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第五部 主と建国せし道 第一章 ジャンカの町 闘技大会
第八百五十二話 七壁神の塔付近
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……また眠っていたか。
あの形態になるたびに眠らされているようじゃ、始末が悪すぎるな。
目の力は使っていないから、目は開くか……しかし海の上だったはずなのに助かったよ
うだ。
ヒューメリーが助けてくれたのかな。
それにしても……「何という寝心地の良さなんだ。しばらくこうしていたくなる」
「だえー」
「いやすまない。ヒューメリーが助けてくれたのか? ここは……何処だ」
周囲を見回すと、少々切り立った崖付近。草木が生えている場所だ。
外は一面の海。ということはやはり七壁神の塔付近か。
「タナトスはどうした?」
「だえー。偵察しにいってるんだえー」
「あの檻に入れた女はどうした」
「これだえー。眠らせてあるだえー」
「しかし、こんな形で此処へ来ることになるとは予想してなかった。どうやら無事にクジ
ラモドキから逃げられたんだな」
「だえー。覚えてないだえー?」
「ああ。途中で意識に飲み込まれた。ヒューメリーが眠らせてくれたんだろう?」
「だえー。違うよー。ターにぃだよー」
「そうだったのか……どうやって町に戻るか、その術を考えないといけない。何かヒュー
メリー、何かいい案はないか?」
「だえー。何かいい道具持ってないのー?」
「道具か……アップグレードさせるために殆どアルカーンさんに渡しちゃったんだよ。
ルーニーがいればこうはならなかったんだけど」
ヒューメリーと話していると、偵察にいっていたタナトスが戻って来る。
こちらに気付き、手をふって応じている。
近づくと、元気そうな顔をしていた。
「やぁ。目が覚めたのかい」
「あれ? お前もう喋れるのか? 数日は喋れないと言っていたような」
「何言ってるんだい。もう数日経過しているよ」
「何だって? 一体何日……」
「ほらそれよりも。確認しなくていいの? 君の大切な人たちのこと」
「それはそうだが……」
「そうそう。ちなみに遠覗裏の鏡で一度でも覗いた相手が死ねば、私には
直ぐ分かる。だから安心していいよ。君の大切な人たちは死んではいない」
「死んでは……か。嫌な言い方だな」
「どうする? もう一度誰かに声を繋げる?」
そうタナトスに言われ、少し思案する。
あのときとは……俺が地底へ初めて訪れたときとは状況が異なる。
ヒューメリーは優しいが、知識的な行動はあまりとっていない。
タナトスは信用出来ないが、その行動や言動は今必要だと思う。
こいつが喋れなくなると静かでいいんだが……静寂を求めている場合じゃない。
「止めておこう。状況確認だけさせてもらってもいいか? 二人が、心配なんだ」
「構わないよ」
ミレーユを映してもらうと……どこかで眠っているようだ。
しかしアメーダは映っていない。
代わりにアメーダを映してもらおうと思ったが……。
「彼女は正式名称じゃないね。プリマ君と同じく別名がある」
「それ、今分からないのか?」
「本人がいないんだから分からないよ。ここにいる間に調べておくべきだったね」
「そうか……俺はよくよく考えてみたら、プリマのこともアメーダのことも、詳しく尋ね
なかった。主として、失格だな……」
「君のことだから、単純に過去の話をえぐるのは良くないって考えたんでしょう。私なら
尋ねるけどね」
「それ、嫌われないか?」
「本人が聴いて欲しいと思っているかどうかなんじゃないのかな。少なくとも私には、彼
女らが聴いて欲しそうにしていると感じたけどね」
「……言い返す言葉も無い。確かにその通りだ。もう少し真剣に話し合う時間を設けるべ
きだったよ……なぁタナトス。これからどうすべきだと思う?」
「そうだね。七壁神の塔を攻略しようか」
「俺も馬鹿じゃない。ここへ誘導したのはお前だろう。そろそろ目的を話してくれない
か」
「うーん。ちょっと分かり易すぎたかな。でもね、これだけは言っておくよ? 君の町に
