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17th 泊まるなら寝具を
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「いい加減降ろしてくれって! もう子供じゃないんだから」
「何言ってる。父さんにとってみればお前はまだまだ子供だ。それに降ろした途端また
どこかへ行ってしまうかもしれないだろう? 月も安全とは言えないんだぞ」
「そーだけど俺だって十分戦えるって。下っ端とはいってもマテリアラーズの一員だよ、もう」
「やれやれ、しょうがないな。もう少し親子のなれ合いってものを楽しみたかったんだけどな」
「エレヴィン様、これよりトランスファレンスを行いマス。レグア様の後を追えないノデ
フラー様の許に設定シマス」
「おっと私はやめておこう。彼女に紹介されるのは家のパーティーの時がいい。
楽しみは後二取っておきたくてね。三時間後においで。それじゃ」
そう言って距離を取り手を振るエレヴィン。
凄い人だが少しふわふわしているので、大抵の人は困惑する事が多い。
しかしパープラー隊長とは馬が合うようで、よく飲みにいっている。
「セイソー、早くいこう。そうしないといつまででも手を振り続けるから。
父さん! また後でね!」
「承知しまシタ。トランスファレンスを実行。エックス四二二、ワイ一八六三。
転移目標フラー様に設定……完了しまシタ。移送シマス」
セイソーが展開したフィールド上から体を包むように粒子分解が行われ、一瞬で移動する。
これはバイオミメティックオーガニズムシステム程気持ち悪くはならない。
トランスファレンス原理を確立したのは三千年になってからで、比較的新しい技術。
ヘッツの中でも特定の個体しか使用出来ない。
「移送完了デス。目的地はフラー様の上部、柔らかい部分に設定しておきマシタ」
ポヨーンと柔らかい何かに不時着したエレット。
セイソーハレグアのすぐ脇へと着地している。
「キャーー! なんであたしの上に降ってくるのよバカエレット!」
「むぎゅっ。ば、ばか締め付けるな! わわっ……ごめん。今日は姉ちゃんについで二度目だ……」
「エレットはそれが好きなの。今度私がやってみたい」
「違うって! セイソー、着地するならフラーから一メートル離れたところにおろしてくれよ」
「いえ、そうしないとマスターが気持ち悪くなるかと思いマシテ。セイソーの配慮デス」
配慮の方向性が違う気はするが、確かに固い地表の上だと気持ち悪くなりやすい。
見えない衝撃が強いのかもしれないな。
しかしフラーにグーでパンチされるのと同意着な気がする。
「つつ……フラーは相変わらず乱暴だな。それより二人とも、これから俺の家に行って
食事をしよう。エレミナが待ってるし三時間後には準備出来ているそうだから」
「しょ、しょうがないわね。でもいいの? 早く地球へ行かないといけないんでしょ?」
「父さんがパープラー隊長に連絡しておいてくれるって。今日は泊まって言っても平気だよ」
「ななな、何言ってるのバカエレット! そんなことできるわけないでしょ!」
「え? エレミナは喜ぶと思うけど。エレハ姉も今日は泊まっていくだろうから、女子同士
集まってくれれば。うち、母さんいないし、普段エレハ姉もいないから、エレミナは寂しいと思うんだ」
「ふ、ふーん。そうね。それならエレミナちゃんのために泊まってあげてもいいわ。別にあんたの家になんか泊まりたくはないんだけど」
「それではこちらでレグア様、フラー様の寝具を購入してから参りまショウ。セイソーがお作りしても
よいのデスガ、シドー星の新作を扱うお店がいくつかありますノデ」
「シドーというのはどういう星なの」
「俺も直接行ったことはないんだけど、地球に似た文明を持った星なんだ。
座標軸的にはかなり遠いけど、バイオミメティックオーガニズムシステム可能な
エリアだ。友達もいるんだぜ」
「あんたに友達? まさかまた女じゃないでしょうね」
「違うよ。マジックオブギャドルーの遊び仲間さ。レオファンっていう虎っぽい
少年だよ」
「虎っぽい少年? あんたよく普通に話せるわね。あたしにはちょっと怖いわ……」
「フラー。そういうのはよくないぞ。いつも隊長に言われてるだろ?」
「わかってるわようるさいわねー。エレットの癖にあたしに説教しないでよ! ふんだっ」
「フラーは拗ねてる方が可愛い」
「なな、何よ! 別にあんたに可愛いなんて言われても嬉しくないわよ!」
「お二人とも、そろそろお店へ行きまショウ。マスターはどうされマスカ?」
「俺はいいよ。女性物が売ってるお店には行きづらいし、トラウマもあるし……」
「エレットが行かないなら私も行かない」
「そう言われてもなぁ。店の近くにはいるから、二人で買っておいで」
「そういうこと。行くわよレグア」
二人を見送りながら、月の上空を見るエレット。
その目は少し険しくなっていた。
