上 下
941 / 1,085
第五部 主と建国せし道 第一章 ジャンカの町 闘技大会

第八百四十七話 海中生物、アルカディアファライナ

しおりを挟む
「あなた様! 相手が悪いのでございます! あれはアルカディアファライナでございま
す!」
「ああ、どうみてもまともにやり合う相手じゃないな。プリマ、力を渡すから一緒に戦っ
てくれ!」
「やってはみるけど上手くいくか分からないぞ。歪術使って海を割ったらトリノポートと
シフティス大陸どっちも海水で沈むけどいいか?」
「それはダメだ! 他の方法で戦って……いや、こんなのどうやって戦えってんだ。巨爆
烈牙剣だって僅かに傷が付く程度だろ」


 プリマは俺の肩の上に乗り、対峙するバカでかいアルカディアファライナとかいうクジ
ラモドキを睨んでいる。
 
 全身……いや半身姿を現しただけでも、目の前に巨大な絶壁が出来たかのようなサイズだ。
 こんなのとまともに戦えるはずもないが、今の形態なら退けること位出来るかもしれない。
 しかしこの形態、長くこうしてはいられない。

「どうするんだ。プリマは歪術使ってもいいのか?」
「足止め程度で出来ないか? 多分だが……タナトスの爆輪で怒らせただけだし、無理に倒す
必要はない」
「分かった。アメーダ、足場作ってくれよ」
「氷臥斗! もう広げていってるのでございます。早くしないと足場を全部砕かれるのでござ
います」
「しかし……封印外へ二人を出しただけでは、変化がみられないな。トウマは変わったのに」

 絶魔形態でのモンスターは昇華した形態となって出て来る。
 しかし、プリマもアメーダもそのままに思えるのだが……やはりまだ、この形態の全貌をつ
かめていない。
「歪術……あ、やっぱダメだ!」
『ギュラアアアアアアアアアアアア!』

 プリマの歪術は僅かに巨体部分を歪ませただけだった。
 クジラモドキが更に怒り、大きく吠えると周囲一帯から押し寄せる津波が沸き起こる! 
 やばい。せっかくアメーダが作った足場が……このままだと歪術で足止めも出来ない。
 そう考える間もなく、氷の足場に亀裂が入り、タナトスが慌ててしがみついてきた。

「た、助けて! 本当に泳げないから! このままだと津波で流されるよ」
「だえー。空飛べないだえー」
「あなた様。まだ氷があるうちに、上へお願いするのでございます。その後また足場を作
るのでございます!」
「分かった、全員つかまれ! タナトス、お前が蒔いた種だから少しは協力しろよ! バ
ネジャンプ!」

 勢いをつけて上空高く飛翔した。上空から見下ろしても何て巨体だ。
 トウマや大きくなったギオマは言うに及ばず、これまで目にした生物の中で最も巨大だ。
 こんな巨大生物が海に潜んでいたなんて……しかしあんなのがいるのに七壁神の塔はよく
破壊されていないな。
 
「でっけーー」
「そうでございますね。アメーダもこれほどの生物を直接見るのは初めてでございます」
「だえー。眠らせる?」
「ヒューメリーの力なら、あんなでか物でも眠らせられるんだな?」
「だえー」
「海の中だと無理があるだろう? それにあれほどの巨体を眠らせるにも時間が掛かる
よ。上空に飛んだけど、ここからどうするんだい?」
「アメーダ、足場は……やべ!」

 俺たちが上空にいる間に、奴は位置を変える。
 巨体の動きで海は大荒れ。こんなやつが陸地付近に現れたら大ごとじゃ済まないだろう。
 
「まずった。このままだとこいつの上に着地する。タイミング悪いと海に沈むぞ!」
「その背中部分を凍らせれば大丈夫でございますか?」
「そうすると歪術使っても氷が歪むだけだぞ」
「だえー。氷は眠らせられないよー」
「君の使うブレス技でどうにかならないのかい?」
「無理だ! 規模が違い過ぎる! 海に潜られたら効果も無いし。あいつの背中にそのま
ま一度着地を試みるぞ! もし潜りそうなら直ぐ氷を張ってくれ」

 皆を担いだまま奴の巨体目指して急降下する。
 直ぐに周囲を氷で固めれば何とかなると思っていた。
 
「ちょ、着地位置、まず……手が使えん!」
「氷術を使うと攻撃してしまうのでございます!」
「うわあーーー!」
「海の中よりはましかぁー」
「だえー」
「冷静に、言ってる場合かーーーー!」

 着地した場所……いや出来なかったのだ。
 そこには巨大な穴が開いていた。
 俺たちは全員その中へと落ちて行った……。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活

昼寝部
ファンタジー
 この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。  しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。  そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。  しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。  そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。  これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

天日ノ艦隊 〜こちら大和型戦艦、異世界にて出陣ス!〜 

八風ゆず
ファンタジー
時は1950年。 第一次世界大戦にあった「もう一つの可能性」が実現した世界線。1950年4月7日、合同演習をする為航行中、大和型戦艦三隻が同時に左舷に転覆した。 大和型三隻は沈没した……、と思われた。 だが、目覚めた先には我々が居た世界とは違った。 大海原が広がり、見たことのない数多の国が支配者する世界だった。 祖国へ帰るため、大海原が広がる異世界を旅する大和型三隻と別世界の艦船達との異世界戦記。 ※異世界転移が何番煎じか分からないですが、書きたいのでかいています! 面白いと思ったらブックマーク、感想、評価お願いします!!※ ※戦艦など知らない人も楽しめるため、解説などを出し努力しております。是非是非「知識がなく、楽しんで読めるかな……」っと思ってる方も読んでみてください!※