ついては本当に知らない。もう少し万全な状態でここへ来るつもりだった。だから例えこ
こを攻略しても、君らの領域へ戻れる方法を模索した方がいいのは間違いないんだ」
「どういうことだ。それだけじゃ話が分からない。領域が誰のせいでどうなっているかは
この際後回しでもいい。どうしたら領域へ戻る方法があるか。そしてこの塔は何なのか。
教えてくれ。頼むよ」
「この塔は地底へ通じる道がある。君には言って無かったけど、私の領域が置いてある場
所……と言えばいいのかな。それは地底の奥底にある場所なんだけど、あの七壁神の塔最
上階も、そんな地底の奥底にある場所へと繋がっているのさ」
「まさかそんな方法で地底に行けるとは、思わなかった」
「ただの地底じゃない。想像を絶するような場所だと思う方がいいよ。だから君の知合い
が持つ多くの能力があるにこしたことは無いんだけどね」
「その地底の奥底ってやつから地底のフェルス皇国へはどのくらい日数を要して辿り着け
る?」
「さぁ。そもそも無事に辿り着けるのかな、今の君で。いや、それ以前に……」
そう言いながら遥か後方にある塔を見るタナトス。
不気味な塔だ。モンスターの鳥類がうようよ飛んでいるのがみえる。
「あれを攻略出来るかなと思って。ここに魂吸竜ギオマがいないのは想定外だ」
「無い者を嘆いてもしょうがないだろ。人ってのは、持てる力を工夫して困難を乗り越え
るんだよ。それが何故かお前に分かるか?」
「いや。全然その辺が分からないんだ。工夫なんかしてどうなるの?」
「人は弱い。直ぐ死ぬし直ぐ諦めもする。でも、どうにもならない状況を、どうにかして
きたのも人だ。それに俺には……目の前に協力してくれそうな管理者もいるだろ。頼むぞ
タナトス」
「呆れた。君は此処へ連れて来た私を信用するのかい?」
「信用してるのはお前の知識と能力、そして目的だ。はなっから俺を殺す目的だったらこ
んなことしてないだろ。時間が惜しいんだ。さっさと行くぞ」
「ふふっ。こういう人間もいるのか。大抵は欲塗れでそれを隠す生物だけど……いいね。
管理者としての能力を少し、貸してあげようかな」
こうして俺とタナトス、ヒューメリーは七壁神の塔に向けて出発するのだった。
あの形態になるたびに眠らされているようじゃ、始末が悪すぎるな。
目の力は使っていないから、目は開くか……しかし海の上だったはずなのに助かったよ
うだ。
ヒューメリーが助けてくれたのかな。
それにしても……「何という寝心地の良さなんだ。しばらくこうしていたくなる」
「だえー」
「いやすまない。ヒューメリーが助けてくれたのか? ここは……何処だ」
周囲を見回すと、少々切り立った崖付近。草木が生えている場所だ。
外は一面の海。ということはやはり七壁神の塔付近か。
「タナトスはどうした?」
「だえー。偵察しにいってるんだえー」
「あの檻に入れた女はどうした」
「これだえー。眠らせてあるだえー」
「しかし、こんな形で此処へ来ることになるとは予想してなかった。どうやら無事にクジ
ラモドキから逃げられたんだな」
「だえー。覚えてないだえー?」
「ああ。途中で意識に飲み込まれた。ヒューメリーが眠らせてくれたんだろう?」
「だえー。違うよー。ターにぃだよー」
「そうだったのか……どうやって町に戻るか、その術を考えないといけない。何かヒュー
メリー、何かいい案はないか?」
「だえー。何かいい道具持ってないのー?」
「道具か……アップグレードさせるために殆どアルカーンさんに渡しちゃったんだよ。
ルーニーがいればこうはならなかったんだけど」
ヒューメリーと話していると、偵察にいっていたタナトスが戻って来る。
こちらに気付き、手をふって応じている。
近づくと、元気そうな顔をしていた。
「やぁ。目が覚めたのかい」
「あれ? お前もう喋れるのか? 数日は喋れないと言っていたような」
「何言ってるんだい。もう数日経過しているよ」
「何だって? 一体何日……」
「ほらそれよりも。確認しなくていいの? 君の大切な人たちのこと」
「それはそうだが……」
「そうそう。ちなみに遠覗裏の鏡で一度でも覗いた相手が死ねば、私には
