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第五部 主と建国せし道 第一章 ジャンカの町 闘技大会
第八百六十話 知の魔、謎深き部屋の中でその二
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入り口から左の部屋。
入って直ぐ、下へ掘られたような大きい井戸が、真っ先に視界へ映る。
その脇には小さな小箱があり、それには鍵が掛かっているようだ。
壁には剣、斧、弓、そして左右に大きな指輪のようなものが二つ付属している杖があっ
た。
それは属性でも表しているのだろうか。炎と水をイメージしたような宝石指輪だ。
壁面にヒントのようなものが書かれており、それはこのような内容だった。
【ある状況下における戦い。剣には斧、斧には術を用いる杖、杖には剣が有効だ。そして
弓は全てに有効だが、それらは状況により一変するだろう。その状況で最も強いものは果
たしてどれなのか。何れにしても結末は戒律を破ることとなる】
「分かったぞ! ここは私に任せてよ」
と、タナトスがその壁面をみて叫ぶ。
「行動する前に口で説明してみてくれないか、タナトス」
「僕も不安だからそうしてもらえると嬉しいな」
「無理無理。口で説明するなんて。まぁみてなよ」
壁から剣と斧を取り外すタナトス。そしてそれらを地面に置き、剣の上に斧を乗せる。
更に斧の上に杖を乗せるが何も起こらない。
「あれ、可笑しいな。この上で破壊するのか?」
「キーッキッキッキ。破壊したら永久に知の魔は……」
「おいタナトス。それ絶対違うだろ。状況により一変するんだから、地上でただ戦わせた
結果じゃ意味無いだろう」
「えっ? だから地にひれ伏せばみんなゴミって意味だろう? それぞれの武器が全部弓
に負けて使えないっていう」
「あのな……状況によりってのは戦況や戦う場所のことだろう? なんで全部武器が使え
ない状況を想定してるん……あ、そういうことか。その剣と斧、それから弓も井戸に落と
せ」
「え? いいの」
「ああ。井戸の底では剣も斧も弓も大差ない。井戸にいる杖が一強。仮に剣や斧が上に
いても特に意味はない。剣や斧を井戸底に投げ入れることしか出来ないだろう? 杖は
防ぐ手段も、攻撃する手段もある」
「弓はどうなの? 下からでも攻撃出来るけど」
「当たらないだろ。杖は下にいても術で多彩な攻撃が出来る」
「そうか……つまり場所によって状況が一変する。特に一番弱くなるのは弓ってことか」
「そうだ。弓は恐ろしい武器だが、狭い逃げ道のない場所だと無力化しやすい。杖は地上
において狙い撃ちされやすいが、状況下によっては無双出来る。何なら水を放出して井戸
から唯一出れる可能性があるのも杖だろう」
「ふうん。面白いこと考えるね。よいしょっと」
タナトスが剣、斧、弓を井戸へ放り込む。
すると、中から水が溢れだしてきて、井戸の上に台座が現れた。
先ほど投げ入れた剣、斧、弓は見当たらず、代わりに剣、斧、弓の小さな装飾のついた
鍵が、台座の窪みにあった。
「なんだこの鍵。この小箱を開ける道具か?」
「どうだ、開きそうか?」
「待ってね……この鍵に何か書いてある。三番手は七回打ち合い、地にひれ伏した
だって。箱は……うん、開いたよ」
「中に何か入ってるか?」
「紙が入ってるね。これを読むもの、後ろを振り返ってはならぬ……後ろ?」
「ばっ、待て!」
直ぐに後ろを振り返るタナトス。
こいつ、絶対わざとやってるだろ!
どうみても悪霊みたいな奴がタナトスの背後に現れた。
死の管理者の背後に悪霊ってどういう状況なんだよ、まったく。
「彼は、馬鹿なのかい?」
「ああ、そうだろう。次からはベルドに任せるよ。封剣!」
「にゅいーん。てぃーちゃん使いが荒いでごじゃろ!」
「しょうがないだろ。そこの管理者に言ってくれ」
このタイプ……ターフスキアーのター君と同等の種族か?