大和型戦艦、異世界に転移する。

焼飯学生
ファンタジー
第二次世界大戦が起きなかった世界。大日本帝国は仮想敵国を定め、軍事力を中心に強化を行っていた。ある日、大日本帝国海軍は、大和型戦艦四隻による大規模な演習と言う名目で、太平洋沖合にて、演習を行うことに決定。大和、武蔵、信濃、紀伊の四隻は、横須賀海軍基地で補給したのち出港。しかし、移動の途中で濃霧が発生し、レーダーやソナーが使えなくなり、更に信濃と紀伊とは通信が途絶してしまう。孤立した大和と武蔵は濃霧を突き進み、太平洋にはないはずの、未知の島に辿り着いた。 ※ この作品は私が書きたいと思い、書き進めている作品です。文章がおかしかったり、不明瞭な点、あるいは不快な思いをさせてしまう可能性がございます。できる限りそのような事態が起こらないよう気をつけていますが、何卒ご了承賜りますよう、お願い申し上げます。

異世界帰りの底辺配信者のオッサンが、超人気配信者の美女達を助けたら、セレブ美女たちから大国の諜報機関まであらゆる人々から追われることになる話

kaizi
ファンタジー
※しばらくは毎日(17時)更新します。 ※この小説はカクヨム様、小説家になろう様にも掲載しております。 ※カクヨム週間総合ランキング2位、ジャンル別週間ランキング1位獲得 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 異世界帰りのオッサン冒険者。 二見敬三。 彼は異世界で英雄とまで言われた男であるが、数ヶ月前に現実世界に帰還した。 彼が異世界に行っている間に現実世界にも世界中にダンジョンが出現していた。 彼は、現実世界で生きていくために、ダンジョン配信をはじめるも、その配信は見た目が冴えないオッサンということもあり、全くバズらない。 そんなある日、超人気配信者のS級冒険者パーティを助けたことから、彼の生活は一変する。 S級冒険者の美女たちから迫られて、さらには大国の諜報機関まで彼の存在を危険視する始末……。 オッサンが無自覚に世界中を大騒ぎさせる!?

日本帝国陸海軍 混成異世界根拠地隊

北鴨梨
ファンタジー
太平洋戦争も終盤に近付いた1944(昭和19)年末、日本海軍が特攻作戦のため終結させた南方の小規模な空母機動部隊、北方の輸送兼対潜掃討部隊、小笠原増援輸送部隊が突如として消失し、異世界へ転移した。米軍相手には苦戦続きの彼らが、航空戦力と火力、機動力を生かして他を圧倒し、図らずも異世界最強の軍隊となってしまい、その情勢に大きく関わって引っ掻き回すことになる。

お帰り転生―素質だけは世界最高の素人魔術師、前々世の復讐をする。

永礼 経
ファンタジー
特性「本の虫」を選んで転生し、3度目の人生を歩むことになったキール・ヴァイス。 17歳を迎えた彼は王立大学へ進学。 その書庫「王立大学書庫」で、一冊の不思議な本と出会う。 その本こそ、『真魔術式総覧』。 かつて、大魔導士ロバート・エルダー・ボウンが記した書であった。 伝説の大魔導士の手による書物を手にしたキールは、現在では失われたボウン独自の魔術式を身に付けていくとともに、 自身の生前の記憶や前々世の自分との邂逅を果たしながら、仲間たちと共に、様々な試練を乗り越えてゆく。 彼の周囲に続々と集まってくる様々な人々との関わり合いを経て、ただの素人魔術師は伝説の大魔導士への道を歩む。 魔法戦あり、恋愛要素?ありの冒険譚です。 【本作品はカクヨムさまで掲載しているものの転載です】

貞操逆転世界に無職20歳男で転生したので自由に生きます!

やまいし
ファンタジー
自分が書きたいことを詰めこみました。掲示板あり 目覚めると20歳無職だった主人公。 転生したのは男女の貞操観念が逆転&男女比が1:100の可笑しな世界だった。 ”好きなことをしよう”と思ったは良いものの無一文。 これではまともな生活ができない。 ――そうだ!えちえち自撮りでお金を稼ごう! こうして彼の転生生活が幕を開けた。

テンプレな異世界を楽しんでね♪~元おっさんの異世界生活~【加筆修正版】

永倉伊織
ファンタジー
神の力によって異世界に転生した長倉真八(39歳)、転生した世界は彼のよく知る「異世界小説」のような世界だった。 転生した彼の身体は20歳の若者になったが、精神は何故か39歳のおっさんのままだった。 こうして元おっさんとして第2の人生を歩む事になった彼は異世界小説でよくある展開、いわゆるテンプレな出来事に巻き込まれながらも、出逢いや別れ、時には仲間とゆる~い冒険の旅に出たり 授かった能力を使いつつも普通に生きていこうとする、おっさんの物語である。 ◇ ◇ ◇ 本作は主人公が異世界で「生活」していく事がメインのお話しなので、派手な出来事は起こりません。 序盤は1話あたりの文字数が少なめですが 全体的には1話2000文字前後でサクッと読める内容を目指してます。

処理中です...