912 / 1,085
第五部 主と建国せし道 第一章 ジャンカの町 闘技大会
第八百十八話 銃撃戦と肉弾戦
しおりを挟む
「試合開始です!」
イビンの掛け声とともに、双方のリングより大歓声が上がる。
俺は現在闘技場リング付近で試合を見物している。
直ぐ近くには、負けて引退を決意したハクレイ老師がいる。
無理もない。何せアースガルズへ向かう途中も老師は大けがをしてしまったのだから。
「激しく動きがあるのはリングAの方ですね」
「うむ。射撃手が数名おる。大きめのリングじゃ。遠距離からの攻撃を早めに封じたいん
じゃろうな」
「その反面、リングBは近接戦が殆ど……あれ? シーザー師匠、武器を持ってない?」
「そういえば試合前に、言っておったのう。壊れるからいらんと」
「ああ……それはちょっとわかるかもしれません。俺は落としてしまったけど、モアユニ
ーク武器なら破損リスクは結構高いですね」
「うむ……その点銃撃は壊れる可能性が低くていいのう」
「でも、弾切れがありますからね。そこを突かれると脆い」
リングAでは現状、ビーとアイマスクウェアウルフがリング上を走り回り、次々と選手
を落としている。
リングBではシーザー師匠が腕を組み、構えたまま挑んで来る相手を待っているが……
シーザー師匠へ向かう者は誰もいない。
それもそうだ。シーザー師匠は有名。びびって近づく奴はそうそういないだろう。
リングに上がる前、既に危険した人物もいたようだ。
「リングBは覚者と師匠が動くまで……いや、ドーグルが頑張ってるな。後……誰だろう、あれは」
「むう……あれも魔族じゃな。翼が見えておる」
「羽の生えた魔族?」
「そのようじゃ。ハルピュイアという種族じゃな」
「ハルピュイア……女の子ですよね」
「うむ。しかしハルピュイアがこんな人前に出てくるとはのう」
ハルピュイアは鳥のような足で選手をつかんでは場外へ落下させている。
空を飛んでいるような、いないような……ギリギリセーフなのかアウトなのか。
いや、きっとセーフだ。高くはとんでいないし飛ぶ時間も短い。
重くてそれほど持ち上げられないのだろうが、戦うには有利だろう。
……気の毒だが、そのリングで勝ち上がるのは鬼門だと思う。
「リングAは予想通り……アイマスクのウェアウルフとビーの一騎打ちになりそうですね」
「何か、喧嘩しとらんか?」
「えっ?」
ビーは以前招来していた木のような物の上に乗り、その上から隠れつつ射撃している。
ウェアウルフは……幻術も使えたのか。
土斗で壁を形成しつつ、その間から射撃を繰り返しているが、どう見てもヒートアップ
しているように見える。
この二人にどんな因縁があるのだろうか。
わからないが、戦況は激しく動いている。
シーザー師匠の方は……「ちったぁ骨のあるやついねえのか! 来い!」
ようやく近づいてきた奴に蹴りを入れて吹き飛んだところを間髪入れず追撃……あれは痛そうだ。
覚者の方はなぜか認識されていないかのように、攻撃の的となっていない。
「老師。覚者っていうのは一体何なんですか?」
「そう言えばわし、詳しく話してなかったのう。心してきくのじゃルンルン」
「ルインでお願いします」
「覚者とは魔の影響を強く受け、その身に眠る力に目覚めてしまったものじゃ。元々で言
うなら人間じゃな」
「人間……? あの妙な光は何なんです?」
「聖恩調気という、調気を纏った存在ゆえに、光っているよう見えるのじゃよ」
「聖調気? 聖属性みたいなものってことか……」
「まぁ、属性というよりは、魔王種の鎧のようなもんじゃな。ただし、聖調気はな……
むぅ、ベルディス殿が動くぞ」
「ちったぁ戦え、てめえもよ!」
「荒々しい。その高ぶりはウェアウルフの血、ゆえか」
師匠が突撃し、肉弾戦を持ちかける。
今までみたどの動きとも違う動き方で突進する師匠。
あれはスキアラの許で特訓した成果なのだろうか。
しかし覚者には追いつけない。。
俺が今まで見て来た奴らは、何となく強そうだということが感覚でわかった。
こいつはやばそうなことしかわからない。
強さの実態そのものが不明だ。
「攻撃に転じませんね」
「ううむ、種明かしするよりよく見てみるとよいぞ」
「はい……予測としてはあの光で何かしらの攻撃する隙を伺っているのかと思う
のですが」
「わしも最初はそう思ったんじゃがな……」
違うのか? 明らかに防戦一方だ。
自ら攻撃をしに転じていない。
あれじゃシーザー師匠としてもやり辛いだろう。
そう考えていたら、司会のイビンから大きな声が発せられる」
「あーー! これはまともに食らってしまいました! ビー選手ピンチです! でも今の
は明らかに行動がおかしいです! 自ら撃たれにいったように見えました!」
「変ね。あの子、もっと冷静だと思っていたのだけれど。大変よ。女性がリングにかけつ
けてるわ!」
やべっ! レナさんだ。急いで止めないと。
「レナさんストップ! ダメだ」
「でも! もう見てられません!」
「大丈夫、致命傷にはならない弾だよ」
射撃武器の弾丸は、指定された物以外使用出来ない。
これは事前に確認が入るので絶対だ……が、ビーが動いていない?
