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第三章 ベオルブイーターを倒せ!

第九百三十一話 圧倒的な強者の軍団、フェルス解放軍

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 ここはフェルス皇国……跡地といってもいい。
 砂漠を走るシップを用いてフェルス皇国方面へと戻った俺たちは、メルザが引っ張って連れて来ていたフェドラートさんと合流。
 隠されていた母船、メデューサリアに乗り、フェルス皇国へと戻った。
 それからしばらくは、多くの報告を聞いたり、道を勝手にそれたことを怒られたりと、忙しい日々が続いた。
 そして今日、あらゆる情報を精査して部隊編成も行い終えた俺は、自らの役目を果たすべく、行動へ移る。
 最終的な目標は、打倒ベオルブイーターだ。
 相手は地底における最強生物であり、飛行種。
 だが、竜種ではない。
 ベオルブイーターを映したあるものを見せてもらったが、アレを表現するならば、城に近いだろう。
 そして、最も厄介であるのが……その装甲ともいえる鉄壁な防御力だ。
 なにせ、あのベリアルがもつ最強技、エゴイストテュポーンを全力で撃ち放っても、かすり傷一つつかなかったらしい。
 本当に倒せるものなのかすら定かではない。
 絶対神イネービュにでもその情報を聞きたいところだが、イネービュはおろか、神の遣いたちにも誰一人会えていないのだ。
 現在、フェルス解放軍には多くの仲間が募っているが、主要なメンバーは限られている。
 俺の目的地へ同行するのは、女王メルザ、王女カルネ、サーシュ、リュシアン、白丕、ビュイの四幻魔。
 そして魂吸竜ギオマにベリアル、それと、雷帝ベルベディシア。
 仲間以外では、ヤトカーンとアイジャックの二名が同行する。
 ジェネストとクリムゾンは俺がじゃんけんをやらせて敗北したので、ルジリトの傘下に入っている。
 それ以外にもまだ多く仲間が来ているのだが……ルーン国の留守中は、モラコ族のムーラが様々な状況に対応してくれるよう手筈を整えてくれていた。
 ムーラも仲間としては古株だ。
 それにファナやサラたちも残してきている。
 万全な状態で国を守れるとは言い難いが……。 
 しかし、まさかアルカーンさんやニーメまで地底へ来ているとは思わなかった。
 正直フェルス皇国を占有していた奴らには同情を覚えなかった。
 俺たちがフェルス皇国へ到着した頃、ギオマがノースフェルドの兵の魂で遊んでいたからだ。
 人型になっていたギオマに向けて、愚かにも挑発し……逆鱗に触れたギオマが大暴れしたらしい。
 分からないのも無理はない。何せギオマは地上における最強竜の一種。
 地底にそんな知識を持っている奴はほぼいないに違いない。
 ギオマを手なずけられるのは俺だけと、半ば強引にルジリトへ配属させられた。
 俺の手にも余る。
 というか、ギオマは既に封印出来るようにしてあるのだが、中々入ろうとしない。
 自由気ままな生物なのだろう。
 しかしいざとなれば頼りになる男だ。
 そんなギオマも今、竜の姿となり空を飛び始める。

「グッハッハッハッハァ! 地底とやらの空も楽しいではないか!」
「ちょっと喋り方が流ちょうになったな、ギオマ」
「そうか? エルバノと随分話をしておったからな。だが、あやつはエンシュと共に旅にでよった。暇で暇で死ぬかと思ったぞ? ロブロードも駒が増えず飽いておったところだ!」
「そういや、アルン、レェン、モジョコたちは元気そうか?」
「うむ。元気に遊んでおったぞ。目が不自由とは思えんほど周囲を把握する能力が出来ていた。あの国はそれらを考慮して作っているのだろう?」
「ああ。バリアフリー……って言っても分からないか。段差とか色々とっぱらうように、ムーラにお願いしてあるんだ。その国も、移転するかもしれない。海底に」
「ふむ。海底ではこの我にとっては狭そうだな……いっそ海底で羽を伸ばしてみるとするか。グッハッハッハッハッハァ!」
「水圧でさすがのお前でも潰れるだろ……地底でまごついてる時間はない。さっさとベオルブイーターを倒したいところだが……」

