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第三章 ベオルブイーターを倒せ!
間話 地上に残ったものたち
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私はアースガルズ皇女であり、現皇帝の妹ミレーユ。
以前は最強の召喚士として名声を挙げ、各国が私を求めて止まぬほど知名度を持つ女だった。
私は自分の失態で命を落としかけ、声を失った。
そんな私を救ったのは、師であり、私が好きだった人によく似た男、ルイン・ラインバウト。
彼は暖かくて優しい。無口だけど、さりげない言葉一つ一つに温もりがあった。
そんな彼をずっと直視出来ず、旅をした。
それは一度も経験したことが無いような、素敵な旅だった。
旅の目的は私の声を取り戻すこと。
そしてある儀式を行うことだった。
私はずっと体の中に言葉をしまっていた。
自分を責め続けて。
何かを伝えたくてものどの奥が開こうとしない。
息が詰まる日々。
吐き出せない思い。
それを受け止めたのが……ルインだった。
今思い返してみても恥ずかしい。
そして……先生に憧れている。
あんな人になりたいと、心からそう思っていた。
奥さんを見ると心にはモヤが走る。
嫉妬というより憧れ。
私にとって彼は先生。
結婚したい相手ってわけじゃない。
でも、幸せそうな奥さんを見ているとうらやましくて仕方がない。
多分、あんなに素敵な男性と出会うことはもう無いと思う。
自分の吐き出す思いを受け止めてくれて。
体を張って守ってくれる。
愛妻家で純情。曲がったことを嫌い、多くの仲間に慕われている。
私だったらフタをして逃げてしまう場面でも、彼は逃げない。
たまには弱みくらい見せてよ。
「主様。今紅茶を淹れますのでお待ちしてほしいのでございます」
「アメーダ。少し休んでいいのよ。まだまだ旅は続くんですもの」
私は今、北を目指して旅をしている途中だ。
ここはトリノポート大陸から北上したデイスペルという国。
ベルドさんというたくましい男性の奥さんと会い、ベルドさんが旅に出る支度を待っている最中。
奥さんはとても綺麗な人で、大きな竜に守られていた。
昔は先生とも一緒に旅をして戦ったんだとか。
今は出産を無事に終えて療養中。元気な女の子だった。
もしかしたらカルネちゃんたちと同じ年齢になるのかな?
将来、きっといい友達になれるんだろうな。
私にも信頼し合える友達がいる。彼女は男として育てられ、精神的には男性。
でも、今は一生懸命女性として振る舞う練習をしている。
髪を伸ばしたら私より美人に見えて嫉妬してしまった。
でも、彼女も結婚はしないと思う。
同じ人に憧れてしまったから。
あれ以上の男を探せなんて無理な話。
でも、それでいいと思っている。
だって、私の先生は弟子をほとんど取っていない。
もう一人のお友達、エンシュと私、それから少しだけ弟子だったイビンさんくらい。
イビンさんは恋愛の対象にはならないけれど、優しくて面白くて頼もしい人。
彼はきっと、素敵な女性と結婚するんだろうな。
先生が心許せる、数少ない非封印者の男の子だもん。
「今日はご機嫌ですね、主様」
「うん。先生のこと考えてたら、なんだかおかしくて」
「ルイン様は素敵な方ですからね。うふふ……アメーダもついつい笑ってしまうのでございます」
「ねえアメーダ。アメーダの主が私から先生に戻せなくても、先生と結婚は出来るんじゃないの?」
「アメーダはあくまで執事でございます。結婚してしまえば奉仕は出来ないのでございます。あの方は愛妻家でございますからね」
「そうかなぁ。先生、案外抜けてるところもあるでしょ? それを奪い合ってるのがファナさんたちだけど……結局奪い合ってる間にベルディアさんがやっちゃうんだよね。そこをアメーダが奪っちゃう! なんてどうかな?」
「うふふふ。アメーダはベルディア様もお好きでございます。精々子育てのお手伝いをする程度でいいのでございます」
「もう、欲が無いなぁ……ってそれは私もか。えへへ……」
「主様もいつかは子を持つ身でございますから。他人事ではございませんよ?」
「私、子供はいいかな。先生の影に重ねちゃいそうだもの。自分の子は一番可愛いっていうけれど、やっぱり難しいよ」
「素敵な殿方というのは突然現れたりするものでございますよ。そうでございますね……それこそクウカーン様やレイン様が大きくなられて結婚するなどいかがでございましょう?」
「あはは……私、その頃おばさんだよ。相手にされないでしょ?」
「そうは思わないのでございます。主様はいつまでもお美しいまま。今から手なずけておけばきっと将来求婚されるのでございます」
「どっちがいい!? ねぇ、どっちが先生に似ると思う!? ねぇ!」
「そうでございますね……クウカーン様はどちらかというとサラ様に似てらっしゃるので、レイン様かなと思うのでございますが……あのレミニーニ様のお子様でございますから……」
「うーん。難しい。先生に第二子を産んでもらってファナさんに男の子を生んでもらうわ!」
