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15th 搭乗型ハイエンドテクノロジーシステム、その名もオルクス

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 レグアたちと別行動をとったエレットは、道具の補充を一通り済ませると、月にある
 ヘッツを生産する最新技術開発所に向かっていた。


「このムービングトラクタ、すげー! 安定感が半端じゃない」
「ミシーハ製ですカラ。マスターの姉上様は天才中の天才デス」
「四歳で既に一台ヘッツを組み上げたからな。本当、化け物だよ」
「しかし弟だからという理由デ、マスターをお認めになっている訳ではないデス。
マスター、あなたも十分に化け物デスヨ」
「そうかなぁ。姉に比べれば可愛いものだと思うけど」

 無音のまま空中移動をオートドライブで行うムービングトラクタ。
 目的地に着くと、再び無音で浮上し高速で元の場所へと戻っていく。
 背面のデザインにハートトゥハートと描かれている。ミシーハ製特有のイラスト。
 ヘッツは心を持つ機械。決して道具だと思って扱ってはいけない。
 その熱い思いを綴った姉らしい文面。
 エレットは何よりそのロゴが好きだった。

 ヘッツ生産工場の中に入ると、セイソーが認証手続きを行い、中に入る申請を出す。
 この中はセキュリティレベルが高く、一般人は立ち入り不可能。エレットはマテリアラーズに所属
する上、ミシーハ博士の実弟であり、研究対象としても入館を認められている。
 
「ここに来るのも二年ぶりかぁー。来るたびに変わっていくよな、ここは」
「常にとてつもないことを考えて実行に移される方ですカラネ。他人の真似をせず、自ら考えて行動スル。
他人の事などまるで意に介サズ、己の道をススム。並では無い事の証明デス。
数億人に一人……いいえ、数十億に一人の逸材デス」
「こんなへんてこな者を次から次へと考えるのは、数十億人探してもいないと思うけど……我が姉ながら
本当にとんでもない。それがゆえに休まるところがないというか、未だ結婚しないのもこの
研究のせいだよなぁ……」
「あの方はエレット様の成長を見ているのが何よりも好きなノデ、結婚出来る可能性は極めてゼロに近い
と推測されマス。あれほどの知識を持つ方の子供が見れないのは悲しい事デス」
「うーん。第二の姉ちゃんはあんまり見たくない気がする……でもヘッツの開発って意味でいえば、必要
なんじゃないかな」
「そうデスネ。再びこれほどまでの天才が産まれるかはわかりまセンガ……」

 セイソーとそう話しながら目の前の途方もない機械を眺める。
 全長三百メートル。二足歩行型超巨大ヘッツ、オルクス。ある惑星の名前から付けられた
その機体は、これまたその惑星よりもたらされた物質を用い、信じられないほどの性能を持つという。
 現在開発中であり、情報はヘッツとそれに連なる関連の強い一部のもののみに公開されて
いるが、動かし方などはミシーハ博士以外知られていない。
 この施設に何度も侵入を試みたクラッカーがいるが、全て失敗に終わり、処罰されている。
 これらを厳重に守る雇用されたハッカーの手によって。
 ハッカー集団クライシス。彼らもまたヘッツをこよなく愛し、月を守る最重要構成員でもある。
 
「しっかしこんなでかいヘッツだと、連れ歩くこともできないな」
「本来の目的は、連れ歩くのではなく搭乗するのデス。地球で一時期搭乗型の乗り物が流行ったのを
ご存じデスカ?」
「勿論! 自分で操縦する乗り物は、男子憧れの的だからな」
「現在では遠隔操作プロトコルの確立によって搭乗型はリスク過多により廃止されてオリマス。
しかしミシーハ博士は登場型こそ機械と人を繋ぐ最大の状態として開発を推し進めているようデスネ」
「そうみたいだな。でもさ、俺はこうやってセイソーに乗らなくても凄く心を通わせてると思うんだ。
一番大事な事って相性とか思いやり……なんじゃないか?」
「おっしゃる通りだとセイソーも思いマス。マスターとセイソーは名コンビですカラ!」
「そうだな。それでも搭乗型には憧れるし、いつかは俺専用の搭乗型ヘッツも欲しいとは思う。
その時は一緒に乗って手助けしてくれよ、相棒!」
「勿論デス。セイソーはどこまでもマスターについていきマス!」
「さて……最新資料のデータ抽出はこんなもんか。あれ……グラフィティ通信?」
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