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第五部 主と建国せし道 第一章 ジャンカの町 闘技大会

第八百三十二話 アルカーンの見舞い

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 深く色々と考えていたその日には、多くの者が見舞いに来てくれた。
 そして最後にアルカーンさんが尋ねて来た。
 その頃には、やはりというか俺の目はかなり見えるようになっていた。

「思ったより元気そうだな」
「はい。お陰様で……無様な負け方をしてしまいました」
「無様? そもそも貴様は負けていないが?」
「えっ? 俺は反則負けでしょう」
「両者反則で審議している最中だが、再戦が根強い意見だな。恐らくもう一度
戦うことになるだろう」
「他の試合はどうなったんですか?」
「貴様らが闘技場を破壊したから、作り直した」
「あ……やっちまった……すみません」
「ふん。だから最初からアーティファクト生成しろと言ったのだ」
「いや、地上にアーティファクトを転がしておくには気が引けるんですよ」
「安心しろ。持っていかれる代物を用意するつもりはない」
「それじゃ、そうしてもらった方がよかったのかな……はぁ。それでアルカーン
さんの用事とは?」
「初戦で貴様を連れ去ろうとした女がいたのに気付いたか。でかい頭飾りを付けた女だ」
「ああ。俺を連れ去ろうとしてたんですか? 可笑しな神兵が場外に連れ出して行方不明
ですけど」
「神兵だと? あいつがそう言ったのか」
「はい。違うんですか?」
「あれは管理者だ」
「え? 管理者? あいつが? 本当に?」
「うむ。間違いない。死の管理者、タナトス。偽名を使っているがな」
「タナトス……あの女の方は何者かわかります?」
「いや。あれは管理者などではない。タナトスの知合いというわけでもない。
恐らくだが、地底に行けない理由ではないかと探っている」
「……くそっ。ここに来てまた分からないことが増えた」
「おい。それより話と言うのは貴様が見せたあの剣についてだ」
「剣? ああ、クルージーン・カサド・ヒャンですか」
「どうだ。出せるか?」
「試してみます……いや、やっぱダメみたいだ」
「そうか。もし出せたのなら少し手を加えてやろうと思ったのだがな」
「もし出せたそのときにはお願いします」
「そうだ、一つ言い忘れていたが……」
「……またですか」
「先ほど話したタナトス。必ず貴様の前にまた現れるだろう。奴が何を考えているかは
わからん。しかし、何かしらの手出しはするだろう。気を付けておけ」
「軽く対峙しただけですが、一体どんなことをしてくる奴なんです?」
「言っただろう? 奴は死を司る管理者。死に関するあらゆることを担う役割を持つ。だ
が死神とは違う」
「うーん。よく分からないな……ですが、十分気を付けることにします」
「そうそう、それと言い忘れていたのだが」
「まだあんのかよ! はっ! ……静かにしないとだった」

 このノリはどうしても突っ込んでしまう。
 そういうトラップが仕込まれているのだ。

「貴様の装備、全て破壊されていたので作り直してやった。時間が無いから俺が全部
作ってやった。有難く思え」
「いいんですか? というか俺、大会に復帰してもいいんですかね?」
「ああ。再戦が確定するだろうからな。今度は抜かるなよ。といっても貴様の試合は
後回しだ。明日の初戦は雷帝配下、ビローネ対ルッツという男だ」
「それは見物ですね……楽しみにしておきます。あの、アルカーンさん」
「何だ」
「いつも、有難うございます。あなたは本当に面倒見の良い暖かな人だ」
「ふん。俺は気に入った場所を守っているだけにすぎん。それに……いや、何でもない。
ではな」

 素直じゃない。それは俺も同じか。
 メルザのように素直に生きれたら……どれほど良かっただろうか。
 いや、そんな俺と我が主だから惹かれ合うのかもしれない。
 カルネが産まれた今でもメルザは変わらない。
 本当にずっと俺を思ってくれる。
 だからこそ、自分自身が何者であっても強く生きていけるのだから。
 そして……アルカーンさんが去って間もなくのことだった。
 ここは治療室でも個室の場所。既に周りには誰もいない。
 だからこそそのタイミングを見計らっていたのかもしれない。

「やっと誰もいなくなったようだ」
「誰だ!?」

 突然誰かの声が聴こえた気がした。
 ……いや、声だけじゃない! まさか……。
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