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第二章 地底騒乱

第八百九十五話 妖魔導列車の乗車方法

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 現地へ向かう方法を検討した結果、妖魔導列車というものがどんなものなのかを確か
める必要があるのと、何を運んでいるのかを確認する方がいいという案が全員の一致する
意見だった。
 しかしながら、誰でも簡単に乗車出来るわけではない。
 乗車には少なくとも酒場のマスターが言うところの認可というものが必要なのだ。
 意見が割れているのは、この認可を受けて乗る派と潜入して乗り込む派とで意見が割れ
ている。

「そんな簡単に潜入なんて出来ないでしょ。この面子だよ? 失敗するに決まってるじゃ
ない」
「おめえが一番足を引っ張るんだろう? 俺だけなら余裕だぜぇ?」
「あなたは鳥だから、飼育物禁止できっと止められますわよ」
「でもな……潜入はリスクが高いだろう。列車内がどんな構造なのかも分かってないし」

 俺とタナトスが潜入反対、ベリアルとベルベディシアが潜入派だ。
 ここで話し合っていても埒が明かないので現物を見に行くことになった。
 場所はベレッタの北東付近。大きな穴の開いた建物……駅のような場所が建設されていた。

「ここに収まる規模ってこたぁ、相当でっけえもんだな」
「ああ。一体何を運んでるのか気になるな。こんなものを急ぎで作る必要があったのかはあの
中を見れば分かるか」
「どうしますの? 突撃しますの?」
「だからそれは無謀だよ。こういうのは偵察でしょ」
「テンガジュウ! 出番よ」
「いないっての……」
「ではわたくしが行って参りますわ……」
「一人だとどこまでも突撃しようとする魔王だなおい……仕方ねえ、行って来る」
「気を付けろよ。鳥でもモンスターのふりをすれば封印されようとするかも知れない」
「俺はおめえに封印されてるんだぜ。これ以上封印……そーいやどうなるんだ?」
「さぁ……試したことないな」

 ベリアルに突然驚くような疑問を投げかけられた。
 確かに封印者を封印しようとしたらどうなるか気になるが、今はそれどころではない。

「まぁいいか。行ってくるぜ」

 パタパタと羽を靡かせて飛んでいく鳥形態のベリアル。
 自由に空を飛びたい俺としては羨ましい限りだ。
 ――しばらくして戻って来たベリアルは、きちんと偵察を終えてくれていた。

「内部にゃ例の邪念衆って奴らがいやがる。数は多くはねえ」
「蹴散らしてしまえば良いのですわね?」
「んなわけあるか! 大騒ぎになって乗れなくなるわ!」
「複数いるなら隙を見て潜入っていうのも難しそうだね。ここはやっぱり……」
「いや、ここから北に伸びる列車と東に伸びる列車の二種類がありやがった。つまりだ」
「物資をフェルス皇国からフェルドナーガの領に運んでいる……?」
「恐らくな。積み荷にはモンスターもいやがったぜ」
「フェルス皇国のモンスターを封印させてるってことかな。妖魔にとっては重要な能力だ
からモンスターでも売り物になるのかもしれないね」
「そういうことだ。それでよ、おめえは確かフェルス皇国のモンスターを封印してたよな」
「そうか! 逃げたのを捕まえて来たとかなんとか言って、潜入すればいいんだな?」
「ああ。上手くいけば乗り込めるぜ。持って来てるんだろ?」
「一応それなりの数は持って来てるが……大型は避けた方がいいな。放出出来る奴で三体。
タナトスとベルベディシア、俺がそれぞれ抱えられる奴らだ」
「面白そうじゃありませんの。わたくし、リンのような可愛いのがいいですわ」
「……あんなバカでかい竜放出したら大事どころじゃない」
「わたしは小さければ何でもいいや。重いのは持ちたくないし」

 それぞれ要望を言うが……フェルス高原で捕らえたモンスターはそれなりにいる。
 該当するモンスターはきっといるだろう。

 早速準備に移り、妖魔魔導列車のある場所へと赴いた。
「何だ貴様ら……む、もしかして離脱していたモンスターを捕縛してきたのか?」
「はい、どうも怯えてる様子だったもので」
「数が多いからな。こちらで預かろう」
「いえ、持ち場を離れると怒られるでしょう? どうせなら車両まで届けますよ」
「ふむ……認可状は所持しているか?」
「……いえ、置いて来ちゃってて今は手元には……」
「そうか。この町じゃまだ浸透してないからな……妖魔ラビットにアリマジロ、フラウリスか。
危険なモンスターではないし、まぁいいだろ。仮の認可状だ。一応持っとけ」
「有難うございます。それでは……ええとフェルス皇国側の列車はどちらでしたっけ?」
「違う違う。もっていくのはノースフェルド皇国だ。真っすぐ進んでしばらくしたら分かれ道
がある。そこを北だ」
「分かりました。行って参ります」

 良し、いい情報を得られた。フェルドナーガが住む場所はノースフェルド皇国っていうのか。
 言われた通りに真っすぐ進んだ後、迷わず南側に進み様子を探る。
 
「やりますわね、あなた」
「本当だよ。尋問官に向いてるんじゃない?」
「バカ言うな。それより見てみろ……何て巨大な列車だよ。これを短時間で建造したのか?」
「いや、こいつは恐らく皇国から持ってきた奴だろうよ」
「これに潜入するのかぁ……わたしは嫌な予感しかしないけど」
「楽しそうですわね。さっさと乗り込みますわよ」

 妖魔導列車……それはリンドブルム程の長さと、デュラサー以上の巨大さを持つ大きさ
の列車だった。
 しかしここからが問題だ。
 こちらはフェルス皇国側へ向かう列車。
 当然フェルス皇国へこのモンスターたちを運ぶわけじゃない。
 ベリアルが見た積み荷は恐らくノースフェルド皇国へ運ぶものだったのだろう。

「兵士の見張りがいるな」
「当然だろ。強そうな妖魔だが、あれで一兵卒なのか?」
「そうは見えないよ。指揮官じゃないの?」
「だが、なぜあいつ一人なんだ?」
「さぁな。何か考え事でもあるんじゃねえのか、あいつ。ずっと同じ姿勢のまま動かねえ
ぞ。ちっと近くで調べて来るか」

 既に偵察としてルーニーを越えてしまったベリアル。
 いや、ルーニーは俺が直接目を通して確認出来る機能がある。
 また直ぐに戻って来たベリアルは呆れた様子だった。

「あの野郎、立ったまま寝てやがるぜ……」
「嘘だろ!? あれで寝てるの?」
「ああ。間違いねえ」
「……まさか、それじゃ」
「潜入、開始……か」
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