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37th お笑い芸人スベル・タヤスク、ポタージュ・コーン

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 俺の名前は容易流去タヤスクスベル
 芸人三年目にして収益月三万ボロドの売れない芸人だ。
 相棒のコンポタと一緒に、マテリアラーズ試験を受けてこいと上司に言われてやってきた。

「一次試験で落ちたら首な」
「へっ?」
「それと、お前らこれ着ていけ。うちの看板入ってるから。映るようにな」
「ええー?」
「ほれ、はよいけ」
『えー!?』

 そして俺たちは、過酷な一次試験をどうにか乗り越えた。雷に打たれた時は、危うく死ぬかと思ったぜ。
 しかし体を張った芸をこなしてきたからか、俺たちはある確信にいたった。

「俺たちは強い」
「そして俺たちは運もある。何せ同じチームだからな」
「芸人として売れなくても、マテリアラーズで素材を売れば、月三万の生活から逃れられるか?」
「もうカップシャードルを食い続けるのはしんどい。このままだと死ぬ」
「うまく立ち回って隠れてればいんだよな、たしか」
「そうだな。レッドチームが勝てばいいんだろ?」
「俺たちで一人囲んでよ。うまく……」

 ガサガサッ、ガサガサガサッとくさむらから音が聞こえる。
 二人はぴたりと止まり、音のなる方を注目した。
 小声で会話を続ける二人。

「……おい。早速おでましのようだぜ」
「一、二の三コーンでポタージュといこうぜ」
「そりゃまた格別に滑りそうだ。いいぜ」
「一、二の」
『三コーン!』
「ビーッビーッビーッビーッ」
「へっ? これ、機械……やば……!」

 二人が飛び込んで触ったのは人型ロボット。
 ミシーハ博士製作印つき爆発起動式ロボ、RTX四〇六〇。
 触れた者には容赦なく爆発するよう設定してある。

「コーンポタージュと書きまして爆発と説きます」
「その心は!」
「すり潰しちまえば弾けやしねぇよばーかばーか!」
「起爆します」
「おあとがよろしいようで!」

 ボーーンという音とともに役二名、吹き飛ばされていった。
 遠くでみていた仁・青井は、それを見て警戒を強める。


「あんなものもあるのか。不知火以外はカスだと思って挑んだのに……この調子じゃ
もっと気を付けないとな。次の対象は……あいつか?」

 仁・青井が目をつけたのは、浅黒い肌に槍を持ち、白髪を一本頭上に束ねる
男。その名をギ=ドゥ。屈強な戦士といういで立ちであり、隠れこそしないものの
瞑想にふけっている。

「こいつは……なかなか骨が折れそうだ。一位や二位が来ると厄介そうだし
先に数を減らさないとな」
「そこにいるもの。出てきて正々堂々勝負しろ」
「……なぁんだ気づいてたのかいおじさん」
「まだ子供か。この槍は感度が高くてな。無傷でバッジを奪えるかどうかわからん。
怪我をしたくなければバッジだけおいていってくれんか」
「へぇ。子ども扱いされた上、大人しく降参しろって? いいね、こっちも
容赦しなくてすむ。いくぜ!」

 すぐさま姿をくらました仁・青井。ギ=ドゥが所持する槍は上空を
光で示していた。

「そこか! 行け! インテリジェントランス!」

 上空へと自動追尾する槍が放たれた。槍はグングンと勢いを増していき、やがて、一本の
木へ狙いを定め、何かを貫く。

「ふむ。致命傷になっておらねばよいが……子供でこのような大会に参加するなど、親は
何を考えておるのだ」
「いねえよそんなやつ! 土遁、泥土中蜘蛛!」
「なっ!? ばかな、確かに上空で補足したはずだ! うぐ、ぬわーーーー!」
「バッジ頂き。あんたが攻撃したの、ただの風分身だから。パペット。
戻れ」
「シュシュッ」

 マップに点在するシェラハにより、再び脱落者が告げられる。

「ギ=ドゥ選手脱落。いい槍持ってるのに、全然私より使えないわね。
もっと修行して出直してきなさい」

 現在の戦況……レッドチーム残り九名・ブルーチーム残り六名。
 脱落者……ブルーチーム、アルヤンカ。ギ=ドゥ。


 
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