異世界転生 我が主のために ~不幸から始まる絶対忠義~ 冒険・戦い・感動を織りなすファンタジー

紫電のチュウニー

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第五部 主と建国せし道 第一章 ジャンカの町 闘技大会

第八百十二話 初戦 バトルロイヤル開始! 前半

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「いよいよ始まる注目の試合! 今大会大注目の選手をご紹介してます、司会のイビンで
す!」
「同じく司会のライラロよ。ちょっと、いつになったらダーリンの試合なの?」
「さ、さぁ。ベルディスさんはもっと後ですね……さて闘技場リングAは大注目の選手が
います! 警備隊隊長を務める無双の脚力! 白丕お姉さんです! そして、抜刀の使い
手、エンシュさん! そしてそして、六指の使い手、ジェネストさん! 非常に強い選手
が集まりました!」
「へぇ。偏ったわね。でも見なさいイビン。Bリングにベルディスの弟子がいるわ」
「はい! 今大会の宣誓をした、ツイン選手が早くも登場! こちらはどうやらお弟子さ
んとの戦闘のようです。えーと名前はミレ……ミルクレープさんです!」
「……明らかに偽名っぽいわね。もっと考えられなかったのかしら」

 ミレーユは王女だからな……仮面もつけてるし本名は明かせない。
 初戦で俺と当たるとは、相変わらず運が無いな……。
 ビュイは名前を変えていないが、どう見ても幼子だ。
 直ぐに狙われるかもしれない。
 返り討ち必至だろうけど。

 対戦相手には、派手な頭飾りに身を包んだ術使いの女性に額に大きな宝石をつけている
男、それに筋肉獣人女性もいる。術士が七、八、九……十人? ……偏りすぎだ。
 参ったな。ミレーユは相当苦労するだろう。
 リングに上がると好きな配置に着く。
 選手との距離があまりに近いと司会から待ったが入るが、問題ないようだ。

 俺の周囲にいるのは……ミレーユ、ビュイ、筋肉獣人女性、頭飾り女性か。
 ミレーユとビュイが少し近づいて、小声で話しかけてくる。

「先にあんたを落とさないと、勝てそうにないわ」
「それは同感。ビュイもそう思った」
「いきなり落ちてやるつもりはない。それより二人とも足下救われるなよ」

「試合開始です!」

 イビンの合図とともに大きな音が鳴り響く。
 俺はすぐさま跳躍の構えをとった。

「バネジャンプ」
「ちっ。逃げられたか」

 直ぐに攻撃しようとしたミレーユが舌打ち。
 おい、そこまで狙わなくてもいいだろ! 

 ……続けざまに、リング下方は一気に術の応酬戦となる。

「妖氷造形術、氷の柱」
 
 リング上に氷の柱を造り、その上に一人立つ。
 当然目立つが、攻撃してきた筋肉獣人女性は俺のそばにいたビュイとミレーユに敵対し
始めた。
 二十人は数が多い。半数程減らすか。

「妖氷造形術……ブラックイーグル……アイスバレット」

 俺は威力の低いことで定評のあるブラックイーグルと氷の弾を作成。
 氷の柱を狙い撃ちしようとしている術士に対して……氷の弾丸を足に向けて放つ。

「ラモト・コレツ!」

 さらにラモトの力を行使し、その弾丸に青白い文字を植え付けたものを発射した。
 的確に命中した足下で、青白い炎が渦を上げて燃え上がる。
 ……まともに当てると危ないが、十二発まで狙った位置に炎を巻き上がらせることが可
能。
 衣類に炎が燃え移った奴らは、慌てて場外へ逃げていく。
 ただ、足下の敵は狙えない……と、この足場も限界だ。
 下で双斧を振るう筋肉獣人に破壊された。
 やっぱ狙い、俺かよ! 

「バネジャンプ! 妖氷造形術、氷の柱!」

 次の位置に移り、同じように落としていく。
 数が減ってきた。残り八人。予想通りやばい奴らは残ってる。
 ミレーユと頭飾りの女が対峙。

 イビンの熱烈な司会が耳に入る。

「うわぁ! 高い足場作って攻撃してます! あれじゃ遠距離攻撃してもまた直ぐに
移っちゃう!」
「結構消耗すると思うわ、あれ。でもいい作戦ね。狙ってる奴から優先的に攻撃すればい
いし。上に気を取られてると下の奴に自分が狙われるしね」

 ……冷静に分析されてるな。その通り、結構消耗する。
 近くにビュイがいなければそうしなくてもよかったんだけどな。何せ……。

「亀死千万、生を消費し生を消す。魔陽花里報来」
「っと、危ねぇ!」
 
 氷の柱上にいる俺へ向けて、ビュイが緑色の衝撃波を撃ってきた。
 飛翔して躱し、再度同じ場所に着地する。
 ちゃんと狙うタイミングを計ってたな。
 幻魔界で放たれたこの技がやばい。
 まともに食らえば場外まで吹き飛ぶし、妖楼じゃ躱せない。
 ミレーユは魔術招来で中型のスノーバウルスを呼び出して騎乗している。
 相手の頭飾り女は、一角獣のようなやつに横座りして対峙してる。
 どっちも魔術招来対決。
 宝石額野郎は……いない? 何処だ。

「後ろですよ」
「何!?」
「いや。高みの見物っていうのはいいものですね」
「くっ。バネジャ……」
「まぁ待ちなさい。あの少女以外攻撃してこないようだ。邪魔ですね」
「何を……」
「秘術、神風・小」

 ……嘘だろ……的確にビュイだけを鋭い突風で吹き飛ばした。
 ビュイはこっちを狙ってもう一度、魔陽花里報来を撃とうとしていた。
 それを切り裂いて……しかも神風だと!? 

「……お前、何者だ? いや、言わなくても」
「見ればわかる……と言いたそうですね。構いませんよ」

 心を読んだ? そんなことできるのは、まさか……。
 急いでアナライズしてみるが……ダメだ。見えない。

「神か」
「正確には違いますね。私は神兵。どうやら今のを見て、あの女性を刺激してしまった
ようだ。また後程」

 そう言うと、俺の氷柱の足場から離脱する男。
 くそ、一体何者だこいつは……。
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