「おい! イビン! 勝ち名乗りを挙げろ! それ以上攻撃させるな!」
「黙れ。敗者に居場所はない。くたばれ」
【真化】
「赤海星の吸盾」
ウェアウルフの男が銃撃を行う直前に、どうにか防ぐことが出来た。
こいつ……今確実に殺そうとした。
殺したらこいつが反則負けだっていうのに、お構いなしにだ。
「てめえ……なぜ邪魔をする」
「もう勝負はついた。お前の……勝ちだ」
「り、リングAの勝者はルッツ選手です!」
イビンの掛け声とともに、双方のリングより大歓声が上がる。
俺は現在闘技場リング付近で試合を見物している。
直ぐ近くには、負けて引退を決意したハクレイ老師がいる。
無理もない。何せアースガルズへ向かう途中も老師は大けがをしてしまったのだから。
「激しく動きがあるのはリングAの方ですね」
「うむ。射撃手が数名おる。大きめのリングじゃ。遠距離からの攻撃を早めに封じたいん
じゃろうな」
「その反面、リングBは近接戦が殆ど……あれ? シーザー師匠、武器を持ってない?」
「そういえば試合前に、言っておったのう。壊れるからいらんと」
「ああ……それはちょっとわかるかもしれません。俺は落としてしまったけど、モアユニ
ーク武器なら破損リスクは結構高いですね」
「うむ……その点銃撃は壊れる可能性が低くていいのう」
「でも、弾切れがありますからね。そこを突かれると脆い」
リングAでは現状、ビーとアイマスクウェアウルフがリング上を走り回り、次々と選手
を落としている。
リングBではシーザー師匠が腕を組み、構えたまま挑んで来る相手を待っているが……
シーザー師匠へ向かう者は誰もいない。
それもそうだ。シーザー師匠は有名。びびって近づく奴はそうそういないだろう。
リングに上がる前、既に危険した人物もいたようだ。
「リングBは覚者と師匠が動くまで……いや、ドーグルが頑張ってるな。後……誰だろう、あれは」
「むう……あれも魔族じゃな。翼が見えておる」
「羽の生えた魔族?」
「そのようじゃ。ハルピュイアという種族じゃな」
「ハルピュイア……女の子ですよね」
「うむ。しかしハルピュイアがこんな人前に出てくるとはのう」
ハルピュイアは鳥のような足で選手をつかんでは場外へ落下させている。
空を飛んでいるような、いないような……ギリギリセーフなのかアウトなのか。
いや、きっとセーフだ。高くはとんでいないし飛ぶ時間も短い。
重くてそれほど持ち上げられないのだろうが、戦うには有利だろう。
……気の毒だが、そのリングで勝ち上がるのは鬼門だと思う。
「リングAは予想通り……アイマスクのウェアウルフとビーの一騎打ちになりそうですね」
「何か、喧嘩しとらんか?」
「えっ?」
ビーは以前招来していた木のような物の上に乗り、その上から隠れつつ射撃している。
ウェアウルフは……幻術も使えたのか。
土斗で壁を形成しつつ、その間から射撃を繰り返しているが、どう見てもヒートアップ
しているように見える。
この二人にどんな因縁があるのだろうか。
わからないが、戦況は激しく動いている。
シーザー師匠の方は……「ちったぁ骨のあるやついねえのか! 来い!」
ようやく近づいてきた奴に蹴りを入れて吹き飛んだところを間髪入れず追撃……あれは痛そうだ。
覚者の方はなぜか認識されていないかのように、攻撃の的となっていない。
「老師。覚者っていうのは一体何なんですか?」
「そう言えばわし、詳しく話してなかったのう。心してきくのじゃルンルン」
「ルインでお願いします」
