上 下
1,060 / 1,085
第三章 ベオルブイーターを倒せ!

第九百四十八話 新しい力、スペリオルタイム、ベオルブイーター攻略のフォースミッション

しおりを挟む
 俺の行動に対して、きちんとスワイプロードは技を発動させてくれた。
 どうやら発動ワードはなんでもいいようだ。
 どうやらこの技……スペリオルタイムと名付けたが、自身にかけるバフのようなものに感じる。
 驚くことに、黒衣に封印されたスワイプロードを中心に紫色の線が走り……封印された箇所に紫の線が走っていく。
 封印内にはギオマという巨大すぎる力の持ち主がいる。
 
「発動方法は異なっていたが発動してしまったようだな。それではそのまま流星を使うのだ!」
「嫌な予感がするが……流星!」

 流星が発動すると、今度は壁を突き破り、外の岩壁に深くめり込んだ。
 しかし、まったく痛くもかゆくもない。
 そのまま軽く走ったり飛んだりしてみた。
 スペリオルタイム中は、どの技を使用していないのにバネジャンプや流星を常時発動しているような跳躍力と機動力がある。
 素手で岩壁を殴ると、まるでジオのように岩壁まで破壊できた。
 これは間違いなく、人間やただの妖魔の領域をはるかに超えている。
 そして効果が切れたことも直ぐに実感できる。
 効果時間は約十秒ってところか。

「家の壁、破壊してしまったな……」

 部屋へ戻ると腕を組みながら満足そうにうなずくズサカーンがいた。

「どうだったかな。技の名前が少し残念な結果だが、概ね満足いく結果だろう?」
「そうだな。そもそも技名、言う必要無い気がするんだが……これなら新たな可能性が広がりそうだよ」

 これまで、ゴブリンのような弱いモンスターであれば肉弾戦も十分行えて来た。
 近頃出会うモンスターの格が高すぎて、肉弾戦を避け気味だった。
 これなら……今一度、一刀一拳、あるいは二刀一拳で戦えるかもしれない。
 それにラモトを合わせれば……星の力を取り戻すまで、十分戦えるだろう。

「壁の分はいいとして、お主たち、本気でベオルブイーターと戦うのだな」
「ああ。それがあの鳥の悲願だからな」
「あの鳥はなんなのだ?」
「魔人ベリアル。そういえばヤトがあいつの人型肉体を構築するって言ってたな。そろそろ戻ってくる頃か?」
「ほう。それはきっと母上……ルルカーンの出番だろう。我が母上はホムンクルス体の研究者でな」
「一家そろって研究三昧か。血は争えないってことだろう」
「そういうことだ。妖魔に流れる血というのは、神が作りし神秘である。絶対神イネービュにより寵愛を受けた種族であり、それが……」

 海底神スキアラ、海冥神ネウスーフォ、海炎神ウナスァー



「絶対神イネービュが? あいつが創造神なのか」
「うん? ああそうだとも。地底を創造した海冥神、ネウスーフォ。地底より臨む海炎神ウナスァー。万物に寵愛を与えし海星神、イネービュ。海底を創造せし神、スキアラ。それらは全て空想上の神とされるが、実在する四柱の神。地底に他の神はなく、地上には多くの神々が存在する」
「あんた、都合の良い耳をしたモンスター好きの変な妖魔だと思っていたが……博学のようだ」
「はっはっは。なぁに義息殿の博学さに比べればまだまだよ」

 この人はルーン国に招き入れたいな。
 うちにはモンスター牧場もある。いい研究をしてもらえそうだ。
 ……だが、そんなことを口にすれば間違いなく結婚の段取りとか言われるので今は止めておこう。
 そう考えていると、ヤトカーンとルルカーン、それにルジリトとサーシュが部屋へと入ってきた。
 敬礼をすると、ハルピュイアの形から、普段の猫っぽい姿へと戻るルジリト。
 そうか、ルジリトは空を飛べるようになったんだ。