封印出来ればいいんだが……いや、やめておこう。悪霊封印とか洒落にならない。
ただでさえ死霊族なんてものを封印してるんだからな。
確かこの手のタイプは物理攻撃が効かないはず。
「ベルド。此処は俺よりベルドの方が適任……」
「雷臥斗!」
電撃系幻術を直ぐに打ち出すベルド。
言うまでもなく行動出来るのはさすがだ。
しかし、消滅したかと思うとまた現れてしまう。
なんて嫌なトラップだ。
「タナトス。お前どうにか出来な……」
「……」
「そういう罠か。ベルド、攻撃対象はこいつだ。思い切りやってくれて構わない」
「いいのかい? 喜んでやらせてもらおう!」
タナトスに向けて慢心の笑みを浮かべながら手を構えるベルド。
虚ろな瞳をしているタナトスに向けて、意気揚々と雷臥斗を放った。
電撃をもろに受け、痺れてパタリと倒れるタナトス。
いい攻撃だ。致命傷は外しているとはいえ素晴らしい威力だった。
「いったーーー! 何するのさ!」
「お前が罠に掛かったんだろ。これ多分、用紙裏返せってことだ」
「えっ?」
タナトスが落とした用紙の裏には、悪霊に四度目の死をと書かれていた。
「紙に書いてあるのはこれだけか。後は……杖だな」
壁に立てかけられた、残った杖を手に取ってみる。
これには指輪が二個付いているが、そこは特に何もないようだ。
形状からして……そういえばさっき取った鍵の台座に窪みがあったな。
これに差して掲げろってこと……か?
井戸戦において杖が勝利を収めたという証なのかもしれない。
「ルイン。杖はきっとそこだろう」
「ああ、俺もそう思う」
「そうかな。その杖を振り回すと何か起こるんじゃない?」
「もうお前には頼まん……」
しかし杖を差し込んでも動作はしない。
そういえばもう一つ、板状のものが机の中に入っていたな。
これを差し込む場所が……指輪の双方に差し込む場所があるが、板は一枚きりだ。
炎で相手を攻撃するのに使う? いや、井戸にかざすなら水の力か。
水色の指輪付近にある差し込み口に板を差してみたると、指輪が左右の壁に何かを映し
出す。
それは人型の影で、杖を持つ者と何も持たないものが正面に向き合い、対話を始め
た。
「イチエイ。何故戒律を破った。救われる道は他にもあったはずだ」
「レンジよ。お前には分かるまい。私は戒律を破ったが、それに恥じることなどないのだ」
「なぜだ! 哀れで残酷な結末しかないと何故分からんのだ!」
「それでもなお、恥じることなく生きていく。それが俺の流儀なのだ」
指輪から映しだされた映像は消え、指輪にはそれぞれの名前であると思われるイチエイ
という文字と、レンジという文字だけが残っていた。
「……分かった!」
唐突に叫び出すタナトス。
やれやれ……他には特に何も見当たらないので、全ての情報が出揃ったと思う。
後は隣の部屋で考え、入力する必要があるな。
入って直ぐ、下へ掘られたような大きい井戸が、真っ先に視界へ映る。
その脇には小さな小箱があり、それには鍵が掛かっているようだ。
壁には剣、斧、弓、そして左右に大きな指輪のようなものが二つ付属している杖があっ
た。
それは属性でも表しているのだろうか。炎と水をイメージしたような宝石指輪だ。
壁面にヒントのようなものが書かれており、それはこのような内容だった。
【ある状況下における戦い。剣には斧、斧には術を用いる杖、杖には剣が有効だ。そして
弓は全てに有効だが、それらは状況により一変するだろう。その状況で最も強いものは果
たしてどれなのか。何れにしても結末は戒律を破ることとなる】
「分かったぞ! ここは私に任せてよ」
と、タナトスがその壁面をみて叫ぶ。
「行動する前に口で説明してみてくれないか、タナトス」
「僕も不安だからそうしてもらえると嬉しいな」
「無理無理。口で説明するなんて。まぁみてなよ」
壁から剣と斧を取り外すタナトス。そしてそれらを地面に置き、剣の上に斧を乗せる。
更に斧の上に杖を乗せるが何も起こらない。
「あれ、可笑しいな。この上で破壊するのか?」
「キーッキッキッキ。破壊したら永久に知の魔は……」
「おいタナトス。それ絶対違うだろ。状況により一変するんだから、地上でただ戦わせた
結果じゃ意味無いだろう」
「えっ? だから地にひれ伏せばみんなゴミって意味だろう? それぞれの武器が全部弓
に負けて使えないっていう」
「あのな……状況によりってのは戦況や戦う場所のことだろう? なんで全部武器が使え
ない状況を想定してるん……あ、そういうことか。その剣と斧、それから弓も井戸に落と
せ」
「え? いいの」
「ああ。井戸の底では剣も斧も弓も大差ない。井戸にいる杖が一強。仮に剣や斧が上に
いても特に意味はない。剣や斧を井戸底に投げ入れることしか出来ないだろう? 杖は
防ぐ手段も、攻撃する手段もある」
「弓はどうなの? 下からでも攻撃出来るけど」
「当たらないだろ。杖は下にいても術で多彩な攻撃が出来る」
「そうか……つまり場所によって状況が一変する。特に一番弱くなるのは弓ってことか」
「そうだ。弓は恐ろしい武器だが、狭い逃げ道のない場所だと無力化しやすい。杖は地上
において狙い撃ちされやすいが、状況下によっては無双出来る。何なら水を放出して井戸
から唯一出れる可能性があるのも杖だろう」
「ふうん。面白いこと考えるね。よいしょっと」
タナトスが剣、斧、弓を井戸へ放り込む。
すると、中から水が溢れだしてきて、井戸の上に台座が現れた。
先ほど投げ入れた剣、斧、弓は見当たらず、代わりに剣、斧、弓の小さな装飾のついた
鍵が、台座の窪みにあった。
「なんだこの鍵。この小箱を開ける道具か?」
「どうだ、開きそうか?」
「待ってね……この鍵に何か書いてある。三番手は七回打ち合い、地にひれ伏した
だって。箱は……うん、開いたよ」
「中に何か入ってるか?」
「紙が入ってるね。これを読むもの、後ろを振り返ってはならぬ……後ろ?」
「ばっ、待て!」
直ぐに後ろを振り返るタナトス。
こいつ、絶対わざとやってるだろ!
