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28th 地球の現状

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 腹ごしらえも終わり、いよいよ地球へ向かう。といっても地球へはエレットの家から
直ぐに向かえる。
 散々駄々をこねるエレミナを説得して、さらに地下へと降りていく三人。
 ミシーハ博士も後で行くとはりきっている。

「こんなに地下があるなんて、どうなってるのよ。この家」
「さぁ……詳しくは姉ちゃんに聞いてくれよ。下に到着したら全員ウォーターアルアーを着てくれ。
「ウォーターアルアー?」
「水を吸着して浮かせる道具だ。使い方は後で教える。海上でも走ったり飛んだりできるよ」
「へー、本当に凄いのね。海しかないなら必須じゃない」
「ただ、問題があって……女性用のは、ほら」

 かなり派手なピンク色の着衣スーツのようなものが見えてきた。
 いわゆるファッションピンク色のそれが女性用としてカスタマイズされた物。

「この色好き」
「嘘でしょ!? こんな目立つのしかないわけ?」
「うん。ゴムみたいに伸びるから、上から羽織って着てみてよ。それでこれを被る」
「いやーー! 何これ。絶対戦隊ヒーローじゃない。いやーー!」
「気に入った。ずっと着たい」
「どういう神経してんのよあんた! はぁ……しょうがないかぁ」
「地球へはどうやっていくの。特別何もみあたたらないけど」
「光エレクトロニクス法で行くよ。ここから地球は遠くない。それに何もないんじゃなく、見えてない
だけだよ。光の屈折でね着地地点に誤差が生じる。距離にして三十キロ。
いくぞ、セイソー」
「はい、マスター。目標地点北緯24度17分 東経153度59分。東京都南鳥島跡付近へ移動開始シマス」
「どんなところだったの」
「真っ先に無くなった島之内の一つ。この辺りは七千程の無数の島が点在する地帯だったらしい。
黄金の国とも呼ばれた、世界憧れの国、ジパング……という場所が存在したらしい」
「なかなかいい響きじゃない。ジパングかぁ……素敵なところだったんだろうなぁ」
「そうかもな。軍はどうも最初にこの地を再建したがっているんだ。だからこそマテリアラーズの試験場
も、そのあたりにある。一角を埋め立て、そこを試験会場にしているんだよ」
「あたしがやった試験会場って違う星よ?」
「いくつかあるからな。でもここが一番大きな試験場だよ。セイソー、どうだ?」
「航行可能デス。光子移転システム起動しマス」
「え? えー!?」

 先ほどまで部屋にいたが一瞬にして何もない空へと放り出され……たかと思うと、何かの
レールに乗っているように体が動く。
 その動きを感知するまでもなく、あっという間に一面海のエリアへ放り出された! 

「座標のずれを予測」
「北西へ約十七キロ。誤差範囲デス」
「改良したんだろうね。以前より精度が格段に上がってる。さすがは姉ちゃんだ!」
「それより、この高さから落ちて平気なの?」
「問題ないよ。手をグーにして両手の親指をスイッチを押すようにカチッとやってみて」
「こう? へ? えーーー!」

 ギュー―ンと加速して両足が海水へ叩きつけ……られずに着地する。
 まるで海の上を一枚の氷が張っているかのように、両の足で立ち上がった。
 衝撃まで吸収しているようだ。

「何これ。どうなってるのよ」
「だから、姉ちゃんに聞いてくれって。本当、訳が分からないものをよく作るんだよ」
「凄い。水の上を歩くってこんな感じなのね」
「もう驚き疲れちゃったわ。ふん。まぁいいわ。いきましょ」
「って歩き出すのはいいけど方向わかるのか、フラー」
「わからないからさっさと案内しなさいよ、バカエレット!」

 なぜか怒られるエレット。到着した場所から少し離れた試験会場へ向けて、三人は歩き出した。
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