1,000 / 1,085
第二章 地底騒乱
第八百九十一話 迷界の森
しおりを挟む
「お前が怒鳴るからとんでもないことになっただろ! どーすんだよ、何処だよここは」
「あいつがモタモタしてんのがいけねえんだろうが!」
俺たちはシカリーの開いたある道により、地底を目指していた。
これは死霊族に伝わる特別な方法であり、いわゆる転移に分類されるものとは別であ
り、しかも正規の道では無いらしい。
地底への旅、まずは安全確認をするために先発隊として俺、ベリアル、タナトス、ジェ
ネスト、ギオマ、プリマなど、戦闘に長ける者たちと一緒だった。
封印から全員が出ていて、俺にはモンスターが封印されているのみ。
メルザたちは後から来る予定だった。
一直線に伸びる不可解な道の先に地底へと赴く専用の道を敷設したという。
本来転移であるなら目的地まで瞬時に到着するのだが、この道の場合は直進して進まね
ばならない。
目的地に設置してもらったのは当然フェルス皇国で、町ではなく死霊の館。
恐ろしい場所ではあるが、あの場所からであればフェルス皇国は近いし様子も探りやす
いと判断したからだ。
だが……なぜかついて来ると言い出した雷帝、ベルベディシアが余りにもマイペースに
歩くので、肩に乗ったベリアルがイライラして大声を出し、若干切れモードになった雷帝
の平手打ちを回避したら見事足を踏み外したというわけだ。
そんなわけで回避した俺を追撃してきた雷帝と、後ろを歩いていて巻き込まれたタナト
スは一緒だ。
つまり……俺、ベリアル、タナトス、雷帝というふざけたパーティ構成となったわけだ。
「いつまでやってるつもりかしら。落ちてしまったものは仕方無いの。無いのよ、無いの
ね、無いに違いありませんわ!」
『お前のせいだろ!』
「参ったなぁ。横に逸れても辿りつけるの、これ? 絶対に横に逸れるなって言ってたよね」
「だいたいね。わたくしはゆっくり景色を眺めながら行きたかったんですのよ。それをあ
の鳥が……消炭にして差し上げてもよろしいのよ?」
「景色つったって紫色の透き通る道が広がってるだけじゃねえか、ばかばかしい」
「もうじき地底だったんだろ? それなら地底のどこかってことはないのか?」
今の俺たちがいる場所……それは森のような場所だ。
この場所は地底にあるのだろうか?
まだフェルス皇国とベレッタ、それを繋いでいるような地下道位しか知らないのだが。
「にしてもよ。見たことが無え場所だな」
「あなたでもご存知ありませんの?」
「そうだ、タナトスなら知ってやがるな」
「教えてくれタナトス」
「……君たちねえ。私は何でも知ってる風な絶対神か何かだと思ってない?」
「安心しろ思ってねえ。絶対神なら殴ってるぜ」
「絶対神じゃなくてもよく突いてるよな……」
「はぁ。此処は恐らくだけど迷界の森だよ。飛ばされたが最後、出ること叶わないっていう」
「ん? 待てよ。地底で森……そういえば昔聞いたことがある。アルカーンさんとベルロ
ーゼ先生が出会った森か!?」
「あら。それなら出られるじゃない。あの男がいた場所だというなら」
「いや、アルカーンさんの特殊能力を俺らは持ってないと思うんだけど」
「おいルイン。さっさと空間を切り裂け」
「あのな……プリマとかじゃないんだ、俺に……そういや歪術をプリマから受けて使える
ようになったんだっけ。試してみるべきか……?」
一応身構えて空間に歪術を使用してみる。
しかし、何も起こらなかった。
当然だ……俺はプリマじゃない。使い方がよく分からない。
「……お手上げだ」
「ちょっと待ってよ。今考えてるんだから」
「あら、キノコは生えてますのね。食べられるのかしら」
「いいぞ食ってみろ。そしてそのままくたばれ」
「あなたに毒見をお願いしますわね。わたくしがこんがり焼いてみますから」
そう言うと雷帝はキノコに向けて迸る電撃を撃ち放つ。
キノコは消し飛びそこには何も残らなかった。
「さぁ出来ましたわ」
「おめえ、バカだよな……」
「何ですって! この雷帝、ベルベディシアに向けて無礼の数々。もう許しませんわ!