「主殿。遺跡の件、ご苦労様でした。女王も無事なようで何よりです。早速ですが本題に入りましょう」
「ああ頼む。こちらは少し戦力補強できた」
「ねぇ妖魔君。ベリアル君、借りてもいい?」
「ああ。人型になれるならベリアルとしても願ったりだろ」
「あれ、寝てるね……いいやそのまま連れて行こう。お祖母ちゃん、はい」
「あらあら。あらあらあら。可愛らしいねえ。このままでもいいんじゃないかい?」

 ベリアルもメルザたちと食事を取り、疲れていたのか眠っていたようだ。
 俺はルジリトと話し合い、情報をまとめることにした。
 ルジリトの話によると、フェルドナーガの軍勢は現在ベレッタに集結しつつある。
 率いるのはもちろん本人、フェルドナーガだ。
 ノースフェルド皇国は第一王子、切れ者のフェルドラーヴァが守っており、フェルドジーヴァは先の事故で行方不明のようだ。
 
「そして……狙いは間違いなく、あとアクルークですな」
「そこって地下から侵入する道は無いんだよな?」
「ありませぬ。付近に活火山がありますゆえ、あの付近の地下はマグマ層です」
「地上から向かう方法は?」
「全くないわけではないのですが、アトアクルークのいくつかの場所には侵入できませんな。主様の話とすり合わせますと、アクソニスとやらの狙いはそこでしょう。湖に浮かぶ神殿……絶対不可侵領域となる神殿です。ここの真上がベオルブイーター本体の位置と一致します」
「フェルドナーガにしろアクソニスにしろ狙いは一緒か。協力関係にあると思うか?」
「それは無いでしょうな。ですが、互いに潰し合うとも考え難い。しかし両者必ず手をうっているはずです。我々は多少の戦力になればいい。その程度に考えられているかもしれませぬ」
「フェルドナーガを見た感じでは、こちらを見下してはおらず、力を削いでおけばいつか屈服するだろうという意思が感じられた。アクソニスは逆に見下している感じだな。こちらの能力を把握しきっていない感じだった」
「主殿そもそもの力を見抜けなかったのは、このルジリトとて同じことです。妖魔と聞けばその能力はおおよそ把握できるものですが、主殿は底がしれませぬゆえ」

 俺自身も自分の能力に自信があったわけじゃない。
 周りに強いやつが多かった。特にメルザという無尽蔵の術使いと言えるほど強い者がいれば尚更か。
 ――その後しばらくルジリトと話しをすり合わせ……ミッションという形で今回のベオルブイーター戦へのぞむことにした。

「ファーストミッション、便乗。戦闘を開始したフェルドナーガ軍の損耗を見つつ別方向から参戦。セカンドミッション、破壊。ベオルブイーター・ガーディアンの駆逐。本体に攻撃可能となるまで破壊を繰り返す。このフェーズで二つのパターンが発生。破壊困難な場合と破壊可能な場合の二フェーズ。一時撤退かそのまま進行。あくまで破壊可能な場合として進める。サードミッション。ベオルブイーター本体への攻撃。これも二フェーズに分かれる。本体へのダメージソースが十分か。不十分か。これはシミュレートを要する案件だ……と、この言い方で分かるのはルジリトだけだろうが、どうだ?」
「はい。把握しております。最終フェーズであるフォースミッション。こちらはベオルブイーターの破壊が確認できた後、四フェーズ用意しておきます。これらを上手く理解できる者は限られます。此度のミッション、恐らく前回の防衛戦より至難でしょうな」
「ああ。なにせ敵の挟み撃ちに合う可能性がある。上手くいけばあいつらの目的物はこちらが占有できる可能性は高い。それに恐らく……」

 現地にはベルローゼ先生が潜んでいるに違いない。
 俺はあの人を信じている。
 そして、必ずこちらを手助けしてくれると思っているのだから。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活

昼寝部
ファンタジー
 この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。  しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。  そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。  しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。  そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。  これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

