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第二章 地底騒乱

第九百九話 ベルギルガという妖魔

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 一通り作業を終えた後の僅かな自由時間が得られる。
 これは前世と余り変わらない生活な気がしてきた。
 好きなものを買ったり定期的な休みは無い分、住処と食事を与えられる違いがあるだけか……。
 
 そして俺は今、手筈通りにベルギルガへと面会するべく奴と接触しようとしている。
 各自与えられた部屋へ来客をということも出来るのだが、監視の目が多いので会う場所は外だ。
 元ベレッタの兵士たちに導かれて案内されたその場所は、建物と建物の間で少し怪しい雰囲気が
漂っている。
 この兵士たち……思い返してみればリルとサラを助けるときに酒盛りしてた奴らだ。
 向こうは覚えちゃいないだろうが、こんなところまで見知った顔の奴らがいたのには驚いた。

「この奥にいる。俺たちはこっちで見張っておくよ」
「有難う、助かる」

 一人壁伝いに奥へと進むと、大柄な男が座り込み、ブツブツ何かを唱えているようだった。
 まさか何かの術を使っているのか!? こいつ、既に能力を……「うお!? お、お
う。このギルガ様に話を聞きたいってえ勇気のある奴は、あ、貴様かぁーー?」

 足音で気付かれたのか。一瞬飛び跳ねたように驚いていたのは気のせいだろう。

「そうだ。俺はルインという。フェルス皇国側の者だ」
「ほうほう、ふむふむ、成る程なぁ。それならほれ、まずは差し出すものがあるんだろ。
んー?」
「いや、今は持ち合わせがない。全て奪われてしまってるんだ。取り戻せたらそこから何か
報酬は支払うよ」
「なぁにぃー? それじゃあ何も持たぬままこのギルガ様の下へ来たってぇのか?」
「……」

 こいつはひょっとするとちょろいかもしれん。
 俺はベルータスのことを良く知るわけでは無いが、こいつは俺とベルータスが敵対関係に
あったことを知らないように思える。
 だが同族であることを明かすのは危険……か。
 少しおだててみるか。

「あんたが男の中の男。強くそして賢いと聞いてな。そんなあんただからこそ、この枷を外す
術を知っていると聞き及んだんだ」
「ほうほう。げへへへ、その通りだが無料で教えてやるほど気前が良いわけじゃないぜ」
「本当に知ってるんだな?」
「当然よ。準備が整わないうちは外して能力を使っても、捕まるだけってことよ」
「それはそうだろう。なにせ監視も多い」
「その辺は問題じゃねえ。逃げる道がねえんだよ」
「というと?」
「それくらいなら教えてやろう。いいか……」

 ベルギルガの話によると、この鉱山エリアはノースフェルド皇国北に位置しており、妖魔
導列車への鉱物積み込み用通路以外、全て封鎖されているらしい。
 それ以外の道で解放されるとすれば、城へ通じる道のみ。
 城内を抜ければ脱出は可能だが、それこそフェルドナーガに真正面から喧嘩を売るよう
なものだ。

「どうよ。奴が城に居る限りここを抜け出す手段が無ぇ。そして奴は愚かにもあのベオ
ルブイーターに挑もうとしてやがるって話じゃねえか。ギルガ様はその隙を突いて逃げ
出すつもりだ。どうだ、頭良いだろ」
「あ、ああ。その間誰が城を守るんだろうな」
「ん? そりゃおめえ……誰だろうな」
「……もし妖魔導列車に乗り込み動かせるとしたらどうだ?」
「何? お前あれ操縦出来るの? 本当に?」
「確証があるわけじゃない。だが出来る可能性は高い」
「あ、そう。ルインとか言ったな。お前なかなか面白そうじゃねえか。このギルガ様の部
下にならねえか?」
「悪いけど既に主がいるんだよ。あんたも主としてはいい器を持ってそうだけど」

 俺の求めるタイプじゃないが、どことなく人を惹きつけるような魅力があるやつだと思っ
た。
 これも妖魔としての特徴かもしれない。

「まぁいい。もし成功しそうならこのギルガ様を優先的に連れ出す約束を交わせ」
「無論だ。約束しよう」
「よーしよし。後で見張ってる奴らにも言うからな。約束を破ったら許さんぞ?」
「俺は約束を破ったりしないしあんたに嘘もついたりはしない。我が主に誓ってもいい」
「ふうむ。中々忠義心のありそうな男だな。いいだろう、いいか誰にも言うなよ?」
「分かってるさ。ちなみに鳥についたのも外せるか?」
「その肩に乗ってる使い魔のか。無論このギルガ様に不可能はないグハハハハハ!」
「おい、声大きいって」
「おうすまんすまん。それでだ。この枷はな……実は全て生物なのだ」
「これが? 生物だと?」
「そうだ。正確には生物と鉱物を織り交ぜて産み出したモンスター。意思があるわけ
じゃないぞ。鉱物から力を吸い上げて生きてやがる。そしてだ……このギルガ様はこいつ
を喰っちまったわけだ。どうだ! 凄いだろう!」
「ええっと……つまりお前は今能力を封じられていない……でもつけてるよな」
「こいつは真っ赤な偽物だ。ほれお前の分」

 そういうと懐からごそごそと枷そっくりなものを取り出してみせる。
 大きさも様々だ。これ、全部こいつが作ったのか? これはこいつの能力か何かか。
 
「喰ったものをあらゆる形で再現出来る、ギルガ様の能力だ。凄ぇだろう?」
「凄い。けどこれって何処から出て来たんだ?」
「おう、口の中からだ。見てろよ……」

 そう言って同じものを吐き出してみせるベルギルガ。
 触っちゃったよ! まじかよこれつけんの? 

「お前のは随分といい出来の奴だ。そのちっこい鳥のはこれでいいだろ。指の能力封じ用
だ」
「で、今俺たちについてるのはどうするんだ?」
「今からギルガ様が喰うに決まってるだろ」
「やっぱ、そうなるんだよな……」
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