異世界転生 我が主のために ~不幸から始まる絶対忠義~ 冒険・戦い・感動を織りなすファンタジー

紫電のチュウニー

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第五部 主と建国せし道 第一章 ジャンカの町 闘技大会

第八百五十五話 力の魔を求めし魔族

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 ベルドとの話し合いを済ませ、パモやプリマの状態を確かめた。
 いよいよ七壁神の塔へ向かう準備完了。
 ベルドは相変わらずの冷静さをみせているが、プリマには少々驚いたようだ。

 重い扉を開いていくと……そこには特に何も見当たらない、部屋と呼ぶにはあまりにも広大
な場所だった。
 この塔は外からの光を取り込めるように、一部の壁に穴が開いている。
 そこからベルドは放り出されたのだろう。
 部屋の壁にはよくみると……何かが描かれているようにみえる。
 
「私はこの戦闘に参加しない。七階層では手を貸そう。ヒューもだ。
何せこれは君への手出しにならないからね」
「おいおい、ここに来て薄情な奴だな……」
「まぁ少々苦手な相手だから。多聞天は」
「多聞天? それがここで力を封ずる者の名か?」
「……嘘だろう。僕が対峙したときよりも……巨大だ!」

 タナトスに質問していると、ベルドから強い呼びかけがある。
 相手は未だ見当たらない気がするが……上か!? 

 それは恐らくずっとそうしていたのだろう。
 非常に高い天井に、まるでコウモリがぶら下がるかのように足をつけて張り付いていた巨大な何か。

 腕を組みずっと、こちらをみていた。
 確かにでかいが……クジラモドキを見た後だ。
 むしろ小さくさえ思えてしまう。
 
 
「僕が対峙したときの三倍は大きい! もしかして……敵として認識した数によるのか?」
「そうするとパモやヒューメリー、タナトスは対象外ってことか」
「その通り。頑張ってね」

 地響きとともに降りて来たそれは、まるで鎧武者のようないで立ちに、三叉戟さんさげきを何時の
間にか所持してこちらを見据えている。

 凄まじい威圧感だ。だが、本当に勝てない相手なのか? 

「魔の者よ。力を求め何とする。再び神魔対戦でも起こすつもりか」
「会話が出来る相手なら丁度いい。悪いが先を急いでるんだ。さっさと終わらせて次に行
かせてもらえないかな」
「笑止。質問に、出来ぬ質問で返すとは」
「おいおい。別に友達ってわけじゃないんだ。なぜあんたの唐突な質問に答えないといけ
ないんだ? それともその答えに応じたら、簡単に力をくれるとでも?」
「くっ。はっはっはっは。やっぱり君は面白い。正直に答えた自分が馬鹿に思えてくる。
まったくその通りだ。僕も今一度覚悟を決めよう」
「我を愚弄するか! 多聞天、いざ参る!」
「あーあ怒っちゃったよ。短気そうな相手とは思ったけど。んじゃいくぜ!」
【絶魔】

 正面から左右にぶれてみえる相手は俺へと一気に向かって来る。
 あれだけ挑発したんだ。その行動に嘘は無い。
 反時計回りに移動すると、事前に打ち合わせした通り挟み込む形となる。
 相手は三叉戟という特殊な武器だ。
 用途多彩で優秀な武器。好んで使うものも多い。何せただの槍や剣を三又で防ぎ止める
ことが出来る。
 突き刺した威力も極めて高く、致命傷を与えやすい。
 こいつの巨体も相まって、リーチが反則的に広がっている。

 奴は水平に三叉戟を振り回し、俺へ突き刺しにきた。
 
「妖楼・絶」

 奴の攻撃は空を切ると同時に、切られた俺の残像が周囲に増えていく。
 蜃気楼と幻影。
 こんなのでごまかせる相手ではないが、多少は怯んでくれるだろう。

「ベルド! ぼさっとするな! 強敵がどうした。そんなもの、打ち倒して這い上がらず
にどうするんだ。お前はここで死んで、子供にでも後を託すつもりだったのか!」

 俺の呼びかけに応じて、ようやく二槍を構えて動き出すベルド。
 ベルドの動きに合わせて、指示していたプリマもやれやれといわんばかりにようやく動
き出す。
 奴は後方に目もくれず、こちらへ再度攻撃を繰り出そうとしている。

「せっかちな奴だな。剣戒、封剣……光剣」
「神剣の使い手か! 相手にとって不足無し。くらえ、三叉戟、埋周来宝波うしゅうらいほうは
「随分嬉しそうな技名の割りに、嬉しくない攻撃だな!」

 三叉戟による圧倒的な連続突き。
 それは周囲を埋め尽くす程の三つの点を連続して映し出す。
 三剣で受け流しつつ隙を伺うのはきついが、この形態であるなら防ぎきれる。
 そろそろベルドとプリマの間合いに入るが……奴は三叉戟で攻撃しながらも、後方に気
味の悪い生物を二匹放出した! 

「くっ……こんな攻撃はされなかった」
「何だこいつら。気持ち悪いぞ!」
「ゆけ、我が邪鬼たちよ。小僧共の相手をしていろ。久々に生きのいい相手だ。おいお
前、名前くらい名乗れ」
「ルインだ。だがここで力をもらう相手は俺じゃない。ベルドだ。だからな……」

 奴の攻撃を全て防ぎ切り、レピュトの手甲で奴の三又を捉えている間に、ティソー
ナ、コラーダで奴の懐を刻み、通り抜ける。

「ぐっ……やりおる」
「今回は脇役でいいんだよ。ベルド、そいつは俺がもらう。こいつはお前がやれ」

 選手交代。俺はあくまで弱らせる補助でいい。
 ここからはお前の出番だ。
 みせてもらうぞ、これまでの修行の成果を。
「悪いが俺たちはスロースターターなもんでね」
「いいだろう。武神招来強化、邪鬼竜天」
「はい?」

 突如、ベルドと交代して対峙しようとしていた邪鬼とよばれるものの姿が変化していった。
 ……あの、やっぱりそっちと変わってくんない? 
 俺の技、時間制限あるんだよ……。
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