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第二章 地底騒乱
第九百五話 坑道で情報収集
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驚くことに今俺の背後にいるのはあのキゾナ大陸王子、エッジマール・ウル・キゾナ……らしい。
まさかこんな形で再会するとは。
とはいえ鉱山へ向け真っすぐ歩かされている。
後ろを振り向くことは許されていないので、小声で会話を続ける。
「……本人という証拠はあるか?」
「そうだねぇ。君なら僕が誰を思っているか知ってるんじゃないかねえ」
「女性全般。ほぼ全ての女性」
「酷いねぇ!? まぁ女性は大事だと思うけどねぇ」
こいつと俺くらいしか分からなそうな情報……うーん。
「俺が知令由学園にいたときに、お前に教わったもう一人は誰だったか、分かるか?」
「ベルディアちゃんでしょ? 可愛い子だったねぇ。元気にしてるかねえ?」
「俺の妻で、もう子供もいるぞ」
「……君、人のこと言えないねぇ」
「うっ……言われてみれば。だがあれはブネが勝手にだな……いやいや責任は負っている
しそんなことは」
「おっと。この辺にしておこう。入り口で手荷物検査が入るからねえ。君は何番かな?」
「二千二十四番だ」
「それなら作業指導として僕が間に入ろうかねえ」
「分かった」
どうやら本物のジオで間違いないようだ。
聞きたいことは山ほどあるが……こんな場所にまで知り合いがいるじゃないか。
――坑道に入り奥へ奥へと進まされる。
この鉱山、相当巨大だ。
そこかしこに穴が開き、多くの支柱がある。
俺とジオは硬い金属類を掘れる体格をしているからか、最奥の発掘場へと通された。
「貴様らはここで作業しろ。名乗り出た千二百番。しっかり教えるように」
「承知したねえ」
監視はゆっくりその場を去り、渡されたつるはしで採掘を開始する。
かなり掘らないと、何も出ないような場所に思える。
早速つるはしを持ち振るってみるが、思ったより掘りにくい。
「なぁジオ。一体何があったんだ」
「地底に天変地異が起きてねぇ。妙な建物が浮かびあがった。それに合わせるようにして
フェルドナーガの軍勢が攻めて来てねぇ」
「妙な建物?」
「フェルドナージュ様のお話だと、あれは魔大戦の頃の建造物じゃないかという話でねぇ」
「フェルドナージュ様はどうしたんだ!?」
「幽閉されてるねぇ……ニンファも同じく」
「何だって!? それじゃお前はニンファを助けるために……」
「声が大きいねえ。もう少し静かに。採掘の音へ紛れ込ませるといいねえ……残念だが抵
抗、出来なかったねぇ」
「なぁ、リルやカノンを見なかったか?」
「いや、見てないねぇ。フェルドナージュ様から捜索依頼は出てたけどねぇ」
「しかしあのフェルドナージュ様が簡単にやられるとは思わなかった」
「……奈落からフェルス皇国に戻るとき、女性を助けたんだけどねぇ」
「また女性か!?」
「いや、ちゃんと聞いて欲しいねぇ。その女性がねぇ、フェルドナーガの手先だったんだよねぇ。
記憶を失わせる術をかけ、解除と共にその周囲の能力を縛る恐ろしい術を発動させてくれてねぇ。
まんまとしてやられたってわけだねぇ」
「フェルドナーガってのは一体、何を……お、これが目的物か」
「もう掘れたのかい? おかしいねぇ!? こっちはちっとも出ないのに」
大きめの金属塊、道中見て来た建物と同一の黒色で出来たものだ。
かなり重く、鉄を連想させるが、鉄はこのような色はしていない。
「ノード黒霊鉱って言うんだけどねぇ。極めて硬い金属だねえ」
「何に使うんだ、これ?」
「列車の建造に使うみたいだねえ。あれは妖魔が霊を憑依させ走らせる特殊なものらしい
からねえ」
「そうかそれで……そーいやお前、ドワーフ一族だったな。それで詳しいのか」
「まぁ、ドワーフといっても色々だけどねぇ。僕は王族だから鉱山で採掘って経験は少な
いんだよねぇ……僕も尋ねたいことがあるんだけど聞いていいかねえ?」
「キゾナ大陸のこと……か?」