「男の子か女の子、どちらが生まれるかは神のみぞ知る……でございますね。女の子の方はきっと殿方から求婚され過ぎて困ると思うのでございます。うふふふ」
そんな他愛もない話をしてはいるけど、私もアメーダも心の中で先生の無事を祈っていた。
きっと帰ってくれるって。そう願いを込めて。
以前は最強の召喚士として名声を挙げ、各国が私を求めて止まぬほど知名度を持つ女だった。
私は自分の失態で命を落としかけ、声を失った。
そんな私を救ったのは、師であり、私が好きだった人によく似た男、ルイン・ラインバウト。
彼は暖かくて優しい。無口だけど、さりげない言葉一つ一つに温もりがあった。
そんな彼をずっと直視出来ず、旅をした。
それは一度も経験したことが無いような、素敵な旅だった。
旅の目的は私の声を取り戻すこと。
そしてある儀式を行うことだった。
私はずっと体の中に言葉をしまっていた。
自分を責め続けて。
何かを伝えたくてものどの奥が開こうとしない。
息が詰まる日々。
吐き出せない思い。
それを受け止めたのが……ルインだった。
今思い返してみても恥ずかしい。
そして……先生に憧れている。
あんな人になりたいと、心からそう思っていた。
奥さんを見ると心にはモヤが走る。
嫉妬というより憧れ。
私にとって彼は先生。
結婚したい相手ってわけじゃない。
でも、幸せそうな奥さんを見ているとうらやましくて仕方がない。
多分、あんなに素敵な男性と出会うことはもう無いと思う。
自分の吐き出す思いを受け止めてくれて。
体を張って守ってくれる。
愛妻家で純情。曲がったことを嫌い、多くの仲間に慕われている。
私だったらフタをして逃げてしまう場面でも、彼は逃げない。
たまには弱みくらい見せてよ。
「主様。今紅茶を淹れますのでお待ちしてほしいのでございます」
「アメーダ。少し休んでいいのよ。まだまだ旅は続くんですもの」
私は今、北を目指して旅をしている途中だ。
ここはトリノポート大陸から北上したデイスペルという国。
ベルドさんというたくましい男性の奥さんと会い、ベルドさんが旅に出る支度を待っている最中。
奥さんはとても綺麗な人で、大きな竜に守られていた。
昔は先生とも一緒に旅をして戦ったんだとか。
今は出産を無事に終えて療養中。元気な女の子だった。
もしかしたらカルネちゃんたちと同じ年齢になるのかな?
将来、きっといい友達になれるんだろうな。
私にも信頼し合える友達がいる。彼女は男として育てられ、精神的には男性。
でも、今は一生懸命女性として振る舞う練習をしている。
髪を伸ばしたら私より美人に見えて嫉妬してしまった。
でも、彼女も結婚はしないと思う。
同じ人に憧れてしまったから。
あれ以上の男を探せなんて無理な話。
でも、それでいいと思っている。
だって、私の先生は弟子をほとんど取っていない。
もう一人のお友達、エンシュと私、それから少しだけ弟子だったイビンさんくらい。
イビンさんは恋愛の対象にはならないけれど、優しくて面白くて頼もしい人。
彼はきっと、素敵な女性と結婚するんだろうな。
先生が心許せる、数少ない非封印者の男の子だもん。
「今日はご機嫌ですね、主様」
「うん。先生のこと考えてたら、なんだかおかしくて」
「ルイン様は素敵な方ですからね。うふふ……アメーダもついつい笑ってしまうのでございます」
「ねえアメーダ。アメーダの主が私から先生に戻せなくても、先生と結婚は出来るんじゃないの?」
「アメーダはあくまで執事でございます。結婚してしまえば奉仕は出来ないのでございます。あの方は愛妻家でございますからね」
「そうかなぁ。先生、案外抜けてるところもあるでしょ? それを奪い合ってるのがファナさんたちだけど……結局奪い合ってる間にベルディアさんがやっちゃうんだよね。そこをアメーダが奪っちゃう! なんてどうかな?」
「うふふふ。アメーダはベルディア様もお好きでございます。精々子育てのお手伝いをする程度でいいのでございます」
「もう、欲が無いなぁ……ってそれは私もか。えへへ……」
「主様もいつかは子を持つ身でございますから。他人事ではございませんよ?」
「私、子供はいいかな。先生の影に重ねちゃいそうだもの。自分の子は一番可愛いっていうけれど、やっぱり難しいよ」
「素敵な殿方というのは突然現れたりするものでございますよ。そうでございますね……それこそクウカーン様やレイン様が大きくなられて結婚するなどいかがでございましょう?」
「あはは……私、その頃おばさんだよ。相手にされないでしょ?」
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「そうでございますね……クウカーン様はどちらかというとサラ様に似てらっしゃるので、レイン様かなと思うのでございますが……あのレミニーニ様のお子様でございますから……」
「うーん。難しい。先生に第二子を産んでもらってファナさんに男の子を生んでもらうわ!」
「男の子か女の子、どちらが生まれるかは神のみぞ知る……でございますね。女の子の方はきっと殿方から求婚され過ぎて困ると思うのでございます。うふふふ」
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