「覚者とは魔の影響を強く受け、その身に眠る力に目覚めてしまったものじゃ。元々で言
うなら人間じゃな」
「人間……? あの妙な光は何なんです?」
「聖恩調気という、調気を纏った存在ゆえに、光っているよう見えるのじゃよ」
「聖調気? 聖属性みたいなものってことか……」
「まぁ、属性というよりは、魔王種の鎧のようなもんじゃな。ただし、聖調気はな……
むぅ、ベルディス殿が動くぞ」
「ちったぁ戦え、てめえもよ!」
「荒々しい。その高ぶりはウェアウルフの血、ゆえか」
師匠が突撃し、肉弾戦を持ちかける。
今までみたどの動きとも違う動き方で突進する師匠。
あれはスキアラの許で特訓した成果なのだろうか。
しかし覚者には追いつけない。。
俺が今まで見て来た奴らは、何となく強そうだということが感覚でわかった。
こいつはやばそうなことしかわからない。
強さの実態そのものが不明だ。
「攻撃に転じませんね」
「ううむ、種明かしするよりよく見てみるとよいぞ」
「はい……予測としてはあの光で何かしらの攻撃する隙を伺っているのかと思う
のですが」
「わしも最初はそう思ったんじゃがな……」
違うのか? 明らかに防戦一方だ。
自ら攻撃をしに転じていない。
あれじゃシーザー師匠としてもやり辛いだろう。
そう考えていたら、司会のイビンから大きな声が発せられる」
「あーー! これはまともに食らってしまいました! ビー選手ピンチです! でも今の
は明らかに行動がおかしいです! 自ら撃たれにいったように見えました!」
「変ね。あの子、もっと冷静だと思っていたのだけれど。大変よ。女性がリングにかけつ
けてるわ!」
やべっ! レナさんだ。急いで止めないと。
「レナさんストップ! ダメだ」
「でも! もう見てられません!」
「大丈夫、致命傷にはならない弾だよ」
射撃武器の弾丸は、指定された物以外使用出来ない。
これは事前に確認が入るので絶対だ……が、ビーが動いていない?
「おい! イビン! 勝ち名乗りを挙げろ! それ以上攻撃させるな!」
「黙れ。敗者に居場所はない。くたばれ」
【真化】
「赤海星の吸盾」
ウェアウルフの男が銃撃を行う直前に、どうにか防ぐことが出来た。
こいつ……今確実に殺そうとした。
殺したらこいつが反則負けだっていうのに、お構いなしにだ。
「てめえ……なぜ邪魔をする」
「もう勝負はついた。お前の……勝ちだ」
「り、リングAの勝者はルッツ選手です!」
0
お気に入りに追加
98
あなたにおすすめの小説

【スキルコレクター】は異世界で平穏な日々を求める
シロ
ファンタジー
神の都合により異世界へ転生する事になったエノク。『スキルコレクター』というスキルでスキルは楽々獲得できレベルもマックスに。『解析眼』により相手のスキルもコピーできる。
メニューも徐々に開放されていき、できる事も増えていく。
しかし転生させた神への謎が深まっていき……?どういった結末を迎えるのかは、誰もわからない。
[鑑定]スキルしかない俺を追放したのはいいが、貴様らにはもう関わるのはイヤだから、さがさないでくれ!
どら焼き
ファンタジー
ついに!第5章突入!
舐めた奴らに、真実が牙を剥く!
何も説明無く、いきなり異世界転移!らしいのだが、この王冠つけたオッサン何を言っているのだ?
しかも、ステータスが文字化けしていて、スキルも「鑑定??」だけって酷くない?
訳のわからない言葉?を発声している王女?と、勇者らしい同級生達がオレを城から捨てやがったので、
なんとか、苦労して宿代とパン代を稼ぐ主人公カザト!
