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第五部 主と建国せし道 第一章 ジャンカの町 闘技大会
第八百十八話 銃撃戦と肉弾戦
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「試合開始です!」
イビンの掛け声とともに、双方のリングより大歓声が上がる。
俺は現在闘技場リング付近で試合を見物している。
直ぐ近くには、負けて引退を決意したハクレイ老師がいる。
無理もない。何せアースガルズへ向かう途中も老師は大けがをしてしまったのだから。
「激しく動きがあるのはリングAの方ですね」
「うむ。射撃手が数名おる。大きめのリングじゃ。遠距離からの攻撃を早めに封じたいん
じゃろうな」
「その反面、リングBは近接戦が殆ど……あれ? シーザー師匠、武器を持ってない?」
「そういえば試合前に、言っておったのう。壊れるからいらんと」
「ああ……それはちょっとわかるかもしれません。俺は落としてしまったけど、モアユニ
ーク武器なら破損リスクは結構高いですね」
「うむ……その点銃撃は壊れる可能性が低くていいのう」
「でも、弾切れがありますからね。そこを突かれると脆い」
リングAでは現状、ビーとアイマスクウェアウルフがリング上を走り回り、次々と選手
を落としている。
リングBではシーザー師匠が腕を組み、構えたまま挑んで来る相手を待っているが……
シーザー師匠へ向かう者は誰もいない。
それもそうだ。シーザー師匠は有名。びびって近づく奴はそうそういないだろう。
リングに上がる前、既に危険した人物もいたようだ。
「リングBは覚者と師匠が動くまで……いや、ドーグルが頑張ってるな。後……誰だろう、あれは」
「むう……あれも魔族じゃな。翼が見えておる」
「羽の生えた魔族?」
「そのようじゃ。ハルピュイアという種族じゃな」
「ハルピュイア……女の子ですよね」
「うむ。しかしハルピュイアがこんな人前に出てくるとはのう」
ハルピュイアは鳥のような足で選手をつかんでは場外へ落下させている。
空を飛んでいるような、いないような……ギリギリセーフなのかアウトなのか。
いや、きっとセーフだ。高くはとんでいないし飛ぶ時間も短い。
重くてそれほど持ち上げられないのだろうが、戦うには有利だろう。
……気の毒だが、そのリングで勝ち上がるのは鬼門だと思う。
「リングAは予想通り……アイマスクのウェアウルフとビーの一騎打ちになりそうですね」
「何か、喧嘩しとらんか?」
「えっ?」
ビーは以前招来していた木のような物の上に乗り、その上から隠れつつ射撃している。
ウェアウルフは……幻術も使えたのか。
土斗で壁を形成しつつ、その間から射撃を繰り返しているが、どう見てもヒートアップ
しているように見える。
この二人にどんな因縁があるのだろうか。
わからないが、戦況は激しく動いている。
シーザー師匠の方は……「ちったぁ骨のあるやついねえのか! 来い!」
ようやく近づいてきた奴に蹴りを入れて吹き飛んだところを間髪入れず追撃……あれは痛そうだ。
覚者の方はなぜか認識されていないかのように、攻撃の的となっていない。
「老師。覚者っていうのは一体何なんですか?」
「そう言えばわし、詳しく話してなかったのう。心してきくのじゃルンルン」
「ルインでお願いします」
「覚者とは魔の影響を強く受け、その身に眠る力に目覚めてしまったものじゃ。元々で言
うなら人間じゃな」
「人間……? あの妙な光は何なんです?」
「聖恩調気という、調気を纏った存在ゆえに、光っているよう見えるのじゃよ」
「聖調気? 聖属性みたいなものってことか……」
「まぁ、属性というよりは、魔王種の鎧のようなもんじゃな。ただし、聖調気はな……