 現在、俺はメデューサリアに乗りながら、フェルス皇国の北東で、ベオルブイーターが通る中央ラインのすれすれ付近を目指している。
 ここまでならギオマに乗って行っても良かったのだが、念のためとルジリトに止められ、貴重な飛行船も利用しているわけだ。
 竜と肩を並べて走る飛行船は実に壮観だろう。
 この船は妖力で動くわけだが、今の俺にとっては朝飯前に動かせる程楽になった。
 これを動かすだけでどれ程大変だったことか。
 遠い昔、リルとサラに助けてもらったことを思い出していると、ベリアルが封印から出て来た。
 こっちは相変わらず鳥形態のままだが、ヤトカーンが何かしらを考案しているようだ。

「けっ。あの怪物をさっさとね……言ってくれるじゃねえか」
「やっぱ言い過ぎた。どうにかに変える」
「どうにかなりゃ苦労はしねえんだがな……あの野郎の防御には何か秘密があるに違いねえとは思ったんだがよ。あの姉ちゃん、本当に分かるんだろうな」
「さぁな。何せヤトカーンはアルカーンさんに似た雰囲気がある。分かり易く言えば……」
「変人だろ。そーいやよ。俺が昔戦ったことがある奴らの中にも、似たような変な妖魔がいやがったな。案外そいつらのガキなんじゃねえのか」
「そうかもな。今じゃお前もその同族だろ」
「くそみてえな話だがそうだ。やっぱりタルタロスの野郎を思いっきりぶん殴りたくなってきたぜぇ……」
「あれにも勝てる気がしないんだが……やっぱりタルタロス以上に勝てる気がしないのがベオルブイーターか?」
「さぁな。強さの基準として考えられる規模じゃねえのは確かだ。存在でいうならベオルブイーターの方が、それに該当しやがるがな……」

 そう言って、遠い空を見上げるベリアル。
 その先には何も見えないが、深い歴史がベリアルには映っているのかもしれない。

「妖魔君! 方向ずれてる! もっと東!」
「いや、操縦だけやってくれない? 俺、持ってるだけでも一応疲れるんだけど」
「それならば我が主よ。この白丕が!」
「抜け駆けする者、ここにアリ。役目ならこのサーシュめが」
「んー。ナナーがいないし暇だから、ビュイがやる!」
「まんずわたすを無視して欲しくないんだけんども」
「……いや、お前たちに代わらせるくらいなら、俺が持つからいいよ。ところでメルザは?」
「あちらで王女様にお食事……あっ、主殿は絶対見るんじゃねーぞって言っておりました」
「そ、そうか。元気そうなら良いんだ。それにしてもこれだけいると賑やかだが……」

 四幻やベリアル、ギオマは俺の封印に入れる。
 実質封印外はベルベディシア、メルザとカルネ、ヤトカーン、アイジャックのみ。
 俺含めて戦力五人のワンパーティーと考えれば多すぎるってわけじゃない。
 それらを考えた上で、ルジリトが構成を許可したのだろう。
 
「もー、誰が誰だか分からない。妖魔君、助けて」
「……ぶっちゃけ、俺もなんだよな……四幻はえーと、虎が白丕、竜がリュシアン、玄武がビュイ、サーシュが朱雀と覚えてくれ」
「全っ然分からない! もうまとめて四幻君って呼ぶからね。あ、そろそろ着くよ。あれが古代遺跡ベオルブって言う場所で間違いない」

 俺たちは遺跡を目指していたのだ。
 それはここに……ベオルブイーター打倒に関する手掛かりがあると知ったからだ。
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