そして…わかってくる、この異世界の異常性。
出会いを重ねて、なんとか元の世界に戻る方法を切り開いて行く物語。
主人公の直接復讐する要素は、あまりありません。
相手方の、あまりにも酷い自堕落さから出てくる、ざまぁ要素は、少しづつ出てくる予定です。
ハーレム要素は、不明とします。
復讐での強制ハーレム要素は、無しの予定です。
追記
2023/07/21 表紙絵を戦闘モードになったあるヤツの参考絵にしました。
8月近くでなにが、変形するのかわかる予定です。
2024/02/23
アルファポリスオンリーを解除しました。

お願いだから俺に構わないで下さい
大味貞世氏
ファンタジー
高校2年の9月。
17歳の誕生日に甲殻類アレルギーショックで死去してしまった燻木智哉。
高校1年から始まったハブりイジメが原因で自室に引き籠もるようになっていた彼は。
本来の明るい楽観的な性格を失い、自棄から自滅願望が芽生え。
折角貰った転生のチャンスを不意に捨て去り、転生ではなく自滅を望んだ。
それは出来ないと天使は言い、人間以外の道を示した。
これは転生後の彼の魂が辿る再生の物語。
有り触れた異世界で迎えた新たな第一歩。その姿は一匹の…

幸福の魔法使い〜ただの転生者が史上最高の魔法使いになるまで〜
霊鬼
ファンタジー
生まれつき魔力が見えるという特異体質を持つ現代日本の会社員、草薙真はある日死んでしまう。しかし何故か目を覚ませば自分が幼い子供に戻っていて……?
生まれ直した彼の目的は、ずっと憧れていた魔法を極めること。様々な地へ訪れ、様々な人と会い、平凡な彼はやがて英雄へと成り上がっていく。
これは、ただの転生者が、やがて史上最高の魔法使いになるまでの物語である。
(小説家になろう様、カクヨム様にも掲載をしています。)
[完結]異世界転生したら幼女になったが 速攻で村を追い出された件について ~そしていずれ最強になる幼女~
k33
ファンタジー
初めての小説です..!
ある日 主人公 マサヤがトラックに引かれ幼女で異世界転生するのだが その先には 転生者は嫌われていると知る そして別の転生者と出会い この世界はゲームの世界と知る そして、そこから 魔法専門学校に入り Aまで目指すが 果たして上がれるのか!? そして 魔王城には立ち寄った者は一人もいないと別の転生者は言うが 果たして マサヤは 魔王城に入り 魔王を倒し無事に日本に帰れるのか!?

貧弱の英雄
カタナヅキ
ファンタジー
この世界では誰もが生まれた時から「異能」と「レベル」呼ばれる能力を身に付けており、人々はレベルを上げて自分の能力を磨き、それに適した職業に就くのが当たり前だった。しかし、山奥で捨てられていたところを狩人に拾われ、後に「ナイ」と名付けられた少年は「貧弱」という異能の中でも異質な能力を身に付けていた。
貧弱の能力の効果は日付が変更される度に強制的にレベルがリセットされてしまい、生まれた時からナイは「レベル1」だった。どれだけ努力してレベルを上げようと日付変わる度にレベル1に戻ってしまい、レベルで上がった分の能力が低下してしまう。
自分の貧弱の技能に悲観する彼だったが、ある時にレベルを上昇させるときに身に付ける「SP」の存在を知る。これを使用すれば「技能」と呼ばれる様々な技術を身に付ける事を知り、レベルが毎日のようにリセットされる事を逆に利用して彼はSPを溜めて数々の技能を身に付け、落ちこぼれと呼んだ者達を見返すため、底辺から成り上がる――
※修正要請のコメントは対処後に削除します。

暇つぶし転生~お使いしながらぶらり旅~
暇人太一
ファンタジー
仲良し3人組の高校生とともに勇者召喚に巻き込まれた、30歳の病人。
ラノベの召喚もののテンプレのごとく、おっさんで病人はお呼びでない。
結局雑魚スキルを渡され、3人組のパシリとして扱われ、最後は儀式の生贄として3人組に殺されることに……。
そんなおっさんの前に厳ついおっさんが登場。果たして病人のおっさんはどうなる!?
この作品は「小説家になろう」にも掲載しています。

巻添え召喚されたので、引きこもりスローライフを希望します!
あきづきみなと
ファンタジー
階段から女の子が降ってきた!?
資料を抱えて歩いていた紗江は、階段から飛び下りてきた転校生に巻き込まれて転倒する。気がついたらその彼女と二人、全く知らない場所にいた。
そしてその場にいた人達は、聖女を召喚したのだという。
どちらが『聖女』なのか、と問われる前に転校生の少女が声をあげる。
「私、ガンバる!」
だったら私は帰してもらえない?ダメ?
聖女の扱いを他所に、巻き込まれた紗江が『食』を元に自分の居場所を見つける話。
スローライフまでは到達しなかったよ……。
緩いざまああり。
注意
いわゆる『キラキラネーム』への苦言というか、マイナス感情の描写があります。気にされる方には申し訳ありませんが、作中人物の説明には必要と考えました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる