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第三章 ベオルブイーターを倒せ!

第九百三十八話 塔の内の塔?

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 奇妙な領域へと閉じ込められた俺たち。
 一面野原に違和感のある空の黒点。
 これ以外なんのヒントも見つからずにいた。

「やっぱり分からねーな。なぁルイン。パモから食い物出してくれよ」
「あなた……まだ食事をしてからそれほど経っておりませんわよ?」
「だってよー。俺様、腹減っちまったんだもん」
「メルちゃ。ブクブク。太る」
「俺様は太らねー! 直ぐに動くからな!」
「別に食べ物を出すのはいいんだが……この領域外との時間経過って同じだと思うか?」

 もし時間経過しているのなら、ギオマたちの状況が心配だ。
 俺たちがこうしている間にも、ハルファスとマルファスがどう行動しているのか。
 それが気がかりだ。
 もしくはあいつらがこちらを見る能力もあるのかもしれない。
 そのため……出来れば俺の能力についてあまり深く知られたくはない。
 あいつらどうやってベリアルの真似をしたのか。
 封印という言葉を口に出してしまったが、俺のことはどこまで知っているのか。
 気になることは多い。

「……少しわたくしが広範囲雷撃を試してみるのもいいですわね」
「広範囲雷撃?」
「俺様、電撃って苦手だなー……」

 ベルベディシアは何かを察したようだ。
 ただじっとしていても仕方ない。可能性を探るべく周囲を攻撃してみるのもいい手だ。
 だが、相手は俺たちをだました時間分、攻撃が効かないと言っていた。
 つまりこの状況に俺たちをだます何かがあるかもしれないってことだ。

「メルザ。少し俺と一緒にこの場を離れるぞ。合図を出したらやってくれ、ベルベディシア」
「ええ。その代わり血はもらいますわよ」
「分かってる。全力で撃ってくれ……バネジャンプ!」

 メルザ、カルネを抱えてベルベディシアから距離をとる。
 本気の全方位攻撃ってやるとどうなるんだろう。 
 まだ見たことはないのだが、距離をとってもまだ下がれと言っている。
 まじかよ……相当距離を離したぞ? 
 ようやく合図をだしたベルベディシア。さて、彼女の本気はどの程度の雷撃なのか。

「血詠魔古里、血雷、破竜奥義……真ノ絶衝ブラッズドラゴニアス!」

 両手を突き出しクルクルと回転しながら、手のひらより血しぶきあげていく。
 やがてそれらは二つの電撃をほとばしらせ、竜のかたどりを見せる。
 双竜が暴れだし……周囲一帯を電撃の竜が暴れまわりだした! 

「なんつー広範囲攻撃……あそこにいたら竜でもなんでも死に至るぞ」
「すっげー。あんな術みたこともねー。恰好いいな。俺様も真似できねーかな……」
「今はやめてくれ……俺もカルネも死ぬ」

 しかし、その攻撃を終えると同時にクルクル回転しながらパタリと前倒しに倒れるベルベディシア。
 燃料切れだ。髪の色が黒色に戻り始めている。
 ……大分血を与えないといけない気がする。
 そして、やってもらったものの、やはりこの周囲にあいつらはいないようだ。

「目が回りましたわぁー……」
「その術、すごいけど一人でいるときに使えないな……」
「ははっ。ビリビリの姉ちゃんって面白かったんだな」
「カルネ。ビリビリ、好き」
「よかったな。カルネに気に入られたようだぞ」

 と、血をベルベディシアに与えながら周囲を見て、少し異変に気付いた。
 ……草や花になんの影響も与えていない。
 電撃を打ち終わった周囲の状況が不変だ。
 これは明らかにおかしい。

「メルザ。燃斗で地面を少し燃やしてくれないか」
「う? いーけどよ。俺様も血を吸ってもいいのか?」
「おいおい。血を吸うって……少し切り傷を作って血をあげてるだけだぞ」
「だってよ。ルインの血、うめーんだろ?」

 ……そうでした。我が主の頭は食べ物で満たされている。
 このシリアスな展開を和らげようと必死である。
 そうとらえておくことにした。

「今度そんなものよりよほど美味しいトマトジュースを作ってやるから。さぁ頼む」
「へへっ。約束だぜ。燃……」
「ただの燃斗でいい。できれば二か所別々にだ」
「分かった。燃斗! ……燃斗! あれ? 燃えない。でも、どっちも火はついてるぞ」
「質感もあるし、ちゃんとした草だと思ったが、これは本物っぽい草で草じゃないな」
「わたくしの電撃で消炭にならないものなどありませんわ。つまりこれは術の類ですわね」

 ベルベディシアと同意見だ。これは術で作られた草。
 いや、視界に入るすべてがそうだろう。
 領域に迷い込んだと考えるのは勘違いの可能性、いや、だましの可能性もある。
 つまり術を解く方法があればいいのだが。

「あまり好ましい方法じゃないが……もしかしたらカルネは知ってたのかな」
「ん? どーいうことだ?」
「わたくしも分からないわ。この子の言葉、可愛らしいのだけれど……鼻と鳥しか話していませんわね」
「変幻ルーニー!」
「ホロロロー!」
「アルカーンへ繋げてくれるか。ルーニー」

 できれば手の内はあまり明かしたくはない。
 だが、領域やそれを作ってしまうような能力者に心当たりはある。

「ホロロロロロー、ホロロロロロー」
「本当に電話みたいだな……」
「……なんだ。貴様から連絡してくるとは珍しい。だが今は忙しい。手短にしろ」
「アルカーンさん。実は……」

 奇妙な状態のことを説明すると、直ぐに答えが返ってきた。
 面倒くさそうに聞いてはくれるところが有難い。

「ふむ。理解した。その黒点へルーニーを飛ばせ。俺が操作して対処してやる。ただし外へ出ても再び閉じ込められる可能性がある。そのため、一つ準備をしておけ」
「準備? どうすれば?」
「外に出たら確実にどちらかの能力者がいる。出た瞬間目の前にいたら最大火力で倒す。あるいは動きを封じろ」
「……分かったが、出る場所は元の位置なんだな?」
「ああ。間違いないだろう。ふむ、しかし……ルーニーの改良点がみつかったな」
「なんだ? これ以上まだ強化するのか?」
「ああ。俺への視界共有が悪い。もっと角度を調整すべきか……」

 ……それはできればやめてほしい。
 変幻してないときにくっきりと視界共有とかされてみろ。
 籠手に目がついて呪い装備に変身だよ。

「ベルベディシア。血の補充は?」
「……物足りませんわね」
「仕方ねーな。俺様のも飲ませてやるぜ!」
「わたくし、あなたの血は少々お断りですわ……」
「メルちゃ。血、まずそう」
「ひっでー! 俺様の血は美味いぞ! 肉もいっぱい食ってるからな。ああ、ピーグシャークの肉、また食いたいなぁ」
「まだあるぞ。パモに預けてあるが……今は食べている暇、無さそうだな。さて、一斉火力ね。メルザ、カルネをしっかり握って最大のを打ち込んでやれ」
「おう! 全力か。よーし」
「少し不安ですわね……加減させた方がいいと思うのだけれど……」
「アルカーンが言うんだ。きっとそれくらいしないとならない相手なんだろう。攻撃が効くといいんだが」
「メルちゃ。助ける、カルネ。へーき」
「んじゃ、行くぞ。ルーニー、あの黒点へ向けて……いけ!」
「ホロロロー!」
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