最後の黄昏

松竹梅
ファンタジー
伝説人間vs新人間の9本勝負! 1章だけ公開中。2章、3章は作成中

導きの暗黒魔導師

根上真気
ファンタジー
【地道に3サイト計70000PV達成!】ブラック企業勤めに疲れ果て退職し、起業したはいいものの失敗。公園で一人絶望する主人公、須夜埼行路(スヤザキユキミチ)。そんな彼の前に謎の女が現れ「承諾」を求める。うっかりその言葉を口走った須夜崎は、突如謎の光に包まれ異世界に転移されてしまう。そして異世界で暗黒魔導師となった須夜埼行路。一体なぜ異世界に飛ばされたのか?元の世界には戻れるのか?暗黒魔導師とは?勇者とは?魔王とは?さらに世界を取り巻く底知れぬ陰謀......果たして彼を待つ運命や如何に!?壮大な異世界ファンタジーが今ここに幕を開ける! 本作品は、別世界を舞台にした、魔法や勇者や魔物が出てくる、長編異世界ファンタジーです。 是非とも、気長にお付き合いくだされば幸いです。 そして、読んでくださった方が少しでも楽しんでいただけたなら、作者として幸甚の極みです。

異世界帰りの底辺配信者のオッサンが、超人気配信者の美女達を助けたら、セレブ美女たちから大国の諜報機関まであらゆる人々から追われることになる話

kaizi
ファンタジー
※しばらくは毎日(17時)更新します。 ※この小説はカクヨム様、小説家になろう様にも掲載しております。 ※カクヨム週間総合ランキング2位、ジャンル別週間ランキング1位獲得 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 異世界帰りのオッサン冒険者。 二見敬三。 彼は異世界で英雄とまで言われた男であるが、数ヶ月前に現実世界に帰還した。 彼が異世界に行っている間に現実世界にも世界中にダンジョンが出現していた。 彼は、現実世界で生きていくために、ダンジョン配信をはじめるも、その配信は見た目が冴えないオッサンということもあり、全くバズらない。 そんなある日、超人気配信者のS級冒険者パーティを助けたことから、彼の生活は一変する。 S級冒険者の美女たちから迫られて、さらには大国の諜報機関まで彼の存在を危険視する始末……。 オッサンが無自覚に世界中を大騒ぎさせる!?

日本帝国陸海軍 混成異世界根拠地隊

北鴨梨
ファンタジー
太平洋戦争も終盤に近付いた1944(昭和19)年末、日本海軍が特攻作戦のため終結させた南方の小規模な空母機動部隊、北方の輸送兼対潜掃討部隊、小笠原増援輸送部隊が突如として消失し、異世界へ転移した。米軍相手には苦戦続きの彼らが、航空戦力と火力、機動力を生かして他を圧倒し、図らずも異世界最強の軍隊となってしまい、その情勢に大きく関わって引っ掻き回すことになる。

変身シートマスク

廣瀬純一
ファンタジー
変身するシートマスクで女性に変身する男の話

エデンワールド〜退屈を紛らわせるために戦っていたら、勝手に英雄視されていた件〜

ラリックマ
ファンタジー
「簡単なあらすじ」 死んだら本当に死ぬ仮想世界で戦闘狂の主人公がもてはやされる話です。 「ちゃんとしたあらすじ」 西暦2022年。科学力の進歩により、人々は新たなるステージである仮想現実の世界に身を移していた。食事も必要ない。怪我や病気にもかからない。めんどくさいことは全てAIがやってくれる。 そんな楽園のような世界に生きる人々は、いつしか働くことを放棄し、怠け者ばかりになってしまっていた。 本作の主人公である三木彼方は、そんな仮想世界に嫌気がさしていた。AIが管理してくれる世界で、ただ何もせず娯楽のみに興じる人類はなぜ生きているのだろうと、自らの生きる意味を考えるようになる。 退屈な世界、何か生きがいは見つからないものかと考えていたそんなある日のこと。楽園であったはずの仮想世界は、始めて感情と自我を手に入れたAIによって支配されてしまう。 まるでゲームのような世界に形を変えられ、クリアしなくては元に戻さないとまで言われた人類は、恐怖し、絶望した。 しかし彼方だけは違った。崩れる退屈に高揚感を抱き、AIに世界を壊してくれたことを感謝をすると、彼は自らの退屈を紛らわせるため攻略を開始する。 ーーー 評価や感想をもらえると大変嬉しいです!

処理中です...