「そうだねぇ……その様子じゃ、酷い状態かねえ」
「ああ。上位神ロキによって、誰一人住んでいない場所になってしまった。そしてキゾナ
大陸にいたバルフートとバルシドニア。双方がトリノポート大陸を襲ったんだ」
「そうか、それで君はここへ避難しに来て捕まったのかねえ?」
「いや、どちらも俺に取り込んだ」
「なんだってぇ? あの伝説の生物を取り込んだのかねえ? これは驚いたねえ」
「だが、奪われてしまった。ロキもバルシドニアと共に取り込んだんだ。つまり……」
「フェルドナーガの手中にバルフートとバルシドニア、それにキゾナを滅ぼしたロキがいる
わけだねえ」
「そういうことになる。すまない、俺はタナトスって奴の裏切りでここへ」
「君、相変わらずお人好しで信じやすいんだねえ」
「そーいやお前にも一度騙されて牢に放り込まれたな」
「あれは正直参ったねえ。父上がもう父上で無いなんて思わなかったからねぇ……申し訳なく
思っているんだけどねえ」
少し暗い話になってしまった。
俺はこいつを恨んではいないし、ある意味こいつのお陰でマァヤ・アグリコラと知り合えて
命も救えた。
あの場所に行け無かったら、イーファはスライムのままだっただろう。
シュイオン先生の奥さん、メルフィールも助けられなかったに違いない。
何一つ解決せず歯車は狂っていた可能性がある。
「運命ってのは本当、何がきっかけでそうなるか分からないもんな。お前の行った行動ですら
俺の道筋を変えて……もしかしたらこれもそうだというのか」
「ん? どうしたのかねえ」
「いや、今はいい。それより俺は力を奪われていてさ。その力をどうにかして取り戻し、ここ
から脱出したいんだ」
「それは賛成だねえ。ちなみにだけどねえ」
つるはしを置いて構えるジオ。
何をするつもりだ? と思ったら、正面の岩壁を素手で殴りつけた!
すると、ドゴォ! という強い音と共に岩壁がバラバラと崩れる。
「僕は屈強な種族でねえ。物理攻撃が殆ど効かない。覚えてるかねえ?」
「ああ。瞬剣のジオ。お前の存在は本当に頼りになる。俺が認める数少ない強者だ。お前の力を
借りたい。条件は……お前がニンファと結婚出来るよう俺も力を貸すことだ」
「承ったねぇ。この瞬剣のジオ。今日から君の仲間となろうかねえ」
まさかこんな形で再会するとは。
とはいえ鉱山へ向け真っすぐ歩かされている。
後ろを振り向くことは許されていないので、小声で会話を続ける。
「……本人という証拠はあるか?」
「そうだねぇ。君なら僕が誰を思っているか知ってるんじゃないかねえ」
「女性全般。ほぼ全ての女性」
「酷いねぇ!? まぁ女性は大事だと思うけどねぇ」
こいつと俺くらいしか分からなそうな情報……うーん。
「俺が知令由学園にいたときに、お前に教わったもう一人は誰だったか、分かるか?」
「ベルディアちゃんでしょ? 可愛い子だったねぇ。元気にしてるかねえ?」
「俺の妻で、もう子供もいるぞ」
「……君、人のこと言えないねぇ」
「うっ……言われてみれば。だがあれはブネが勝手にだな……いやいや責任は負っている
しそんなことは」
「おっと。この辺にしておこう。入り口で手荷物検査が入るからねえ。君は何番かな?」
「二千二十四番だ」
「それなら作業指導として僕が間に入ろうかねえ」
「分かった」
どうやら本物のジオで間違いないようだ。
聞きたいことは山ほどあるが……こんな場所にまで知り合いがいるじゃないか。
――坑道に入り奥へ奥へと進まされる。
この鉱山、相当巨大だ。
そこかしこに穴が開き、多くの支柱がある。
俺とジオは硬い金属類を掘れる体格をしているからか、最奥の発掘場へと通された。
「貴様らはここで作業しろ。名乗り出た千二百番。しっかり教えるように」
「承知したねえ」
監視はゆっくりその場を去り、渡されたつるはしで採掘を開始する。
かなり掘らないと、何も出ないような場所に思える。
早速つるはしを持ち振るってみるが、思ったより掘りにくい。
「なぁジオ。一体何があったんだ」
「地底に天変地異が起きてねぇ。妙な建物が浮かびあがった。それに合わせるようにして
フェルドナーガの軍勢が攻めて来てねぇ」
「妙な建物?」
「フェルドナージュ様のお話だと、あれは魔大戦の頃の建造物じゃないかという話でねぇ」
「フェルドナージュ様はどうしたんだ!?」
「幽閉されてるねぇ……ニンファも同じく」
「何だって!? それじゃお前はニンファを助けるために……」
「声が大きいねえ。もう少し静かに。採掘の音へ紛れ込ませるといいねえ……残念だが抵
抗、出来なかったねぇ」
「なぁ、リルやカノンを見なかったか?」
「いや、見てないねぇ。フェルドナージュ様から捜索依頼は出てたけどねぇ」
「しかしあのフェルドナージュ様が簡単にやられるとは思わなかった」
「……奈落からフェルス皇国に戻るとき、女性を助けたんだけどねぇ」
「また女性か!?」
「いや、ちゃんと聞いて欲しいねぇ。その女性がねぇ、フェルドナーガの手先だったんだよねぇ。
記憶を失わせる術をかけ、解除と共にその周囲の能力を縛る恐ろしい術を発動させてくれてねぇ。
まんまとしてやられたってわけだねぇ」
「フェルドナーガってのは一体、何を……お、これが目的物か」
「もう掘れたのかい? おかしいねぇ!? こっちはちっとも出ないのに」
大きめの金属塊、道中見て来た建物と同一の黒色で出来たものだ。
かなり重く、鉄を連想させるが、鉄はこのような色はしていない。
「ノード黒霊鉱って言うんだけどねぇ。極めて硬い金属だねえ」
「何に使うんだ、これ?」
「列車の建造に使うみたいだねえ。あれは妖魔が霊を憑依させ走らせる特殊なものらしい
からねえ」
「そうかそれで……そーいやお前、ドワーフ一族だったな。それで詳しいのか」
「まぁ、ドワーフといっても色々だけどねぇ。僕は王族だから鉱山で採掘って経験は少な
いんだよねぇ……僕も尋ねたいことがあるんだけど聞いていいかねえ?」
「キゾナ大陸のこと……か?」
「そうだねぇ……その様子じゃ、酷い状態かねえ」
「ああ。上位神ロキによって、誰一人住んでいない場所になってしまった。そしてキゾナ
大陸にいたバルフートとバルシドニア。双方がトリノポート大陸を襲ったんだ」
「そうか、それで君はここへ避難しに来て捕まったのかねえ?」
「いや、どちらも俺に取り込んだ」
「なんだってぇ? あの伝説の生物を取り込んだのかねえ? これは驚いたねえ」
「だが、奪われてしまった。ロキもバルシドニアと共に取り込んだんだ。つまり……」
「フェルドナーガの手中にバルフートとバルシドニア、それにキゾナを滅ぼしたロキがいる
わけだねえ」
「そういうことになる。すまない、俺はタナトスって奴の裏切りでここへ」
「君、相変わらずお人好しで信じやすいんだねえ」
「そーいやお前にも一度騙されて牢に放り込まれたな」
「あれは正直参ったねえ。父上がもう父上で無いなんて思わなかったからねぇ……申し訳なく
思っているんだけどねえ」
少し暗い話になってしまった。
俺はこいつを恨んではいないし、ある意味こいつのお陰でマァヤ・アグリコラと知り合えて
命も救えた。
あの場所に行け無かったら、イーファはスライムのままだっただろう。
シュイオン先生の奥さん、メルフィールも助けられなかったに違いない。
何一つ解決せず歯車は狂っていた可能性がある。
「運命ってのは本当、何がきっかけでそうなるか分からないもんな。お前の行った行動ですら
俺の道筋を変えて……もしかしたらこれもそうだというのか」
「ん? どうしたのかねえ」
「いや、今はいい。それより俺は力を奪われていてさ。その力をどうにかして取り戻し、ここ
から脱出したいんだ」
「それは賛成だねえ。ちなみにだけどねえ」
つるはしを置いて構えるジオ。
何をするつもりだ? と思ったら、正面の岩壁を素手で殴りつけた!
すると、ドゴォ! という強い音と共に岩壁がバラバラと崩れる。
「僕は屈強な種族でねえ。物理攻撃が殆ど効かない。覚えてるかねえ?」
「ああ。瞬剣のジオ。お前の存在は本当に頼りになる。俺が認める数少ない強者だ。お前の力を
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