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第二章 地底騒乱

第九百十四話 第七車両に向けて

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 車両の分断まで残り一時間程度だろう。
 その間にベルギルガ、ベルベディシア、そしてベリアルと共に突き進まねばならない。

「行くぞ!」
「やっとだぜぇ……ちったぁ役に立てよ、ベル家の生き残り!」
「おう! って何でこの鳥そんなこと知ってるんだぁ?」
「いいから行きますわよ! ようやくですわ。どれ程屈辱だったか……雷閃!」

 ベルベディシアの雷撃が正面の扉を消炭にしてみせる。
 驚いているのはベルギルガただ一人。
 
「遅れるなよ、ギルガ!」
「お、おうー!」
「何だこいつらは! 敵襲か!?」
「悪いが全員眠っててもらう。変幻ルーニー! ヒューメリーから勝手にもらっちまった
力……ヒューメリー眠りの支配者の吐息、降り注げルーニー!」
「ホロロロー」

 鳥形態になったルーニー。
 その能力は大きく進化していた。
 俺の能力をルーニーから直接放出出来るようになり、上空から眠りの息をまき散らす
と、バタバタと妖魔たちが睡眠状態へ誘われる。
 ヒューメリーの眠り。これは神ですら抵抗することが困難だ。
 
「おいおい何だ今の技は」
「ハッハー! いいぞルイン、もっとやれ! おらおらどんどんいくぜぇーー!」
「何であの鳥はあんなに自信満々に偉そうなんだぁ!? ただの鳥で何もしてねえのに」
「……気にするな。ここ数日でうっぷん溜まってたんだろうな」

 今は竜になって暴れることが出来ないからな。
 エゴイストテュポーンも使えやしない。

 第十一車両を突き破り、一気に第十車両へ。
 既に待ち構えていた妖魔たちが襲い掛かって来る。
 やれやれ、派手に十一車両を突破したもんだから皆さん激怒してらっしゃる。
 奥でも騒ぎになってるだろう。
 次々と俺の後方から電撃が飛んでくる。
 ちゃんと殺すなと伝えてはある。
 ……でも気を付けないと大量に死ぬぞ、ベルベディシア。

「よくもわたくしに汚らわしい部屋を与え、このわたくしを侮辱しましたわね。消炭にな
りたくないなら震えて隠れているといいのですわ! わたくし、少々怒っていますのよ」
「やり過ぎるなよベルベディシア! 相手はただ力に恐れて従ってるだけかもしれないん
だ!」
「分かっていますわ。これでも妖魔の男たちの顔は気に入っておりますのよ。顔だけは……
ですけれども」
「何だこの賊の強さは! 一体どうやって侵入した!? 奴隷だとしてもどうやって枷を!」
「ふっふっふ。がーっはっはっは! どうだ! このギルガ様の素晴らしい力は!」
「二人とも捕まれ! ベリアルも振り落とされんなよ! 流星回転斬り!」

 流星と二剣の合わせ技だ。
 悪いが十車両でモタモタしてるわけにはいかないんでな。
 一気に第九車両到達だ。

「く、そ……」
「けっ。もっと派手にぶった斬りやがれ」
「これ以上この乗り物を恐怖列車にしてくれるなよ……さぁ次!」
「おっとこの車両はそうそう容易くはいかないぜ!」
「くっ……流星で押し切れない!」

 流星で切り刻みながら次の車両に押し込んだが……俺の一撃を止めやがった。
 灰色の外見……こいつ、邪念衆か! 

「邪念衆終焉の末席、二速の月影。一つ、どうぞよろしく」
「……ルイン・ラインバウトだ……月影とはよく言う。月などないだろうに!」
「おやご存知無い? 地上の方にはそりゃあ分からないでしょうねぇ」
「これでも妖魔なんだがな。だがあんたの言う通り、俺は地底のことを良く知らない、な!」

 思い切り剣で弾き飛ばすが、弧を描くようにふわりと着地してみせる。
 こいつ……末席とか言ってやがったのに、強い! 

「どうもあっしはねぇ。今兄さんと戦いたくない気がするんですよねえ……」
「同感だな。見逃して先へ行かせちゃくれないかい?」
「面白い兄さんだ。そうはいかなくて……ね!」

 上段からの斬り下ろし。
 剣圧だけでもやばさが伝わって来る! ていうか乗車席真っ二つだぞ! 
 
「ベリアル、下がってろ! マジでやる」
「ちっ。抜かるんじゃねえぞ!」
「なーんて偉そうな使い魔だ、にしてもあの野郎、邪念衆と互角にやりあってやがる」
「あの程度ではありませんわ。わたくしの手助けはいらないようですわね」
「ああ。変幻ルーニー!」
「っ! 夢幻級ですかい。それにその剣。神話級が二本」
「悪いがこれでも三剣流なんでね。一本奪い返せなかったが」
「それは残念。二剣では本気を出せないんじゃ、こっちに優位かなぁ」
「流星!」
「おっと同じ手は……」
「バネジャンプ、マッドシールド!」
「壁に自ら突撃!? 月影!」
「なっ!?」

 流星で制御出来ない移動分をあえて壁に激突することで制御し、軌道を変えて
斬りかかった。
 マッドシールドと流星、バネジャンプのコンビ技、初めての試みだが……あいつ、瞬時に
半月分移動しやがった。
 参ったね……まだ九車両目なのに楽しくなってきちまった。

「後ろだ!」
「っ! 妖楼!」
「これもダメ……か。いやいや兄さん、強いねえ。邪念衆に入らないかい?」
「お断りだ。まさか九車両目で使うことになるとは思わなかったが……」
「ふふふ、さぁ行きますよ。二速!」

 踏み込みながら右手の剣を水平に構えた。
 文字通りギア上げての超加速か! 「ルーニー!」
「ホロロロー!」

 上空から急降下の嘴剣。
 ただのアーティファクトじゃないことを良く覚えておいてもらおう。

「くっ。だがその攻撃は抜ける!」
「リーサルレデク・ルージュ」

 ルーニーに命令を出すと同時に俺はリーサルレデクを放っていた。
 俺の手元から離れたコラーダは、奴の剣をはじき落しつつ、肩を貫通していた。

「見えなかった……いやぁ本当にお強い」
「先を急ぐ……追ってこれる怪我じゃない。頼むから追ってくるな」
「はいはい。負けちまって背中を追うのは剣士の恥だ。あっしの……負けですよ」
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