょうがねえな。ひとまず入れ」

 扉の中に入ると、店内は狭いが三人座れるテーブルの席があった。
 一直線にそちらへ向かい座るニッキィ。
 その後を続いてレットちゃんも腰を掛ける。

 俺はカウンターへ行き、店主に話しかける。

「俺は紫電という。あんたはオーナーさんか?」
「ああ。オーナーのジェフ。んでお客さん……何を飲む?」
「アイスミルク」
「アイスミルクねぇ……どのくらい冷やす?」
「ぬるめも悪くないがギンギンに冷えたやつだ」
「あいよ。これ持ってテーブルで待ってな」

 どさりと何か袋を置くと、厨房の奥に行くジェフ。
 袋の中にはお金と紙が入っている。
 受け渡しはひとまず成功か。
 それらを懐にしまうと自分も二人の席の方へ向かう。

「どうだったの? もう任務終わった?」
「終わるわけないだろ。ここでは情報と必要な資金の入手だよ。
でも食事と飲み物は出してくれるみたいだな」

 直ぐにアイスミルク三つを持ってくるジェフ。
 テーブルの上に置くと、直ぐ近くにあった椅子を引っ張ってきてジェフも座る。

「それで、料理は何にする? 作ってる最中に情報は入ってくるぜ。
調べる要件は何だ?」
「このピッツァアルバトロスっていうのがいい! これを十枚!」
「そんなに食べれるわけないだろ……」
「食べれなかったらお持ち帰りでいいじゃんー!」
「これからCCについて調べようってときにお持ち帰りしてる場合か!」
「私は痺れるマフィンっていうのが食べてみたい」
「ほら、兄ちゃんも頼みな。ピッツァアルバトロスは二枚にしとくぞ、一度にそんな焼けないからな」
「連れが申し訳ない……じゃあ俺はスープスパイスァってやつを」
「それで、CCについてだけか? 他は?」
「指令はここで暗躍しているCCについての情報だった。他にもやった方がいい仕事があるのか?」
「ああ、あるぜ。お前さん……紫電だったか。知ってるかわからんがこの星はシドーカンパニーを
筆頭にいくつかの企業が大きな事業を扱ってる。特に兵器、武器の類を多く産出しているシドー
だが、裏ルートで薬物や危険物を扱う企業が増えてる。その違法ルートを先日調べたんだが、どうも
これにCCが絡んでるみてえだな。どうだ、いっちょこいつも並行して調べちゃくれねえか?」
「同時にできる依頼ならいいけど、俺たちが探してるCC関連のと一致するのかな」
「燃料……だろ? 間違いなく関与するだろうよ。いわゆる危険燃料、核だ」
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