むぅ、ベルディス殿が動くぞ」
「ちったぁ戦え、てめえもよ!」
「荒々しい。その高ぶりはウェアウルフの血、ゆえか」
師匠が突撃し、肉弾戦を持ちかける。
今までみたどの動きとも違う動き方で突進する師匠。
あれはスキアラの許で特訓した成果なのだろうか。
しかし覚者には追いつけない。。
俺が今まで見て来た奴らは、何となく強そうだということが感覚でわかった。
こいつはやばそうなことしかわからない。
強さの実態そのものが不明だ。
「攻撃に転じませんね」
「ううむ、種明かしするよりよく見てみるとよいぞ」
「はい……予測としてはあの光で何かしらの攻撃する隙を伺っているのかと思う
のですが」
「わしも最初はそう思ったんじゃがな……」
違うのか? 明らかに防戦一方だ。
自ら攻撃をしに転じていない。
あれじゃシーザー師匠としてもやり辛いだろう。
そう考えていたら、司会のイビンから大きな声が発せられる」
「あーー! これはまともに食らってしまいました! ビー選手ピンチです! でも今の
は明らかに行動がおかしいです! 自ら撃たれにいったように見えました!」
「変ね。あの子、もっと冷静だと思っていたのだけれど。大変よ。女性がリングにかけつ
けてるわ!」
やべっ! レナさんだ。急いで止めないと。
「レナさんストップ! ダメだ」
「でも! もう見てられません!」
「大丈夫、致命傷にはならない弾だよ」
射撃武器の弾丸は、指定された物以外使用出来ない。
これは事前に確認が入るので絶対だ……が、ビーが動いていない?
「おい! イビン! 勝ち名乗りを挙げろ! それ以上攻撃させるな!」
「黙れ。敗者に居場所はない。くたばれ」
【真化】
「赤海星の吸盾」
ウェアウルフの男が銃撃を行う直前に、どうにか防ぐことが出来た。
こいつ……今確実に殺そうとした。
殺したらこいつが反則負けだっていうのに、お構いなしにだ。
「てめえ……なぜ邪魔をする」
「もう勝負はついた。お前の……勝ちだ」
「り、リングAの勝者はルッツ選手です!」
イビンの掛け声とともに、双方のリングより大歓声が上がる。
俺は現在闘技場リング付近で試合を見物している。
直ぐ近くには、負けて引退を決意したハクレイ老師がいる。
無理もない。何せアースガルズへ向かう途中も老師は大けがをしてしまったのだから。
「激しく動きがあるのはリングAの方ですね」
「うむ。射撃手が数名おる。大きめのリングじゃ。遠距離からの攻撃を早めに封じたいん
じゃろうな」
「その反面、リングBは近接戦が殆ど……あれ? シーザー師匠、武器を持ってない?」
「そういえば試合前に、言っておったのう。壊れるからいらんと」
「ああ……それはちょっとわかるかもしれません。俺は落としてしまったけど、モアユニ
ーク武器なら破損リスクは結構高いですね」
「うむ……その点銃撃は壊れる可能性が低くていいのう」
「でも、弾切れがありますからね。そこを突かれると脆い」
リングAでは現状、ビーとアイマスクウェアウルフがリング上を走り回り、次々と選手
を落としている。
リングBではシーザー師匠が腕を組み、構えたまま挑んで来る相手を待っているが……
シーザー師匠へ向かう者は誰もいない。
それもそうだ。シーザー師匠は有名。びびって近づく奴はそうそういないだろう。
リングに上がる前、既に危険した人物もいたようだ。
「リングBは覚者と師匠が動くまで……いや、ドーグルが頑張ってるな。後……誰だろう、あれは」
「むう……あれも魔族じゃな。翼が見えておる」
「羽の生えた魔族?」
「そのようじゃ。ハルピュイアという種族じゃな」
「ハルピュイア……女の子ですよね」
「うむ。しかしハルピュイアがこんな人前に出てくるとはのう」
