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第二章 地底騒乱

第九百十三話 脱出ミッションスタート

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「おーい。早く積み込めー!」
「はい、直ちに」
「おう。大きい方は任せな!」
「積み込んだらさっさと下りろよー。ん? こんな箱あったか?」
「千六百四二の分です。ベレッタ行で間違いありません!」
「そうか。出発まであとどのくらいだ?」
「数十分程です!」
「レイス共を解き放て! 積み込み完了の合図をしろ! 今回はフェルドジーヴァ様が乗
車されているからな。邪念衆先鋭三人も搭乗されている、お前らは下がれー!」
「司令官様。少しよろしいでしょうか?」
「何だ?」
「どうも積み忘れが一つあるようです。こちらへ」
「何だと!? 一体何をやっている!」
「こんな大きなものを積み忘れたんだよねえ……ほいっと」
「ぐあっ……貴様、ただで済むと、思う……」
「大丈夫だねえ。あんたも一緒に積み込むわけだから、僕とはもう会わないよ」
「くそ、やはりティソーナとコラーダは諦めるしかないのか」
「城に微かに見えるけど歯がゆいねえ……どうやっても辿り着けないだろう」
「パミュ?」
「あん中に突撃すんのぁ命知らずだぜ、パモ。この俺でも入る気にはならねえや」
「お前の使い魔喋るんだな。面白いな。どうだ、俺にくれねえか?」
「悪いなベルギルガ。お前の頼みでもこいつはやれない。それよりも……ベルベディシア
の枷、頼めるか」
「おう任せときな。その間にギルガ様の使えそうな武器を探してこい!」
「……変なとこ触ったら後で消し炭にしますわよ?」
「しーっ。静かにしてろベルベディシア。発進するまでその箱の中だ」
「……仕方ありませんわね。我慢します」
「おい十二番車両、報告遅いぞ、どうなっている!」
「……すみません! 只今搬送中トラブルにより少々遅れが出ております!」
「何? 今回はジーヴァ様が乗車されているんだぞ! 遅れなどゆるされるものか! 今
そちらに行く!」
「……一名追加だ、ジオ」
「困ったねえ。これ以上兵士を積みたくないんだけどねえ」

 俺たちは現在妖魔導列車十二番車両にいる。
 今回はこちらで鉱物の搬入作業を請け負った。
 俺たちの役回りではないのだが、奴隷にされたもののうち四割を俺たちの味方にするこ
とが出来た。。
 打倒フェルドナーガに対する先駆けとして、俺とベルギルガは認められた。
 フェルドナーガの弱点を知るものは、今や奴隷たちの間で四割を超えるというわけだ。
 ベルベディシアは鉱物を入れている巨大コンテナの中に隠している。
 そちらでベルギルガに枷の開錠を急がせている最中。
 既に十二番車両は俺たちで制圧した。
 発車してしまえばこちらのものだが、それまでの時間稼ぎとベルギルガの武器探しが最大の課題。
 しかし奪われたティソーナとコラーダは城に飾られている。
 これでは取り戻しようがないってわけだったんだが……。
 ルーニー? それに関しては勿論策がある。
 これはアルカーンに聞いた通りだが、何処にあるかも分からないのに上手くいくかどうか。

「発車が近いねえ。僕はそろそろ戻らないとならない。武運を祈るよ」
「戦力を整えたら必ず解放しに向かう。それまでどうにか耐えてくれよ」
「舐めないで欲しいねえ。この瞬剣のジオ。拳一つでもお二人を守り抜いてみせる」
「頼りにしてるぜ、王子様」
「僕が王子なら君は王様だろう?」
「いいや。我が国は女王唯一の独裁国家と言ってもいい。無邪気に笑う可愛い女王様だけどな」
「ふふっ。早くお目通り願いたいもんだねえ」
「直ぐに会えるさ、ジオ、それじゃな!」
「パーーミューー!」
「魔導列車発車カウント、十、九、八」
「パモ? 何してるんだ? お前……」
「パーーーーミューーーー!」

 発射カウントが始まった途端、パモがはるか遠くに見える城に向けて吸い上げ始める仕草を見せた。
 俺たちは第十二車両。此処から見える城は遠い。
 何かを吸い寄せるとでもいうのか? ここから? 

「パーーーーミューーーーーーーーー!」
「うおお、まじかよ。剣が! それじゃこっちもだ! 来幻ルーニー! 俺の下へ来い!」
「四、三、二、一……妖魔導列車、発車!」

 妖魔導列車が勢いよく発車するやいなや、そのタイミングでティソーナ、コラーダ二本がパモに吸い込まれた。
 そして、一羽の黒い鳥が俺の腕へとしがみつく。
 当然城では騒ぎになっているだろう。
 まさかずっと目星つけてたってのか。
 
「凄いぞパモ。しかしこれ、奪われて権利はどうなってるんだろう。出せるか、パモ」
「パミュ!」
「ティーちゃんここに復活でごじゃろ! 全くだらしないでごじゃろ! 奪われたら困る
でごじゃろ!」
「あらぁ、あなた随分と逞しくなったわねぇ」
「あれ? ティソーナの喋り方は変わってないけど……」
 
 お色気満々なお姉さんのような喋り方になってるんですけど。
 コラーダさんどうしました? 

「長い年月眠りっぱなしだったからぁ……ふぅ。悪くない時間だったわぁ……」
「すみません。今はしまわせて下さい……剣戒! 封剣!」

 さて、出発出来たのはいいが当然このままでいいわけがない。
 ここ第十二車両は鉱物を積み込んである車両だ。
 乗組員はいない。しかし事前に調べた情報だと、この積み荷はベレッタまで届かないらしい。
 中間地点で受け取りがあり、そこで切り離されるわけだ。
 つまり全員で前方車両……七車両目まで移動する必要があり、戦闘は避けられない。
 この列車には邪念衆が乗っているし、妖魔の兵も乗っている。

「ようやく暴れるときがきたぜ、ベリアル」
「違ぇねえ。俺はよ、ずっとフェルドナーガの対策も考えてたぜ」
「ほう。あの邪眼は厄介だ。どうすればいい?」
「視線を外しただけじゃあの術は破れねえ。あの眼は見えねえとこまで見てやがるからな」
「つまり三百六十度覆える術ってことか?」
「恐らくその通りだ。死角が無ぇ。そしてあいつを恐怖と崇める対象が増えればその威力
も増す」
「打つ手がないように思えるが」
「いや、ある。見え過ぎる目だが、闇に覆われりゃ見ることは出来ねえだろ」
「つまりどうするんだ?」
「目潰ししろ。もしくは光を消せ。それが恐らく弱点だろ。あいつの一族全てな」
「試してみるか……そろそろベルベディシアの枷も外れたかな」
「開けてみな」
「おーい、開けるぞー……何してんだお前ら」
「この、この!」
「はひ、はひー! だから触ってねえってー!」
「……それくらいにしてやれ」

 顔面を足蹴にされて若干嬉しそうなベルギルガ。
 さて、準備は整った。
 まずは前方車両を目指すとしよう。
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