「何事も無ければいいんだけど、なんか空気が重いな……」
「何言ってる。父さんにとってみればお前はまだまだ子供だ。それに降ろした途端また
どこかへ行ってしまうかもしれないだろう? 月も安全とは言えないんだぞ」
「そーだけど俺だって十分戦えるって。下っ端とはいってもマテリアラーズの一員だよ、もう」
「やれやれ、しょうがないな。もう少し親子のなれ合いってものを楽しみたかったんだけどな」
「エレヴィン様、これよりトランスファレンスを行いマス。レグア様の後を追えないノデ
フラー様の許に設定シマス」
「おっと私はやめておこう。彼女に紹介されるのは家のパーティーの時がいい。
楽しみは後二取っておきたくてね。三時間後においで。それじゃ」
そう言って距離を取り手を振るエレヴィン。
凄い人だが少しふわふわしているので、大抵の人は困惑する事が多い。
しかしパープラー隊長とは馬が合うようで、よく飲みにいっている。
「セイソー、早くいこう。そうしないといつまででも手を振り続けるから。
父さん! また後でね!」
「承知しまシタ。トランスファレンスを実行。エックス四二二、ワイ一八六三。
転移目標フラー様に設定……完了しまシタ。移送シマス」
セイソーが展開したフィールド上から体を包むように粒子分解が行われ、一瞬で移動する。
これはバイオミメティックオーガニズムシステム程気持ち悪くはならない。
トランスファレンス原理を確立したのは三千年になってからで、比較的新しい技術。
ヘッツの中でも特定の個体しか使用出来ない。
「移送完了デス。目的地はフラー様の上部、柔らかい部分に設定しておきマシタ」
ポヨーンと柔らかい何かに不時着したエレット。
セイソーハレグアのすぐ脇へと着地している。
「キャーー! なんであたしの上に降ってくるのよバカエレット!」
「むぎゅっ。ば、ばか締め付けるな! わわっ……ごめん。今日は姉ちゃんについで二度目だ……」
「エレットはそれが好きなの。今度私がやってみたい」
「違うって! セイソー、着地するならフラーから一メートル離れたところにおろしてくれよ」
「いえ、そうしないとマスターが気持ち悪くなるかと思いマシテ。セイソーの配慮デス」
配慮の方向性が違う気はするが、確かに固い地表の上だと気持ち悪くなりやすい。
見えない衝撃が強いのかもしれないな。
しかしフラーにグーでパンチされるのと同意着な気がする。
「つつ……フラーは相変わらず乱暴だな。それより二人とも、これから俺の家に行って
食事をしよう。エレミナが待ってるし三時間後には準備出来ているそうだから」
「しょ、しょうがないわね。でもいいの? 早く地球へ行かないといけないんでしょ?」
「父さんがパープラー隊長に連絡しておいてくれるって。今日は泊まって言っても平気だよ」
「ななな、何言ってるのバカエレット! そんなことできるわけないでしょ!」
「え? エレミナは喜ぶと思うけど。エレハ姉も今日は泊まっていくだろうから、女子同士
集まってくれれば。うち、母さんいないし、普段エレハ姉もいないから、エレミナは寂しいと思うんだ」
「ふ、ふーん。そうね。それならエレミナちゃんのために泊まってあげてもいいわ。別にあんたの家になんか泊まりたくはないんだけど」
「それではこちらでレグア様、フラー様の寝具を購入してから参りまショウ。セイソーがお作りしても
よいのデスガ、シドー星の新作を扱うお店がいくつかありますノデ」
「シドーというのはどういう星なの」
「俺も直接行ったことはないんだけど、地球に似た文明を持った星なんだ。
座標軸的にはかなり遠いけど、バイオミメティックオーガニズムシステム可能な
エリアだ。友達もいるんだぜ」
「あんたに友達? まさかまた女じゃないでしょうね」
「違うよ。マジックオブギャドルーの遊び仲間さ。レオファンっていう虎っぽい
少年だよ」
「虎っぽい少年? あんたよく普通に話せるわね。あたしにはちょっと怖いわ……」
「フラー。そういうのはよくないぞ。いつも隊長に言われてるだろ?」
「わかってるわようるさいわねー。エレットの癖にあたしに説教しないでよ! ふんだっ」
「フラーは拗ねてる方が可愛い」
「なな、何よ! 別にあんたに可愛いなんて言われても嬉しくないわよ!」
「お二人とも、そろそろお店へ行きまショウ。マスターはどうされマスカ?」
「俺はいいよ。女性物が売ってるお店には行きづらいし、トラウマもあるし……」
「エレットが行かないなら私も行かない」
「そう言われてもなぁ。店の近くにはいるから、二人で買っておいで」
「そういうこと。行くわよレグア」
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その目は少し険しくなっていた。
「何事も無ければいいんだけど、なんか空気が重いな……」
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