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第二章 地底騒乱

第九百話 既に間に合わない!? 

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 運転していたという奴を霧散させてしまtった俺たち。
 第一車両から操縦室と思われる場所に入ると、操縦者は案の定見当たらない。
 燃料を投下する場所と思われるところと、複雑そうな装置類があるだけだった。
 直ぐに調べてみるが……肩にいるベリアルは首をかしげている。
「どうだ、分かりそうかよ?」
「いや、列車なんて乗車することはあっても操縦することなんてゲームくらいしかないんだよ。
それにこんな複雑なもの……例え前世で操縦者だったとしても分かるはずない」
「こちらに入れた燃料で走るのかしらね? これは何かしら」
「そいつぁ恐らくルークタートスってぇモンスターが吐き出す燃料だな。妖魔でこいつを取り込
み、能力で燃料を放出しやがる野郎がいやがるのかもな」
「便利そうだが、その燃料補充をしなければ止まるんじゃないか?」
「それは難しいね。既に殆どの燃料が投下され、飲み込まれた後みたい」
「飲み込むって、どういうことだ?」

 燃料が無ければ動かないのは間違いないだろう。
 だが、燃料といっても燃やして動かしているようにはみえない。
 しかし確かに紫の煙を放出して走っていた。

「この操縦室自体がモンスターじゃねえのか。俺も知らねえ類のよ。その燃料を食わせて
動かしてるのかもしれねえ。レイスが動かしてたってこたぁよ。このモンスターとレイス
が意思疎通出来る間柄で、レイスの命令を着実に守る代わりに燃料を喰らうってことじゃ
ねえのか」
「鋭いね! さすがは魔人ベリアルだよ。私も今そう考えてたところなんだ!」
「調子の良いことを抜かすんじゃねえ。おめえは止める手立てを考えやがれ!」
「モンスターなら、俺が取り込めばいいんじゃないのか?」
「おめえがモンスターを取り込むと消えるだろ? そうするとよ。後方のは恐らくただの
車両だろ。そうするとよ」
「それは困るな。俺たち全員もれなくミンチになる」
「外の落雷さえどうにかなれば、飛び降りれるんじゃないかしらね」
「そうか、確かに。それは名案だぞ雷帝」
「つまり、この列車は暴走させたままノースフェルド皇国に突っ込ませるんだね?」

 ……うっ。それはかなりまずい気がする。
 会ったこともない妖魔の皇帝で、フェルドナージュ様の兄に宣戦布告するようなものか? 
 だが俺たちが乗っててやったかどうかは分からない……いや、レイスから伝わるに決ま
ってる。

「頭抱えだしちゃったよ。優柔不断だなぁ」
「あのな……そんな即決出来る案じゃないから困ってるの!」
「おい、恐らく時間切れだぜ。雷をどうこうしてる場合じゃねえ。この操縦室から急いで撤退
しねえとやばそうだぜ」

 外の景色をみて慌てた口調になるベリアル。
 この場所は既に赤土などは見当たらず、黒に染まった風景が露見し始める。
 何だここは。殆どの外観物が黒色だぞ。
 こいつがフェルドナーガの趣味なのか。
 
「……急いで後方車両へ走るぞ」
「それが賢明ですわね」
「あはは……私たちどうなっちゃうのかなー」
「何でてめえはちょっと楽しそうなんだよ、この、この!」
 タナトスの肩に飛び移り、頭を突くベリアル。
 俺たちは操縦室を急いで出て、後方車両へ向けてひたすらに走った。
 もう止める手段がない。
 後はノースフェルド皇国にいると思われる作業員にどうにかしてもらうことを祈るしか出来ない。
 来たときとは全く違い、列車内は普通に乗車席が陳列しているだけだ。
 ……そして、第十車両付近まで来たときだった。
 ドスンという激しい衝撃音と共に、列車は急停車したのだ。

「うおお、何かに激突した!?」
「バカ言うんじゃねえ。それならもっととんでもねえことになってやがる。誰かが
止めたんだよ」
「停止にしては少々荒っぽいですわね……でも、無事止まったようなら問題ありませんわね」
「それは、どうかなぁ……」

 立ち上がり外の様子を見ると……妖魔が百、いや千はいるだろうか。
 いやいや、この列車から見えるだけでそれだ。
 もっといるのかもしれない。
 一体何が起こったんだ? 

「こちらの車両です」
「うむ。開け」
「はっ!」

 列車が中央からばっかりと開いていき、俺たち全員が露呈する。
 この列車って中央から割れる仕組みだったのか。
 それにしても今の冷たい声はなんだ。
 まさか……フェルドナーガ本人が来たとでもいうのか? 

「随分と飛ばしてきたようだな。我の自慢の列車をゆっくり楽しんで来ても良かったのだ
ぞ」
「私にそんなつもりはないよ。依頼は早く終えたいからね。でも、苦労したよ。タルタロ
スをあの地から引きずり出したうえ、星の力を此処に連れて来いなんて無茶な依頼。アー
ティファクト二個じゃ少ないかなぁ」
「何を申す。神話級アーティファクトを二つもくれてやるのだ。感謝するがいい」
「はいはい……」
「……タナトス、お前何言ってんだ。誰だよそいつは」

 状況が全く飲み込めない。
 相手は全く殺気を感じられないしターゲットに反応も一切無い。
 だが、まずい状況なのだけは分かる。

「ああ、そうそうルイン。私ね……管理者って役に縛られるの、もううんざりなんだ。だか
らさ。協力、有難う」
「はっ? お前一体何言ってる……」
「てめえ、裏切りやがっ……」
「邪眼縛り、魔天の瞳」
「ぐっ……俺が一歩も、動けねえ、だ、と……」
「信じられませんわ。わたくしですら縛る能力だというの?」
「タナトス、冗談だろ。冗談だと言え!」
「ではお先に。君は信用し過ぎる。本当に危ういね」
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