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第二章 地底騒乱
第八百九十一話 迷界の森
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「お前が怒鳴るからとんでもないことになっただろ! どーすんだよ、何処だよここは」
「あいつがモタモタしてんのがいけねえんだろうが!」
俺たちはシカリーの開いたある道により、地底を目指していた。
これは死霊族に伝わる特別な方法であり、いわゆる転移に分類されるものとは別であ
り、しかも正規の道では無いらしい。
地底への旅、まずは安全確認をするために先発隊として俺、ベリアル、タナトス、ジェ
ネスト、ギオマ、プリマなど、戦闘に長ける者たちと一緒だった。
封印から全員が出ていて、俺にはモンスターが封印されているのみ。
メルザたちは後から来る予定だった。
一直線に伸びる不可解な道の先に地底へと赴く専用の道を敷設したという。
本来転移であるなら目的地まで瞬時に到着するのだが、この道の場合は直進して進まね
ばならない。
目的地に設置してもらったのは当然フェルス皇国で、町ではなく死霊の館。
恐ろしい場所ではあるが、あの場所からであればフェルス皇国は近いし様子も探りやす
いと判断したからだ。
だが……なぜかついて来ると言い出した雷帝、ベルベディシアが余りにもマイペースに
歩くので、肩に乗ったベリアルがイライラして大声を出し、若干切れモードになった雷帝
の平手打ちを回避したら見事足を踏み外したというわけだ。
そんなわけで回避した俺を追撃してきた雷帝と、後ろを歩いていて巻き込まれたタナト
スは一緒だ。
つまり……俺、ベリアル、タナトス、雷帝というふざけたパーティ構成となったわけだ。
「いつまでやってるつもりかしら。落ちてしまったものは仕方無いの。無いのよ、無いの
ね、無いに違いありませんわ!」
『お前のせいだろ!』
「参ったなぁ。横に逸れても辿りつけるの、これ? 絶対に横に逸れるなって言ってたよね」
「だいたいね。わたくしはゆっくり景色を眺めながら行きたかったんですのよ。それをあ
の鳥が……消炭にして差し上げてもよろしいのよ?」
「景色つったって紫色の透き通る道が広がってるだけじゃねえか、ばかばかしい」
「もうじき地底だったんだろ? それなら地底のどこかってことはないのか?」
今の俺たちがいる場所……それは森のような場所だ。
この場所は地底にあるのだろうか?
まだフェルス皇国とベレッタ、それを繋いでいるような地下道位しか知らないのだが。
「にしてもよ。見たことが無え場所だな」
「あなたでもご存知ありませんの?」
「そうだ、タナトスなら知ってやがるな」
「教えてくれタナトス」
「……君たちねえ。私は何でも知ってる風な絶対神か何かだと思ってない?」
「安心しろ思ってねえ。絶対神なら殴ってるぜ」
「絶対神じゃなくてもよく突いてるよな……」
「はぁ。此処は恐らくだけど迷界の森だよ。飛ばされたが最後、出ること叶わないっていう」
「ん? 待てよ。地底で森……そういえば昔聞いたことがある。アルカーンさんとベルロ
ーゼ先生が出会った森か!?」
「あら。それなら出られるじゃない。あの男がいた場所だというなら」
「いや、アルカーンさんの特殊能力を俺らは持ってないと思うんだけど」
「おいルイン。さっさと空間を切り裂け」
「あのな……プリマとかじゃないんだ、俺に……そういや歪術をプリマから受けて使える
ようになったんだっけ。試してみるべきか……?」
一応身構えて空間に歪術を使用してみる。
しかし、何も起こらなかった。
当然だ……俺はプリマじゃない。使い方がよく分からない。
「……お手上げだ」
「ちょっと待ってよ。今考えてるんだから」
「あら、キノコは生えてますのね。食べられるのかしら」
「いいぞ食ってみろ。そしてそのままくたばれ」
「あなたに毒見をお願いしますわね。わたくしがこんがり焼いてみますから」
そう言うと雷帝はキノコに向けて迸る電撃を撃ち放つ。
キノコは消し飛びそこには何も残らなかった。
「さぁ出来ましたわ」
「おめえ、バカだよな……」
「何ですって! この雷帝、ベルベディシアに向けて無礼の数々。もう許しませんわ!