どうみても悪霊みたいな奴がタナトスの背後に現れた。
死の管理者の背後に悪霊ってどういう状況なんだよ、まったく。
「彼は、馬鹿なのかい?」
「ああ、そうだろう。次からはベルドに任せるよ。封剣!」
「にゅいーん。てぃーちゃん使いが荒いでごじゃろ!」
「しょうがないだろ。そこの管理者に言ってくれ」
このタイプ……ターフスキアーのター君と同等の種族か?
封印出来ればいいんだが……いや、やめておこう。悪霊封印とか洒落にならない。
ただでさえ死霊族なんてものを封印してるんだからな。
確かこの手のタイプは物理攻撃が効かないはず。
「ベルド。此処は俺よりベルドの方が適任……」
「雷臥斗!」
電撃系幻術を直ぐに打ち出すベルド。
言うまでもなく行動出来るのはさすがだ。
しかし、消滅したかと思うとまた現れてしまう。
なんて嫌なトラップだ。
「タナトス。お前どうにか出来な……」
「……」
「そういう罠か。ベルド、攻撃対象はこいつだ。思い切りやってくれて構わない」
「いいのかい? 喜んでやらせてもらおう!」
タナトスに向けて慢心の笑みを浮かべながら手を構えるベルド。
虚ろな瞳をしているタナトスに向けて、意気揚々と雷臥斗を放った。
電撃をもろに受け、痺れてパタリと倒れるタナトス。
いい攻撃だ。致命傷は外しているとはいえ素晴らしい威力だった。
「いったーーー! 何するのさ!」
「お前が罠に掛かったんだろ。これ多分、用紙裏返せってことだ」
「えっ?」
タナトスが落とした用紙の裏には、悪霊に四度目の死をと書かれていた。
「紙に書いてあるのはこれだけか。後は……杖だな」
壁に立てかけられた、残った杖を手に取ってみる。
これには指輪が二個付いているが、そこは特に何もないようだ。
形状からして……そういえばさっき取った鍵の台座に窪みがあったな。
これに差して掲げろってこと……か?
井戸戦において杖が勝利を収めたという証なのかもしれない。
「ルイン。杖はきっとそこだろう」
「ああ、俺もそう思う」
「そうかな。その杖を振り回すと何か起こるんじゃない?」
「もうお前には頼まん……」
しかし杖を差し込んでも動作はしない。
そういえばもう一つ、板状のものが机の中に入っていたな。
これを差し込む場所が……指輪の双方に差し込む場所があるが、板は一枚きりだ。
炎で相手を攻撃するのに使う? いや、井戸にかざすなら水の力か。
水色の指輪付近にある差し込み口に板を差してみたると、指輪が左右の壁に何かを映し
出す。
それは人型の影で、杖を持つ者と何も持たないものが正面に向き合い、対話を始め
た。
「イチエイ。何故戒律を破った。救われる道は他にもあったはずだ」
「レンジよ。お前には分かるまい。私は戒律を破ったが、それに恥じることなどないのだ」
「なぜだ! 哀れで残酷な結末しかないと何故分からんのだ!」
「それでもなお、恥じることなく生きていく。それが俺の流儀なのだ」
指輪から映しだされた映像は消え、指輪にはそれぞれの名前であると思われるイチエイ
という文字と、レンジという文字だけが残っていた。
「……分かった!」
唐突に叫び出すタナトス。
やれやれ……他には特に何も見当たらないので、全ての情報が出揃ったと思う。
後は隣の部屋で考え、入力する必要があるな。
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