直ぐ分かる。だから安心していいよ。君の大切な人たちは死んではいない」
「死んでは……か。嫌な言い方だな」
「どうする? もう一度誰かに声を繋げる?」
そうタナトスに言われ、少し思案する。
あのときとは……俺が地底へ初めて訪れたときとは状況が異なる。
ヒューメリーは優しいが、知識的な行動はあまりとっていない。
タナトスは信用出来ないが、その行動や言動は今必要だと思う。
こいつが喋れなくなると静かでいいんだが……静寂を求めている場合じゃない。
「止めておこう。状況確認だけさせてもらってもいいか? 二人が、心配なんだ」
「構わないよ」
ミレーユを映してもらうと……どこかで眠っているようだ。
しかしアメーダは映っていない。
代わりにアメーダを映してもらおうと思ったが……。
「彼女は正式名称じゃないね。プリマ君と同じく別名がある」
「それ、今分からないのか?」
「本人がいないんだから分からないよ。ここにいる間に調べておくべきだったね」
「そうか……俺はよくよく考えてみたら、プリマのこともアメーダのことも、詳しく尋ね
なかった。主として、失格だな……」
「君のことだから、単純に過去の話をえぐるのは良くないって考えたんでしょう。私なら
尋ねるけどね」
「それ、嫌われないか?」
「本人が聴いて欲しいと思っているかどうかなんじゃないのかな。少なくとも私には、彼
女らが聴いて欲しそうにしていると感じたけどね」
「……言い返す言葉も無い。確かにその通りだ。もう少し真剣に話し合う時間を設けるべ
きだったよ……なぁタナトス。これからどうすべきだと思う?」
「そうだね。七壁神の塔を攻略しようか」
「俺も馬鹿じゃない。ここへ誘導したのはお前だろう。そろそろ目的を話してくれない
か」
「うーん。ちょっと分かり易すぎたかな。でもね、これだけは言っておくよ? 君の町に
ついては本当に知らない。もう少し万全な状態でここへ来るつもりだった。だから例えこ
こを攻略しても、君らの領域へ戻れる方法を模索した方がいいのは間違いないんだ」
「どういうことだ。それだけじゃ話が分からない。領域が誰のせいでどうなっているかは
この際後回しでもいい。どうしたら領域へ戻る方法があるか。そしてこの塔は何なのか。
教えてくれ。頼むよ」
「この塔は地底へ通じる道がある。君には言って無かったけど、私の領域が置いてある場
所……と言えばいいのかな。それは地底の奥底にある場所なんだけど、あの七壁神の塔最
上階も、そんな地底の奥底にある場所へと繋がっているのさ」
「まさかそんな方法で地底に行けるとは、思わなかった」
「ただの地底じゃない。想像を絶するような場所だと思う方がいいよ。だから君の知合い
が持つ多くの能力があるにこしたことは無いんだけどね」
「その地底の奥底ってやつから地底のフェルス皇国へはどのくらい日数を要して辿り着け
る?」
「さぁ。そもそも無事に辿り着けるのかな、今の君で。いや、それ以前に……」
そう言いながら遥か後方にある塔を見るタナトス。
不気味な塔だ。モンスターの鳥類がうようよ飛んでいるのがみえる。
「あれを攻略出来るかなと思って。ここに魂吸竜ギオマがいないのは想定外だ」
「無い者を嘆いてもしょうがないだろ。人ってのは、持てる力を工夫して困難を乗り越え
るんだよ。それが何故かお前に分かるか?」
「いや。全然その辺が分からないんだ。工夫なんかしてどうなるの?」
「人は弱い。直ぐ死ぬし直ぐ諦めもする。でも、どうにもならない状況を、どうにかして
きたのも人だ。それに俺には……目の前に協力してくれそうな管理者もいるだろ。頼むぞ
タナトス」
「呆れた。君は此処へ連れて来た私を信用するのかい?」
「信用してるのはお前の知識と能力、そして目的だ。はなっから俺を殺す目的だったらこ
んなことしてないだろ。時間が惜しいんだ。さっさと行くぞ」
「ふふっ。こういう人間もいるのか。大抵は欲塗れでそれを隠す生物だけど……いいね。
管理者としての能力を少し、貸してあげようかな」
こうして俺とタナトス、ヒューメリーは七壁神の塔に向けて出発するのだった。
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