テンガジュウ、やっておしまいなさい!」
「……いるわけ無ぇだろ」
「ビローネ!」
「そういやお供が誰もいないでこうなった場合どうなるんだ?」
「ベロア!」
「ちょっと見てみたいかも」
「……もういいですわ。わたくし何て……消炭にでもなればいいんですわ」
『面倒な女になった……』
消し飛ばしたキノコの辺りでいじける雷帝を置いておき、俺たち三人は脱出方法を考え
た。
「おい。ルーニーって確かカイロスと繋がってたんじゃねえか?」
「そうだ。彼に聞くのが一番だよ。私より詳しいはずだから」
「同じ管理者でも頼りになるのはやっぱアルカーンさんだな!」
と俺が言うと雷帝の隣でもう一名いじけだした。
面倒なのは放っておこう。
「変幻ルーニー。頼むぜ相棒。アルカーンさん、聴こえますか?」
「ホロロロロロー、ホロロロロロロー」
「ルーニーが電話コールみたいな声を出してる!? こんな機能までつけたのか。余程前
世の俺の話が興味を引いたんだな……」
洗いざらい前世の道具などの話をアルカーンさんにしたら、それはもう世界が変わったか
のように何かを作り始めた。
時限を操る管理者に教えてはいけない情報だったのかもしれない。
「ロロローー、ガチャ」
「……これ、変えてもらおうかな」
「あいつがモタモタしてんのがいけねえんだろうが!」
俺たちはシカリーの開いたある道により、地底を目指していた。
これは死霊族に伝わる特別な方法であり、いわゆる転移に分類されるものとは別であ
り、しかも正規の道では無いらしい。
地底への旅、まずは安全確認をするために先発隊として俺、ベリアル、タナトス、ジェ
ネスト、ギオマ、プリマなど、戦闘に長ける者たちと一緒だった。
封印から全員が出ていて、俺にはモンスターが封印されているのみ。
メルザたちは後から来る予定だった。
一直線に伸びる不可解な道の先に地底へと赴く専用の道を敷設したという。
本来転移であるなら目的地まで瞬時に到着するのだが、この道の場合は直進して進まね
ばならない。
目的地に設置してもらったのは当然フェルス皇国で、町ではなく死霊の館。
恐ろしい場所ではあるが、あの場所からであればフェルス皇国は近いし様子も探りやす
いと判断したからだ。
だが……なぜかついて来ると言い出した雷帝、ベルベディシアが余りにもマイペースに
歩くので、肩に乗ったベリアルがイライラして大声を出し、若干切れモードになった雷帝
の平手打ちを回避したら見事足を踏み外したというわけだ。
そんなわけで回避した俺を追撃してきた雷帝と、後ろを歩いていて巻き込まれたタナト
スは一緒だ。
つまり……俺、ベリアル、タナトス、雷帝というふざけたパーティ構成となったわけだ。
「いつまでやってるつもりかしら。落ちてしまったものは仕方無いの。無いのよ、無いの
ね、無いに違いありませんわ!」
『お前のせいだろ!』
「参ったなぁ。横に逸れても辿りつけるの、これ? 絶対に横に逸れるなって言ってたよね」
「だいたいね。わたくしはゆっくり景色を眺めながら行きたかったんですのよ。それをあ
の鳥が……消炭にして差し上げてもよろしいのよ?」
「景色つったって紫色の透き通る道が広がってるだけじゃねえか、ばかばかしい」
「もうじき地底だったんだろ? それなら地底のどこかってことはないのか?」
今の俺たちがいる場所……それは森のような場所だ。
この場所は地底にあるのだろうか?
まだフェルス皇国とベレッタ、それを繋いでいるような地下道位しか知らないのだが。
「にしてもよ。見たことが無え場所だな」
「あなたでもご存知ありませんの?」
「そうだ、タナトスなら知ってやがるな」
「教えてくれタナトス」
「……君たちねえ。私は何でも知ってる風な絶対神か何かだと思ってない?」
「安心しろ思ってねえ。絶対神なら殴ってるぜ」
「絶対神じゃなくてもよく突いてるよな……」
「はぁ。此処は恐らくだけど迷界の森だよ。飛ばされたが最後、出ること叶わないっていう」
「ん? 待てよ。地底で森……そういえば昔聞いたことがある。アルカーンさんとベルロ
ーゼ先生が出会った森か!?」
「あら。それなら出られるじゃない。あの男がいた場所だというなら」
「いや、アルカーンさんの特殊能力を俺らは持ってないと思うんだけど」
「おいルイン。さっさと空間を切り裂け」
「あのな……プリマとかじゃないんだ、俺に……そういや歪術をプリマから受けて使える
ようになったんだっけ。試してみるべきか……?」
一応身構えて空間に歪術を使用してみる。
しかし、何も起こらなかった。
当然だ……俺はプリマじゃない。使い方がよく分からない。
「……お手上げだ」
「ちょっと待ってよ。今考えてるんだから」
「あら、キノコは生えてますのね。食べられるのかしら」
「いいぞ食ってみろ。そしてそのままくたばれ」
「あなたに毒見をお願いしますわね。わたくしがこんがり焼いてみますから」
そう言うと雷帝はキノコに向けて迸る電撃を撃ち放つ。
キノコは消し飛びそこには何も残らなかった。
「さぁ出来ましたわ」
「おめえ、バカだよな……」
「何ですって! この雷帝、ベルベディシアに向けて無礼の数々。もう許しませんわ!
テンガジュウ、やっておしまいなさい!」
「……いるわけ無ぇだろ」
「ビローネ!」
「そういやお供が誰もいないでこうなった場合どうなるんだ?」
「ベロア!」
「ちょっと見てみたいかも」
「……もういいですわ。わたくし何て……消炭にでもなればいいんですわ」
『面倒な女になった……』
消し飛ばしたキノコの辺りでいじける雷帝を置いておき、俺たち三人は脱出方法を考え
た。
「おい。ルーニーって確かカイロスと繋がってたんじゃねえか?」
「そうだ。彼に聞くのが一番だよ。私より詳しいはずだから」
「同じ管理者でも頼りになるのはやっぱアルカーンさんだな!」
と俺が言うと雷帝の隣でもう一名いじけだした。
面倒なのは放っておこう。
「変幻ルーニー。頼むぜ相棒。アルカーンさん、聴こえますか?」
「ホロロロロロー、ホロロロロロロー」
「ルーニーが電話コールみたいな声を出してる!? こんな機能までつけたのか。余程前
世の俺の話が興味を引いたんだな……」
洗いざらい前世の道具などの話をアルカーンさんにしたら、それはもう世界が変わったか
のように何かを作り始めた。
時限を操る管理者に教えてはいけない情報だったのかもしれない。
「ロロローー、ガチャ」
「……これ、変えてもらおうかな」
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