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第二章 地底騒乱
第九百一話 統治を成し遂げた第二の皇帝
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俺たちは今、玉座の前まで運ばれ俯かされている。
正面にいるのは邪眼のフェルドナーガ。
まさかこんな形で相まみえようとは思いもよらなかった。
奴に睨まれた途端、全員指一本動かせなくなったのだ。
そして……封印しているモンスターたちを出すことも出来ない。
あの絶魔王、雷帝ベルベディシアでさえも動けずにいる。
そして……俺は焦燥感に駆られていた。
タナトスが裏切るはずはない、きっと何かの間違いだと。
このまま時間を浪費させれば、メルザがこちらへ来てしまうかもしれない。
先にフェルス皇国へ向かった者も無事じゃないかもしれない。
額から嫌な汗がにじんではしたたり落ちていくのが分かる。
「ふむ。もう少し凛々しい男だと思っていたが違うようだ。その顔……何を考えておるのやら」
「……」
「口は利けるはず。話すがよい」
「おい貴様、フェルドナーガ様の前で無礼だろうが! さっさと喋らぬか!」
「嘘だ……こんなこと、全部嘘に決まってる」
「我と面会していることは事実。これは期待外れか。我の腹心にとも考えたのだがな。封じられた
存在を引きずり出し、鉱山で働かせるか」
「今、何て言った?」
「貴様は特殊な妖魔だという噂でな。モンスターを封印した後、そのモンスターを放出し操ると
聞き及んでおる」
「タナトスの野郎……ルインの情報を全部流しやがったのか」
「聞くまでもなくそのような噂は既に妖魔界に流れておるがな。黒星ベルローゼの弟子にして両星の
力を使い、神話級アーティファクトを三本操り、幻魔の力も使うという。これほどの逸材、我が欲さぬ
道理はない。アルカーン以来の逸材だ」
「あんたの目的は何だ? 一体何を考え……ぐっ」
口を挟もうとしたら側近に地面へ顔を押し付けられた。
くそ……力がまるで入らない。
「無礼だと言っているだろうが!」
「構わぬ。教えてやってもよい」
「はっ……」
「我は地底と地上双方を支配する。のう? ベリアルよ。貴様の望みもそうであろう」
「けっ。誰がてめえと一緒だよ! 俺ぁソロモンの誓いを果たすだけだ。てめえと一緒に
するんじゃ……がはっ」
「無礼な口を利くなと何度言わせるつもりか! この鳥風情が!」
「落ち着かぬか、ジーヴァよ」
「しかし、父上を侮辱されるのは許し難く……申し訳ありませぬ」
「そやつは本来、なかなかの雄姿で戦う者だったと聞く。遠い過去の者だがな。我は才覚ある者が好きだ。
しかし我の趣味趣向にそぐわぬ者は全て奴隷へと落とす」
「くそ、や、ろ……う」
「ベリアル、しっかりしろ! おい、その手を……ガハッ」
「少し強めに縛らねば。まだ抵抗する余力はあるようだな。さて、目的は話した。両星のルイン
よ。今日から星の力も無く、神話級アーティファクトも失い、封じられたモンスターも失う貴様
には同情しよう。食事の提供などを行うのはやぶさかではない。暫くは我が鉱山で働いてもらう
ことになろう」
「貴様らはこれから奴隷として生きるのだ。フェルドナーガ様の下で働けることを喜ぶんだな」
「我の統治は厳しいが、奴隷とて権利はある。むやみに傷つけるようなことはせぬ。しかと労働力
として還元するがよい」
この状況……まずい。
どうにか打破する方法を見つけないと。
神話級アーティファクトは俺が手放す意思をみせなければ渡せないはずだ。
それに所持していないと嘘をつけばきっと……いや、タナトスから情報は漏れてるか。
「言っておくが、拒めば貴様の大切なものは失われるだろう」
「……分かった。だが体が動かなければ出せない仕様でね。少しだけ解いてくれないか」
「その必要はない。ゆけ、ナーガよ」
フェルドナーガがそう命じると、玉座から一匹の蛇が俺の体に纏わりついた。
すると……封剣や剣戒をしていないのに、鎖に繋がれるようにしてティソーナ、コラー
ダ、ソフドが姿を表す。
「貴様は知っておるか? 神話級アーティファクトと言っても、その中で珍しさは異なる
。これらの中で特異に珍しいのがこの二本。絶対神イネービュが産み出したとされる中
で、長き年月をかけて作られた代物。だが貴様は、まるで扱えておらぬようだな」
まだ権利は一切譲渡していない。
なのに何故、取り出せるんだ。
こいつの能力なのか?
「ふむ。主とは認めぬか。まぁよい。しばらくは美しい剣として飾っておいてやろう。
破魔の鎖を巻け」
「はっ!」
俺の両腕に鎖が巻かれ……すると途端に体の力が吸い上げられる感覚に陥る。
何だこれは? 俺に何をするつもりだ。
「奇妙なモンスターが混じっています。かなりの大きさです」
「タナトス。報告に無かったようだが?」
「あれ、そうだったかな。うーん、私がいないときに封印したんじゃない?」
「ここでは収まり切りません!」
「では、鉱山まで移送せよ。我も見物に参る」
「はっ! さぁこっちへ来い!」
何の抵抗も出来ないまま、無理やり引っ張られていく俺たち。
どうにかしてこの場を逃げないと……過去で一番まずい状況かもしれない。
フェルドナーガ……くそ、いつから狙われていたんだ。
正面にいるのは邪眼のフェルドナーガ。
まさかこんな形で相まみえようとは思いもよらなかった。
奴に睨まれた途端、全員指一本動かせなくなったのだ。
そして……封印しているモンスターたちを出すことも出来ない。
あの絶魔王、雷帝ベルベディシアでさえも動けずにいる。
そして……俺は焦燥感に駆られていた。
タナトスが裏切るはずはない、きっと何かの間違いだと。
このまま時間を浪費させれば、メルザがこちらへ来てしまうかもしれない。
先にフェルス皇国へ向かった者も無事じゃないかもしれない。
額から嫌な汗がにじんではしたたり落ちていくのが分かる。
「ふむ。もう少し凛々しい男だと思っていたが違うようだ。その顔……何を考えておるのやら」
「……」
「口は利けるはず。話すがよい」
「おい貴様、フェルドナーガ様の前で無礼だろうが! さっさと喋らぬか!」
「嘘だ……こんなこと、全部嘘に決まってる」
「我と面会していることは事実。これは期待外れか。我の腹心にとも考えたのだがな。封じられた
存在を引きずり出し、鉱山で働かせるか」
「今、何て言った?」
「貴様は特殊な妖魔だという噂でな。モンスターを封印した後、そのモンスターを放出し操ると
聞き及んでおる」
「タナトスの野郎……ルインの情報を全部流しやがったのか」
「聞くまでもなくそのような噂は既に妖魔界に流れておるがな。黒星ベルローゼの弟子にして両星の
力を使い、神話級アーティファクトを三本操り、幻魔の力も使うという。これほどの逸材、我が欲さぬ
道理はない。アルカーン以来の逸材だ」
「あんたの目的は何だ? 一体何を考え……ぐっ」
口を挟もうとしたら側近に地面へ顔を押し付けられた。
くそ……力がまるで入らない。
「無礼だと言っているだろうが!」
「構わぬ。教えてやってもよい」
「はっ……」
「我は地底と地上双方を支配する。のう? ベリアルよ。貴様の望みもそうであろう」
「けっ。誰がてめえと一緒だよ! 俺ぁソロモンの誓いを果たすだけだ。てめえと一緒に
するんじゃ……がはっ」
「無礼な口を利くなと何度言わせるつもりか! この鳥風情が!」
「落ち着かぬか、ジーヴァよ」
「しかし、父上を侮辱されるのは許し難く……申し訳ありませぬ」
「そやつは本来、なかなかの雄姿で戦う者だったと聞く。遠い過去の者だがな。我は才覚ある者が好きだ。
しかし我の趣味趣向にそぐわぬ者は全て奴隷へと落とす」
「くそ、や、ろ……う」
「ベリアル、しっかりしろ! おい、その手を……ガハッ」
「少し強めに縛らねば。まだ抵抗する余力はあるようだな。さて、目的は話した。両星のルイン
よ。今日から星の力も無く、神話級アーティファクトも失い、封じられたモンスターも失う貴様
には同情しよう。食事の提供などを行うのはやぶさかではない。暫くは我が鉱山で働いてもらう
ことになろう」
「貴様らはこれから奴隷として生きるのだ。フェルドナーガ様の下で働けることを喜ぶんだな」
「我の統治は厳しいが、奴隷とて権利はある。むやみに傷つけるようなことはせぬ。しかと労働力
として還元するがよい」
この状況……まずい。
どうにか打破する方法を見つけないと。
神話級アーティファクトは俺が手放す意思をみせなければ渡せないはずだ。
それに所持していないと嘘をつけばきっと……いや、タナトスから情報は漏れてるか。
「言っておくが、拒めば貴様の大切なものは失われるだろう」
「……分かった。だが体が動かなければ出せない仕様でね。少しだけ解いてくれないか」
「その必要はない。ゆけ、ナーガよ」
フェルドナーガがそう命じると、玉座から一匹の蛇が俺の体に纏わりついた。
すると……封剣や剣戒をしていないのに、鎖に繋がれるようにしてティソーナ、コラー
ダ、ソフドが姿を表す。
「貴様は知っておるか? 神話級アーティファクトと言っても、その中で珍しさは異なる
。これらの中で特異に珍しいのがこの二本。絶対神イネービュが産み出したとされる中
で、長き年月をかけて作られた代物。だが貴様は、まるで扱えておらぬようだな」
まだ権利は一切譲渡していない。
なのに何故、取り出せるんだ。
こいつの能力なのか?
「ふむ。主とは認めぬか。まぁよい。しばらくは美しい剣として飾っておいてやろう。
破魔の鎖を巻け」
「はっ!」
俺の両腕に鎖が巻かれ……すると途端に体の力が吸い上げられる感覚に陥る。
何だこれは? 俺に何をするつもりだ。
「奇妙なモンスターが混じっています。かなりの大きさです」
「タナトス。報告に無かったようだが?」
「あれ、そうだったかな。うーん、私がいないときに封印したんじゃない?」
「ここでは収まり切りません!」
「では、鉱山まで移送せよ。我も見物に参る」
「はっ! さぁこっちへ来い!」
何の抵抗も出来ないまま、無理やり引っ張られていく俺たち。
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