テンガジュウ、やっておしまいなさい!」
「……いるわけ無ぇだろ」
「ビローネ!」
「そういやお供が誰もいないでこうなった場合どうなるんだ?」
「ベロア!」
「ちょっと見てみたいかも」
「……もういいですわ。わたくし何て……消炭にでもなればいいんですわ」
『面倒な女になった……』
消し飛ばしたキノコの辺りでいじける雷帝を置いておき、俺たち三人は脱出方法を考え
た。
「おい。ルーニーって確かカイロスと繋がってたんじゃねえか?」
「そうだ。彼に聞くのが一番だよ。私より詳しいはずだから」
「同じ管理者でも頼りになるのはやっぱアルカーンさんだな!」
と俺が言うと雷帝の隣でもう一名いじけだした。
面倒なのは放っておこう。
「変幻ルーニー。頼むぜ相棒。アルカーンさん、聴こえますか?」
「ホロロロロロー、ホロロロロロロー」
「ルーニーが電話コールみたいな声を出してる!? こんな機能までつけたのか。余程前
世の俺の話が興味を引いたんだな……」
洗いざらい前世の道具などの話をアルカーンさんにしたら、それはもう世界が変わったか
のように何かを作り始めた。
時限を操る管理者に教えてはいけない情報だったのかもしれない。
「ロロローー、ガチャ」
「……これ、変えてもらおうかな」
「あいつがモタモタしてんのがいけねえんだろうが!」
俺たちはシカリーの開いたある道により、地底を目指していた。
これは死霊族に伝わる特別な方法であり、いわゆる転移に分類されるものとは別であ
り、しかも正規の道では無いらしい。
地底への旅、まずは安全確認をするために先発隊として俺、ベリアル、タナトス、ジェ
ネスト、ギオマ、プリマなど、戦闘に長ける者たちと一緒だった。
封印から全員が出ていて、俺にはモンスターが封印されているのみ。
メルザたちは後から来る予定だった。
一直線に伸びる不可解な道の先に地底へと赴く専用の道を敷設したという。
本来転移であるなら目的地まで瞬時に到着するのだが、この道の場合は直進して進まね
ばならない。
目的地に設置してもらったのは当然フェルス皇国で、町ではなく死霊の館。
恐ろしい場所ではあるが、あの場所からであればフェルス皇国は近いし様子も探りやす
いと判断したからだ。
だが……なぜかついて来ると言い出した雷帝、ベルベディシアが余りにもマイペースに
歩くので、肩に乗ったベリアルがイライラして大声を出し、若干切れモードになった雷帝
の平手打ちを回避したら見事足を踏み外したというわけだ。
そんなわけで回避した俺を追撃してきた雷帝と、後ろを歩いていて巻き込まれたタナト
スは一緒だ。
つまり……俺、ベリアル、タナトス、雷帝というふざけたパーティ構成となったわけだ。
「いつまでやってるつもりかしら。落ちてしまったものは仕方無いの。無いのよ、無いの
ね、無いに違いありませんわ!」
『お前のせいだろ!』
「参ったなぁ。横に逸れても辿りつけるの、これ? 絶対に横に逸れるなって言ってたよね」
「だいたいね。わたくしはゆっくり景色を眺めながら行きたかったんですのよ。それをあ
の鳥が……消炭にして差し上げてもよろしいのよ?」
「景色つったって紫色の透き通る道が広がってるだけじゃねえか、ばかばかしい」
「もうじき地底だったんだろ? それなら地底のどこかってことはないのか?」
今の俺たちがいる場所……それは森のような場所だ。
この場所は地底にあるのだろうか?