ハルピュイアは鳥のような足で選手をつかんでは場外へ落下させている。
空を飛んでいるような、いないような……ギリギリセーフなのかアウトなのか。
いや、きっとセーフだ。高くはとんでいないし飛ぶ時間も短い。
重くてそれほど持ち上げられないのだろうが、戦うには有利だろう。
……気の毒だが、そのリングで勝ち上がるのは鬼門だと思う。
「リングAは予想通り……アイマスクのウェアウルフとビーの一騎打ちになりそうですね」
「何か、喧嘩しとらんか?」
「えっ?」
ビーは以前招来していた木のような物の上に乗り、その上から隠れつつ射撃している。
ウェアウルフは……幻術も使えたのか。
土斗で壁を形成しつつ、その間から射撃を繰り返しているが、どう見てもヒートアップ
しているように見える。
この二人にどんな因縁があるのだろうか。
わからないが、戦況は激しく動いている。
シーザー師匠の方は……「ちったぁ骨のあるやついねえのか! 来い!」
ようやく近づいてきた奴に蹴りを入れて吹き飛んだところを間髪入れず追撃……あれは痛そうだ。
覚者の方はなぜか認識されていないかのように、攻撃の的となっていない。
「老師。覚者っていうのは一体何なんですか?」
「そう言えばわし、詳しく話してなかったのう。心してきくのじゃルンルン」
「ルインでお願いします」
「覚者とは魔の影響を強く受け、その身に眠る力に目覚めてしまったものじゃ。元々で言
うなら人間じゃな」
「人間……? あの妙な光は何なんです?」
「聖恩調気という、調気を纏った存在ゆえに、光っているよう見えるのじゃよ」
「聖調気? 聖属性みたいなものってことか……」
「まぁ、属性というよりは、魔王種の鎧のようなもんじゃな。ただし、聖調気はな……
むぅ、ベルディス殿が動くぞ」
「ちったぁ戦え、てめえもよ!」
「荒々しい。その高ぶりはウェアウルフの血、ゆえか」
師匠が突撃し、肉弾戦を持ちかける。
今までみたどの動きとも違う動き方で突進する師匠。
あれはスキアラの許で特訓した成果なのだろうか。
しかし覚者には追いつけない。。
俺が今まで見て来た奴らは、何となく強そうだということが感覚でわかった。
こいつはやばそうなことしかわからない。
強さの実態そのものが不明だ。
「攻撃に転じませんね」
「ううむ、種明かしするよりよく見てみるとよいぞ」
「はい……予測としてはあの光で何かしらの攻撃する隙を伺っているのかと思う
のですが」
「わしも最初はそう思ったんじゃがな……」
違うのか? 明らかに防戦一方だ。
自ら攻撃をしに転じていない。
あれじゃシーザー師匠としてもやり辛いだろう。
そう考えていたら、司会のイビンから大きな声が発せられる」
「あーー! これはまともに食らってしまいました! ビー選手ピンチです! でも今の
は明らかに行動がおかしいです! 自ら撃たれにいったように見えました!」
「変ね。あの子、もっと冷静だと思っていたのだけれど。大変よ。女性がリングにかけつ
けてるわ!」
やべっ! レナさんだ。急いで止めないと。
「レナさんストップ! ダメだ」
「でも! もう見てられません!」
「大丈夫、致命傷にはならない弾だよ」
射撃武器の弾丸は、指定された物以外使用出来ない。
これは事前に確認が入るので絶対だ……が、ビーが動いていない?
「おい! イビン! 勝ち名乗りを挙げろ! それ以上攻撃させるな!」
「黙れ。敗者に居場所はない。くたばれ」
【真化】
「赤海星の吸盾」
ウェアウルフの男が銃撃を行う直前に、どうにか防ぐことが出来た。
こいつ……今確実に殺そうとした。
殺したらこいつが反則負けだっていうのに、お構いなしにだ。
「てめえ……なぜ邪魔をする」
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