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第三章 ベオルブイーターを倒せ!

第九百四十三話 ベオルブ遺跡の真実

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「うおおお……揺れが激しすぎるぞ!」
「何が起こってるの? ねえ何が起こったの? 妖魔君、もしかしてやらかしちゃったんじゃないの!?」
「分からんが、合ってると信じよう」
「これ、回したら止まるんじゃねえのか?」
「メルちゃ。触る、ダメ。ビリビリ、ビリビリ」
「あら、わたくしに触れと言っているのかしら」
「もしかして、雷を舵に流せって言ってるんじゃないか?」
「それは構わないけれど、絵画が消炭になりますわよ?」
「そうしないと金色の舵、光らないよね。本当にこの子、見えている世界が違うんだと思う」


 ヤトカーンが関心したように我が娘、カルネの頭を撫でようとしたが、がしっと手をつかまれてポイされる。
 我が娘は気難しい。
 十分可愛いのだが、気に入った者にしか触れさせないのだ。
 とても残念そうにしているヤトカーンだが、手をつかまれたのは嬉しいようだ。
 ちなみにアイジャックの毛は気に入ったようで、隙あらばむしりにかかっている。

「ではいきますわよ……雷閃!」

 俺たちが少し離れ、ベルベディシアが舵部分に電撃を放つ。
 すると……みるみる絵画の内容が変わり、舵が勝手に動き始めた。
 ベルベディシアが慌てて手を離すと、絵の中に舵が吸い込まれていく。
 そして、絵画には鮮やかな血の色で文字が浮かび上がった。
 これは……古代の文字か? ベルベディシアが驚きながらも、その文字を読んでいく。

「時は満ち、いざ押しとどめん。勇ある者を喰らい尽くすは宇宙コスモスの力。創造を超える創造を、さらに超える創造を武器にせよ。留める力我にあり。願わくば古の民よ、生きよ。汝ある限り希望は保たれん……大がかりな仕掛けね」
「ベルシア。これ読めるの?」
「ええ。わたくしの……遠い昔使われていた故郷の文字ですわ」
「この遺跡とベルベディシアの故郷に何かの繋がりがあったんだな」
「そのようですわね。でもわたくし、初めて知りましたわ。地底に来てよかったのかもしれませんわね」
「……無理やりついてきただけだったんだよな、お前」
「偶然は必然、必然から可能性が生まれるんだよ、妖魔君。こうして私とも友達になれたしね?」
「ああ。だが……」

 失ったものもある。取り戻さないとならないものもある。
 それも偶然だが、必然なのか。
 そう考えていると、表示されていた文字はすべて消え、絵の中に埋まった金色の舵が激しく回転しだした。
 位置が変わり、絵画の部分を削り……本物の舵のような形をとって、再び姿を現す。
 そこには一つのカギ穴をさすような場所があった。

「これは……レイビーの人形にあった鍵を差してみるか」
「へぇ……って舵に鍵を差してどうかなるの?」
「分からない。鍵って扉や箱を開ける以外に使うことってあるか? ……いや、あるな」

 前世の記憶でいうなら、ぜんまい仕掛けや自動車などを動かす部分。
 あれらも鍵を用いるな。
 これも同じか? と思い、差し込んで回してみた。
 すると……周囲の壁が全て開き、透明な膜が張られ……外側の景色が映し出された。
 それを見て全員が茫然ぼうぜんとしてしまう。

「すっげー……」
「ああ。驚いた」
「そうですわね。これがベオルブ遺跡の秘密でしたのね」
「すごく調べたいけど、この規模じゃそうもいかないね。あーあ、故郷に持ち帰れたらなー」
「姉御ぉ。ここからじゃベオルブイーターの活動範囲を通らないと戻れやせんぜ」
「戻れるかもしれない。少しこいつについて調べるべきだ……動かせるかは分からないがな」

 俺たちは、どうやらとんでもないものを眠りから覚まさせたようだ。
 遺跡船……とでも呼ぶべきか。
 この遺跡そのものが船だったのだ。
 恐らく舵を差したときの揺れは、地面から切り離され浮上した揺れだ。
 そして、動力はベルベディシアの雷だったのだろう。
 つまり……俺たちは巨大な遺跡船を手に入れた。
 しかもだ。この遺跡船から、紅色の光が複数、どこかに伸びているのが見える。
 その先に何があるのかは想像がつく。
 きっとベオルブイーターがいるんだ。

「ヤト。お前の故郷はどの方角だ?」
「ええっと、ベレッタの南西だよ。操作できそう?」
「ベルベディシア。俺の血を飲んで構わないから、金色の舵を握ってくれ。これを動かせるのは多分お前だけだと思う」
「やってみますわね……あら? 思ったより簡単に動かせそうですわね……」
「ビリビリ、ずるい。カルネもー、カルネもー」
「いいなー、俺様も触ってみてー……」
「あの紅色の光はなんですかねぇ? あっしにゃ恐ろしい光に見えやすが」
「ベオルブイーターが持つ、何かの能力を封じるもの……じゃないかな。お父さん、これ見たら腰を抜かすかも」
「ヤトのお父さんも研究者なのか?」
「私とは分野が違うかな。二人掛かりなら二日もあれば調べ終わると思うよ。ベルシアと私で操作してみよう」

 金色の舵を握っているベルベディシアから紫色の電撃がほとばしるたびに、遺跡船全体が喜ぶかのように、輝きを増しているように感じた。
 まさかこんなタイミングで俺が欲しくてたまらないものが手に入るとは思わなかった。
 だが、いくつか気がかりな点がある。その最たるものが……。

「そーいや俺たち、入口を破壊したよな……」
「あ……あははは。大丈夫大丈夫、きっと……ね?」
「不安ですわね……もしかしたらあれがこの船の防護壁替わりだったのかしら」
「壊しちまったものは仕方ねーだろ。なんとかなるぜ、にはは! それよりルイン。俺様……腹減ったよぉー」
「カルネも。メルちゃ、お乳、飲む」
「ばっ、こんなとこで言うな! ルイン、あっち向いてろ! えいっ!」

 無理やり首をあらぬ方向に向けられる俺の視界には、壁から半分顔を覗かせる恐怖の人形がいるのだった……。
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