まだフェルス皇国とベレッタ、それを繋いでいるような地下道位しか知らないのだが。
「にしてもよ。見たことが無え場所だな」
「あなたでもご存知ありませんの?」
「そうだ、タナトスなら知ってやがるな」
「教えてくれタナトス」
「……君たちねえ。私は何でも知ってる風な絶対神か何かだと思ってない?」
「安心しろ思ってねえ。絶対神なら殴ってるぜ」
「絶対神じゃなくてもよく突いてるよな……」
「はぁ。此処は恐らくだけど迷界の森だよ。飛ばされたが最後、出ること叶わないっていう」
「ん? 待てよ。地底で森……そういえば昔聞いたことがある。アルカーンさんとベルロ
ーゼ先生が出会った森か!?」
「あら。それなら出られるじゃない。あの男がいた場所だというなら」
「いや、アルカーンさんの特殊能力を俺らは持ってないと思うんだけど」
「おいルイン。さっさと空間を切り裂け」
「あのな……プリマとかじゃないんだ、俺に……そういや歪術をプリマから受けて使える
ようになったんだっけ。試してみるべきか……?」
一応身構えて空間に歪術を使用してみる。
しかし、何も起こらなかった。
当然だ……俺はプリマじゃない。使い方がよく分からない。
「……お手上げだ」
「ちょっと待ってよ。今考えてるんだから」
「あら、キノコは生えてますのね。食べられるのかしら」
「いいぞ食ってみろ。そしてそのままくたばれ」
「あなたに毒見をお願いしますわね。わたくしがこんがり焼いてみますから」
そう言うと雷帝はキノコに向けて迸る電撃を撃ち放つ。
キノコは消し飛びそこには何も残らなかった。
「さぁ出来ましたわ」
「おめえ、バカだよな……」
「何ですって! この雷帝、ベルベディシアに向けて無礼の数々。もう許しませんわ!
テンガジュウ、やっておしまいなさい!」
「……いるわけ無ぇだろ」
「ビローネ!」
「そういやお供が誰もいないでこうなった場合どうなるんだ?」
「ベロア!」
「ちょっと見てみたいかも」
「……もういいですわ。わたくし何て……消炭にでもなればいいんですわ」
『面倒な女になった……』
消し飛ばしたキノコの辺りでいじける雷帝を置いておき、俺たち三人は脱出方法を考え
た。
「おい。ルーニーって確かカイロスと繋がってたんじゃねえか?」
「そうだ。彼に聞くのが一番だよ。私より詳しいはずだから」
「同じ管理者でも頼りになるのはやっぱアルカーンさんだな!」
と俺が言うと雷帝の隣でもう一名いじけだした。
面倒なのは放っておこう。
「変幻ルーニー。頼むぜ相棒。アルカーンさん、聴こえますか?」
「ホロロロロロー、ホロロロロロロー」
「ルーニーが電話コールみたいな声を出してる!? こんな機能までつけたのか。余程前
世の俺の話が興味を引いたんだな……」
洗いざらい前世の道具などの話をアルカーンさんにしたら、それはもう世界が変わったか
のように何かを作り始めた。
時限を操る管理者に教えてはいけない情報だったのかもしれない。
「ロロローー、ガチャ」
「……これ、変えてもらおうかな」
0
お気に入りに追加
97
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる
フルーツパフェ
大衆娯楽
転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。
一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。
そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!
寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。
――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです
そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。
大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。
相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。
分析スキルで美少女たちの恥ずかしい秘密が見えちゃう異世界生活
SenY
ファンタジー
"分析"スキルを持って異世界に転生した主人公は、相手の力量を正確に見極めて勝てる相手にだけ確実に勝つスタイルで短期間に一財を為すことに成功する。
クエスト報酬で豪邸を手に入れたはいいものの一人で暮らすには広すぎると悩んでいた主人公。そんな彼が友人の勧めで奴隷市場を訪れ、記憶喪失の美少女奴隷ルナを購入したことから、物語は動き始める。
これまで危ない敵から逃げたり弱そうな敵をボコるのにばかり"分析"を活用していた主人公が、そのスキルを美少女の恥ずかしい秘密を覗くことにも使い始めるちょっとエッチなハーレム系ラブコメ。
特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった
なるとし
ファンタジー
鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。
特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。
武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。
だけど、その母と娘二人は、
とおおおおんでもないヤンデレだった……
第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。
貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた
佐藤醤油
ファンタジー
貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。
僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。
魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。
言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。
この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。
小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。
------------------------------------------------------------------
お知らせ
「転生者はめぐりあう」 始めました。
------------------------------------------------------------------
注意
作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。
感想は受け付けていません。
誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。
金貨1,000万枚貯まったので勇者辞めてハーレム作ってスローライフ送ります!!
夕凪五月雨影法師
ファンタジー
AIイラストあり! 追放された世界最強の勇者が、ハーレムの女の子たちと自由気ままなスローライフを送る、ちょっとエッチでハートフルな異世界ラブコメディ!!
国内最強の勇者パーティを率いる勇者ユーリが、突然の引退を宣言した。
幼い頃に神託を受けて勇者に選ばれて以来、寝る間も惜しんで人々を助け続けてきたユーリ。
彼はもう限界だったのだ。
「これからは好きな時に寝て、好きな時に食べて、好きな時に好きな子とエッチしてやる!! ハーレム作ってやるーーーー!!」
そんな発言に愛想を尽かし、パーティメンバーは彼の元から去っていくが……。
その引退の裏には、世界をも巻き込む大規模な陰謀が隠されていた。
その陰謀によって、ユーリは勇者引退を余儀なくされ、全てを失った……。
かのように思われた。
「はい、じゃあ僕もう勇者じゃないから、こっからは好きにやらせて貰うね」
勇者としての条約や規約に縛られていた彼は、力をセーブしたまま活動を強いられていたのだ。
本来の力を取り戻した彼は、その強大な魔力と、金貨1,000万枚にものを言わせ、好き勝手に人々を救い、気ままに高難度ダンジョンを攻略し、そして自身をざまぁした巨大な陰謀に立ち向かっていく!!
基本的には、金持ちで最強の勇者が、ハーレムの女の子たちとまったりするだけのスローライフコメディです。
異世界版の光源氏のようなストーリーです!
……やっぱりちょっと違います笑
また、AIイラストは初心者ですので、あくまでも小説のおまけ程度に考えていただければ……(震え声)
完結 そんなにその方が大切ならば身を引きます、さようなら。
音爽(ネソウ)
恋愛
相思相愛で結ばれたクリステルとジョルジュ。
だが、新婚初夜は泥酔してお預けに、その後も余所余所しい態度で一向に寝室に現れない。不審に思った彼女は眠れない日々を送る。
そして、ある晩に玄関ドアが開く音に気が付いた。使われていない離れに彼は通っていたのだ。
そこには匿われていた美少年が棲んでいて……
異世界キャンパー~無敵テントで気ままなキャンプ飯スローライフ?
夢・風魔
ファンタジー
仕事の疲れを癒すためにソロキャンを始めた神楽拓海。
気づけばキャンプグッズ一式と一緒に、見知らぬ森の中へ。
落ち着くためにキャンプ飯を作っていると、そこへ四人の老人が現れた。
彼らはこの世界の神。
キャンプ飯と、見知らぬ老人にも親切にするタクミを気に入った神々は、彼に加護を授ける。
ここに──伝説のドラゴンをもぶん殴れるテントを手に、伝説のドラゴンの牙すら通さない最強の肉体を得たキャンパーが誕生する。
「せっかく異世界に来たんなら、仕事のことも忘れて世界中をキャンプしまくろう!」
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる